D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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オリ主がアザゼル杯に出ていないからか、蚊帳の外感ありますね。


第4話 強張る心身

 冥界の悪魔領の中でも名前がよく挙げられる都市にルシファードは欠かせないだろう。魔王ルシファーを冠する都市名であり、前に大規模な会場で若手悪魔の紹介も行ったのは、大一もよく覚えていた。

 この日の深夜、彼はその時と同じ建物に足を踏み入れていた。周囲にはいくつか段が続いており、何人もの上級悪魔が部屋中央に立つ大一を見下ろしている。邪龍戦役後、彼は冥界の上役から命令を受ける立場となっており、定期的に召集を受けては報告をしていた。

 

「先日の『禍の団』残党の拿捕はご苦労だった。量産型邪龍のプロトデータも回収できたのは大きかった」

「ありがとうございます」

「まあ、これくらいはルシファー眷属の名を背負っている以上、やってもらわねば」

「慢心はしないように。キミは中級悪魔になったばかりだ。より精進に努めなさい」

「心得ています」

 

 大一がルシファー眷属という情報は、すでに冥界の上層部に知れ渡っていた。サーゼクスを筆頭に冥界中核の悪魔がいなくなり、人手の整理がされていった際に漏れたらしい。初代バアルを中心に多くの上層部がこれについて渋い表情をしたものの、グレイフィアやアジュカがとりなした上に彼の今までの功績を主張することで、サーゼクスが大一を懐刀としていたことは丸く収まった。もっともこれすらもシャドウとしては、自分たちの功績が全て問題の払拭のために使われた気持ちになったようで、くだを撒いていたのだが。

 実際、今の時点でも彼を疎んでいる上層部は何人かいる。ルシファー眷属として秘匿されていたことに加え、彼の神器である「犠牲の黒影」の事件を知っていたことや、一部の純血主義者は転生悪魔相手に抱く格差的感覚と、嫌悪される理由が彼には詰まっていた。ただしそういった有権者は変わりつつある現体制に不満を持っているだけなので、はけ口としてちょうど良ければ赤龍帝だろうがグレモリーだろうが、文句を言うだろう。

 話題が大きく切り替わるのを危惧してか最上段にいたアジュカが、他の追随を許さないような透き通る声で話す。

 

「とりあえず今回の拿捕によって、例の件は約束を取り付けるスタート地点に立てたわけだ。現在、相手には打診しているが、上手くいけば得られる情報は大きい。冥界としても期待しているところだ」

「実際、承諾してくれるでしょうか?」

「可能性は五分も無いだろう。そもそも相手はこちらを毛嫌いしているからね」

「しかし成功した時に、期待できるものも多い。我々、悪魔の功績にもなるものだ」

 

 ひとりの高齢な悪魔の声が、大一の耳に入る。その言葉が有権者たちも実績を求めているのを物語っており、それに気づかないほど彼も鈍くなかった。

 アジュカもこれ以上は長引かせなくなかったのか、大一に短く伝える。

 

「追って時間は知らせる。その際は頼むよ」

「承知しました」

 

 内心、ほっとする想いであった。このままいけば想像していたよりも、早々に終わることが期待できる。

 しかし期待を持ったときほど、それを否定するようなことが起こるものだ。

 

「あのギガンという捕虜が口を開いてくれれば、こんな交渉を行う必要は無かったのだろうがね」

 

 ひとりの有権者の言葉に、大一の眉がピクリと動く。一瞬の感情の表れは誰も気づかず、同時に警戒の感覚を蘇らせた。

 数か月前にアグレアスで戦ったクリフォトのメンバーである巨漢は、今もまだ監獄に入れられている。実力やリゼヴィムとも会ったことがあるのを踏まえると、得られる情報は相当期待された。

 

「クリフォトの更なる情報と、『異界の地』の実情…あの悪魔から聞けることは多いはずなんだが」

「やはり尋問が生温いのではないか?あとは魔力を調べるために彼を───」

「それはしないことを3大勢力の話し合いで決着がついた。あなたがたにも説明したはずだが」

 

 有権者が続けそうになった言葉を遮るように、アジュカがきっぱりと言い切る。これを皮切りに多くの有権者が己の考えを出していった。

 

「世界は新しく変わろうとしている。だからといって旧時代の誤りを払拭するために、処分することなど言語道断だろう」

「我々はそんなつもりで言ったわけじゃありません。ただ新時代のために、必要な力を解明するために、そういった強硬な手段も選択肢にあると思っただけですよ」

「そもそも悪魔には悪魔の格式もある。変化の中心にいる二天龍が王道やら覇道やらとなって、我々が…いや悪魔が積み上げてきたものが異端とされるのも違うのでは」

「水掛け論ですな。議論するなら相応の場が必要となるでしょう」

 

 長引かなかったものの、冥界も一枚岩でないことを目の当たりにして、今回の定期報告は終わるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 冥界の空は紫色で、昼も夜もそこまで違いを感じられない。それでも人間界では夜のため、大一としては1日の疲労がたまる頃であった。人気が少ない廊下では足音が奇妙に響き、どこか不気味さを醸し出している。それが先ほどの報告で抱いた心労を増加させていた。

 

『ったく、あの老いぼれどもめ。僕らを完全に支配下に置いた気でいやがる』

(事実だろう。俺らはあの人たちの指示で動いているんだから)

『あれだけ疎んじられていながら、僕らの働きがあいつらの功績になるのも納得できないんだよ!だいたい僕らのやっていることは特別なエージェントみたいなもんだぜ!魔王の話していたEXEのようなものだ!』

 

 「EXE」…エグゼと呼ばれるこの組織は、アジュカが考案した秘密情報局であった。人間界で言うMI6のようなものを想定しており、あらゆる脅威から世界を守ることを目的としていた。数年後の発足を考えられており、すでに一誠はその中心人物としてアジュカからスカウトを受けていた。

 この組織について、大一はアジュカから話しだけ聞いていた。スカウトにまで至らなかったのは、神器や眷属関連で上層部から渋い評価を受けている彼を下手に採用するのは、余計な反感を抱かれかねないからであった。

 

『あの研究者気質の男が周りのことを気にするとはな…!』

(今の魔王はあの人だけだ。相応の責任感があるんだろうよ。それでも俺に話してくれたのは気遣ってくれたんだと思う)

 

 EXEの件について大一に話した時、先ほどの理由も含めてアジュカは包み隠さずに事実を述べてくれた。彼が上級悪魔になる、またはそれに比肩する相応の実績があれば問題なくスカウト出来ること、そもそもこの話自体D×Dがアグレアスに向かう前に決められたこと、その際にサーゼクスから大一の重荷になりかねないのでスカウトには否定的な意見であったこと…全てを述べたことはアジュカなりの大一への配慮だったのだろう。ルシファー眷属の立場で、この一件を下手に隠すことの方が彼への負担になりかねないのを見越していたのだ。

 

『でもなぁ…それでも大一はもっと期待を受けてもいいと思うぜ。ほら、別結界の定期連絡を魔王以外に赤龍帝だけが一緒に出来るというのもさ…』

(それについては現時点ってだけだ。その事実すらリアスさん達は知らないからマシだろう?それに疎まれている俺が何度もアジュカ様の研究所に行ったら、あの人にもいらぬ疑いをかけるだろうし、サーゼクス様達が無事であるなら俺はそれでいい)

 

 アジュカは、今もなおトライヘキサと戦っているサーゼクスやアザゼル達と定期的に連絡を取っていた。物資の調達などにも必要なため、必要なことだろう。その際に、一誠だけが共に連絡を取ることができていた。結界に向かった人物たちが話し合いで決めたらしいが、アジュカの配慮でその実情と彼らの無事については聞いていた。

 

『どこまでいっても貧乏くじ…これじゃ、ディオーグとの約束を守れるのはいつの日になることやら』

(俺はむしろその組織に誘われなくて良かったと思う。下手に誘われたら、サーゼクス様に言われたように、自分の道を絞りかねないからな)

『現状がそうなっている気もするけどね』

(…それは反論できないな)

 

 シャドウの指摘と現状を踏まえれば、結局のところ有権者の傀儡という事実は否定しようがなかった。

 なんとも言えない気持ちを胸に抱えていると、廊下対面を歩いてくるひとりの男性が視界に入る。長い銀髪に端正な欧州的顔立ち、身に着けているローブは最上級悪魔のものであった。大一は脇に控えて頭を下げ、その男性が過ぎるのを待とうと考えたが…

 

「おっと、赤龍帝くんのお兄さんかな。たしか大一くんだったね」

「私のような者を覚えていたのですか」

「キミもそこそこ名は知れている方だと思うがね」

 

 リュディガー・ローゼンクロイツの静かな微笑みは、威圧感の欠片もなかった。この一点だけでも先ほどの有権者との温度差を感じてしまう。

 最上級悪魔であるこの人物は、レーティングゲームランキングでも上位の男であった。大一も映像で何度も見たことがあるし、去年のサイラオーグチームとのレーティングゲームでは審判を務めていたのは記憶に新しい。

 しかし彼が並みの最上級悪魔と一線を画すのは、転生悪魔ということであった。今もなお根深さが散見される悪魔の格差がある中、レーティングゲームでその実力を示して最高峰まで昇りつめたのである。

 加えて、先日ディハウザー・ベリアルによって発覚したレーティングゲームの不正について、彼はその類のものに関与せず7位という実績を示していたことも、改めて高い評価を得ることに繋がっていた。

 

「近々、また会うかもしれない」

「一誠達に会いに、ということですね」

 

 一誠のチームが次の試合で対戦する相手、それはデュリオ率いる天界チームであった。そしてリュディガーはこの天界チームの監督であった。かの有名な最上級悪魔が自ら出場するのではなく監督として、しかも同盟を組んでいるとはいえ天使側に参戦していることは冥界でもかなり騒ぎの話題であった。

 

「キミの弟のチームは本当にすごい。上級悪魔になりたてで、練度の高いメンバーを揃え、信頼と共にその実力を出している。同じ転生悪魔として感心するよ」

「おだてても何も言えませんよ。私はたまに弟やリアスさんのチームの特訓相手をしていますが、いずれにも情報を漏らしていません」

 

 起伏の無い言い方で、大一は反応する。リュディガーは純粋な実力もさることながら、情報戦や心理戦に比重を置いたゲームメイクが得意であった。それゆえに関係者の些細な会話からも情報を求めてくると踏んだ大一は、早々に牽制の言葉を放った。

 これに対して、リュディガーはおかしそうに手を横に振る。

 

「いやいや、本心だよ。もちろん、キミが想像している目論見がゼロかと言えば嘘になるがね」

「ハッキリ言いますね」

「自分が監督するチームを勝たせたいからね」

 

 アザゼル杯の優勝賞品は「あらゆる願いを可能な限り叶える」というものだ。噂ではリュディガーが天界チームの監督を引き受けたのは、それについて目的が一致しているからと言われている。名うての最上級悪魔が最高峰の転生天使に協力した理由は、純粋な興味として深堀りしたい気もするが、変に勘繰られるのも不本意なため、大一は口をつぐむ方を選択した。

 

「まあ、キミが両チームにいないということはありがたい」

「私にはもったいないほどの評価です」

「表立っていないだけで、光るものがキミにも多いと思うがね。以前、デュリオから聞いたよ。キミはいつか自分のチームで出たいとね」

「弟が自分の眷属を持って出場したとなれば、私も同じように思うのは当然でしょう。国際とはいかなくても、今後に大会は開かれるでしょうし」

 

 アザゼル杯への不参加を表明した際に、知り合いには「いつか自分のチームで出たいから」という理由で説明していた。少なくともD×Dの関係者はこれについて知っており、納得している。ただこれについては彼の本心の一面でしかないのだが。

 これに対して、リュディガーは思慮深い顔で少し声を落として話す。

 

「転生悪魔の先輩としてアドバイスだ。名を上げたいのであれば、今からでもどこかのチームに入ることだよ。もちろん多くの強者が参加するこの大会では、キミの実力があっても結果を残せるとは限らない。しかしさらに実力を磨くことは出来るし、何よりも多くの目に晒されることで、他の強者の眼に止まる可能性も増えるからね。キミがどのようなチームを目指しているかはわからないが、本当に強いチームを求めるなら知名度も必要だよ。弟さんのようにね」

「…肝に銘じます」

「…まあ、選ぶのはキミ自身だ。また会おう」

 

 リュディガーは滑らかに身体を翻して廊下の奥へと進んでいく。大一は短く礼をすると、彼とは反対方向に歩き出し建物を出ていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 数十分後、大一は家の地下にある魔法陣部屋に現れる。すでに深夜0時を過ぎており、静けさが異様に目立つ雰囲気があった。

 

『余計なお世話、と言いたいがあいつの言葉にも一理ある。あんなふうにプレッシャーをかけられるのは不本意だがね』

(あの人の言葉は正しいと思うよ。ただそれでも俺は…しかし緊張した)

『前から魔王眷属御一行やあの老人どもと話しているのに、緊張なんて今更じゃないの』

(いやそれが…)

 

 彼の腹からぐーっと気の抜けた音が大きく鳴る。この静けさではよく響いた。

 

(腹減っていたから、鳴るのを我慢していて)

『拍子抜けするわ!』

(やっぱりディオーグとの融合で燃費悪くなったな。戦闘にはそこまで影響ないんだが)

『いつだったか、シヴァが赤龍帝に言ってたな。グレートレッドやオーフィスが平穏を求めているから、その力によって身体を与えられたあいつの根底も平穏を欲しているって。大一もディオーグの影響を受けているのかね』

(どうだろう。身体の件について、あいつとはちょっと違うし…いや、それよりもなんか食べよう。じゃないと寝れそうにない)

 

 想像以上の空腹にため息をつきながら、大一はリビングへと向かう。夕食はいつもと変わらなかったつもりだが、リアス達の特訓に付き合ったのとお偉方に会うため無意識に食べる量を抑えていたことで、深夜にもかかわらず辛い空腹を抱いていた。

 バナナのひとつやふたつでも食べれば事足りるだろうと期待していた彼であったが、食料よりも先に視界に入ったのはキッチンにいた朱乃であった。

 

「お帰りなさい、あなた」

「た、ただいま…どうしてまだ起きているの?」

「あら、愛する人と2人の時間が欲しくて、一緒にいるのはおかしいかしら」

 

 くすりと微笑む朱乃は魅惑的な雰囲気を放っていた。髪は下ろしており、寝巻用の薄い着物を身に着けている。ガウンも羽織って露出は減っているはずなのに、ここまで色気を出せるのはもはや才能の領域だろう。

 

「それは嬉しいけど、無理しないでほしいよ」

「無理をするつもりは毛頭ありません。お茶を淹れていたからどうぞ」

 

 彼女に促されるまま席に着くと、湯気の立つ緑茶が目の前に置かれる。それと共に皿に乗った2つのおにぎりと漬物が出された。予想外のものに大一は目を丸くさせ、朱乃はにっこりと笑顔を向ける。

 

「うふふ、お腹空いているかもと思って」

「本当に嬉しいよ。よくわかったね」

「あなたを見ているもの」

 

 まるで全てを見透かされているような気持ちにさせる彼女の言葉に、胸の中が飛び跳ねるかのような錯覚を抱く。悪魔になってから3年以上の付き合い、紆余曲折あって恋人の関係になってからは半年以上と、姫島朱乃とは仲間の中でも最も濃密な関係を築いていた。互いに砕けた姿や弱さを見せられる特別な相手…そんな彼女に、大一はいまだに恋愛的に余裕を持ったと思うことは無かった。今回も同様であり、その緊張をごまかすようにおにぎりを頬張っていく。塩加減もよく、これひとつとっても彼女の料理の腕を実感させられた。

 

「今日は特訓に付き合ってくれてありがとう。リアスもとても喜んでいたわ」

「むぐ…ん…あれくらい、おやすいごようだ。特訓の時も言ったが、俺にとっても良い修行になるから」

「アザゼル杯に出場していないのに忙しいものね。高校の時よりもあなたとの時間が減ったような気がするわ」

 

 対面に座る朱乃はお茶を片手に憂い気にため息をつく。高校ではクラスが一緒で、部活の時も顔を合わせていたが、大学生になったことで受ける講義の違い、悪魔としての立場も変化と、時間のすれ違いを感じさせることが多い。

 

「まあ、リアスよりマシだと思うけどね」

「それには同意する。今更、あの2人にすれ違いも無いと思うけど」

「でもリアスやイッセーくんに負けるつもりはないわ。あなたともっと特別になりたいもの」

「だから張り合う必要ないでしょ。…あのさ、この前から思っていたんだけど『あなた』って呼ばれ方が恥ずかしいな」

 

 大一は少し迷いつつも、朱乃に伝える。高校を卒業してから彼は将来の告白を彼女に行った。それ以来、彼女は2人きりになった際には「あなた」と呼ぶようになり、それが心身ともに幸福と照れくささによるむず痒さを感じさせた。

 

「あら、どうして?誰もいないんだからいいじゃない」

「でも夫婦ってわけでもないし…」

「未来の奥さんにはなるわ。それともあの時の告白は本気じゃなかったの?」

「そんなことは無い!俺は…俺は本気だよ!」

「ん…嬉しい」

 

 朱乃の幸せを享受した笑顔に、胸がさらに飛び跳ねた大一は急いで残りのおにぎりをたいらげていく。最後に流し込むように飲んだお茶は味も分からなかった。

 

「ご、ごちそうさま。美味しかったよ。本当にありがとう」

「そう言ってもらうと作った甲斐があるわ」

 

 上層部との話し合いで精神をすり減らした彼にとって朱乃の優しさは精神に潤いをもたらす。安心と同時に空腹も満たされると一気に眠気が襲ってきた。時間を踏まえれば当然のことであり、自分ですらこんな状態なのだから、起きていてくれた彼女の方も疲れはあるだろう。

 

「洗い物は俺がやっておくから、もう寝てくれて大丈夫だよ」

「寝る前にシャワーを浴びた方がいいわ。片腕だから大変でしょう?体を洗うのを手伝ってあげる」

「シャドウがいるから大丈夫だって!」

『あー、ダメだわー。今日の僕はMPが足りないわー。これは腕も創れないわー』

「あらあら、それは大変ですわ♪意識を持つ神器も休息は必要ですもの♪」

「いつもは馬が合わないくせに、こういう時だけ結託しないでくれよ!というかMPってなんだ!その軽快な雰囲気はなんだ!」

 

 声を抑えつつ叫ぶようにツッコむ大一に、朱乃はわざとらしく悲しげな表情を作る。幾度となくからかわれてきたため、それが本気ではないことを理解していたが、それでも彼には効果抜群であった。

 

「悲しいわ。私はあなたとの時間を楽しみにしていたのに拒否されるなんて。彼氏にも甘えられないなんて、遊びだったのかしら」

「そ、そう言えば俺が折れると思っているなら…」

「私はあなたが寝る準備を終えるまで、ひとり寂しくベッドで待つのね。優しくて、期待を裏切らない人だと思っていたのに…」

「わかった…わかったから…やめて…申し訳なさでへこむ…」

「うふふ、よく言えました。行きましょう」

 

 半分うなだれたような状態の大一の頭を撫で、朱乃は彼の左腕を引いて浴室に向かう。結局この日は最後まで緊張が心身を襲うのであった。

 

『大一もちょろいよなー』

 




22巻を読んだ時、アザゼルたちと連絡取れることに驚いたのは私だけじゃないと思います。
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