【結束バンド vs 放課後ティータイム】   作:カーチスの野郎

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君というロック

ギタ男くん<前回までのあらすじ!

 

ギタ男くん<天才ギタリスト後藤ひとりは結束バンドとして出場したバンドバトルでヘマしちゃって意気消沈!一人でトボトボ歩いていると偶然天才ギタリスト平沢唯ちゃんと出会っちゃった!

 

ギタ男くん<一方、結束バンドのみんなは放課後ティータイムのみんなと意気投合!ファミレスでおしゃべりして仲を深めていったんだ!

 

ギタ男くん<よかったねひとりちゃん!コミュ障が女子高生の団体とファミレスでダベるなんてことになれば、全く喋れずに存在を忘れられて肩身の狭い思いをするところだったね!

 

 

 ――――――

 

澪「リョウはどんなバンドが好きなんだ?私は藍坊主とか鴨川とかが好きだな。私達と音楽性は違うけど、カラっとしてて爽やかでさ」

 

リョウ「いいすね。私は女王蜂や銀杏BOYZみたいなハードなのも好き」

 

律「へー!リョウ銀杏好きなんだ。私も私も。でもゴイステの頃の方がいいって曲もあるよな」

 

リョウ「うん、『銀河鉄道の夜』は絶対ゴイステ版の方がいい」

 

律「私は175Rとかイナズマ戦隊とかも好き!元気ーって感じで!」

 

虹夏「おー!やっぱり私とりっちゃんさん趣味合う!モンパチとかジュンスカもいいですよね!」

 

律「そこまで遡るのアリならブルーハーツは欠かせなくなるでしょー!」

 

リョウ「80年代のバンドブームと00年代のロックシーンは作曲において多大なインスピレーションをもらえる。まさに金脈」

 

紬「リョウちゃん作曲やるんだ~。私も~」

 

喜多「ということは放課後ティータイムの曲って琴吹さんが書いてるんですね。いい曲ばっかりでステキでした」

 

紬「ありがと~。でも私、若者に人気のバンドってあんまり詳しくないから、これでいいのかなって不安になることもあるの」

 

梓「ムギ先輩も若者でしょ」

 

リョウ「どの曲もめっちゃ良かったです。歌詞はちょっと胸焼けしそうですけど」

 

澪「えっ」

 

喜多「結束バンドではリョウ先輩が作曲で、ひとりちゃんが作詞なんですよ。あの紙袋被ってたギターの」

 

律「あーあのヤベー子な。せっかくならあの子とも話してみたかったな~」

 

澪「おい律!やべー子なんて言っちゃダメだろ!」

 

リョウ「こないだ文化祭で客席ダイブして床に激突した」

 

澪「やべー子だった」

 

紬「私達の学校ももうすぐ文化祭なの。最後の舞台になるだろうから、その前に少しでも思い出を増やそうってことで今日のバンドバトルに参加したのよ」

 

喜多「そっか、紬さん逹三年生は文化祭で引退なんですね。みなさんが卒業したら中野先輩一人になっちゃ――」

 

虹夏「き、喜多ちゃん!」

 

梓「……」

 

喜多「――あっ!……す、すみません。私、無神経なことを言っちゃって……」

 

梓「い、いいのいいの。自分でもわかってるから……」

 

律「……」

 

梓「先輩方がいなくなった軽音部なんて想像もできないけど……でも、きっと放課後ティータイムに負けないくらいのバンドを作るよ」

 

澪「うん、その意気だ梓」

 

喜多「中野先輩ならきっといいバンドを作れますよ。応援してますね」

 

梓「うん。律先輩よりちゃんとした部長になれる自信はあるから」

 

律「ぬゎんだとぉ~!ナマイキ言うのはこの口か~!」グニ~

 

梓「いはいいはいいはい」グニ~

 

 

紬「梓ちゃん、寂しくなったらいつでも電話してね」ナデナデ

 

梓「そ、そんな寂しがりじゃないですよ私!」

 

澪「まあ梓が何もしなくても唯がしょっちゅう電話する気がする」

 

虹夏「そういえばそのギターの人はどうしてるんですか?」

 

澪「新宿に着いたって連絡はあったけど、ちょっとゆっくりしてから合流するって言ってたよ」

 

喜多「でもやっぱりカッコイイですよね。一人欠けたら放課後ティータイムじゃないからって、勝負を捨ててでもわざとギター不在の演奏するなんて」

 

梓「ムギ先輩そういうとこ譲らないから」

 

紬「えへへへ」

 

リョウ「優勝賞金の誘惑に打ち勝つとは。すごい」

 

澪「いや、むしろ賞金なんかもらわなくて良かったよ。50万なんて私達みたいな普通の高校生には大金すぎて脳が破壊される」

 

梓「そうです。正常な判断ができなくなるし、お金のために嘘を重ねて信頼を失いかねなくなります。50万の魔力をナメちゃダメです」

 

虹夏「なんか経験談みたいに聞こえる」

 

 

 <ム"ー ム"ー ム"ー

 

虹夏「あ、お姉ちゃんから電話」

 

喜多「伊地知先輩のお姉さんはバンドバトルを共催してるライブハウスの店長さんなんですよ」

 

梓「へー、身内がライブハウスやってるなんて羨ましいな」

 

星歌『虹夏、今どこにいる?』

 

虹夏「新宿のファミレスだけど、どうかしたの?」

 

星歌『バンドバトルのことだけど――』

 

 

虹夏「――…………」

 

 虹夏「ええぇーーーーーっ!?」

 

澪「ど、どうしたんだ?水道管の工事でライブハウスが使えなくなったとか?」

 

虹夏「……バンドバトルの決勝に……私達が出ることになったって」

 

澪「なっ、なんだって!?」

 

喜多「ほ、ホントですか!?」

 

律「職権乱用だ!」

 

虹夏「ちょ、ちょっと待って、今スピーカーにするから」TAP

 

喜多「て、店長さん、どうして私達が?一回戦敗退のハズなのに……」

 

星歌『それが……お前等が出てった後、サプライズゲストってことでSICK HACKが舞台に上がることになってたんだが――』

 

 

 ~~~

 

廣井「いえーい!盛り上がってるー!?ヤングなティーンロッカーのみんなにパイセンバンドの演奏を見せつけてやりにきたぜー!」

 

 \イエーイ!/ \ブチカマセー!/ \ノンダクレー!/

 

廣井「フロアのみんなもブチあげてこ……――!?」ピクッ

 

廣井「そ、そっ、そこの壁際で腕組んでるメガネのおねーさん!」

 

 

さわ子「――へ?」

 

廣井「あっ、あのっ!もしかしてですけど……あの伝説のメタルバンド、DEATH DEVILのキャサリンさんですよね!?」

 

 \ザワザワ……/ \デスデビル?/ \ムカシノバンド……?/

 

さわ子「ゲッ!…………い、いやぁ~、人違いじゃないかしら」

 

廣井「いいや、間違いないです!学生の頃にライブ見ました!すっごく感激したんですよ!もうホントサイッコーで!」

 

さわ子「……そ、そう。ありがとうね。でも今の私は顧問として生徒の活動を見に来ただけで……」

 

廣井「ぜひ一緒に演奏しましょう!舞台上がってきてください!あの伝説のギグを見せてください!」

 

さわ子「で、でも――」

 

廣井「お願いします!是非!」

 

 \ナンカシランケド ヤレヤレー!/ \ハヤクブタイアガレヨー/ \ビビッテンジャネーゾー/

 

さわ子「っ……――」

 

 

キャサリン「YEEEEAAAHHHHHHHHHHHHH!テメェら全員掻き鳴らしてやるぜえぇぇぇ!」ドリュデドリュデデドリュデデデ

 

廣井「いぃえーーーーーい!万雷の拍手を送りやがれ会場のヒヨッ子どもーーー!」ウオー!

 

 

 ~~~

 

星歌『――てな具合で、壮絶なステージに客は盛り上がったが、決勝進出が決まってた連中は自分逹の音楽がまだまだお子ちゃまだったって自信喪失して棄権したんだ。全員』

 

虹夏「」

 

澪「ウチの顧問がすみません……」

 

喜多「そ、それで辞退した人達の代わりに私逹が出るってことなんですね」

 

星歌『そういうことだ。で、決勝はあの場にいなかったお前らともう一組でやることで決まった』

 

虹夏「あの場にいなかったもう一組って……まさか」

 

 

星歌『放課後ティータイムってバンドだ』

 

律「!」

 

 

梓「私達と……結束バンドで決勝……」

 

虹夏「……お姉ちゃん、今その放課後ティータイムのみなさんと一緒にいるんだけど」

 

星歌『なんだ、連絡する手間が省けた。伝えておいてくれ。アホどもが暴れたせいでFOLTが使えなくなったから、決勝戦の会場はSTARRYに移ることになった』

 

澪「本当ウチの顧問がすみません……」

 

星歌『開始は6時半だ。遅れるなよ』プツンッ

 

 

喜多「……」

 

紬「……」

 

虹夏「……あ、あはは、なんだか気まずいことになっちゃいましたね」

 

律「……ぃよーしっ!ここは割り切って、ライバルとしてお互いベストを尽くそう!負けたらジュース奢りで!」

 

リョウ「それなら負けた方が代わりにライブのチケットノルマ分捌くのも追加でどうすか」

 

喜多「リョウ先輩!?」

 

律「いいだろう!できらぁ!」

 

澪「ちょ、ちょっと律!」

 

梓「私逹ノルマチケットなんてないじゃないですか!」

 

虹夏「リョウ!その場のノリでフっかっけちゃダメ!」

 

リョウ「こうでもしないと対抗心燃やせない。仲良くなったからって手を抜くような演奏したら最低だよ。お互いにね」

 

虹夏「そ、それは……」

 

リョウ「律さん、澪さん、紬さん、梓、手加減無しでやりましょう。題して『結束バンドVS放課後ティータイム ~ライブハウス危機一髪!~』」

 

澪「なんだそのわけわかんないタイトル」

 

リョウ「今度こそ、メンバー全員揃った放課後ティータイムの舞台を見せてください」

 

律「おうよ!恨みっこなしな!」

 

紬「……」

 

 

 

 ――……

 

唯「は~楽しかった~」

 

ぼっち「はっ、はい。楽しかった……です」

 

 ぼっち(こんな風にギター弾く人は初めて見た。世の中には色んな“音”があるんだなあ……)

 

唯「ひとりちゃん逹の曲カッコイイね。私、ろっくってあんまりよくわかってないんだけど、弾いてて楽しかったよー」

 

ぼっち「あっ、ありがとうございます……唯さんの歌も……ロックだと思いますよ」

 

唯「そーなの?自分でもよくわかんないや」

 

 

 携帯<ウンタン ウンタン

 

唯「あ、りっちゃんから電話だ」Pi

 

 唯「もしもしもしもし?どしたのりっちゃん」

 

 唯「ほぇ?なんで?何かあったの?」

 

 唯「……わかった。とにかく急いで行くね」Pi

 

唯「ごめんひとりちゃん、りっちゃんがキンキューショーシューだって言うから行かなきゃ」

 

ぼっち「あっ、は、はい。あの……ありがとうございました」

 

唯「こちらこそー。一緒に演奏できて楽しかったよ。また一緒にやりたいね」

 

ぼっち「はっ、はい。私も……やりたいです」

 

唯「そうだ。せっかくだからアドレス交換しようよ」

 

ぼっち「あっ、はい。連絡先のことですよね……そういえば唯さんっていまだにガラケーなんですね。周りに流されない感じでカッコイイですね……」

 

唯「なんかひとりちゃんのケータイ、画面おっきいね。あれ?ボタンも無くない?どうやってメール打つの?」

 

ぼっち「えっ」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

唯「じゃーねーひとりちゃーん!また一緒にギターやろーねー!」ブンブン

 

ぼっち「あっ……は、はい~……(声おっきい……私なんかのためにそんなエネルギー使わなくていいのに……)」

 

 

ぼっち「……なんだか不思議な人だったな……私とは色々と正反対で……陽キャなんだろうけど、なんかただ者じゃないっていうか……」

 

 スマホ<ム"ー ム"ー

 

ぼっち「あ、虹夏ちゃんから電話……」

 

ぼっち「ウッ……家族以外の人から着信なんて奇跡すぎてどう対応していいのかわからない……!」

 

ぼっち「スゥー……ハァー…………大丈夫大丈夫……落ち着け後藤ひとり……お前は電話に出れる……落ち着け……お前ならやれるッ!勇気を振り絞れッ!」

 

 <TAP

 

ぼっち「………………あっ…………も…………もしもぉしぃ……?」ヘラ

 

虹夏『ぼっちちゃん?なかなか電話出なかったけど大丈夫?』

 

ぼっち「あっ、すっ、すみませんっ、全然だいじょぶですっ」アセアセ

 

虹夏『そう?ならいいんだけど、これからライブだからすぐ来てくれる?』

 

ぼっち「あっ、はいっ……え?今からライブですか?」

 

虹夏『うん。私達、バンドバトルの決勝に出れることになったから』

 

ぼっち「えっ」

 

 

 

ぼっち「え”っ」

 

 

 

 

 ――下北沢 STARRY――

 

 \ワイワイ/ \ガヤガヤ/ \ドヤドヤ/ \オイオイ/

 

 

PA「大盛況ですね。入り口付近まで超満員ですよ」

 

星歌「すごいぞ!毎月これをやってくれねぇかな」ウハウハ

 

喜多「……なんか昼間よりもお客さん多い気がしますね……」

 

虹夏「決勝だけ見に来るって人もいるんだろうね」

 

星歌「一応前もって言っておくが、採点は私逹、共催してるライブハウスの関係者がやることになってる。身内だからって贔屓しないからな」

 

PAさん「ホントに贔屓せずにいられますかねぇ~」

 

星歌「明日から転職活動しろよお前」

 

虹夏「でもホントにフェアに採点してねお姉ちゃん。ヘンに肩入れしたら怒るから」

 

星歌「ウッ……わ……わかった」シュン

 

PAさん「やっぱり贔屓する気満々だったんですね」

 

喜多「私逹も控え室で準備しなくていいんですか?」

 

星歌「一組目が終わったら採点するために小休憩が入るから、その間に準備すればいい。相手の演奏は見といた方がタメになるからな」

 

虹夏「いや~とはいえこの大観衆の前で演ると思うと昼間よりさらに緊張しちゃうな~」ドキドキ

 

喜多「伊地知先輩で緊張するならひとりちゃんは――」

 

ぼっち「 (∂  ○ d) 」

 

喜多「ああ、やっぱり。ほらひとりちゃん。口閉じて、両目の位置戻すよ」イジイジ

 

虹夏「私達二番手でよかったね。トップバッターだったらぼっちちゃん消滅してたよ。それに……放課後ティータイムの実力が見れるし。今度こそ本当の、ね」

 

リョウ「気合い入れてけぼっち。優勝したら50万だ」

 

ぼっち「はっ!……そ、そうですね……高校中退の夢がすぐそこに……!」グッ

 

虹夏「ちょっとちょっと、お金が目的じゃないよ二人とも。ねえ喜多ちゃん」

 

喜多「50万円持った自撮りSNSに上げたら映えますよね!」

 

虹夏「これが50万の魔力か……!」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

唯「わ~、すっごい熱気だね」

 

律「この人数の前で演奏するって思うと武者震いしてくるな!澪、緊張してないか?」

 

み澪お「「「だだだ大丈夫だ、もも問題ななない」」」ガクガク

 

律「オフロードレースばりの振動数」

 

梓「澪先輩、先輩達の最初の文化祭を思い出してください!あんな思いを二度としないようにシャキっとしないと!」

 

澪「大丈夫だ、問題ない」シャキッ

 

唯「おおっ、澪ちゃん復活」

 

紬「よっぽど繰り返したくない悲劇なのね」

 

律「よーし!澪もシャキっとして唯も合流したことだし、今度こそ放課後ティータイムの本領発揮だ!結束バンドに打ち勝ってジュース奢らせるぞー!」オー

 

紬「りっちゃん、もう無理しなくていいのよ」

 

律「ウッ」ギクッ

 

澪「分かってるぞ律。賭けなんて言い出した手前、引き下がれなくなってるんだろ」

 

律「んぐっ……ば、バレてたか……」グヌヌ

 

澪「後先考えずに動いて引っ込みつかなくなるのは悪い癖だな」ヤレヤレ

 

律「みんなごめんっ!その場のノリと勢いであんなこと言っちゃって……」

 

梓「まあ奇跡的に決勝に上がれて、せっかくなら優勝したいって気持ちもわかりますけどね」

 

紬「私達って勝負事には縁遠いバンドだもの。勝つことにこだわる必要なんてないわ」

 

唯「そうだよ。放課後ティータイムの持ち味はほわわんとしてるトコなんだから。勝つとか負けるとか気にせず、楽しくやろうよ」

 

律「……うんっ!その通りだな!よぉーしっ!私たちの音楽でみんなを笑顔にしちゃおうぜー!」

 

 唯「でもその前にお茶にしよーっ!」

 

  紬「おーっ!」

 

澪「やれやれ」

 

梓「やっぱりこの方が私達らしいですね」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

虹夏「そろそろだね」ワクワク

 

リョウ「じっくり観察して攻略の糸口を探るんだぼっち。『聞く』んじゃなくて『聴く』んだぜ」

 

ぼっち「は、はいっ……!」

 

リョウ「かつて偉大なロックバンドが歌った……『ロックンロールするなら、頂点への道は長いぜ』と……これはその足がかりだ、ぼっち」

 

ぼっち「な、なるほど……努力を怠るなってことですね……!」

 

喜多「リョウ先輩もひとりちゃんもすごい闘争心」

 

 リョウ「50万でビンテージものの古着買う……!」メラメラ

 

 ぼっち「高校中退……高校中退っ……!」メラメラ

 

喜多「でも動機が不純すぎる」

 

虹夏「あっ、みんな、はじまるよ」

 

 

 <ザッ!

 

 

 

唯「はじめましてー!放課後ティータイムでーす!」

 

 

 \\\ワーーー!///

 

 

ぼっち「……えっ……ゆっ……唯さん……?」

 

 

 

律「えー、皆さん『誰だ?』って聞きたそうな顔してるんでご紹介させてもらいますね。彼女こそ、昼間の一回戦で欠席していたギターの平沢唯でーっす!」

 

唯「電車乗り間違えて遅刻しちゃいましたー」エヘヘ

 

 \ハハハハハ/ \ナンダソリャー/ \ウッカリサンー/

 

唯「でもよくわかんないけどまだステージに出れるって言われたんで急いで来ましたー。がんばって演奏するんでみんな楽しんでいってくださーい!」

 

 \オオーーー!/ \イイゾー!/ \ガンバレー!/

 

 

ぼっち「唯さんが……決勝の相手……?」

 

 

唯「――あっ!ひとりちゃん!見に来てくれたんだー。楽しんでいってねー」

 

ぼっち「!」

 

虹夏「えっ、ぼっちちゃんあの人と知り合いなの?」

 

ぼっち「あっ、えっ、えと、あ、ま、まあ……」

 

 \ザワザワ/ \ナニナニ?トモダチ?/ \ジロジロ/

 

ぼっち(んぶっ……ステージの上から名指しされたからめちゃくちゃ注目されてるッ……し、視線が激痛……!)

 

唯「ひとりちゃ~ん、応援してね~」テ フリフリ

 

ぼっち「っ……」プイッ

 

唯「なんでっ!」ガーン

 

 

梓「唯先輩、早くしないと」

 

唯「あっ、そうだね。それじゃあ一曲目、聴いてください。『ふわふわ時間(タイム)』!」

 

 唯「……」チラ

 

  澪「……」コク

 

   紬「……」フンス

 

    梓「……」スッ

 

     律「……っ」グッ

 

 

律「――1,2,3,4,1,2ッ!」

 

 <ッッ ♪♪♪♪♪ッ ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ッ

 

 

ぼっち「っ……!」

 

 

 

虹夏「……やっぱりすごい」

 

リョウ「当然だけど一回戦の時よりずっと良い。これが放課後ティータイムの本領……」

 

喜多「それに……なんだか不思議な魅力があるっていうか……心が和むような……」

 

虹夏「あのギターの人、かなり上手い。でもぼっちちゃんとはまた違う感じ……」

 

リョウ「ぼっちが努力の音なら、あのギターは才能の音だね。多分、持って生まれた感覚がズバ抜けてるんだ。でもそれにかまけてるわけでもない。努力なしでここまでやれるほどギターは甘くない」

 

リョウ「それに、すごいのはギターだけじゃない。パワフルでエネルギーに満ちたドラムと、それを暴走しないように手綱を握るベース。全体を優しく包むようなキーボード、確かな技術で確実に支えるリズムギター。5人が一つになって音楽を奏でてる」

 

喜多「カッコイイですね、みなさん」

 

 

ぼっち(これが……唯さんのバンド……)

 

ぼっち(これが……放課後ティータイム……)

 

ぼっち(……これが……唯さん逹のロック……!)

 

 

 

 ♪――……

 

 

唯「――……三曲目、『U&I』でしたー!」

 

 \ウオオオオオーーー!/ \サイコーーー!/ \シャカイゲンショウーー!/

 

澪「ふうっ……よし、完璧だった」グッ

 

梓「楽しくやれたし、お客さんも盛り上がってくれてる。良かった……」ホッ

 

唯「みんなありがとー!私逹も楽しかったよー!」

 

 星歌『はーい、放課後ティータイムに拍手ー。これより採点に入りますので小休止としまーす』

 

梓「唯先輩、そろそろ捌けないと」

 

唯「バンドサイコー!みんなサイコー!軽音大好きー!」イエーイ

 

律「イエーイ!ロックンロール!アンコールいっちゃうかー!?」FOOOO!

 

梓「律先輩まで!」

 

澪「ほら行くぞ、もうっ」ヒョイ

 

 律「あーおやめになってー」

 

澪「ムギは唯を頼む――」

 

紬「いえーい♪ぴーすぴーす」キャッキャ

 

澪「」ガクッ

 

梓「せっかくカッコよくキメれたのに結局グダグダに……」ヨヨヨ

 

 

 

 ――控え室

 

ぼっち「……」

 

喜多「……」

 

虹夏「……」

 

リョウ「……楽しかったね。放課後ティータイムのライブ」

 

虹夏「うん……なんか、ライバルのハズなのに全然そんな感じしないっていうか……」

 

喜多「私、普通に楽しんじゃってました」

 

ぼっち「……っ……あっ、あのっ!……」

 

虹夏「うおっ、どしたのぼっちちゃん」

 

ぼっち「あの…………私逹も……楽しんでやりましょう。勝たなきゃって思いながらステージに立つんじゃなくて、ライブを……私逹自身が楽しむつもりで」

 

喜多「ひとりちゃん……」

 

虹夏「そうだよぼっちちゃん!それが一番大事なんだよ!私が最初から言ってたのはそういうことなんだよ!」

 

リョウ「ようやく気付いたかぼっち。お前なら自力でわかると思ってたよ」

 

虹夏「どのくちが」

 

喜多「行きましょうひとりちゃん。会場の人達と放課後ティータイムのみなさんに見せてあげましょ。私たちの演奏!」

 

ぼっち「!……はいっ!」

 

 

 

 \ザワザワ/ \ガヤガヤ/ \ドヤドヤ/ \オイオイ/

 

梓「いよいよはじまりますね。結束バンドのステージ」

 

律「まーた紙袋被って出てこないだろうな」アハハ

 

唯「ねえねえ、これから何が始まるの?」

 

律「わかってなかったんかいっ」ガクッ

 

紬「決勝戦の対戦相手の、結束バンド演奏よ。私逹、一回戦が終わった後に仲良くなったの」

 

唯「私がいない間にそんなことが!ずるいー私も仲良くなりたかったー」

 

澪「ずるいもなにもいなかったのは唯だろ」ヤレヤレ

 

梓「あっ、出てきましたよ」

 

 

 <ザッ!

 

 

 

ぼっち「……」

 

 

唯「……っ!…………ひとりちゃん……?」

 

 

 

喜多「みなさんお待たせしました!結束バンドでーーーす!」

 

 \ワアアアーーーーー!/ \イエーーーイ!/ \マッテタゾーーー!/

 

喜多「一回戦ではハプニングもありましたが、今度は大丈夫なので安心してくださーい!」

 

 

律「おー、あれが紙袋マンの素顔か。意外とかわいいじゃん」

 

澪「あんな奇行をするなんて信じられないな」

 

唯「……ひとりちゃん」

 

 

ぼっち(もう誘惑に負けたりしない……お金なんかどうでもいい……このステージは、私逹がここに居るってメッセージなんだ……!)

 

 

喜多「それでは聴いてください。一曲目、私達のオリジナルで、『ギターと孤独と蒼い星』!」

 

 

 虹夏<ッ! ッ! ッ! ッ!

 

 <♪♪ッ♪♪ッ♪ー♪ッ♪ー♪♪♪ ♪♪ッ♪♪ッ♪ー♪ッ♪ー♪♪♪ ♪♪ッ♪♪ッ♪ー♪ッ♪ー♪♪♪

 

 

ぼっち(唯さん……私のギターは唯さんとは全然違うかもしれない。私逹の歌は放課後ティータイムの歌とは別物かもしれない)

 

ぼっち(私逹は、まだまだ未熟かもしれない……)

 

ぼっち(でも、どっちが上だとか、どっちがすごいとか、そんなことはどうでもいいんだ)

 

ぼっち(唯さん逹には唯さん達の……私逹には私逹の音楽がある)

 

ぼっち(唯さん逹の……放課後ティータイムのロック……しっかり受け止めました)

 

 

ぼっち(だから……聴いててください……私の……)

 

 ぼっち(私逹のロック!)

 

 

唯「……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・

 

 

 

・・

・・・

・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 \ガヤガヤ……/ \ゾロゾロ……/

 

 「いやー、どっちのバンドも最高だったな」

 

   「まさかあの子逹が優勝するなんて、一回戦を見た時には思いもしなかったわ」

 

「あれはきっと将来ビッグネームになるな!」

 

     「ねーねー物販見てこーよ」

 

  「今日寝れるわー」

 

PA「お気を付けてお帰りくださ~い」フリフリ

 

 

大槻「……」

 

廣井「いいライブだったね~。先輩に入店拒否されそうになったけど泣き土下座して入れてもらって正解だったわ~」

 

大槻「……まあ、そこそこでしたね」

 

廣井「そういえば大槻ちゃんはなんで出場しなかったの?」

 

大槻「素人の学生バンドだけの大会なんて一番になっても意味ないですから」

 

廣井「エントリーするのド忘れしたからって聞いたけど」

 

大槻「んぐっ……!」

 

廣井「ところで結束バンドどうだった?イイ子達でしょ~。相手のバンドもめっちゃ良かったよね~。いや~あの子達は伸びるわ~」

 

大槻「……じゃ、私は帰るんで。姐さんは一人で帰ってください」ソソクサッ

 

廣井「あれ!?待ってよ大槻ちゃん!帰りの電車賃貸してくれないと帰れないんだよ~!ちょっとー何怒ってんのさー!帰る前にお金貸して~!」

 

 

 

虹夏「いやー!放課後ティータイムの演奏サイッコーでした!」

 

律「それを言うなら結束バンドも最高だったよ!めちゃくちゃカッコよかった!」

 

喜多「桜高の文化祭も絶対見に行きます!がんばってください!」

 

紬「ありがとう。ますますがんばらなくっちゃね」フンス

 

律「いやー思い出作りのつもりで参加したけど、いいバンド友達が出来てよかったよ」

 

 リョウ「やはりスティーブ・ミラー・バンドの『JOKER』こそ最高のベースサウンドだと思う」

 

 澪「いや、定番とは言えQUEENの『地獄に道連れ』のベースだって最高だから」

 

律「この二人もすっかり打ち解けちゃったもんな」

 

喜多「中野先輩、今度是非ギター教えてくださいね」

 

梓「任せて!私が手とり足とり教えてあげるから!」フンス

 

紬「随分かわいらしい先輩ね」フフ

 

喜多「あ、じゃあみなさんで連絡先交換しませんか?また一緒にライブやったり、お話ししたりしたいので」

 

律「うむ!よかろう!じゃ赤外線でアドレス交換しよ~」スライド シャキッ

 

虹夏「え?赤外線?QRコードじゃなくて?」

 

律「え?なにそれ?」

 

虹夏「えっ」

 

律「えっ」

 

 

唯「いや~、ひとりちゃんが決勝の相手だなんてビックリしたよ~」

 

ぼっち「すっ、すみません……騙したわけじゃなくて……私も知らなくて……」

 

唯「ううん、ビックリしたけど、嬉しかったよ」

 

ぼっち「……あっ、あの……すごく良かったです……唯さん逹の演奏……」

 

唯「ありがと~。ひとりちゃん逹も良かったよー。ロックー!って感じでカッコよくて、でもみんなで演奏するのをすっごく楽しんでて」

 

ぼっち「あっ、それは放課後ティータイムのみなさんのおかげというか……」

 

唯「歌詞はちょっとよくわかんなかったけど」

 

ぼっち(グァッ!……陽の者の悪意無き批評が心に突き刺さる……!)

 

唯「でもね、ひとりちゃん逹が……結束バンドがどんなバンドなのかってものすごく伝わってきたよ」

 

ぼっち「……!」

 

 

唯「ちゃんと届いたよ、ひとりちゃんと、みんなのロック!」

 

ぼっち「……っ……あっ、ありがとう……ございます」

 

 

 律「おーい唯ー、帰るぞー」

 

 澪「また迷子になっちゃうぞー」

 

唯「はーい。それじゃひとりちゃん、私逹帰るね」

 

ぼっち「あっ……あのっ……本当に色々とありがとうございました」

 

唯「こっちこそありがとうだよ~。これからもバンドがんばってね。私逹もがんばるから」フンス

 

ぼっち「あっ、はい……そ、それじゃ……さようなら……」

 

唯「ひとりちゃん、さよならじゃないよ」

 

ぼっち「……?」

 

 

 

唯「またね」

 

 

ぼっち「っ!…………はいっ!」

 

 

 

 

 

 ――……

 

後藤母「あら、ひとりちゃんお帰りー」

 

ぼっち「ただいま」

 

後藤母「ご飯まだでしょう。すぐ温めるからね」

 

ぼっち「……お母さんごめん、ご飯もうちょっと後にする」

 

後藤母「え?」

 

ふたり「ねえねえお姉ちゃん、たいかいどうだったの?ゆうしょうしたのー?」

 

ぼっち「……ふたり、世の中には勝つとか負けるとか、そんなことよりもっと大切なこともあるんだよ。私も今日、なんとなく分かっただけだけどね」

 

ふたり「ふーん?」

 

ぼっち「それじゃ、私ちょっとギターの練習してくる」ドタドタ

 

後藤母「どうしたのかしらひとりちゃん……あんなに目をキラキラさせて……いつもはもっとどんよりしてるのに」

 

後藤父「うんうん、今すぐにでもギターが弾きたくて仕方ないんだな。きっと心震わせられるようなライブを見たんだろう。お父さんにはわかるよひとり」ウンウン

 

ふたり「えーいみわかんなくてつまんないー」

 

 

 ――……

 

憂「あっ、お姉ちゃんお帰りなさい」

 

唯「ただいまー憂ー」

 

憂「ご飯まだでしょ?すぐに温めるね」

 

唯「あ、ちょっと待って。その前にギター弾きたいんだ」

 

憂「え?帰ったばっかりなのに?」

 

唯「なんか弾きたくて弾きたくて仕方ないんだ」フンス

 

憂「よくわからないけど、いい刺激もらったみたいだね。それで、バンドバトルどうだったの?お姉ちゃん達優勝した?」

 

唯「ふっ……憂、世の中にはね、勝ち負けなんかどうでもいいこともあるんだよ」

 

憂「お、お姉ちゃんがちょっと大人になってる……!」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 扉<バタン

 

 ソファ<ボフッ

 

唯「……」

 

唯「……」スッ

 

 

 <♪♪ッ♪♪ッ♪ー♪ッ♪ー♪♪♪

 

 

唯「突然降る夕立 ああ、傘もないや嫌 空のご機嫌なんか知らない♪」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 押し入れ<スッ ピシャン

 

 ヘッドホン<カチャ……

 

 

ぼっち「……」

 

ぼっち「……」スッ

 

 

 <♪♪♪♪♪ッ ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ッ

 

 

ぼっち「君を見てるといつもハートどきどき☆揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ♪」

 

 

 

ぼっち「アアアアアアアアアアアアアア!無理無理無理無理!私みたいなカビ女がこんな甘々でキラキラでほわわんとした歌詞歌うなんて身の丈に合わなすぎて聴く人の脳が破壊されてしまううう~~~!」

 

 

 ――おわり――

 

 

 

 

 

 ~おまけ~

 

紬「ゲル状~」デロォ~

 

律「大変だ!ムギの眉毛(たくあん)を食べちゃったから身体が溶け始めた!」

 

唯「な、なにか代わりになるものは……」キョロキョロ

 

虹夏「待ってください律さん!唯さん!」バッ

 

律「虹夏!」

 

虹夏「これを使ってください!私とお姉ちゃんのアホ毛(ドリトス)!」シャキーン

 

 <ペタリ ペタリ

 

紬「治ったわ」テッテレー

 

律「ふぅ~、一時はどうなるかと思ったぜ」

 

虹夏「これにて一件落着ですね。よかったよかった」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

星歌「♪~」

 

ぼっち「あっ……て、店長さん……なんで頭の上にたくあん付けてるんですか……?」

 

 ~おしまい~

 


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