待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「全員で上に行くぞ」
と、言い切ったのは良いものの……。緑谷と被身子以外の反応が悪い。まぁ当然じゃろう。全員でこの部屋を出てしまえば、警備
なので、自分から言い出しておいて何じゃが……。
「よし緑谷。説明は任せた」
「えっ!? 僕!?」
何でそこで驚くんじゃ。儂が貴様の意向に合わせるんじゃから、貴様が上手い言い訳を考えろ。儂より緑谷の方が上手く言いくるめられるじゃろ。
後はこやつに任せるとして、儂は少し休むとしよう。いい加減、喉の渇きが鬱陶しい。頼まれて持ってきた鞄を開くと、中には水やら食糧やらが詰まっている。被身子に頼まれた通り、持ってきて正解じゃった。
「緑谷さん、廻道さん。もう私達の目的は達成しました。オールマイトが動き出した今、わざわざメンテナンスルームを放棄してコントロールルームに向かう必要は何処にも……」
「そうだぞ二人共! あとはオールマイトに任せて、我々はメンテナンスルームを防衛していれば良い!」
「そ、それはそうなんだけど……。でも、その……」
八百万や飯田の言葉は正しい。そもそも全員で上に向かう必要は無く、おおるまいとが気掛かりならば儂と緑谷だけで行けば良い。それも他の連中からはまず間違いなく止められるが。
すっかりしどろもどろになってしまった緑谷は、どう全員を納得させようか慌てて頭を回している。が、あまり良い言い訳が思い浮かばないんじゃろう。目は泳いでいるし、落ち着きが皆無じゃ。すまん緑谷。儂に上手い言い訳は思い付かぬ。
「えっと、実はオールマイト……すっごい機械音痴で……。だから警備システムを元に戻すには、誰か手伝いに行った方が良い……と、思う……」
緑谷の口から咄嗟に出た言い訳は、とんでもなかった。おおるまいとが機械音痴? 儂ならともかく、あやつが機械を扱えない……? いやいや、それは無いじゃろ。が、話に乗っておくか。ほら、何でか知らんが儂はあやつの後継者扱いされとるし。実際はおおるまいとが儂の弟子みたいなものなんじゃけども。
「あやつ、とんでもない機械音痴じゃぞ。職場体験の時、すまほとかぱそこんを何度も壊しとった。
じゃからほら……、儂等も行った方が確実じゃないか?」
真っ赤な嘘じゃ。おおるまいとは別に機械音痴ではないし、些か話を盛り過ぎた気がしないでもない。儂の嘘で緑谷まで目を丸くしておるし。貴様、嘘が下手じゃな。もしかして、儂よりも下手か?
それはそれとして、被身子。抱き締めるのは良いが頭を撫で回すのは止めてくれ。気が抜ける。あと、儂が嘘を吐いていると気付いても口にしないで欲しい。出来れば黙っていて欲しいが……被身子じゃしなぁ。
「円花ちゃん、嘘は駄目なのです。でも……必要なんですよね……?」
耳元で囁かれた。急に囁くのはくすぐったいから止めてくれ。人前じゃなければ変な声を出してるところじゃった。
被身子の問い掛けに、儂は小さく頷く。事情の説明はこやつにも出来ない。おおるまいとの秘密は、とても人に話せるものじゃないからのぅ。あまり隠し事をしたいとは思わんが、許嫁だからって何でもかんでも話すことは出来ん。少し心苦しいが、こればっかりは仕方ない。
「分かりました。でも後で、詳しく話してくださいね……?」
「……すまんの」
「良妻トガですから。円花ちゃんが本当にしたい事なら、何でも手伝うのです」
良妻? 儂等はまだ結婚しとらんし、出来ぬが?
そもそもお主は良妻と言うより、どちらかと言えば悪妻……。いや、これは言わんでおこう。機嫌を損ねたら大変じゃ。
何はともあれ。被身子が味方に付いてくれるのはありがたい。儂や緑谷で上手い言い訳が出来なくとも、被身子なら出来るじゃろ。出来る筈じゃ。
……出来る、よな……? 何で悪どい笑みを浮かべた? おい、被身子??
「じゃあこうしましょう。私と円花ちゃんと、緑谷くん。この三人でコントロールルームに行きます。皆さんは、こことメリッサちゃんを守ってくれますか?」
両手を叩き合わせながら、さらっととんでもない事を口にした。いや被身子、儂は全員で上に行きたいんじゃが? 子供達をここに残して二手に別れるつもりは無い。それは危険じゃ。じゃからここを放棄してでも、全員連れて行くと儂は決めたんじゃ。
「渡我先輩まで!? 俺は反対です! 後はオールマイトに任せて、全員でここに居ましょう!」
「そうだよ先輩。オールマイトが機械音痴なら、さっきみたいにアナウンスしてあげれば良いし」
「ここに籠って解決を待ってたって、ヴィランは来ますよ? ほら」
儂等のように猛反対された被身子が、画面の方を指差した。画面を見てみると、近くの階まで悪党が来ている。ここに辿り着くまで、そう時間はかからないじゃろう。
悪党共がここに来たら、戦闘になる。そうなってしまうと、もう上に行くどころではないな。
「どのみち、このままだとメンテナンスルームに攻め込まれて戦闘になるのです。ここに居ようが上に行こうが、危険なのは一緒ですよね」
「それは、そうかもしれません。でも、無闇にここを動く必要はありませんのよ?」
「そうですね。百ちゃんの言う通りだと思います。……でも、円花ちゃんが行きたがってるので。
だからトガは、何処にでもくっ付いて行きます。さっきみたいなのは、正直嫌なので」
だから三人で行きます。と、被身子は笑顔で宣った。その際、少し息苦しいぐらいに後ろから抱き締められた。腕の力具合が、容赦ないような気がする。いやまぁ、特に鍛えていない細腕では大したこと無いんじゃけども。ただ、被身子から大きな不満を感じるのは事実じゃ。
……ううむ。悪党が追って来てたとは言え、被身子を先に行かせたのは間違いだったか? いやしかし、あの時はあのようにするしかなかったと思う。これは後で謝った方が良いかもしれん。謝ったところで、許して貰えるかは分からんが。
下手をすると、許して貰えんかもしれんの……。
「それに……きっと何を言ったって、円花ちゃんは最上階に向かおうとします。だったらもう、付いて行くしかないかなって」
「お主なぁ……」
「円花ちゃんは黙っててください」
「んぐっ」
儂を含め三人だけで上へ向かうことに文句を言おうと思ったら、思いっきり口を塞がれた。これじゃ反論することも出来ぬ。儂としては全員連れて最上階に行ってしまいたいんじゃけど、どうも被身子の声が冷ややかじゃ。これはあれじゃ、誰かに嫉妬したりして不機嫌になった時の……。
こうなると、もう言うことを聞いてくれない。大抵は気が済むまで儂を好き勝手するんじゃけど、今はそんな風にされてる場合じゃないのぅ。なるべく早く、おおるまいとと合流しておきたい。
「と言う訳で、止められたって私達は上に向かいます。メリッサちゃん、私達がコントロールルームに着いたら、アナウンスで指示をください。それで警備システムが乗っ取られないように直接ロックを掛けます」
「……なら、私はせめて……出来る限りのサポートを。監視カメラとアナウンスで、ヴィランの位置を三人に教えるわ。それから最上階までの、最適なルートも」
「ありがとうですっ。じゃあ、トガ達はもう動きますので! メンテナンスルームの事は、皆さんにお任せなのです!」
おい、待て。待たんか被身子っ。なに勝手に話を進めて……! 儂は全員で上に向かいたいんじゃが!? 儂がここを出てしまったら、誰が残った子供達を守るんじゃっ!?
と言うか、いい加減に口を塞ぐのを止めんかっ。いつまで儂の口を塞いでるつもりじゃっ!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ