待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
納得いかん。解せぬ。儂はめんてなんするうむを放棄してでも全員で最上階に向かいたかったのに、被身子に部屋の外に連れ出されてしまった。緑谷も一緒じゃ。上手い言い訳が思い浮かばず、誰一人説得出来なかったのは儂の不徳ではあるが……それにしたって解せぬのじゃ。
前世より続く儂の主義は、どんな事情が有ったとしても子供の命を守ること。これは何よりも優先するべきことでもある。じゃから子供に危険が及ぶのであれば、儂個人の都合は無かったことにする。
危険がある場所に子供を残すなんて真似は、絶対にやりたくない。そう思っているのに、今回は九人も危険の中に子供達を置いて動くことになってしまった。何でもかんでも理想通りにならんことは、分かっている。分かっているけれど、それと納得出来るかどうかはまた別の話じゃ。
「円花ちゃん、みんなならきっと大丈夫です」
「全員で上に行くべきじゃった。あの場に残していくのは危険じゃ。それも九人も残すなんて……」
「……全員で動いても二手に別れても、危険は同じなのです」
「大丈夫だよ廻道さん。みんなを信じよう」
つい、緑谷も被身子も睨んでしまう。これが儂のわがままであることは、分かっている。じゃけどこうなるぐらいなら、いっそ全員無理矢理連れ出すべきじゃった。誰に文句を言われようが、言い訳が思い浮かばなかったとしても。
これから、儂等三人はこの建物の最上階へと向かう。その為にめんてなんするうむを出て、地下を歩いている。あの部屋の中で映像を見た限り、その内儂等は悪党と鉢合わせするじゃろう。儂等の目的は上、悪党の目的は下。九人も子供達を置いて行くことになったのじゃから、すれ違わずに制圧しておきたい。
……仕方ない。などと思いたくはないが、今は現状を受け入れることにしよう。反発して拗ねている場合ではない。依然として解せぬし、ついつい二人を睨んでしまうけれども。
「……そう言えば緑谷、それは何じゃ?」
多少強引にでも、思考を切り替えるとしよう。緑谷の右腕に巻き付いている、赤い何かに目を向ける。見たところ固そうな感じがあるが、指や手首の動きを阻害しているようには見えぬ。装飾品にしては大仰じゃし、もしかして籠手か何かか?
「え? あ、これ? これはメリッサさんが作ったサポートアイテムで……譲ってくれたんだ」
「プレゼントされたってことですか?」
「えっ。あ、いや……そう……なるのかな……?」
「うーわ……。これはお茶子ちゃん、大変なのです……」
「え……? 麗日さんが……?」
被身子……? 何でそこで、麗日の名前を出した? しかも、何故か緑谷を見て引いている。思いっきり呆れているように見える。別にこやつが誰から物を贈られようと、そんな反応をする必要は無いと思うんじゃけど。分からん、被身子が考えることはさっぱり分からん。
緑谷も、被身子の言葉の真意が分からず首を傾げておる。考えても無駄じゃぞ、緑谷。被身子の言うことは大抵が突拍子も無い。制御も出来ん。幼なじみで許嫁な儂がそう思うんじゃから、間違いない。そう、抵抗しても無駄じゃから諦めて振り回されるのが
「円花ちゃん、緑谷くんはだめだめなのです。ちょっと何とかしてあげてください。仲良しなんですよね?」
「……?」
訳の分からん事を囁かれた。何とかするとは、何を? そもそも貴様、緑谷の何に呆れたんじゃ??
何だかよく分からぬが、そんなに緑谷を見詰めるのは止めてやれ。少し萎縮しとるじゃろ。
「今度、お茶子ちゃんには秘訣を授けるとしましょう。メリッサちゃんは強敵ですから」
いや、じゃから何を言っとるんじゃ貴様。さっきから訳の分からんことばかり言いおって。それと、麗日に何を教えるつもりじゃ? どうせろくでもない事なんじゃろうけど……後で聞いておくとするか。場合によっては被身子の毒牙に麗日も緑谷もかかってしまう。それは少し可哀想じゃ。どうにかしてやれれば良いが、被身子じゃし。
まぁ、どうにもならんじゃろう。すまん、麗日に緑谷。お主らはこれから先、大変な目に遭うじゃろう。被身子に狙われたのが運の尽きじゃ。諦めろ。
……ん? 何か騒がしい音が聞こえるのぅ。そうか、もう来るのか。じゃったら、先に準備させて貰うとしよう。
「待って渡我先輩、廻道さん。この音……」
儂が穿血の準備を始めると同時、緑谷が立ち止まった。表情が固くなっている。どうやら気付いたようじゃ。まぁこれだけ盛大に聞こえてきたら、誰でも気付くか。
なに、安心しろ。悪党が数人来たところで、何の障害にもならん。大して強くない連中の集まりじゃからの。それこそ、どうにでも出来る。まだ悪党の姿は見えぬが、直ぐにでも接触することになるじゃろう。向こうは随分と慌てているようじゃし。
曲がり角から、武装した悪党共の姿が現れた。ので、即座に穿血を放つ。殺すつもりはない。体育祭でやった時のように、途中で広範囲の赤縛へと派生させるからの。
ここから最上階に向かうまで、出来れば多くの悪党を制圧しておきたい。鉢合わせてしまった連中は、全員縛り上げるか叩き伏せるかしよう。めんてなんするうむに置いてきてしまった九人に、危険が及ばないようにな。
それにしても、まだ建物が揺れているのぅ。おおるまいとめ、どれだけ暴れるつもりじゃ!
◆
鉢合わせる悪党を一人残らず制圧しながら、儂等は目的地であるこんとろおるるうむ前に辿り着いた。途中、遭遇した悪党に銃を撃たれた時には流石に肝が冷えた。が、特に問題は無い。被身子も緑谷も無傷じゃ。勿論、儂も。
ここまで相手にしてきた悪党は、どうにも手応えが無い。人数はそれなりに居たようじゃけど、どいつもこいつも実力が伴っていないように思える。めんてなんするうむに残った九人は無事じゃろうか? それだけが気掛かりじゃ。
さて、これからこの部屋を取り戻す。中には悪党が居るじゃろうけど、恐らく特に問題は無い。突入と同時に、目についた悪党全員を縛り上げて終わりじゃ。さっさと警備
扉の前で拳を振りかぶる。殴り壊す前に被身子と緑谷の顔を見る。儂と目が合った二人は、小さく頷いた。
「せぇ、のおっ!!」
思いっきり。力加減は何一つせず、全力で扉を殴る。鈍い音が響くと同時に目の前の扉は吹き飛んで行く。同時に血液を撒き散らしながら、儂は室内に跳び込んだ。
部屋の中には、やはり悪党が居る。たった三人。儂等がここに来ることを分かっていたんじゃろう。銃を構えてお出迎えじゃ。が、その程度じゃ儂は止められんのぅ。扉を壊した瞬間には、儂も次の行動の為の準備を終えている。そして悪党共を視認すると同時に、やるべき事はもう済ませた。四方八方に血を飛ばし、一人残らず縛り上げる。それから僅かに遅れて部屋に跳び込んだ緑谷が、縛られた三人を順番に殴る蹴るなどして気絶させた。その動きには、一切の淀みがない。ここに来るまで、今と似たような形で何度も悪党を気絶させて来たからの。
着地と同時、念の為にもう一度周囲を確認するが、目に映ったのは被身子だけじゃ。人の気配は、儂等のものしか感じられん。
「よし、これでコントロールルームは……!」
「取り返せるのぅ。で、これをどうやって動かすか知っておるか?」
目の前にある機械は……どう動かしたら良いのか少しも分からぬ。その辺りの事に儂は詳しくない。
「それは、これから流れる筈のアナウンスを聞きながら私がやるのです」
「任せる。緑谷」
「うん! システムの再起動とロックが終るまで、渡我先輩を守らなきゃ……!」
いや、そう固くならんで良いと思うが。悪党がやってこないかどうか警戒するのは良いが、拳を構える必要は無いと思うんじゃが……。
まぁ、良いか。好きにさせておこう。とにかく、最初の目的は達成出来た。後は、おおるまいととの合流を急がねば。この階に来てからと言うもの、揺れや音が収まらぬ。恐らく何処かでおおるまいとが戦闘しているんじゃろうけど、ここに来るまで姿は見えなかった。音は天井の上から聞こえているから、多分屋上に居る筈じゃ。
被身子が警備
「メリッサちゃん、無事に辿り着けたんで指示ください」
被身子が天井の隅に向かって手を振りながら喋っておる。何してるんじゃ貴様。つられて儂も天井の隅を見てみると……監視
『三人共、無事で良かったわ! さっそく指示を出すから、お願い。まずは―――』
よし、警備
と、なると……。それだけ強大で厄介な悪党が居ると言うことか? それは楽しみじゃが、今回は楽しんでる場合じゃないのが残念じゃ。
あぁ……、何も気にすることなく思う存分呪い合いたい……。
何処かにおらんのか? 儂が死力を尽くせて、全ての子供に手を出さないような猛者は。おらんか、そんな都合の良い奴。
……はぁ。呪い合いたい。この渇きが満たされるまで、呪い合いたい。じゃから早く、出て来てくれんかのぅ……。
あと二話でセントラルタワー事件は終る筈です。終らせたいですね。お、終わって……!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ