待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
さんどいっちを買った後。遅めの昼食を食べつつ、のんびり見知らぬ街中を歩いていた儂と被身子は、大きな橋に辿り着いた。近くに置いてあった案内看板を見ると、どうやらこの人工島の中は中央が六角形となっており、それを囲うように八角形のような街が三つもある。個性があり、科学技術が発展している時代とは言え人間はこんな島を作り上げたのか。そう思うと、とんでもない時代に産まれ直したのだと嫌でも実感させられる。
この橋の上は海が良く見えて、景色が良い。遠くに見える高い壁が無ければ、もっと良い景色だと思うんじゃけど。
そんな橋にある
それにしても、このさんどいっちは美味いな。被身子が作ったわけじゃないのに、美味じゃと思う。理由は、中に入ってる変な形の胡瓜の漬け物のお陰じゃ。確か、ぴくるすとか言ったな。これの味が、いつぞやに被身子が作ったぴくるすと同じ味なんじゃよ。じゃから美味い。外食にしては、じゃけどな。ついでにもうひとつ文句を言うなら、儂や被身子が食べるには量が多い。
それと! この珈琲は良くないっ。ただただ苦いだけなんじゃっ。
「こおひい。やっぱり飲めないんじゃな」
珈琲の苦さに顔をしかめていると、直ぐ隣に座っている被身子が笑っている。珈琲が飲めないぐらいで子供扱いしおって。こんなもの、飲める方がおかしいと儂は思うんじゃけど?
「こんなもの、一生飲める気がせん。お主はよく飲めるな?」
「儂も昔はそう思ってたのぅ」
儂と違って、被身子は珈琲が飲める。積極的に飲むことは無いが、たまに飲んでいる時がある。かふぇいんの力とやらを借りたい時に飲む、とかなんとか言っていたような気がするの。こんな苦い飲み物からどんな力を借りれるんだか。仮に力を借りれたとして、体に悪いんじゃないのか? こんなものを飲むぐらいなら、白湯を飲め白湯を。
「円花はまだまだお子様じゃの。もう少し大人の味を知ったらどうじゃ? 相変わらず牛乳も、一人じゃ飲めんみたいじゃし」
「うるさい。こおひいも牛乳も嫌いじゃ」
最後に飲まされたのは……いつだったか。そろそろ無理矢理飲まされる気がするから、警戒しておかねば。次、食卓に牛乳が置かれたら逃げるとしよう。おやつと一緒に出て来たら、おやつだけ食べて逃げ出そう。儂は飲まんぞ。牛乳だけは、絶対に飲まんからなっ。
「けふっ。ごちそうさま……」
「よく食べ切れたの? 量、多かったじゃろ?」
「うむ。少し休んでから動こうか……」
ううむ、少し食べ過ぎたな。最後の方はぴくるすが無くて、美味くなかったし。珈琲はまだ残っているが……こちらに関しては飲み切れる気がしない。もう一度口を付けてみるが、やはり苦い。こればっかりは飲み切れぬ。
「お主は食べ切れるか?」
「ううむ……。無理じゃと思う」
「じゃよなぁ。勿体無いが、残してしまえ」
「こおひいは?」
「無理じゃ。こんなもの、飲み切れんわ」
さんどいっちは何とかしたが、珈琲まではどうにも出来ぬ。そもそも、何であの店員はこの天気なのに珈琲を熱くしたんじゃ。冷たくて良いじゃろそこは。
何となく被身子に寄り掛かると、頭を撫でられた。端から見れば自分自身に甘やかされているように見えると思うが、深く考えないでおこう。見た目が儂になっていても、被身子は被身子じゃ。
「きすしても良いか?」
……急に何を言っとるんじゃこやつ。したいと思ったら、儂の許可など取らずにするくせに。さんどいっちを買う時じゃって、店員に声を掛けられなかったら
今は、そういう気分なのか? それとも室内ではなく、外じゃからか?
分からん。被身子の考えることは、分からんことの方が多い。
「良い。好きにしろ」
自分と
被身子に寄り掛かったまま海を眺めていると、頬に手が添えられた。左を向かされたから、瞼を閉じる。
「ん……っ」
じゃから、耳を撫でる指を軽く掴んでおく。すると意図が伝わったのか、指を動かさなくなった。その代わりと言わんばかりに、唇に吸い付いて来たが。
「ん、ちゅっ……。こら、被身子」
「もう少し、良いか?」
「……少しだけじゃぞ」
これは、長くなりそうじゃ。少し被身子から香ばしい匂いがするが……これは珈琲か?
まぁ、さっきまで飲んでいたからのぅ。この匂いは気にしないでおく。
「ん、ふふ……っ。円花ちゃん……」
あ、駄目じゃ。これは少しでは済まない。けどまぁ、良いか別に。
まっこと、仕方ない奴じゃなぁ。良い、許すぞ。今日は外で幾ら
……まぁ、その。儂も、したくなってきたし……。じゃから、ほら。もっと……。
◆
浮かれている。久し振りの
ううむ。どうにも落ち着かん。また水浴びしたくなってきた。頭を冷やしたい。もういっそのこと、目の前の海に飛び込んでしまおうか?
何だか喉も渇いてきたし、どうしたものかのぅ。
なんて考えていると、横にさせられた。食後の膝枕は悪くない。潮風は心地好いままじゃし、このまま少しぐらい昼寝しても良いかもしれん。いや、それはそれで時間が勿体無い……か?
何となく被身子の顔を見上げる。目に入るのは、儂の顔じゃ。こうしてもう一人の自分を見るのは、やはり奇妙な感じがする。じゃけど、中身は被身子じゃ。儂の口調を真似ていようが、仕草を真似ようが、被身子は被身子。それは変わらん。
「この後、どうするんじゃ?」
「……どうしようかの。お主、あい・えきすぽに興味無いじゃろ?」
「あい・えきすぽ?」
何じゃそれ。
「個性技術博覧会。個性やさぽおとあいてむの研究発表とか、そういう感じのやつじゃ」
「うむ、興味無い」
残念ながら
……仕方ない。体を起こそう。寝てしまったら勿体無いからの。
って、おい。頭を押さえるな。寝るぞ? このままだと寝てしまうぞ?
「少しなら、寝ても良いぞ?」
「いや、それは勿体無い……」
「お腹いっぱいで眠いんじゃろ? 円花はお子様じゃからのぅ」
……誰がお子様じゃ。儂がお子様じゃったら、被身子だってそうじゃろ。からかうな。意地悪そうに微笑みおって。
「ほら、少しだけ。あまり寝過ごすようなら、起こしてやるから」
「……、じゃあ少し寝る」
知らんぞ? 夜まで寝てしまっても儂は知らんぞ? こんな心地好い場所で昼寝なんてしたら、いつ起きるか分からんぞ??
まぁ、起こしてくれると言うなら寝過ごしてしまう心配はないか。そこは信頼するとしよう。
瞼を閉じる。聞こえるのは波の音。満腹感と心地好い潮風と、寝心地の好い膝枕が合わさって……これは……。
ああ、いかん。寝れる。寝てしまう。どうにも勿体無い感じがするんじゃけど、これには抗えそうにない……。
……すぴぃ……。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ