待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
どうやら、何か問題が起こったらしい。
喧しい警報音とそれに続いた
まさに急な問題発生じゃ。しかし儂等に出来ることは現状特に無いし、そもそも儂は何もするつもりが無い。と言うか、何かしようとしても動けんのじゃ。被身子が少し、不安そうにしているからの。離れるわけにはいかん。じゃからこの厳重警戒体制が解かれるまで、大人しくして居る。
つもりじゃった。
「……おかしい。爆発物が設置されたぐらいで、警備システムが厳戒モードになるなんて……」
儂等はこの建物の内に閉じ込められてしまったわけじゃが、めりっさが疑問を口にした。どうやら色々と詳しいこやつが、首を傾げている。と言うことはつまり、この状況は何かがおかしいと言うことじゃ。それが分かったからと言って、儂等が何が出来るわけでもないじゃろうけど。
ただ。不安や疑念と言うものは伝播してしまうものじゃ。めりっさの様子を見て緑谷は表情を固くしているし、被身子は儂に抱き付いてくるし、峰田なんかは慌てておる。
どいつもこいつも、少し落ち着かんか。慌てたり不安に思ったところで、何が変わるわけでもない。こういう時は腰を据えてじゃな……。
「飯田くん、パーティー会場に行こう」
「何故だ?」
「会場にはオールマイトが来てるんだ。合流して、事態を確認した方が良いと思う」
「え? オールマイト来てんの?」
「それなら安心じゃん! 助かったぁ……!」
緑谷の言葉に、上鳴や峰田が露骨に安堵した。まぁ確かに平和の象徴が居ると分かったなら、こんな事態も直ぐに解決すると思ってもおかしくはない。この建物の内にあの筋肉阿保が居るなら、大抵の事は直ぐに解決してしまう筈じゃ。
「メリッサさん、どうにかパーティー会場に行けませんか?」
「……非常階段を使えば、行けるとは思うけど……」
どうも緑谷は、大人しくしているつもりは無いらしい。そしてそれは、多分轟も同じじゃろう。この二人は飯田の為に悪党と戦ってしまう。なら今回だって、この状況をどうにかしようと動き始めてもおかしくはない。と言うか、既に動くつもりのようじゃし。儂が動くなと言い付けたところで、無駄じゃろう。他の誰が言ったところで、それは変わらん。
であれば……。仕方ない。多少面倒を見てやるしかないか。おおるまいとと合流して事態の収拾、或いは状況把握。それまでぐらいは、尻拭いしてやるとしよう。
「案内、お願いします!」
こうして、儂等十一人はおおるまいととの合流を目指して動くことになった。非常階段を使って、ひとまず上の階へ向かうことに。
列の先頭は、緑谷とめりっさ。最後尾は儂と被身子。間には他の七人。十一人で、一丸となって動く。
「……大丈夫、ですよね……?」
「大丈夫じゃ。何かあったら儂が守るから、そこは安心してくれ」
どうも、被身子が不安そうにしている。それは他の連中も同じではあるが、めりっさと被身子を除いた全員が
仕方ない。少し被身子を落ち着かせるとしよう。こんな時はどうしてやるのが効果的じゃろうか?
言葉だけでは、不安を拭い切れそうにはない。じゃったら行動で示すしかないと思うが、今はおおるまいとと合流する為に全員で階段を上ってるだけじゃ。であれば、 何かに意識を逸らしてやるのが良いかもしれんな。
「ほれ、被身子」
取り敢えず、手を繋ぐ。
「そう怖がるな。きすでもするか?」
「もぅ。こんな時に……?」
「嫌ならしないぞ」
「……します。安心させてください」
「任せろ」
儂等以外は全員前を見ているし、別に
念の為、全員が前を向いていることを確認して……それから足を止める。背伸びして、被身子の首に腕を回して、少し上を向く。我ながら馬鹿をやっているとは思うが、これは被身子を少しでも安心させる為じゃ。仕方ない、仕方ない。
被身子が少し屈んでくれたので、
そうかそうか。ならば仕返しじゃ。いつも儂を辱しめているんじゃから、たまには儂がお主を辱しめても良いじゃろう? どれ、もう一度……。
「……!!!」
と、思ったが。おぞましい視線を感じる。顔だけを前に向けると、峰田と目が合った。いかん、見られてしまった。二度目は止めておこう。あと、口止めはしておこう。目で、言い触らしたら殺すと脅しておくことにする。
すっかりしでかしてしまった。やはり人前で
「ひいっ!? ゴキブリ!?」
喧しい奴じゃな峰田。
◆
「で、これからどうするんじゃ?」
結論として、おおるまいととの合流は出来なかった。
非常階段を通った儂等は、ぱあてぃい会場よりも上の階に上ってしまってのぅ。しかし吹き抜けがあったから、上からおおるまいとの姿を確認することは出来た。が、同時に大きな問題が起きていることを知ってしまった。耳郎の個性でおおるまいとの小声を聞き取って貰ったんじゃけど、どうにも状況が良くない。
何でも、悪党がこの建物を占拠。警備
現在、儂等は非常階段の踊り場に居る。これからどうするべきか、それを決めなければならない。とは言え、この事態の中で出来ることなど無いが。大人しくしていることが正解じゃ。下手に動いて、悪党に目を付けられるわけにはいかん。
「俺は、雄英教師であるオールマイトの言葉に従い脱出することを提案する」
「飯田さんの意見に賛同しますわ。私達はまだ学生、ヴィランと戦うわけには……」
飯田と八百万が、何故か重苦しくなっている空気の中で口を開いた。二人の言い分は真っ当なもので、何もおかしな所は無い。ただ、悔しそうにしているのは見て取れる。腹の内では、この事件を解決するべく動きたいんじゃろう。しかし自分達の立場をしっかりと分かっているからこそ、その選択肢は取らない。取れない。
儂は、この二人の意見に賛同する。そもそも、動くつもりが無い。下手に動けば被身子に危害が及ぶ。そしてこの場に居る、他の子供達にもじゃ。
「なら、脱出して外に居るヒーローに……」
そうじゃな。もし動くとするなら、上鳴が言うように脱出して外の
「脱出は、困難だと思う……。ここはタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられてるから……」
……たるたろす? 何じゃったっけ? 確か授業で聞いたような……。うむ、思い出せぬ。思い出せぬが、取り敢えず脱出は困難じゃと言うことは分かった。めりっさが随分と困った顔をしているからの。
「じゃあ、助けが来るまで大人しく待つしか……」
「……上鳴、それで良いわけ?」
上鳴の言葉に、耳郎が噛み付いた。眉間に皺を寄せて怒っているように見えるが、何故じゃ?
別に、上鳴の言い分が間違っているようには思えぬ。儂等は大人しく隠れているか、逃げるべきじゃ。しかし逃げることが出来ぬのなら、事件が解決するまで大人しくしているべきじゃろう?
「助けに行こうとか、思わないの?」
……何を言ってるんじゃこやつ。すまん、それは理解に苦しむ。今この場において、感情で物を話すな。状況を理解しているのか? この島の全てが人質なんじゃぞ?
それがどういう意味なのか、理解出来ないわけ無い筈じゃ。ここに居る者の殆どが、
「先に言っておくが、儂は何もせん。このまま助けが来るまで隠れて居るつもりじゃ」
「えっ、廻道……?」
「だ、だよな! 隠れてる方が良いよな!! オイラもそうするっ!!」
「峰田くん。円花ちゃんに近付かないでくれますか?」
「ひっ……!?」
おい被身子。そう峰田を威圧するな。その冷ややかな笑みは、かなり圧が強いんじゃぞ。その笑顔でこれまで何人を震え上がらせてきたと思っとるんじゃ。まぁ相手が峰田じゃから、ある程度は許すが。こやつはもう少し痛い目に遭った方が良い。あと被身子、人前で抱き寄せるな。恥ずかしいから。
「状況を理解してない奴が何人か居るようじゃから、説明するぞ? 少し黙って聞け」
人差し指を立てて真剣に話し掛けると、全員の目が儂を見た。そう注目されても困るが、まぁ全員の意識が儂に向いたのなら良しとする。
「まず、この建物は悪党に占拠されておる。これだけの建物を手中に納めたんじゃから、それなりの人数が居てそれなりの計画や目的が有る筈じゃ。
で、耳郎。そんな連中が邪魔を企てる子供を見たらどうすると思う?」
「……どうって……。捕まえる、とか?」
「そうじゃな。捕まえる。そして場合によっては、殺すじゃろう」
「……っっ!」
まぁ実際、悪党が何を考えて何を目的にこの建物を占拠したかは分からん。目的が果たされれば立ち去るかもしれんし、そうじゃないかもしれん。そこの所は、悪党共に直接聞くしかない。詳しいところは分からんから、今は想像するしかない。
恐らく、目的の邪魔となれば相手が誰であれ手段は選ばんじゃろ。となると、邪魔な子供なんて捕らえるどころか殺すかもしれん。
「次に、外に居る人間が全て人質。これが事実なら、例えば儂等が事件の解決に動いたとして……それに悪党共が逆上したら?
人質が無差別に殺される可能性は、無いとは言い切れん」
仮に事件解決の為に儂等が自由に動き回ったとして、殺されるのは儂等だけとは限らん。下手をすれば外に居る人間が殺される。まぁ現状、外に居る人間は儂にはどうでも良い。今は被身子、そしてこの場に居る子供達を守ることが儂にとっての最優先じゃ。
「助けに行きたいと思うのは結構。ひいろおを目指す貴様等らしいことじゃ。
じゃけど、その行動が失敗してしまったら? 外の人質に危害が加わったら? その責任は誰が取る? 誰が背負う?」
「それは……、でも……!」
「儂等が助けに行くことが、正しいとは思えん。授業で習ったじゃろ? 屋内に居る悪党は、狡猾で危険じゃと。何より儂等は、まだひいろおじゃない。
勇気ある行動じゃとしても、勝手な真似は厳禁じゃ」
そう。この場で儂等は動かない方が良い。事態が悪化してしまうかもしれん。何より、動けば悪党に目を付けられ、危害が加えられる可能性が高い。そして子供達を危険な目に遭わせるのは、儂の主義に反するからの。
じゃから現状は、大人しく隠れていたい。もしも隠れている時に悪党に見付かってしまったら、その時は儂がどうにでもするつもりじゃが。こやつ等の盾になるなり、悪党を倒すなり。それこそ、殺したって良い。
「……俺らは、ヒーローを目指してる。廻道の言うことは、正しいと思う。だけど、何もしないで良いのか?」
「何かした結果、人が死ぬかもしれんのじゃぞ? それでも何かすると?」
「……救けたい。救けに、行きたい」
そうじゃろうな。轟も緑谷、そう言う奴じゃ。誰かを助けたいと思ったら、一直線に動いてしまう。正しいか正しくないかは、関係ない。そうやって駆け出してしまうから、駆け出してしまったからこそ、飯田が生きている。
こうなった二人を言いくるめるのは、まず出来ん。殴って止める手も有るには有るが、暴力で言って聞かせるのはのぅ。出来れば言葉で止めたいところじゃが、はてさて……。
「ええっと、緑谷くんに轟くん。何かするとして……トガは何も出来ないのです。別にみんなを信じてないわけじゃないですけど、足手まといを連れて動けるんですか?」
……。まぁ、それもそうじゃな。仮に事件解決の為に動くとして、被身子は何も出来ん。儂等のように体を鍛えているわけでも個性を鍛えているわけでもない。悪党との戦い方も、学んでいない。自らの身の守り方も知らん。
もし戦闘になってしまえば、被身子は役立たずの足手まとい。連れて回るにはただただ危険じゃ。かと言って、置いていくことも出来ぬ。そんな真似はしたくない。
「それでも、探したいって思うんです。今の僕達に出来る最善を探して、救けに行きたい」
駄目そうじゃな。こうなってしまったら、緑谷を止めれそうにない。が、このまま放っておくわけにもいかん。この馬鹿弟子め。普段は従順のくせに、こういう時だけは言う事を聞かん。
「だから、廻道さん。廻道さんにも、力を貸して欲しいんだ。みんなで考えれば、きっと何かある筈だから……!」
この一言で、この場に居る連中の殆どが緑谷に同調し始めた。気がする。耳郎も麗日も上鳴もその気になり始め、それを見た飯田や八百万も決意を固め始めたように見える。めりっさは神妙な面持ちのままじゃが、何かを考え込んでいるように見えるから、もしかすると緑谷と同意見じゃ。
で、変わらないのは峰田と儂ぐらいか。
ううむ。面倒な事になりそうじゃ。何かあった時にこやつ等全員を守るのは、骨が折れる。が、その時はやるしかあるまい。
「やろうよ、円花ちゃん! みんなで!」
「な、なんかやってやろうぜ廻道!」
「廻道」
「廻道さん!」
おい。どいつもこいつも、すがるように儂を見るな。被身子以外にそんな目で見られたって、儂は嬉しくも何ともない。まったく、仕方のない連中じゃのぅ……。
「……条件がある。
ひとつ、悪党との戦闘は避けること。
ふたつ、もし悪党との戦闘になったら儂を置いて全員逃げろ。
みっつ、儂が居なくなったら何があっても被身子を守れ。
よっつ、後で勝手に動いたことを、おおるまいとに全員で叱られに行くぞ。
いつつ、被身子に危害が加わったら儂に一生許されないと思え。儂の被身子に何かあったら、一生許さんからな。
以上を守れるなら、同行しても良い。貴様等は儂が守ってやる」
指を五本立てて、くらすめえと達に突き付ける。と同時、安堵したり喜んだりとこやつ等は喧しくなる。静かなのは、被身子とめりっさぐらいか。
「もぅ。円花ちゃんはクラスメートに甘いのです」
「甘くないが?」
「私以外にもちょろいなんて、不満です。私の円花ちゃんなのに……」
「ちょろくないが??」
何で呆れ顔で抱き締め直すんじゃ貴様。あと、耳に
「でも、みんなの前で儂の被身子って言ってくれて嬉しい。円花ちゃんが惚気るなんて、珍しいのです」
「惚気てもないが!?」
事実を言っただけじゃろうがっ。何でそんな嬉しそうに耳に
儂は! 見せびらかす趣味なんて無いんじゃっ!
「んふふっ。大好き、愛してます」
「んっ、こら、ひみ……、んん……!」
駄目じゃこやつ。とうとう唇に
「じゃあ皆さん。これからどうしましょうか? 円花ちゃんの気が変わらない内に、作戦立てちゃいましょう!」
何で被身子が仕切るんじゃ! 何で全員頷くんじゃ! き、貴様等! 被身子に賛同するのは止めておけっ!
絶対に! ろくな事に! ならん!
……儂が!!
チョロイン円花です。子供絶対守るバトルジャンキーが、バトル以外で子供にちょろくないわけないんですよね。それはそれとして年長者らしく諌めようとしてましたが、結果は見ての通りと言うことで。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ