待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
夏の暑さは嫌いじゃけど、夏に入る風呂は好きじゃ。湯が熱くとも良いし、冷たくとも良い。どちらも汗を流せるから、清々しい気分になれる。更に風呂上がりに冷房の利いた部屋で
それはの、大き過ぎる半袖の
「……もぅ、幾ら暑いからってそんな無防備な格好しちゃ駄目なのです」
たっぷり血を吸われた入浴の後。大きな青い
「これが快適なんじゃ。お主だって着てるくせに」
「まぁ、快適は快適ですけどぉ……」
「そうじゃろそうじゃろ? 儂、夏のぱじゃまはこれが良い」
何故か被身子は、風呂上がりの儂がこの格好をしていると困った素振りを見せる。不満そうな表情を見せる時だって有ったりするの。その後、高確率で餓えた目で迫ってくる点については……。まぁ……。その。……承知の上でこの服を着ていると言うか、何と言うか。
別に誘っている訳ではない。今は実家に帰省していて、被身子と二人きりで過ごしているわけじゃない。ただ単にこの服が楽じゃから、着ているだけじゃ。それにまぁ、脱ぐのが楽なのは良いものじゃ。他意は無いが。
「お腹冷やしちゃ駄目ですよ?」
「儂は大丈夫。それを気を付けるのは、被身子の方じゃ」
ここ最近は薄着や裸で被身子と寝ることが多いんじゃけど、風邪を引くとしたら儂じゃなくて被身子の方じゃ。儂はほら、
「円花ちゃんを抱いて寝れば、冷えませんよぉ。いつでもあったかいですから」
「……」
さらっとせくはらするんじゃない。たわけ。満足するまで血を吸ったくせに、何でまだ捕食者の目をしとるんじゃ。さては貴様、このあと儂を布団に連れ込むつもりか?
「ところで、今夜もします?」
「何をじゃ?」
「何って、分かってるくせに」
「っ、こら……!」
おい。抱き寄せるまでは良いが、耳に息を吹き掛けるのは止めろ。ここは実家じゃ。儂等二人きりではないし、こんな所で始めようとするな。せめて布団の上にしろ。そもそも、明日両親が仕事に行ってる間にしてくれ。夜は駄目じゃ夜は。見られたり聞かれたりしたらどうするんじゃっ。
じゃから、そんな風に笑みを浮かべながらくっ付くな。肩や脇腹に指を這わせるなっ。くすぐったい!
「おじさんはまだ酔い潰れてますし、輪廻ちゃんは部屋に戻ってるのです。だから一階には私達しか居ないんですけど……」
「だから、何じゃ?」
「最近の円花ちゃん、声を我慢出来ないですから。ひょっとしたら聞かれちゃうかも……?」
……我慢させないのは何処の誰じゃ。たわけ。毎晩毎晩好き勝手して、儂を辱しめているのは貴様じゃ貴様。被身子がもう少し加減してくれれば、みっともなく喘ぐことは無いんじゃ。その辺分かっとるのか? 分かってないんじゃろうなぁ。じゃって被身子じゃし。
「口、ずっと塞いでてあげましょうか?」
「そもそもするな。今晩ぐらいは我慢せんか貴様っ」
「ヤです。そもそも、円花ちゃんだって我慢出来るんですかぁ?」
「は? 出来るが?? お主じゃあるまいし」
まったく! いい加減な事ばかり宣ってっ。お主、そろそろ我慢と言うものを覚えてくれ。あと、笑いながら迫れば儂が何でも許してくれると思ったら大間違いじゃからなっ。今日という今日は、好き勝手させぬ。絶対に、絶っっ対にじゃっ。
「そろそろ、お布団……行きましょうか♡」
「……」
……。……、ま、まぁ……。そろそろ寝るとするかの……? まだもう少し起きていても良いが、今日は割りと気疲れしてしまったし。夏休みの宿題も、少しぐらい後回しにしても良い。いつまでも脱衣所で戯れている訳にもいかんから、自室に戻るとしよう。
だから被身子。そろそろ耳元で囁くのは止めろ。せくはらじゃ、せくはら。いい加減にしないと、許さんからな?
「円花ちゃんも、すっかりえっちですよねぇ。んふふ……♡」
誰のせいでそうなったと思っとるんじゃ貴様。よし、殴る。調子に乗り過ぎたらどんな目に遭うか、分からせてくれる。今晩こそは、しっかりお灸を据えてやろう。儂は怒ったぞ。もう怒った。今晩こそ、許さんからなっ。
被身子の阿保!!
◆
自室に戻ると、布団の中に連れ込まれた。そろそろ寝るつもりじゃったから、それは別に良い。問題があるとすれば、どうにも止まりそうにない被身子じゃ。さっきから肩や首を撫で回して、くすぐったさに身を捩ると逃がさんと言わんばかりに抱き寄せようとしてくる。こやつに落ち着きが無いのは割りといつもの事じゃけど、今宵はどうも……いつも以上に落ち着きが無いというか。何じゃ貴様、発情でもしとるのか? 毎日発情してるようなものなのに?
「んふふっ。円花ちゃん、円花ちゃん……♡」
いや、
謎じゃ。しかし、どうにかしなければ。じゃってこのままじゃと、絶対に朝まで弄ばれる。
「おい、どうした? 何をそんなに……」
「だってぇ……。今日は凄く嬉しくて、幸せな気分で……」
「……? 何でじゃ」
「もぅ。今日の円花ちゃんは鈍いのです。分からず屋」
何で分からず屋と罵られたのか、さっぱり分からん。どうも様子がおかしい。何と言うか、今の被身子はふわふわしている。地に足が付いていない。どう見ても浮かれていて、かつて無い程に機嫌が良い。笑顔じゃから文句は言わんが、気になるっているのも事実。なんじゃなんじゃ、どうしたどうした? 何でそんな風になっとるんじゃお主。
「今日、すっごく嬉しかったのです。みんな、私の事……当たり前に受け入れてくれてて。本当の家族みたいで。だから、幸せだなぁって」
「……分かり難いわ。たわけ。そう言うことなら、最初から言わんか」
まっこと、仕方のない奴め。そんな当たり前の事で、そんなに浮わつくな阿呆。母も父も、お主の事はとっくに受け入れている。流石に血を吸わせている事は話していないが、それもあの二人ならば、多分受け入れてくれるじゃろう。何なら母はもう知ってると思うがの。じゃからって両親の血をこやつに吸わせるつもりは無い。それは儂の特権じゃ、儂の。
だいたい、今日まで家族同然に過ごして来たじゃろうが。幼い頃から日々の殆どを我が家で暮らして、お主が一足先に雄英に入ってからは家でも寮でも同居して。儂の今生の記憶の殆どに、被身子は居る。居ない日を探すことの方が難しいぐらいじゃ。毎日顔を合わせて、毎日を共にして。こうして思い返すとお互い依存しているように思えなくもないが、……まぁ文句は無い。こやつは儂が大好きで、儂はこやつが……。くそっ、顔が熱くなってきた。気恥ずかしい事を考えさせるな。被身子のたわけ。
「結局私は、円花ちゃんに幸せにして貰ってるんだなって。輪廻ちゃんやおじさんにも、大切にされてるんだなって。
そう思ったら……もう収まりがつかないのです」
おい、急に覆い被さるな。その笑顔のまま、見詰めるな。そんなに幸せそうにされたら、何も言えなくなる。何をされても良いかなんて、つい考えてしまうんじゃ。
でも! 今日はしないからなっ! 明日じゃ明日っ。母と父が仕事に向かったら、その時は幾らしても構わんから!
じゃから、少し落ち着けっっ!!
「嬉しかったんですよ? 私にも弟や妹が出来るって言ってくれて。それって、ちゃんと結婚したいって思ってくれてるんですよね?」
「それは、そうじゃけど。文句有るのか?」
「無いですっ! しましょう、結婚!」
高らかに宣言するな。今更再確認する必要は、何処にも無いんじゃ。
「あと二年、頑張って我慢するのです。だからぁ、ちゃんとお嫁さんにしてくださいね? 私もう、待ち切れないんですから」
ああ、もう。分かった、分かったから。そんな気恥ずかしい言葉を、惜し気もなく口にするな。
「ん。おいで」
首に腕を回して、微笑んでみる。今宵は少し優しくして……。あ、良くなかったのこれ。ただでさえ強烈な笑顔が、更に歪みおったわ。これはしでかした。いかん、いかんぞ……。これはもしかして、朝まで弄ばれるのでは……??
「はいっ」
ううむ。結局こうなるのか……。仕方ない。降参じゃ、降参。
今日のところは! じゃけど!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ