待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
被身子と二人で妙に真新しく感じる女物の着物に着替え、
そう。儂と被身子は思いっきり遅刻した。ぱあてぃいが始まるのは夕方六時頃。儂等が会場に着いたのは、夜七時。一時間も遅刻してしまった。もし次、ぱあてぃいに招かれるようなことがあれば時間には気を付けねば。
少し居心地の悪さを感じつつ、数ある出入り口のひとつから中に入る。入場する際に身分証明書を壁にかざすと、大きな扉が開いた。で、その向こう側に居たのは見慣れた面々じゃった。
「あ、廻道さん」
「こんばんは、廻道くんに渡我先輩!」
「緑谷、飯田。なんじゃお主等、こんな所に集まりおって」
「なんでって、僕等もレセプション・パーティーに。廻道さんも?」
「招待されとるからな。出ないわけにもいかんじゃろ」
まず目に入ったのは、正装した緑谷と飯田じゃ。馬子にも衣装と言うべきか、こういう格好をしてるこやつ等は意外と悪くない。ただ、被身子は緑谷の格好を気に入らなかったらしい。緑谷の服装を見て、何とも言えん顔をしている。次の瞬間にはいきなり文句を言ってもおかしくはない気がす―――。
「緑谷くん、それ格好良くないです」
―――、面と向かって言いおったわ。こらこら、人の正装をどうこう言うのは止さぬか。まったく貴様、服になるとうるさいんじゃから。ほら見ろ、緑谷が変な顔をして固まったぞ。
「蝶ネクタイが良くないと思うのです。スーツの色に合わせたネクタイをしたらもっと良いと思いますよ?」
「え、は、はい。次から気を付けます……?」
まぁ、良いか……。好きにさせてやるとしよう。一旦緑谷から目を離すと、轟と目が合った。こやつは顔が良いから何を着ても許されるような気がする。色に違いはあれど男子達は
「廻道も来てたんだな」
「うむ、招待されての。轟は何で来たんじゃ?」
「親父の代理」
「そうか。それはご苦労じゃったな」
それにしても、面が良いなこやつ。正装を着ると普段より数倍は顔が良く見える。顔の火傷痕がいつも以上に近寄り難さを演出しているような気がしないでもないが、被身子曰くその火傷痕こそが
「ってか、廻道も先輩も着物なんだな。結構似合ってんじゃん! ドレスも良いけど和服も良いよな!」
「お代官ごっこしてぇ……」
首を振ることで頭にこもりそうな熱を振り払っていると、上鳴が話し掛けてきた。それは良いとして、問題は峰田じゃ。また妖しい気配を醸し出しおって。貴様、そんなじゃから女子共から距離を置かれたり雑に扱われたりするんじゃぞ。と言うか、儂の被身子を邪な目で見るな。儂のじゃぞ、儂の。
気に食わんから、被身子の腕を抱くことで儂のものだと明示しておく。って、おい。何で更に邪な顔をする? やはり物理的に処すか? いつものように処して貰うか? しかし、この場に梅雨は居ないんじゃよなぁ。
「着物……。まだそっちの方が良かったかも……」
儂等を見てその手があったか。なんて顔をしているのは、普段よりずっと装いが違う耳郎じゃった。正装をしてるんじゃから当たり前だとは思うが、普段より随分と様相が違うのぅ。
「良いんじゃないか? 似合っとるぞ」
「響香ちゃん! カァイイです!」
「そ、そうかな……。こういうの普段着ないし……」
耳郎本人は自分の格好に違和感を感じているようじゃが、被身子が可愛いと反応したんじゃから可愛いんじゃろ。儂も悪くはないと思うし。他の女子も、学校で見る姿とは大分印象が違う。八百万も麗日も、可愛らしいものじゃと思う。特に可愛いに興味が無い儂がそう思うんじゃから、被身子からすれば少々我慢出来ないのではないか?
現に、少し興奮気味になっておるし。まっこと、かぁいいに目がない奴じゃのぅ。
「お茶子ちゃんも百ちゃんも、とぉーってもカァイイですっ! みんな揃って素敵ですね!」
「そ、そうかなぁ……。ありがと、渡我先輩」
「渡我先輩も廻道さんも、素敵なお召し物ですわ。確かそのお着物は、京都の老舗の……」
「はいっ。今日の為に輪廻ちゃんが新しく買ってくれたのです!」
……、母よ。何をしている……? どうりで新品なわけじゃ。袖を通した時に感じた違和感はそれか。てっきり被身子が綺麗にしていたものかと。
この件については後でお礼を言っておこう。かなり着心地が良いから、それなりに値が張るものじゃろこれ。我が家の家計は大丈夫なのか……? まさか借金などしておらんじゃろうな……?
いかん、気になってきた。
……そう言えば、使わんじゃろうから
なんて思っていると、自動開閉する扉が静かに開いた。扉の向こう側からやって来たのは……誰じゃ?
「あれ、デクくん達まだここに居たの? パーティー始まってるわよ」
いや、誰じゃこやつ。さらっと現れおって。緑谷をあだ名で呼んでいる辺り、こやつ等の知り合いであるのは確かじゃろうけど。
「あっ、メリッサさん! 紹介します。こちら廻道さんと、渡我先輩。廻道さんは僕のクラスメートで……」
「ああ! 雄英体育祭で優勝した子ね! 巷でブラッディって呼ばれてる有名人!」
……その呼び名は止して欲しい。何でこんな島にまで広まってるんじゃ。ここ、日本の外じゃろ? なのにどうして日本の子供が勝手に言っていた事が、何でこんな所にまで届いているんじゃ。
解せぬ。まっこと解せぬ。
「で、廻道さんに渡我先輩。この人はメリッサさん。今日……ええっと、色々ガイドして貰ってて」
……めりっさ? 随分と変な名前をしているようじゃが……。
……そうか、こやつ外国人か。どうりで外見が日本人離れしているわけじゃ。
「はじめまして。ブラッディに渡我さん!」
「はい、はじめまして。渡我です、渡我被身子!
メリッサちゃんも、カァイイですね!」
「……はじめまして。ぶらっでぃと呼ぶのは止せ。変なあだ名は勘弁じゃ」
何でこうも、変なあだ名ばかり付けられるのか。そしてそれが浸透していってしまうのか。謎じゃ。いい加減にして欲しい。何なんじゃもう。
もしかして、儂が悪いのか? いや、そんな筈は無い。変なあだ名を付ける方が悪いんじゃ。
儂は! 悪くないっ!
「廻道」
「なんじゃ?」
「結婚おめでとう」
……、轟? 貴様、急に何を言って……。ああ、そういうことか。そんなに左手ばかりを見ないでくれ。普段なら変な奴としか思わんが、今は気恥ずかしい。
見せびらかしたつもりは無いんじゃけど、目に留まったのなら仕方ない。この指輪を隠すつもりは無いし、それは被身子だってそうじゃ。二人して揃いの指輪を左手の薬指に付けてるんじゃから、そう思われてもおかしくはない。ただのぅ、轟。
「いや、まだ……してないんじゃけども……」
してないと言うか、出来ん。儂はあと二年も被身子を待たせなければ結婚出来ん。婚約はしていても、実際に結婚するのは再来年の夏。結婚は、十八からじゃぞ。そんな常識を轟が知らない筈はないんじゃが……。
「け、けけ、結婚!?」
「廻道くん! 結婚は十八歳からだ! それに同性婚は認められているがっ、まだまだ世間の目は厳しいぞ!
仮にそうでなくなったとしても、結婚とは簡単に出来るものじゃない! 君は健やかなる時も病める時も、渡我先輩とお互いを支え合い愛し合うことが出来るのかっ!?」
「そっか、渡我先輩とは許嫁だもんな。今度クラスのみんなでお祝いしようぜ! なあ峰田!」
……、男子共が騒がしくなってきた。緑谷は目を丸くしているし、飯田は腕を振り回しながら迫ってくるし、上鳴は何故か親指を立てて笑っている。気が付けば被身子は儂と揃いの指輪を
指輪を意識したら、恥ずかしくなってきた。また顔が熱い。誰か頭に水をかけてくれ! 脳が茹で上がってしまうっ。
なんて思って居たら、喧しい音が聞こえてきた。思わず片耳を塞ぐと、何処からか大音量で
『I・アイランド管理システムよりお知らせします』
周囲の窓や扉が、軒並み
いったい何じゃ? 何が起こっとるんじゃっ、騒々しい!
何度でも言うぞ。続きなど無い(初心に戻る)
気が付けば100話も続いていると言う事実。読者の皆様の応援あってこそですねこれ。いつもありがとうございます。
シリアスは三話で終わらせたいと昨日の私は言いましたが、三話で済みそうにないですね。おかしいな……。やっぱ五話ぐらいかかるかなこれ……。てへっ!
基本的にサブタイトルは五文字縛りなんですが、いい加減しんどくなって来ました。そろそろ良いんじゃねえかなって思いつつ、一応まだ継続する予定です。つ、つらい……!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ