待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
大変な目に遭った。せんとらるたわあでの事件が解決した後、儂の領域を見た被身子が暴走してしまっての。こやつと儂の秘密が、緑谷とおおるまいとに見られてしまった。被身子に血を吸われながら、いったいどういう訳なのか説明するのは
吸血は、被身子が子供の頃から持っている趣味嗜好であること。儂がそれを、ずっと受け入れて二人の秘密にしてきたこと。吸血とは同意の上での行為で、儂等からすれば愛情表現の一種であること。それ等を何とか口で説明して、どうにか理解して貰うことが出来た。
これは意外だったんじゃけど、緑谷の理解と納得が早かった。儂の告白に数秒は固まったが、それでも直ぐ「廻道さんが受け入れてるなら、良いと思う。流石に人前ではしない方が良いと思うけど……」と言ってくれた。良いぞ、もっと言え。二度と人前で儂の血を吸わぬよう、被身子に言ってやれ。むしろ言ってくれ。もう儂一人では、被身子を制御出来んかもしれん。
ちなみに、おおるまいとはただただ困惑していた。それでも最後には「健康に害が出ないよう、程々に……。秘密にはしておくから」と言ってくれはした。どんな説教が待っているかと思ったが、存外否定するような真似はしないでくれた。まぁこやつは、相澤先生と比べたら甘いところがあるからの。いやまぁ、あやつも教師としては生徒に甘いとは思うが。生くりいむぐらいに甘々じゃ。
その後、どうして今回の事件が起きたか。それについておおるまいとが話してくれた。所々意図的に不明瞭に話されたが、その点はこやつと緑谷の事情を知っているからどうにか察することが出来た。要するに、おおるまいとが個性の譲渡について親友に話していなかったから起きてしまったと言うことじゃ。誰が悪いかと言えば悪党を招き入れてしまった何とか博士のせいなんじゃが、おおるまいとにも悪いところが有ったのは事実。
お主なぁ。儂に周りを頼れと言っておきながら、自身が頼ろうとしないのはどうなんじゃ? 平和の象徴として弱味を見せたくないのは分かるし、それが緑谷の為と言うもの理解出来る。が、今回の件は貴様が親友に詳しく話していれば、回避出来た事件じゃった。これを機に反省しろ、反省。
……なんて、儂が言えた義理でもないか。儂とて、人を頼れない時がある。
じゃけど、ひとつだけ文句を言いたい。この筋肉阿呆。貴様から力を譲渡された緑谷が、今回の件で多少気が病んだようじゃぞ。結局口には出さなかったが、思うところがあるようじゃ。
何はともあれ。一件落着……とは言い難いが、ひとまずは一件落着と言うことにしておく。悪党を警察に引き渡したり、詳しく話を聞かれたりした後で儂と被身子はようやく
遅すぎる夕食を摂り、入浴は済ませた。今は二人で同じ
今日はもう、疲れたんじゃ。明日も
「ほれ被身子、もっと近くに寄らんか」
「ま、円花ちゃん……?」
隣に寝転ぶ被身子を、抱き寄せる。今日は、無理をさせてしまった。儂と違ってこやつは、戦いとは無縁の場所で生きている。なのに危険のある場所に連れ回して、挙げ句儂に出来ないことを幾つもして貰った。今回の騒動、被身子が居なければもっと酷いことになっていたかもしれん。
そう考えると、一番頑張ったのは被身子じゃ。頑張ってくれたんじゃから、その分はしっかり労いたい。じゃから、被身子の頭を胸に抱き寄せて撫で回す。まだ少しだけ湿っている髪に指を通すと、くすぐったそうに身を捩った。
「今日は、すまなかった。怖かったじゃろ?」
「……ん。怖かったです。でも、円花ちゃんが居てくれたから案外平気でした」
「
「
くすくすと笑いながら、被身子は儂の背に腕を回す。そのまま力を込めて、甘えるように額を擦り付けて来た。案外平気じゃったと宣っては居るが、そんな筈は無かろう。いつ悪党に襲われるか分からない状況に身を置いて、最後は戦場で守られて……。何度も恐怖を感じていた筈じゃ。それでも気丈に立っていて、自分に出来ることをやろうとして。
今回は、
「もう、怖がらせないからな」
「……はい」
「被身子は、儂が守るから」
「……はい」
「今日はありがとう。すまなかった」
「ん……何度も謝らないでください。私がしたくてした部分も有りますから」
ううむ……。その言葉を素直に受け取るのは、難しいのぅ。こやつがそう言うなら口には出さないでおくが、この申し訳なさは今すぐには消えそうにない。じゃからせめて、言葉ではなくて態度で示そうと思う。
今宵は、甘やかすぞ。労って労って、とことんまで甘やかす所存じゃ。その為に何をすれば良いのか分からぬところもあるが、とにかく今の儂がしてやれるだけ甘やかしたい。
もっと抱き締めて、頭を撫で回す。心地好く思ってくれるのか、被身子は嬉しそうに頬を緩めていく。
「んふふっ。こんな風にしてくれるの、嬉しいのです……」
「そうか? ならもっとしよう」
「ほんと?」
「
「えへへ……。今日の円花ちゃんは、優しいのです。いっつも優しいですけど」
……そうかのぅ。優しく出来ているじゃろうか。こやつに対して何かと甘い部分があるのは、自覚しているところじゃけど。
じゃって、甘やかすと被身子は笑うんじゃ。嬉しそうにして、笑顔を見せてくれる。それが好きで、つい甘くしてしまう。そんな事を出会った頃から繰り返して、重ね続けて……。
ん? もしかしてこやつが自由奔放なのは、儂のせいか? 何だかんだで甘やかしてきた儂が悪いのか?
まぁ、今更厳しくする理由は無いんじゃけど。そもそもあんな泣き顔を見てしまったら、甘やかす以外に選択肢など……。
ああ、もう。どうせ考えるだけ無駄じゃ。何を思ったところで、何を言ったところで、儂はこやつには絶対に勝てんのじゃし。
「……、好きじゃ」
「……! も、もぅ……。いきなりなんですかぁ……」
「うるさい。儂にも言いたい時ぐらい、あるんじゃ」
顔が熱い。ぐぬぬ、何度言っても顔が熱くなる。こやつのように、好意を平然と口に出すのは難しい。恥ずかしくて堪らん。今は顔を見られたくないから、もっと頭を抱き締めることにする。って、これいかん。心臓の音を聞かれてしまう気がする。こんなに跳ね回る鼓動聞かれるのは、それはそれでとても気恥ずかしい。
顔を見られるよりは良い、か……? いや、どっちもどっちか気がするが……。
「普段からもっと言ってください。それだけが、不満なの」
「それは……じゃって、恥ずかしいんじゃもん」
「私と、もっともっと恥ずかしい事してるのに?」
「それはそれ、これはこれじゃ」
「むぅー。円花ちゃんの意地悪。トガは愛の言葉に餓えてるのにっ」
や、喧しいのぅ。そんなものに餓えるでない。たまには言うんじゃから、それで満足してくれんか?
何度も何度も好意を伝えるのは、やはり儂には恥ずかしいことなんじゃ。どうしても、どうしても恥ずかしい。でも、今は……。今ぐらいは……。
「ぁ、愛してる……からな?」
「はいっ! 私も愛してますっ!」
んぐっ。おいこら貴様っ、鳩尾に額を擦り付けるな。流石に息苦しいっ。でも、嬉しそうじゃし。少しだけ放っておくとするか。それに。
「その、被身子……」
「はい」
「……きす、しても良いか……?」
今は、儂からしたい。
「はいっ。私は、いつでも歓迎なのですっ!」
いや、いつでもは言い過ぎじゃ。
まっこと、仕方ない奴じゃ。
横になったまま、少しだけ距離を離す。そしたら被身子は儂の顔見て、目を閉じた。こ、これはこれで気恥ずかしいのぅ。嬉しそうにしおって。そんなに心待ちにされると、やりにくいんじゃけど?
ああもう、お主ときたら……!
「ん……っ」
出来る限り。ゆっくり、優しく。その、満足してくれるように……する。あぁ、気恥ずかしい。儂が言い出したことじゃけど、もう既に逃げてしまいたい。
「……ん、ふふ……。もっと、して?」
ああ、それは狡い。そんな風に笑うのは、狡い。そんな笑顔を見せられたら、
「……ぅ、む……。じゃあ、もっと……」
気恥ずかしいのは、変わらないけど。穴があったら飛び込みたいくらいじゃけど。でも、その……もう少し。もう少しだけ。
で、まぁ。この後……何だかんだで盛り上がってしまっての。お互い疲れているのに、求め合って。どうにも歯止めが効かなくなってしまって。疲れ果てて寝てしまうまで何度も何度も、したいだけした。
結果、起きたのが昼前じゃった。朝から
じゃけど……たまには、こういうのも悪くないか。時間は短くなってしまったが、
被身子の阿呆。馬鹿。たわけ。
――― そんなお主も、大好きじゃけど!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ