待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
結局、これから産まれてくる双子の名付けは母の案が採用された。何とも言えぬ気分じゃけど、何度挑んだところで儂と父では被身子と母には勝てんのじゃ。途中で父は酔い潰れて寝てしまったし、儂は遊び疲れたから今は自室で休憩中。被身子はまだ母と
があるずとおくは、やっぱり苦手じゃ。付いて行けん。
「はぁ……」
実家に帰省しただけなのに、既に疲れてしまった。母も父も元気そうじゃし、そこに被身子が加わってかなり騒々しい。お陰で、少し気疲れしてしまった。儂じゃってたまにはひとりの時間を過ごしたい時がある。被身子と母は当分お喋りに夢中じゃろうから、今の内にのんびりしておくとするかの。どうせ後で、何か騒々しいことに巻き込まれるじゃろうし。
しかしまぁ、久しぶりの自室は何も変わっておらん。誰も使ってない割りに、掃除が行き届いているのは母と父に感謝しなければな。布団が敷いてあるのは意味不明じゃけど。何で机の上に新品の下着が置いてあるのかも、理解不能じゃ。見なかったことにしよう。
座布団の上で胡座をしたまま、何となく窓の外を眺める。すると、我が家の向かいに在る家から舎弟が出てきた。あやつ、この真夏の炎天下に手荷物を持って何処に出掛けるつもりじゃ? 切島や上鳴辺りと遊びにでも行くのか?
まぁ、儂の知ったことではない。今は夏休みじゃ。子供が遊びに出掛けることは何ら不思議ではない。と、思っていたら。何ぞ知らんが、小僧が我が家に向けて歩いて来おった。おいおい、何のつもりか知らんが今は止めておけ。儂や被身子だけならまだしも、今は両親が居るんじゃ。面倒なことになる。お主、まだ父に嫌われとるからな。
仕方ない、こっそり相手してやるとするか。
「おい、舎弟。何か用か?」
玄関から外に出ると気付かれてしまうから、窓を開けて庭に出る。玄関前に来ていた薄着の舎弟に声を掛けると、思いっきり睨まれた。
「てめ、帰ってんのかよ……。帰ってんなら連絡入れろやっ」
「何でじゃ。必要無かろう?」
そもそも、何でこやつに帰省の旨を連絡せねばならんのじゃ。
「接触禁止だろうがっ。親父さんにバレたらどうすんだ! ここは学校じゃねえんだぞ!」
……。そう言えば、そうじゃったのぅ。学校では同じ教室で過ごしているから、特に気にして居なかった。学校では気にするなと言ったのは儂じゃけど。普段の態度は悪いくせに、こやつは妙に律儀じゃ。
「父なら酔い潰れてるから気にするな。で、何の用じゃ?」
「おらよ」
「ぬぉっ。貴様……」
おい、手荷物を儂に向かって投げるな。危うく受け止め損ねるところじゃった。なんじゃこれ、箱? ……あぁ、暑中見舞いか。そんなものをわざわざ届けに来たのか。
それにしても、外は暑い。勘弁して欲しい。いつか身体が溶けてしまいそうじゃ。
「ったく、こんな事を俺に頼みやがって。自分で行けってんだ」
「相変わらず態度が悪いのお主。もう少し改めろ」
「あぁ゛?」
ううむ。言うべきではなかったか。火に油を注いでしまったような感覚がある。こやつの事じゃ、次の瞬間には怒鳴り声を上げてもおかしくない。そうなるのは良くないの。少なくとも家の前では止して欲しい。父は酔い潰れているが、母は起きてるしのぅ。それに、被身子も居る。あやつは舎弟が嫌いじゃし。
ここで舎弟と話している事を知られたら、確実に面倒な事になってしまう。被身子に何をされるか分からん。早いところ、追い返しておくか。
「用が済んだなら帰れ。母と被身子に見付かると面倒じゃぞ?」
「……ちっ。そうするわ」
面倒を起こしたくないのは、お互い様のようじゃ。舎弟は
「おいクソチビ」
「何じゃ?」
「I・アイランドの事件、てめえが殆どどうにかしたらしいな?」
「いや、何とかしたのはおおるまいとじゃ」
「アホ面から聞いてんだよ。ヴィランをぶっ殺したそうじゃねえか」
「……」
いや、別に殺してはおらん。引っ捕らえはしたがの。しかし箝口令が敷かれている以上、あの場に居なかったくらすめえとに詳細を話すつもりはない。まぁ話したところで、こやつが言い触らすなんて真似はしないじゃろう。とは言え、口止めされている事を話すつもりはない。
「その場にデクも居たんだってな。半分野郎もだっ。
クソが! 何であいつ等ばっかり先に進んでやがる……!」
「あの場に居合わせなかった方が幸運じゃと儂は思うが?」
あの時は、いつ誰に何があってもおかしくなかった。事が終わってみれば自損してしまった緑谷以外は無傷で済んだが、下手をしたら死人が出ていたかもしれん。そう考えたら、儂等は運が悪かった。あの場に居合わせなかった者達こそ、運が良い。ただそれが、どうもこやつは気に入らないようじゃ。
「幸運なわけねぇだろ。俺はヒーロー目指してんだ! 学生の内から現場の経験ひとつしねえで、どうすんだっ!」
どうも、焦っているのぅ。良くない傾向じゃ。緑谷と言いこやつと言い、何かあると直ぐに気が急くのは大変よろしくない。どちらも、もう少し落ち着いて構えることを知れ。
放っておいても悪化するだけじゃろうし、どうしたものか。
……、そうじゃなぁ……。もういい加減、様子を見るのは止めにするか。後で被身子に何て言われるかはだいたい想像が付くし、決して父や母に知られてもならぬが……。やるだけやってみるとしよう。精神が未熟な内はこんな提案をするつもりはなかったが、こやつの場合はやり方を変えた方が良い。
「鍛えてやろうか?」
「……あ゛?」
「緑谷の成長に焦ってるなら、儂が鍛えてやっても良いぞ? まぁ、緑谷に色々教えてるのは儂じゃけど」
「んだと……?」
お、少し脈有り……ではないの。これは。
話に緑谷を出した辺りから、舎弟の顔がとんでもないことになっておる。つつけば大爆発しそうじゃ。まぁ、何にせよこれで分かった。
どうもこやつは、緑谷の成長や行動を見て焦っている。じゃから自分はろくに進めていないと感じて、余計に焦る。その上こやつは、
そんな緑谷と違い、舎弟が実戦を経験したのは、ゆうえすじぇえで
……成長に差が付いて当然じゃ。実戦の経験は実戦でしか得られん。百回練習しようとも、一回の実戦には遠く及ばない。じゃからって、練習は無意味とは言えぬが。
「てめぇに、俺が教えを請えってか。デクに教えてるてめぇに? ……嘗めてんのか」
「くらすで一番強いのは儂じゃ。その儂から教われば、貴様次第で強くなれるが?」
「……」
あぁ、これは駄目そうじゃ。大爆発寸前だった顔が、いきなり無表情になった。次の瞬間には大爆発よりも大爆発するじゃろう。そんな気配しかせん。
「それも、絶対服従ってか?」
「いや? これは貴様が選べ。儂に教わるか、一人でやるか。ただし、儂に教わる場合はひとつ条件を呑んで貰う。
それが無理なら、仮に貴様がその気でも教えてはやらん」
「……何すりゃあ良い?」
「中学でのこと、緑谷に謝れ。儂が引っ越してくる前、貴様が緑谷に何をしてたかは聞いておる」
「は?」
「貴様にはまず、礼儀と言うものを叩き込む。単純な実力を育てるのは、その後じゃ」
……さて、もう良いじゃろう。このまま向かい合っていると、こやつが大爆発して大変なことになる。別に小僧一人が暴れたところでねじ伏せるのは容易じゃ。その代わり、儂が思いっきり叱られることになる。それは面倒極まりない。被身子に余計な心配を掛けたくないのも本心じゃ。
さっき貰った暑中見舞いを片手に、部屋に戻るとしよう。と、その前に……。
「暑中見舞い、ありがとう。今度廻道家からも贈るから、よろしくの」
にしても、外は暑い。早く冷房の利いた部屋に戻って涼みたいのぅ。
あと、机の上の下着。何の意図であんな物を置いたのか、詳しく聞くとしよう。場合によっては許さんからなっ。
次回イチャイチャしたら、合宿編に入ります。多分。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ