待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
ああ、もう。何をしてるんじゃ儂はっ。
まぁその、凄く良かったのは事実じゃけども。まさか自分でもあんなに乱れるとは、思わなかった。穴があったら入りたい。今日はもう、被身子の顔が見れん気がする。何せ、事が済んだ今でも顔が熱い。頭から水を被っても、駄目そうなぐらいに熱い。と言うか駄目じゃった。取り敢えず
「んふふっ。照れちゃってカァイイ……。さっきの円花ちゃんは、とぉっても可愛かったのですっ!」
「うるさい。被身子の馬鹿。阿保、責任取れっ」
何であんなに乱れてしまったのか、謎じゃ。そんなに欲求不満じゃった覚えは無いと言うのに。ああ駄目じゃ、恥ずかしい。裸のまま枕に顔を埋めてじたばたしていると、被身子は愉快そうに笑っておるし。貴様、儂がどれだけ恥ずかしいか分かっていないな? いい気なものじゃなっ。許さん……っ。許さんぞ渡我被身子!
こうなったら人生終わるまで儂を愛でろ。そしたら呪わないでおいてやるっ!
ぐぬぬっ。被身子なんて嫌いじゃ! 馬鹿、阿保、たわけっ! ……、……好きっ!
「ほら、もうとっくに遅刻ですけど行きましょう? 行くんですよね? レセプション・パーティー」
「……行く。着替え」
「じゃあ、起きて? 行く前にひとつだけ、お願いがあるのです」
……そう言えば、宝飾店を出た時にそんな事を言っておったの。いつまでも枕に逃げてないで、取り敢えず起きるとするか。わざわざ改まった話があるなら、しっかり聞いておきたいしの。
渋々と体を起こすと、何やら微笑んでいる被身子の顔が見えた。今はもう、変身しておらん。
……。……落ち着け。顔を赤くして目を逸らしている場合ではない。珍しく被身子が悪どい笑顔をしていないんじゃ。と言うことは、ちゃんとした話があるってことじゃ。そうであって欲しい。そうでなければ、儂は今後被身子が何か話そうとする度に身構える羽目になってしまう。
やけに柔らかい
で、話って何じゃ? そんな真剣に人の顔を見詰めおって。今は変に照れてしまうから止めて欲しい。
「……えっと。これを、身に着けてて欲しいのです」
そう言って儂の前に差し出した手の上には、見覚えのある指輪がふたつ乗っていた。最後に寄った店で買っていたやつじゃ。
ふたつも身に着けろと? いや、片方は儂の指には少し大きい気がする。となると、ひとつは被身子の分か。……結婚には、まだ早いんじゃが?
「駄目、ですか……?」
……何でそこで、不安そうにするんじゃ貴様。別に指輪ぐらい、着けて欲しいなら幾らでも付ける。まぁ気が早いとは思うが、将来の予行練習みたいなものじゃと考えれば別に文句は無い。
しかしのぅ。何で今、指輪を? いまいち意図が分からぬ。これは聞いておくとするか。どうも野暮な気がするが、気になるからの。
「何でじゃ?」
「……」
拗ねられた。いかん、聞くべきではなかったか。そんなに唇を尖らせるな。悪かった、儂が悪かったから。
「円花ちゃんは私のものって、ハッキリさせておきたいの。誰にでも分かるようにしておきたいのです」
そんな事、いちいち形にしなくとも良いとは思うが。儂は被身子のものじゃし、被身子は儂のものなんじゃから。でも、まぁ……指輪を着けることでこやつの気が済むのなら、着けるとしよう。嫌ってわけじゃないからの。
差し出された指輪のひとつを手にとって、左手の薬指を通す。こうして指輪を着けるのは初めてじゃから、これで良いのかも分からん。が、着ける位置は間違っておらん筈。少し違和感があるのは事実じゃけど、着けてみるとひとつ分かったことがある。
これ、気恥ずかしいのぅ……っ。まだ結婚もしていないのに、指輪なんて。じゃけど、存外気分が良い。何と言うか、こうして形あるものを証にするのは……うむ。何だか嬉しく思う。
……、そうか。そうだとは想っていたが、儂も早く結婚したいんじゃな。あと二年の我慢なのに、我慢したくないと言う気持ちがある。
それはそれとして。何でこの指輪、儂の薬指が丁度通せる大きさなんじゃ? 被身子? いつの間に儂の指を測った?
「……あはっ。似合ってますっ」
「そうかの……?」
似合っているかいないか、それは自分では分からん。じゃけど被身子が喜んでいるなら、少なくとも変ではない。そんなに指を見詰めるな、気恥ずかしいから。
「お主は着けんのか?」
「着けます! でも、そのぅ……。せっかくだから、着けて欲しい……」
「良いぞ。ほら、左手」
頬を赤らめて言わないでくれ。儂も気恥ずかしくなってくるから。ただでさえ今は恥ずかしいのに、これ以上儂の顔を赤くしてどうするつもじゃ貴様。
揃いの指輪を、手に取る。若者向けの安価な店で買ったと言っても、安い買い物ではない気がする。こやつ、今月のお小遣いは大丈夫なのか? 少し心配になってきたのぅ。後で密かに、領収書を見てみるとするか。場合によっては、使い道が無い儂の小遣いを被身子の財布に忍ばせておくとしよう。多分気付かれないじゃろ。……多分。
なんて事を考えて、なるべく意識を被身子から逸らす。じゃってそうしないと、今の儂はとても落ち着いて居られない。
と言うか、じゃ。何でお互いに裸で向かい合ってるんじゃ儂等は。端から見たら凄くおかしな光景な気がしてならない。この部屋に、儂と被身子しか居なくて
被身子の薬指に、指輪を通す。自分に着けるのも、人に着けるのも気恥ずかしい。
「これで良いか?」
「……! はいっ!」
「おぐっ」
き、貴様っ、急に抱き付くなっ。勢いのまま押し倒すな! そのまま覆い被さるんじゃないっ! この期に及んで、まだ儂に何かするつもりか!?
「予約、しましたからね? 円花ちゃんと結婚するのは、私なのですっ!」
……そんな分かりきった事を笑顔で言うな、たわけ。いちいち言われなくても、儂はとっくにそのつもりじゃ。あと二年も待たせてしまうのは心苦しいが、こればっかりはどうすることも出来ないからのぅ。三年生の夏が来るまで、大人しく待っているしかない。
ん? 待てよ? 儂、このまま行くと学生の身分のまま結婚することになるのか?
ううむ。まぁ、良いか。今更卒業まで待ってくれなんて言うつもりは無いからの。何より、もうこれ以上被身子を待たせたくないんじゃよ。
「約束を違えるなよ?」
「違えません!」
「知っとる。ところで被身子、そろそろ服を……くちゅんっ!」
いかん。思いっきりくしゃみが出た。さては誰か、儂の噂をしたか? いや、
それに、もうそろそろ夕方の六時になってしまう。れせぷしょん・ぱあてぃいは完全に遅刻じゃ。道に迷ったと言い訳すれば、許して貰えたりしないか? いやまぁ、別に許されなくても良いんじゃけど。招待されたから行くだけで、特に興味が有るわけでもないからのぅ。
「そろそろ服、着ましょうか」
「うむ。じゃから被身子、そこをどいてくれると……」
「……」
おい、何で黙る。何で離れようとしないんじゃ貴様。
「どうせ遅刻なので、もう少しだけ」
「……」
今度は儂が黙る番じゃった。こらっ、悪どい笑みを浮かべて首に吸い付くな! また新しい痕を付けようとするんじゃないっ。揃いの指輪をしただけじゃ足りんのか?
……足りんのじゃろうなぁ……。仕方ない。今から急いだって遅刻するのは確定なんじゃし、もう少しだけこうして居よう。
でも頼むから、顔は見ないでくれ。まだ気恥ずかしくて、赤いままじゃから。結婚の真似事じゃとしても、揃いの指輪を身に着けることが嬉しかったから。
で、この後。儂と被身子は思いっきり遅刻した。ぱあてぃいが行われる会場に辿り着いたのは、夜の七時近く。
遅刻も遅刻、大遅刻じゃ!
という訳で、いったんシリアスパートに入ります。
セントラルタワーでの事件はまぁ……さくさくっと書きたいですね。目標は、三話以内です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ