【結束バンド vs 放課後ティータイム】   作:ゼブラーの野郎

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ガールズ&ガールズ

ひとり(ぼっち)「バッ……バッ……バンドバトル……ッ!?」

 

 

虹夏「そっ。いくつかのライブハウスが合同で開催する企画でね、高校生以下限定のコンテストだよ。STARRYも共催で参加するから、私達も出場しない?」

 

リョウ「いいね。競い合うのはいい刺激になる。私逹の名前を売るいい機会にもなるし」

 

喜多「学生バンドが集まるなんて楽しみ!同じ趣味の友達が増えるかも!ねっ、ひとりちゃん」

 

ぼっち「  ひあ

                       うお

 へえあ

            うにえ

         えあ

                   んげ」

 

虹夏「ぼっちちゃんがいつものゴチャ顔に!」

 

リョウ「まあそうなるだろうと思った」

 

喜多「ひとりちゃん人間福笑いしないでー」

 

ぼっち「むむむむむむむりです大会なんてそそそそそそんなの私にはむむむむむむむむりむりむりむりむり!」

 

虹夏「ガチガチの勝負ってわけじゃないよ。あくまでアマチュア学生バンドが集まるだけだから」

 

リョウ「若い世代にバンドに興味を持ってもらうのが目的ってところか」

 

ぼっち「でっ、でもでも、先週ようやく文化祭が終わったばっかりなのにまた大勢の前でやるなんて……」

 

喜多「ひとりちゃん、挑戦してみようよ!いい経験になるし、もしかしたら優勝しちゃうかもよ!」

 

ぼっち「い、いや……でも……」

 

 ぼっち(私以外の高校生バンドなんて文化祭で目立ちたいだけの陽キャばっかりに決まってる!見に来るのだって仲間のパリピばっかり!そんな中で演奏なんて分子レベルで消滅してしまうぅ~!)

 ※個人のイメージです

 

虹夏「ちなみに優勝賞金は50万円です」

 

ぼっち「50っ……!?……ご、50万あればそれを元手に株に投資して億万長者に……そして学校中退!人生逆転ホームランッ……!」ニヘラ~

 

リョウ「絶対優勝しよう。私達の命に賭けて」グッ

 

虹夏「現金な連中め」

 

喜多「ひとりちゃんのギターならきっと勝てるわよ!ひとりちゃんすっごく上手いから」

 

虹夏「んー、たしかにぼっちちゃんが実力を発揮できたら優勝も夢じゃないかも」

 

リョウ「ぼっちのギターテクは超高校級だからね」

 

ぼっち「でへへへへへ、そっ、そおですかねえ~、そんな褒められちゃあ悪い気しないなあはははは~」フニャフニャ

 

虹夏「いつか詐欺にカモられそうで心配だよ」

 

 

リョウ「虹夏、大会について詳しく教えて」

 

虹夏「開催場所は新宿FOLTで、参加資格があるのは高校生以下の学生。お昼に一回戦が行われて、審査員の得点が高い上位三組が夜に行われる決勝戦に上がれるんだよ。ちなみに一回戦も決勝も三曲ずつ演奏します」

 

リョウ「漫才-1グランプリみたいな形式」

 

喜多「FOLTってSICK HACKのライブを見に行ったライブハウスですよね。開催日はいつなんですか?」

 

虹夏「一週間後だよ」

 

ぼっち「いっ、いいいいいいっしゅうかんご!?あ、あと七日しかないなんて……こ、こここ心の準備が……」

 

虹夏「私もお姉ちゃんに教えてもらったのつい昨日でさ。でも全国規模の企画じゃないし、そんなに気負わないで大丈夫だよ」

 

喜多「それでも東京近郊のバンドが集まると考えたら競争率高そうですよね」

 

リョウ「同年代、あるいは年下なのにめっちゃ上手い人にコテンパンにされて自信喪失するかも」

 

ぼっち「」

 

虹夏「リョウ!ぼっちちゃんを脅さないでよ!」

 

リョウ「大丈夫だよぼっち。“天地本寛而伏竜鳳雛(てんちほんがんにしてふくりょうほうすう)”という言葉がある。世の中は広く、すごい人はいくらでもいるって意味。私らなんかよりすごいバンドはごちゃまんといるんだから、負けても気にすることないよ。負けて当たり前。絶対負ける。負けた」

 

ぼっち「(。д゚)」

 

虹夏「戦う前から心をへし折るな!」

 

喜多「でもリョウ先輩の言う通りですよ。勝ち負けにこだわらず、私逹のベストを尽くしましょう!」

 

虹夏「うんっ!そうだね!よーし、同年代のロッカー逹に結束バンドの音楽を見せつけてやろー!」

 

 リョウ「おー」

 

 喜多「おーっ!」

 

 

ぼっち「。( д ) ゚」

 

 

 

 ~一週間後~

 

 ――新宿 FOLT――

 

 

 \ワアアアアアアァァァァ!/ \FOOOOOOOO!/ \YEAAAHHHHHHH!/

 

 

虹夏「わー……すごい入りだね」

 

リョウ「こりゃ運営はウハウハだろうな」

 

喜多「それよりなんで私達もお客さんと一緒にフロアにいるんですか?参加者なんだから控え室にいるべきじゃあ」

 

虹夏「詳しくは知らないんだけど誰かさんが酔っ払って暴れたせいで控え室工事中なんだって。舞台の順番が来るまではお客さんと一緒にフロアで待っててってさ」

 

喜多「あー……まあ色んなバンドの演奏見れると思えばラッキーかもですね」

 

虹夏「だね。それにしてもこないだの文化祭ほどじゃないにしろ、これだけのお客さんの前でやると思うとさすがに緊張するね」

 

リョウ「しかもお客は参加バンドのファンやロック好きばかりだから目は肥えてる。いや、耳か」

 

喜多「じゃ、じゃあ半端な演奏したら暴動が起きるかも……」

 

リョウ「あり得る。弱小バンドがしゃしゃってんじゃねーって炎上する可能性が」

 

虹夏「ちょ、ちょっと二人とも!そんなおっかないこと言ったらぼっちちゃんが――」

 

   「

        ち

 ぼ

          」

  っ

 

虹夏「ほらー、壊れちゃったじゃん!」

 

喜多「ご、ごめんなさい!ひとりちゃん復活して!リョウ先輩、ひとりちゃんの崩れたパーツ拾うの手伝ってください」

 

 

虹夏「これ、タイムテーブルだよ。私逹は中盤辺りだね」

 

リョウ「うむ、やはり私逹のバンド名が一番面白い。勝ったな」

 

喜多「目を引くのは確かですね」

 

虹夏「いつか改名しようと思ってたけど、もう今更変える気なくなっちゃったよ。心なしかちょっとカッコイイって思えるようになった気が――」

 

 

 「なあなあ、タイムテーブルに載ってるこのバンド見て見て。『結束バンド』だって。おんもしろい名前だな!」

 

 「ぷふっ……ってコラ!本番前に笑わすな!」

 

 「変わった名前よね。コミックバンドなのかしら」

 

 「私達のバンド名も似たようなもんですけどね……」

 

 

虹夏「……やっぱりウチの名前ってカッコ悪いのかな……」

 

喜多「わ、私は個性的でいいと思います!」

 

リョウ「他にはないオンリーワンこそロック」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 <♪~

 

喜多「あ、私逹の番、次の次ですよ。そろそろ舞台袖で準備しないと」

 

虹夏「よしっ、みんないくよ!」

 

リョウ「会場をギャフンと言わせようぜ」

 

喜多「いきましょ!ひとりちゃん!」

 

 

ぼっち(どどどどどどどどどどどどどうしよよよよよよよよ)

 

ぼっち(こここここんな大勢のバンドファンの前で演奏するなんて絶対無理無理無理!)

 

ぼっち(私みたいなクソザコナメクジがギター弾いてたらトマト投げつけられる!SNSで『ヘタッピのクセにドヤ顔でイキり散らかしてる陰キャ発見』って晒される!一生ネットの海で笑いものにされ続けるうぅぅぅ!)

 

ぼっち(お腹痛いってことにして棄権するしかない!もしくは5人以上に見つめられると溶けちゃう病ってことで勘弁してもらおう!)

 

 

ぼっち(で、でも……この一週間、虹夏ちゃんやリョウさんや喜多さんもすっごく頑張ってた……このバンドバトルで結束バンドの名を広めるんだって……)

 

ぼっち(……や……やっぱり……出るしかないっ……棄権なんてダメだ……やるしかないっ……!)

 

 

ぼっち(……だ、だけどこのまま出るのはやっぱ無理ぃ~!……な、なにかいい方法は……!)

 

 <チラ

 

ぼっち(……!…………これだ……これしかない!)

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

銀二郎(司会進行)「――というわけで、ただいまのバンドは『ペナルティキックオールディーズ』でした~!次のバンドは下北からの刺客、『結束バンド』よー!Let's Rock!」

 

 

 <ザッ!

 

 \ッ!?……/ \ザワザワ……/ \エ……ナニアレ……/

 

 

虹夏「……」

 

リョウ「ププフ……くっ……」プルプル

 

喜多「……え、えーっと…………け、結束バンドでーす……」

 

 \ザワザワ……/ \ドヨドヨ……/ \マジヤバクネ……?/

 

 

ぼっち(よし!これならカンペキ!)

 

 ぼっち(目だし穴を空けた紙袋を被って顔バレ防止!これでネットに動画挙げられても身バレしない!しかも外が見づらいから緊張も抑えられる!)

 

  ぼっち(背中には『Kick me(私を蹴って)』と書かれた張り紙!最初から低姿勢なら叩かれにくいハズ!)

 

   ぼっち(そして礼儀正しいお辞儀作法!)ペコリ

 

ぼっち(これぞ完全犯罪!炎上防止完全武装!後藤ひとり決戦仕様だ!)バーン

 

 

 「あっははははは!やっぱおもしろいバンドだったー!」

 

 「な、なんかちょっと怖い……かも……」

 

 「なるほど!仮装しながら演奏することで目でも耳でもみんなを楽しませようとしてるのね」

 

 「絶対違うと思います」

 

 

虹夏「ぼっちちゃん……完熟マンゴーから進化したと思ったけど……ある意味退化しちゃってるよ……」

 

リョウ「くふふっ、やっぱりぼっちこそ最高のロッカーだ」プルプル

 

喜多「み、みなさん色々と思うところはあると思いますが、と、とにかく聴いてください!1曲目、私達のオリジナルで『忘れてやらない』」

 

 

 <カッカッカッカッ

 

 <♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪~♪~♪♪♪~

 

 

  <おっ、けっこういいじゃん

 

 <ふざけてるのかと思ったけどギター上手いな

 

    <油断させて実はスゴイってスタイルなのか

 

喜多(やっぱりひとりちゃん、すごく上手い。お客さんもみんなビックリしてる)

 

喜多(そうよ。ひとりちゃんはカッコイイんだから。ちょっと奇抜な言動取ることもあるけど、誰よりもギターが上手いんだから!)

 

喜多(ひとりちゃんはすごいってことを、この場にいるみんなに見せて――)

 

 

ぼっち「ンぼヒィッ!」ゴシュッ

 

喜多「ひとりちゃん!?」

 

虹夏(紙袋が口にひっついて呼吸が!)

 

ぼっち「ボシューボシュー」ガクガク

 

虹夏(か、辛うじて息できてるけどギリギリだー!)

 

ぼっち「ンギッ……ヒヒュッ……ヒヒュッ」ガクガク

 

 

 

 ~ソレカラドシタノ~

 

ぼっち「 _(:3 」∠)_ 」

 

虹夏「ぼ、ぼっちちゃ~ん。そんな落ち込むことないってー」

 

喜多「そ、そうそう。あんなトラブル想定出来なくて当然だし、自分を責めないで」

 

リョウ「ほら、ぼっち。お菓子あげるから元気出せ」

 

ぼっち「私は貝になりたい……」

 

虹夏「こりゃしばらくは凹みモードだね。時間が癒やすのを待つしかないかー」

 

リョウ「この後どうする?私達はほぼ間違い無く一回戦落ちだし」

 

ぼっち「ガッ」

 

虹夏「もーリョウ!死体蹴りはマナー違反だよ!」

 

ぼっち「…………あの……私……先に帰ります……夜風に当たりながら……己の罪を省みますので……」

 

虹夏「そ、そう。じゃあ私達も――」

 

ぼっち「い、いえ……皆さんは他のバンドを見てってください。私なんかに気を遣うことないです……それでは……」フラッ

 

虹夏「あっ、ぼっちちゃん――……大丈夫かなあ」

 

喜多「今は一人になりたいみたいですし、そっとしておきましょう」

 

リョウ「だね」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

銀二郎「――ただいまの演奏は海外の小学生バンド『スクールオブロック』でしたー!」

 

 \ワー!/ \パチパチパチ/ \サイコー!/

 

虹夏「今のバンドもめっちゃ良かったね!ザ・ロックって感じで!」

 

喜多「ですね!お客さんの反応も上々でしたし、決勝進出しそうです」

 

リョウ「そろそろタイムテーブルも終盤だね。虹夏、次のバンドはなんて名前?」

 

虹夏「えーなになに、次のバンドは――」

 

 

銀二郎「さぁーーーて次のバンドは!桜が丘高校の軽音部、その名も『放課後ティータイム』のステージよ!Let's Rock!」

 

 

律「どうもー!放課後ティータイムでーす!今日は私達のために集まってくれてありがとー!」

 

澪「いや単独ライブじゃないから!」

 

律「はい、今ツッコミ入れたのがベースの秋山澪でーす。で、私がドラムスの田井中律っ。天才ドラマーのりっちゃんって呼んでくださーい!」

 

澪「図々しいこと言うなっ!」ゴチン

 

 \ハハハハ!/ \イイゾー!/

 

律「えー、それからキーボード担当の琴吹紬!ウチの楽曲製作に欠かせない縁の下の力持ちでーす!」

 

紬「むん」フンス

 

 \カワイイー!/ \カネカシテクレー!/

 

律「そしてギターを担当するのが中野梓!ちょっとマジメすぎるけど背伸びして頑張ってまーす!シークレットシューズ購入を検討中でーす!」

 

梓「ちょっ!律先輩ヘンなこと言わないでくださいよ!」

 

 \ガンバレー!/ \ヤッテヤレデス!/

 

 

虹夏「なんだかコミカルなバンドだなあ」

 

喜多「なんとなく親近感湧きますね」

 

リョウ「放課後ティータイム……私達と同じお笑い路線の強力なライバル出現か」

 

虹夏「いやお笑い路線じゃないから私達」

 

 

律「そんじゃ早速ですけど一曲目聴いてください。『ふでペンボールペン』!」

 

 <1ッ,2ッ,3ッ

 

 <♪~♪~♪~♪♪~♪♪♪♪~ ♪♪~ ♪♪♪♪~

 

 

喜多「わあ……いい曲ですね」

 

虹夏「あれ?……でもこの曲……」

 

リョウ「うん、わざと違和感残してる」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 ♪――……

 

律「――……『ふでペンボールペン』でしたー。えー、みなさん、なんかヘンだぞって気付いてると思うんで説明しますね」

 

律「実は私達、ホントはメンバー5人でツインギター体制なんですけど、ギター担当が一人迷子になっちゃいまして~」

 

 \エッ……?/ \ドヨドヨ……/ \マイゴ……?/

 

律「ホントは梓だけで……ギター一人構成もいけるんですけど、ムギがどーしても譲らないって言うんで、いつもの構成で一人欠けた状態で演奏しました。ウチのキーボード頑固なんで」

 

紬「えへへ~」ブイ

 

澪「ムギここ別に勝ち誇るとこじゃない」

 

 

喜多「……つまり、いない人の席を空けたまま演奏してたってこと?」

 

虹夏「友達想いなバンドだね」

 

リョウ「変わり者とも言える」

 

 

律「とまあ、ちょっと聴き苦しいところもあるかもしれませんが、これが私達放課後ティータイムなんで、そこんとこヨロシクー!」

 

 \ウオオオーーー!/ \イイゾー!/ \ガンバレー!/

 

律「そいじゃあ次も私逹のオリジナル、『ぴゅあぴゅあハート』いきまーす!」

 

 

喜多(……バンドバトルで勝つことよりも、自分達のやり方を貫いたんだ…………なんか……カッコイイな……)

 

 

 

 ――……

 

ぼっち(はあぁ~~~……やってしまった……私みたいなミジンコ以下がいちびって覆面バンドやろうとしたせいだ……)トボトボ

 

ぼっち(考えてみればこんなカビ菌みたいな女がヘタクソな演奏したところで誰もネットに晒そうとしたりしないよね……自意識過剰だった……)

 

ぼっち(……当分みんなに合わせる顔がないなあ……いや、当分どころか一生顔向けできないかも……!)

 

ぼっち(も、もしかしたら……バンドから追放……ギアアあぁあAAAァァaaアぁAAあaアぁ!)

 

 

 

<……♪~

 

 

ぼっち「!」

 

 

 <♪♪~♪ ♪~♪

 

 

ぼっち「?……ギターの音……?」

 

 

 <♪~♪♪~♪ ♪~♪~ ♪~

 

 

ぼっち「あそこの公園からだ……だ、誰かがソロ弾きしてる……?」

 

 

 

唯「キミがいないとなにもできないよ キミのごはんが食べたいよ~♪」

 

 

 

ぼっち(や、やっぱり誰かブランコに座って弾いてる。高校生かな……なんでこんなとこで歌ってるんだろ……)

 

 

唯「んぅ?誰?」

 

ぼっち(ゲッ!見つかってしまった……ど、どうしよう……コミュ障は見知らぬ人ととの突然の会話に対応してないのに!)

 

唯「あっ!ギター!」バッ

 

ぼっち「……えっ?」ドキ

 

唯「それ、背中に背負ってるのギターだよね!ギターやるの?私もなんだ~」グイィ

 

ぼっち「……え、えっと……」ヒキッ

 

唯「私もこのギー太と一緒に軽音部やってるんだー。ねえねえ、どんなギターなの?見せて見せて~」

 

ぼっち「あっ……ぁの……ぇと……」

 

ぼっち(な、なんかすごいグイグイ来るぅ~!コミュ力オバケだこの人ーっ!)

 

 

 

 ――……

 

律「ふぃー、みんなお疲れ~」

 

梓「やっぱり唯先輩がいないと物足りないですね」

 

澪「仕方ないさ。唯が電車乗り間違えたんだから。現地集合にしようって言いだした律にも責任がある」

 

律「うっ……だって集団でゾロゾロ行くより一人一人集結する方がカッコイイじゃん。なんてったって新宿だよ新宿!」スンズク

 

紬「まあまあ。無事にこっちに来てるって唯ちゃんから連絡もあったし、何事もなくてよかったわ」

 

梓「たぶんその辺でフラフラしてるんでしょうけど」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

銀二郎「さあ、たった今、採点が終了したわ。これから発表する3組が一回戦を突破して、決勝に進出よ。それじゃあ、発表するわね。決勝に進むのは――」

 

 

銀二郎「――以上の3組よ!夜の部の決勝戦は午後6時半から行われるわ。それまでの間、食事をするも良し買い物に行くも良し、でもこれだけは忘れないで。決勝を見逃したらきっと後悔するわよ。あ、それと今からサプライズゲストバストのステージがあるから、興味のある人は――」

 

 

 \ガヤガヤ/ \ワイワイ/ \ドヤドヤ/

 

虹夏「いやー、やっぱり一回戦落ちかー。それにしても他のバンドもレベル高かったねー」

 

リョウ「ぼっちのトラブルがなければ私達だって負けてなかった」

 

喜多「でもいい刺激になりましたよね!私ももっともっと頑張らなきゃってなりました!」

 

虹夏「だね。さて、この後どーする?せっかく新宿まで来たしどこか出かける?それとも――」

 

 

律「ねっ!ねっ!ちょっといいかな」

 

虹夏「――はい?……あっ、あなたは確か放課後ティータイムの……」

 

律「おっ、見ててくれたんだ私達の演奏。ありがと!こっちも見てたよ、結束バンド!いやーよかったよーホント」

 

虹夏「えっ!ホントですか!?実は私達もみなさんの舞台見てスゴイなって言ってたんですよ」

 

律「おほーっ!嬉しいこと言ってくれるじゃあないの~!いやー実はさ、私達同世代だしなんか親近感湧いちゃってさ。できれば友達になりたいなーって思って声かけたんだけど……」

 

澪「お、おい律!いきなりそんなこと言いだしたら迷惑だろ!」

 

虹夏「いえいえ!迷惑だなんてとんでもない!私達も同じこと思ってたんですよ。ねっ、喜多ちゃん」

 

喜多「はい!みなさんの音楽とメンバーへの想いに感激しました」キターン

 

紬「ありがとう。なんだか私達気が合いそうね♪」

 

喜多「キーボードのサウンドも魅力的でしたし、ギターの方もとっても上手くて尊敬しちゃいます」キタ~ン

 

梓「えっ?……え、えへへへへ、そうですかぁ?えへへへへ」

 

律「ねえねえ、この後ヒマ?せっかくだから放課後ティータイムと結束バンドでどっか行かない?」

 

澪「りっ、律!」

 

虹夏「いいですねーそれ!」

 

喜多「是非みなさんとお話ししたいです!」

 

紬「私逹仲良くなれそうね」ヤッター

 

律「よーしそんじゃあみんなでライブ後ティータイムとしゃれこもうぜーっ!」

 

 虹夏&喜多&紬『おーーーっ!』

 

 

澪「あ……ああ……どうしてこんな流れに……私人見知りなのに……」

 

リョウ「ねえ」

 

澪「ひゃっ……は、はい……?」

 

リョウ「ハマグリと金目鯛どっちが好き?」

 

澪「…………助けて律ぅ……」

 

 

 

 ――……

 

唯「おお~!カッコいいギターだね」

 

ぼっち「あっ、ありがとうございます……つい先日買ったばかりなんですけど……」

 

唯「ウチのギー太も負けてないけどね」フンス

 

ぼっち(楽器に名前付けるってけっこうハジけてる人なのかな……)

 

唯「そういえば自己紹介してなかったね。私、桜高三年の平沢唯!」

 

ぼっち「あっ……秀華高校一年の、ご、後藤……ひとりです……」

 

唯「ひとりちゃんも軽音部?」

 

ぼっち「い、いえ、部活は入ってないけどライブハウスとかでバンドやってて……」

 

唯「へ~!ライブハウス!本格派でカッコいいね!」

 

ぼっち「えへっ、そっ、そぉですかぁ~?」フニャ

 

 ぼっち(やっぱり部活内でやってる人からすればライブハウスって遠い存在というか、ガチ感あって憧れあるんだろうな。こう見えて経験者ですし色々ご指導しましょうか~?なんちゃってなんちゃって!えへへへへ)

 

唯「私達も去年の大晦日にライブハウスで演奏したんだけど、みんないい人で楽しかったよ」

 

ぼっち「調子乗ってすみませんッ……!」

 

 

唯「ねえね、ちょっと二人で弾いてみよっか」

 

ぼっち「えっ」

 

唯「ひとりちゃんと一緒にギター弾いてみたくなっちゃった」

 

ぼっち「でっ……でもアンプも無いし……」

 

唯「そのまんまでいーよー。二人でやるのなんていうんだっけ、デュエル……?デュエリストだっけ?」

 

ぼっち「あっ……デュエットですか……?」

 

唯「そうそう!それそれ!コンビ名は平沢唯の『唯』と後藤ひとりちゃんの『ひとり』を合わせて……なんて読むんだっけ、ゆいいつみたいな」

 

ぼっち「……た……ただひとり……?」

 

唯「それーっ!私達ふたりのコンビ名は『ただひとり』でーっす!」ジャカジャン

 

ぼっち「い、いえーい……?」ジャキジャン

 

唯「それでは聴いてください。私達のオリジナルソングで『ごはんはおかず』!」

 

ぼっち「えっ、わ、私その曲知らない――」

 

唯「1、2、3、4、ゴ・ハ・ン!」ジャラジャジャジャラジャ

 

ぼっち(あっ、この人コミュ力高いとかじゃない。物怖じしないっていうかマイペースっていうか。コミュ力どうこうの次元じゃない……)

 

 

 

 ――……

 

 ――とあるファミレス――

 

律「ということで放課後ティータイム&結束バンド交友会開催~!」

 

虹夏「イエーイ!パチパチパチパチ~」

 

梓「なんか二人とも既に仲良くなってますね」」

 

律「ドラム同士ウマが合うのかなー。それに引き換えベース組は……」

 

 リョウ「平井堅と島根県って似てるよね。でも志村けんの方が島根県に似てると思う」

 

 澪「うう……もう許して……」

 

律「ウマが全然合ってないカンジ」

 

虹夏「ウチのリョウがごめんなさい」

 

律「いや、ウチの澪も人見知りだから。高校三年間でちょっとはマシになったと思ったんだけどね」

 

虹夏「えっ!?……も、もしかしてだけど……みなさん何年生なの?」

 

紬「律ちゃんと澪ちゃんと私が三年生で、梓ちゃんが二年生よ」

 

虹夏「すっ、すんませんでしたぁーっ!てっきり同学年かと思ってたけど完全に後輩でしたー!ほら!リョウも謝って!ヤキ入れられるよ!」

 

リョウ「スンマセンっした。ナマ言ってました」ペコリ

 

澪「い、いいから別に……」

 

律「ふふふ、くるしゅうないぞ」

 

紬「あの~、ずっと気になってたんだけど、紙袋被ってたギターの人はどこに行ったの?」

 

虹夏「あー、ぼっちちゃんは一人の世界に浸りたいみたいだから、今はそっとしておいてあげてください」

 

梓「紙袋の人、ギターすごく上手かったですよね。途中から生きるのに必死になって演奏どころじゃなくなってましたけど」

 

喜多「中野さんもすっごく上手でしたよ。どれくらいギターやってるんですか?」

 

梓「私は親の影響で小学生の頃から」

 

喜多「小学生!?すごい!私なんかまだ半年経つかどうかってくらいだから、学年もギター歴もずっと先輩ですね」

 

梓「せ、先輩……私が……?」

 

喜多「中野先輩、是非ギターのご指導お願いします♪」

 

梓「え、えへへ……中野センパイ……えへへへへ」

 

紬「梓ちゃん陥落」

 

リョウ「演奏見てて思ったけど、レフティベースもかわいいですね」

 

澪「!……ほ、ほんと?」

 

リョウ「観賞用として欲しいくらい」

 

澪「!っそ、そうなんだ!なかなか売ってないけどその分魅力も倍増っていうか、一般的な形と違うところが惹かれるっていうか。あ、弾くのは私なんだけどね。ふふふっ」

 

リョウ「おおっ、急に饒舌に」

 

梓「澪先輩けっこう極端なトコあるんで」

 

律「虹夏のドラムかっこよかったよ。二曲目にやった『星座になれたら』って歌、ドラム捌きいいなーって思ってたんだ」

 

虹夏「あっ、ありがとうございます。律さんもエネルギッシュな感じでした」

 

律「えっへへぇ、どもー」

 

梓「しょっちゅう走り気味になりますけどね」

 

律「中野ァ!」グリグリ

 

梓「あ”~」グリグリ

 

喜多「はっ!……私もリョウ先輩を批判したらああいうスキンシップしてもらえるかも……!」

 

喜多「りょ、リョウ先輩!先輩のベースって周り見てない時ありますよね!」

 

リョウ「えっ、なんで急にケンカ売られてるの」

 

虹夏「リョウに律さんみたいなコミュニケーションテクを求めるのは酷ってもんだよ」

 

紬「りっちゃんは人の気持ちをくみ取るのが上手だから。男の子だったらきっとモテモテよ」

 

律「琴吹ァ!」スパーン

 

紬「あたっ、へへぇ、いったぁ~」ニコォ~

 

虹夏「なぜ嬉しそう」

 

喜多「!……りょ、リョウ先輩もいつも金欠で借りたお金返さないダメベーシストの典型だからきっと女遊びは上手いはずです!ヒモとして寄生して挙げ句の果てにボロ雑巾のように捨てられるんです!」

 

リョウ「えっ、なんで急に悪口言われてるの」

 

 

 

 ――……

 

 <――♪~……

 

ぼっち「……えと……ゆ、唯さん、お、お上手……ですね」

 

 ぼっち(言えない!あんまり上手くないですねなんて言えるわけない!)

 

 ぼっち(人に嫌われたくないが故に面と向かって批判的意見なんて絶対言えない!ただでさえ人からの好感度ゼロなのに嫌われてマイナスになんて絶対にしちゃダメだから!)

 

唯「ダメだぁ~お腹が空いて力が出ないよ~」ベチャア

 

ぼっち「へ?」

 

唯「ひとりちゃんお菓子持ってない?……今日は一度もお茶してないから……」ペコグゥ~

 

ぼっち「お、お菓子……あっ、リョウさんからもらったのでよければ」ソッ

 

唯「おお~~~!ありがとー!いっただきまーす!」

 

唯「おいしぃー!ムギちゃんのお菓子に負けないおいしさ!」モグモグ

 

ぼっち(そういえばリョウさんの家ってお金持ちって聞いたけど、高級なお菓子だったのかな。そ、そんなものをわざわざ頂いたのに人にあげちゃったなんて……)

 

 ~リョウ「ぼっちは私からのプレゼントなんていらないんだね……ヨヨヨ」(※イメージ)~

 

ぼっち「アアアアアアアアア!ごめんなさいリョウさん!見捨てないでください見捨てないでください!」ギアアア!

 

唯「おお、なんかひとりちゃん昔のさわちゃんみたいだね」

 

 

唯「はー、美味しかったぁ~。よーしっ、一丁やりますか!」フンスッ

 

 <♪ッ♪♪ッ♪~ ♪♪~♪~♪~♪~♪♪♪♪~

 

ぼっち「!」

 

 

唯「なんでなんだろ 気になる夜 キミへの この想い便箋にね 書いてみるよ♪」

 

ぼっち(あれ……?……う、上手い……めちゃくちゃ上手い!……さっきまでとまるで別人みたいに……!)

 

唯「もしかして 気まぐれかも しれない それなのに枚数だけ 増えてゆくよ♪」

 

ぼっち(それに……なんだろう……私とも喜多さんとも違う感じ……もちろん練習してるんだろうけど、なんとなく感覚で弾いてるような、自然なメロディで……)

 

唯「ほら、ひとりちゃんも一緒に。これ楽譜だよ」スッ

 

ぼっち「あっ、はっ、はい」

 

唯「好きの確立割り出す計算式 あればいいのに♪」

 

ぼっち(……なんだか心が洗われるような……癒されるような……)

 

唯「キラキラ光る願い事も グチャグチャへたる悩み事も そうだホッチキスで閉じちゃおう♪」

 

ぼっち(唯さんって……不思議な魅力がある人だなぁ……)

 

 

♪~~~――……

 

唯「ふぃー、楽しかったぁ~。二人だけで演奏っていうのもいいね」

 

ぼっち「あっ、ありがとうございます……」

 

唯「次はひとりちゃんのバンドの曲やってみようよ。楽譜ある?」

 

ぼっち「うえっ、あっ、は、はい」

 

唯「おお~。譜面だけじゃよくわかんないや。とりあえずやってみよ」

 

ぼっち「え、と、とりあえずって……もっと読み込んだりしなくていいんですか?」

 

唯「うん。それじゃいくよー」

 

ぼっち「わ、あ、わっ」

 

 <♪ッ ♪♪♪♪ッ♪ッ♪ ♪~

 

ぼっち(……やっぱり上手い……初めて弾く曲なのにどうしてこんなになめらかに……)

 

ぼっち(きっと……これが『才能』なんだ……天賦の才……それに何より――)

 

 

唯「♪~」

 

ぼっち(唯さん……楽しんでギターを弾いてる……)

 

 

 ――――――

 

ギタ男くん<後半に続くよ!

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