待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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逢瀬の時間。満ち足りない

 

 

 

 

 

 服を買った後、まだ逢瀬(でえと)を終わらせたくない儂が連れ込まれたのは宝飾店じゃった。まぁ宝飾店と言っても、安価な物が揃った若者向けの店らしくての。箱のような硝子の棚に、狭しと飾られている装飾品は実に様々じゃ。

 首飾りに髪飾り、耳飾りであったり指輪や腕輪。どれも形が様々で、種類が豊富じゃ。こんなところで買い物がしたいと言うことは、何か目当てが有ってここに来たのか?

 まぁ、被身子の目的は何でも良い。最後まで付き合うつもりじゃし、逢瀬(でえと)が続くのであれば儂はそれで満足じゃ。欲を言うなら、何処か落ち着けるところで二人で静かに過ごしていたいけれども。その、何がとは言わんが……そろそろしたいと言うか……人目を気にしたくないと言うか……。

 

「ううむ……。悩ましいのぅ……」

 

 商品棚を眺めている被身子が、悩ましく唸っておる。さっきからこやつが眺めているのは首飾りや指輪じゃ。どれにするか悩んでいるようじゃから、少し放って置くことにする。装飾品の良し悪しなど、儂にはよく分からん。何となく目についた首飾りを眺めて見るが、何が良いのかさっぱりじゃ。現代の女子(おやご)はこういう物を可愛いとか、身に付けたいとか思ったりするらしい。

 

 ……正直、ついて行けん。

 

 いやまぁ、将来的に指輪ぐらいは買おうと思っている。じゃけどそれは、早くとも二年後の予定じゃからのぅ。この時代は結婚を申し込む際、指輪を贈るのが常識じゃ。それに習おうと思ってはいるが、いまいち感覚が掴めん。

 十八になる前に、結婚と指輪についてしっかり調べておくとしよう。何年か前に一度調べはしたが、どうもうろ覚えと言うか……。結婚に興味は有るが、いまいち頭に入ってこなかったのも事実じゃ。

 ううむ。求婚の予行演習とでも思って、儂も何か買ってみるか? ただ隣で待っているのも暇じゃから、そうするか。

 

 よし、そうと決まれば何か探してみよう。大量に陳列している指輪の中で、被身子が気に入りそうな物を選んでみるとする。

 

「……ふむ……」

 

 指輪だけでも、色々と有るのぅ。形も色も沢山の種類が有り、この中から被身子が喜びそうな物を選ぶのは大変そうじゃ。二年後、似たような思いをする羽目になると思うと……少し憂鬱な気がしないでもない。

 ちらりと被身子の顔を盗み見ると、妙に真剣な顔付きになっておる。お主、勉強している時より集中しておらんか? 装飾品を選ぶだけなのに?

 

「お?」

 

 被身子の顔を見詰めるのをそこそこにして、棚に陳列された指輪に目を戻すとひとつ気になる物があった。目に付いたのは、銀色で飾り気も何もない単純な指輪。今も被身子の首にぶら下がっている指輪と、似ている気がする。じっと見詰めてみると、よく似ているが細部が微妙に違うことが分かった。まぁ、射的の景品と同じものが今の時代に有るとは思えん。もちろん探せば日本か世界の何処かに有るんじゃろうけど、もう販売はしていないじゃろう。

 

 しかしまぁ、指輪だけでも色々と種類が有るんものじゃのぅ。銀色だったり金色だったり、捻れていたり変な刻印がされていたり。中には宝石のようなものが取り付けられている物も有る。こんな物を指に付ける感覚は分からぬ。邪魔にしかならんと思う。母と父が付けている指輪は飾り気の無い物じゃったし、儂も指に付けるとするならあんな感じの物が良い。多分被身子も、それで喜んでくれるとは思う。たまに、母の指輪を見て羨ましそうにしていたしの。

 

「あ」

 

 被身子が声を上げた。今は儂と変わらぬ瞳で、何かを見詰めている。この顔には、見覚えしかない。気になって被身子の視線の先を見てみると、そこに有るのは飾り気の無い銀色の指輪じゃ。小さな金剛石(だいやもんど)が埋め込まれている。どうやら被身子は、これが気になるらしい。と言うか、欲しいみたいじゃ。

 

「これが欲しいのか?」

「はいっ。これにします!」

 

 そう言って、被身子は満面の笑みを浮かべる。どころか、何故か儂に抱き付いてきた。なんじゃなんじゃ、急に甘えて。今日は(まこと)に自制しない奴じゃな。

 

 まぁ、許すが。今ならついでに接吻(きす)したとしても……許す。

 

「後でお願いが有るんじゃけど……良いかの?」

 

 ……。珍しいの。そんなしおらしい顔をするのは。普段の被身子はもっとこう、悪どい笑顔で迫ってくる。そうやって儂を振り回そうと好き勝手にすると言うのに、何故か今だけは違う。

 

「良いぞ。何でも言えば良い」

「……! 円花ちゃん……!」

 

 おぐっ。急に首に抱き付くなっ。今日は危ないじゃろっ! まだこの履き物に慣れてないんじゃっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 被身子が指輪を二つ買った。それも大きさが違うものを、ひとつずつ。こやつの意図は何となく読めた気がするが、わざわざ聞くような真似は止めておいた。後でお願いが有ると言われ、それを了承したんじゃからその時までは何も聞かん。

 買い物を済ませ店を出た儂と被身子は、手を繋ぎながら宿(ほてる)へと戻る。れせぷしょん・ぱあてぃいとやらが始まるのは夕方の六時頃で、そろそろ逢瀬(でえと)を終わりにして準備をしなければならない。だから今は昼寝をした橋を通って宿(ほてる)に戻ろうと歩いているんじゃけど、やっぱり名残惜しく思ってしまう。

 別に明日も帰る前に逢瀬(でえと)するんじゃから、名残惜しく思う必要は何処にも無い筈なんじゃが……。何でか、どうにも。その……。

 

「何じゃ?」

 

 被身子の横顔を見ながら歩いていると、柔らかい微笑みを向けられた。それを愛おしく思う。どんな形であれ、こやつが笑っているところを見るのが好きじゃ。もっと見ていたいと思うのは、少し欲張りが過ぎる気がしないでもないが。

 でも、許嫁じゃし。儂の被身子じゃし。じゃから、まぁ……独占欲ぐらい抱いたって誰も文句は言わんじゃろ。そうでなきゃ、ただただ面倒じゃ。

 

「もぅ、どうしたの?」

「……別に」

 

 ……どうもしてらん。何でもない。じゃから、然り気無く距離を詰めるな。ただでさえ近い距離なのに、これ以上近くなったら歩き難くなるじゃろっ。

 とは言え、まぁそれも……悪くないと思ってる自分が居る。指を絡めて腕を抱かれて、それでもまだ物足りないところがあると言うか、何と言うか……。

 

 ああ、そうか。足りないのか。まだ全然、こうしていたくて。逢瀬(でえと)を続けたくて、続けられなくて。

 

 ……。……なら、せめて。

 

「……のぅ被身子」

 

 ううむ。話しにくい。でも、今日の逢瀬(でえと)が終わってしまうなら……変に照れている場合ではない。とも、思う。困った、顔が熱い。またこれか。そろそろ勘弁して欲しいの。いい加減、慣れたい。

 

「なぁに?」

「……、きす、……したい」

「……!」

 

 おい。何を驚いてるんじゃ。目を丸くするな。珍しいものを見たみたいな反応をするんじゃない。別に良いじゃろうが。儂がそう思ったって。それを、たまには素直に口にしたって。

 もう良い。やっぱり接吻(きす)はしなくて良い。さっさと宿(ほてる)に戻って、ぱあてぃいの準備をしよう。時間的猶予は、実はそんなに無かったりするするからの。

 

 って、おい。足を止めるな貴様っ。危うく転ぶところじゃ!

 

「んふふっ。しましょう、キス」

 

 ……最初からそう答えろ、たわけ。変に驚きおって。まったく、貴様は……。

 

「ん……」

 

 瞼を閉じると、直ぐに接吻(きす)された。たったそれだけの事で、心が跳ねる。つい、もっと欲しいと思ってしまう。いかん、これはいかん。歯止めが効かなくなる気がする。自制が出来んと言うか、したくないと言うか……。

 

 ……でも、じゃって。欲しいと思ってしまった。

 

 頭が茹で上がる感じがする。もの欲しくて、堪らない。接吻(きす)以上は、我慢しなければ。

 

「んん……っ」

 

 ……、駄目かもしれん。儂、これ……宿(ほてる)に着くまで我慢出来るのか? もういっそ、このままここで……。

 

 

 

「……駄目。この続きは、ホテルで。……ね?」

 

 

 









誰の影響か、我慢が出来なくなっているご様子。もう駄目ですねこの子。あーあ。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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