待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
露天風呂、良かった。凄く良かった。ああいう広い風呂には毎日でも浸かりたい。やはり将来は温泉か、広々とした露天風呂がある家に住みたい。もしくは、近場に温泉街がある街に住もう。被身子と日本中の温泉を巡りながら、呪術師兼
まぁ、卒業までまだ二年半もある。進路の事は追々考えるとして……。取り敢えず、今は朝飯を平らげてしまおう。凄く腹が空いているんじゃ。昨日は殆ど何も食べておらんし、ずっと気絶していたようなものじゃからな。体が栄養を求めている。今日……と言うか昨日から始まっている林間合宿の事を考えると、しっかり食べて備えておかねば。
ずずず。味噌汁、美味い。やはり被身子の作る味噌汁は美味い。やはり味噌汁には、あおさじゃ。これが美味い。被身子の味噌汁には必ず入っているが、何でじゃろうなぁ。まぁ儂の味覚に合わせて作ってくれてるんじゃから、被身子に好物じゃと思われたりしとるんじゃろ。お陰で大好きじゃけど。あおさの味噌汁。
「廻道、調子は?」
「んくっ。お陰様で、見ての通り」
食堂でのんびりと朝食を摂っていると、被身子の味噌汁の匂いに釣られたのか、寝癖だらけの男子達がやって来た。その中で儂を見るなり近寄って、話し掛けて来たのは常闇じゃ。何じゃ貴様、そんな心配そうな面をしおって。
「……毎月大変だな」
「そうなんじゃよ。まっこと、生理は勘弁して欲しい。使う予定も無いから、子宮なんて取ってしまいたいぐらいじゃ」
もっとも、仮に子宮を切除したとしても
「狂気の沙汰」
「お主も生理を経験すれば分かる」
辛いんじゃぞ。生理はまっこと辛いんじゃ。男の貴様を、儂は羨ましく思う。何で
「おはよう廻道さん。体調はどう?」
「おはよう廻道くん! 調子が戻ったようで何よりだっ。今日は頑張って昨日の遅れを取り戻そう!」
「生理ってあんな風になっちゃうものなんだな。渡我先輩とかもあんな風に弱んの?」
ううむ。食事は静かに摂りたいんじゃけど、どうも騒がしくなってきたの。常闇だけではなく、緑谷や飯田、更に上鳴なんかも話し掛けてくる。どいつもこいつも、何で近くの席に腰掛けるんじゃ。隣に座ってる被身子が警戒するから止めてくれ。あと上鳴、生理の事を
ところで、昨日の遅れって何じゃ? 確かに林間合宿初日は訓練に参加出来なかったが、くらすめえと達はいったい何をさせられたんじゃろう?
昨日の事はその殆どが朧気じゃ。被身子がずっと隣に居てくれたってことしか覚えとらん。もしかしたら誰かが何かを言っていたかもしれんが、生理中じゃったからの……。人の話を聞く余裕など儂には無かった。
「遅れって、何じゃ?」
取り敢えず、聞いておくとしよう。訓練を何度休もうがこやつ等に遅れを取ることは無いじゃろうけど、後で訓練内容について
「あ、昨日の訓練内容はね、その……。魔獣の森を抜けることだったんだけど……」
「……何じゃそれ?」
緑谷、頭を打って脳みそが常闇にでもなったか? いや、緑谷の一言で机に着いているくらすめえと全員が頭を抱えたの。余程思い出したく無いらしい。どうやら、昨日の訓練はそれなりに厳しかったようじゃの。相澤は手厳しいからのぅ。その被害に遭ったと考えておくか。そう考えると、……うむ。可哀想じゃの、こやつ等。
「魑魅魍魎が蠢く樹海を、全員で突破する訓練だ」
魑魅魍魎て。どうせ個性か、或いは機械で作り上げたものじゃろう? そんな物に苦戦してるようじゃ、こやつ等はまだまだじゃ。詳しい話は、後で時間が出来た時に聞くとしよう。興味が無いわけじゃ無いんじゃけど、今は時間が惜しい。麗日曰く、五時半前には外に出ないといかんからの。今は五時。歯磨きして、寝間着から体操着に着替える事を考えると……。うむ、時間に余裕は無い。勿体無いが、さっさと朝食を食べ終えて準備するとしよう。
それに、この辺りにどの程度呪霊が居るかも調べておきたい。訓練の間に自由に出歩ければ良いが、そんな時間を取らせて貰えるかは怪しいところじゃ。
「もぐ……。ごちそうさま、被身子。今日も美味じゃった」
「はい、お粗末様でした。準備します?」
「うむ。そうしよう」
朝から盛ったせいか少し気怠いが、これから訓練じゃとしても問題は無い。筈じゃ。
さて、林間合宿の始まりじゃ。今日はどんな訓練をさせられるんじゃか……。
まぁ、何をさせられようと大丈夫じゃ。もう生理は収まったんじゃから、自由に動けるしの。
◆
外に出た。暑い。太陽が眩しい。夏は嫌いじゃ。宿泊施設の外は、森に囲まれておる。背の高い樹木が多いから、日陰が多い事は不幸中の幸いかもしれん。なるべく日差しは避けるようにしなければ。熱中症になりたくないんじゃ。
……それはそれとして。居るのぅ、呪霊。相変わらず雑魚ばっかりじゃけど、数だけは多い。ちょうど良いから、深夜になったら緑谷を連れ回すとするか。
「よし、全員集まったな。廻道、調子は?」
「問題無い。昨日は迷惑を掛けた」
「遅れた分は今晩補うから覚悟しておけ。さて、まずは君達に渡す物がある。廻道、用意は出来てるな?」
「……用意?」
……、……。用、意……? 何の?
相澤、お主に何か頼まれてた覚えは……。あぁ、ひとつ有るのぅ。もう八月になったんじゃし、しっかり十九人分は作っておいた。確か、鞄の中にまとめて入れておいた筈じゃ。今は持ってきて無いが。
「円花ちゃん、これですこれ」
「む。すまんの」
何故か隣に居る被身子が手提げ袋を掲げた。何でこやつが此所に? これから訓練なんじゃから、普通科のお主が此所に居ても仕方ないと思うんじゃが。まぁ、良いか。細かいことは気にしないでおく。警護の都合上どうしても林間合宿に同行しなければならなくなったのが、こやつじゃ。今が夏休みで良かった。被身子に授業を休ませたくはないからの。
「全員知っての通り、この世には呪力と呪霊と言うものがある。呪力は俺達には扱えないし認識も出来ないが、呪霊を見ることは可能になった。
その為の道具を廻道に用意して貰ったから、全員受け取るように。尚、紛失したり破損した場合は廻道に作り直して貰うこと」
「壊すなよ貴様等。ひとつ作るのに三日は必要なんじゃからな?」
もっとも、これは嘘みたいなものじゃけど。別にひとつやふたつ作る程度なら、三日も要らん。装置を使えば数時間もあれば作れる。ただ、色々と考えた末に作成は自己補完の範疇でやると決めているからの。眼鏡を幾つか作るだけで呪力切れを起こすわけにはいかんのじゃ。
あと、単純に面倒じゃから何度も作りたくない。儂は細かい作業には向いとらんし、何より被身子が拗ねるんじゃ。
取り敢えず、大量にある
「これが
「なんか、普通の眼鏡……だね?」
「廻道、これで呪霊が見えるように……?」
「呪霊……。どんなのかしら?」
眼鏡を手にした奴等が、受け取った順に装着していく。そこまでして呪霊を見たいのか……? 変な奴等じゃ。まぁ、これからも
「廻道くん、緑谷くんの分が無いようだが……」
「緑谷には必要無い。素で見えとるからの」
「えっ!? マジ!?」
「デクくん、見えてたん!?」
くらすめえと達が、一斉に緑谷に注目した。相澤や、被身子もじゃ。非術師からすれば、まぁ驚く事では有るか。術師の儂じゃって、これは想定外じゃったし。
と言うか緑谷、お主誰にも話してなかったのか。てっきり、麗日や飯田には話してるかと思ったんじゃが……。
「う、うん……。実は見えてるんだ。体育祭で、心操くんと戦った後ぐらいから……」
「んだとクソナード……! なんでてめえが見えてんだおい!!」
「喧しい。黙れ舎弟」
そもそも話の腰を折ろうとするな。後でやって欲しいのぅ。相変わらず緑谷の事になると、こんな態度しか取らん。あれか? いつぞやに聞いた
「ああ゛っ!? てめえ知ってたのかクソチビ!!」
「爆豪くん。円花ちゃんには絶対服従、ですよね?」
「……ちっ! クソが!!」
止めとけ止めとけ。被身子の前でそんな態度を取るのは。そんなじゃから、未だに被身子に警戒されたり嫌われたりしとるんじゃぞ貴様。まぁ被身子も、そこまで冷たい笑みを浮かべなくとも良いと思うが。それと、然り気無く隠し持っているかったあないふは絶対に取り出すなよ。絶対じゃからな??
……んん゛っ。とにかく、話を戻すとしよう。
「緑谷には呪霊が見えとるから必要無い。ついでに言うとおおるまいともそうじゃ」
「オールマイトも? いや、オールマイトなら有り得るか……」
「No.1ヒーローだもんな。見えててもおかしくない」
「流石ですわね」
「ケロ……。でも円花ちゃん、呪力は後天的には獲得出来ないものなんじゃ?」
まぁ、基本的にはそうじゃけど。緑谷とおおるまいとに関しては、少しばかり事情が違うからのぅ。適当に誤魔化しておくか。わん・ふぉお・おおるについては口止めされとるし。
「緑谷の個性が超ぱわあではなくて、実は体内の力を操る個性じゃって最近分かっての。これには儂も驚いたんじゃが、操れる力の範疇に呪力が入ってるんじゃ。
そういう訳で、呪力が練れるようになった。じゃからこやつは、呪霊が見えるようになったんじゃ」
……。と言うことにしておけば誤魔化せる……か? 嘘八百を並べたが、相手は梅雨じゃからの。これで素直に引き下がってくれれば楽なんじゃけど。おい緑谷、儂の言葉を聞いて変に表情を固くするな。嘘だと見破られるじゃろ。
あと、多分被身子は嘘じゃと気付いた。現に今、探るように儂を見とるし。後で聞かれたら、どう誤魔化すべきかのぅ。上手い嘘を考えておかねば。
「そうなの? 緑谷ちゃん」
「えっ、えと……! その、オールマイトが言ってたんだけど……。手から水を出す個性だと思ったら、空気中の水を集める個性だったみたいな事例がよく有るみたいで。だから僕の個性も超パワーかと思ったんだけど、実は違った的な感じで……」
「そうなのね。と言うことは個性次第では呪霊が見えたり、呪力が扱えたりするようになるのかしら?」
「……例えば、儂の母のように霊能の個性を持ってれば呪霊が見えたりする。まぁ母の場合、呪力は扱えないんじゃけど」
基本的に、緑谷のように特別な個性を持つか母のような個性でないと
それに、呪術師として生まれた者も居るかもしれんしの。まぁ現状、儂以外の呪術師を見たことはないが。恐らく
「待て廻道、緑谷。何故その事を教師に話さなかった?」
「えっ、そ、それは……その……」
「おおるまいとから聞いてないのか?」
「……はぁ……。ったく、あの人はいい加減な事を……。報連相ぐらいして欲しいもんだ」
「まぁ阿呆じゃからの」
「まったくだ。あんな風にはなるなよ」
「ならぬよ」
少なくとも儂は、じゃけど。しかし、おおるまいとめ。相澤にも話していないのか。いやまぁ、緑谷の事をなるべく隠しておきたいのは分かるが。儂もあやつと同じ立場なら、同じ事をしてたかもしれんしの。
「そういう訳で、全員呪霊が見えるようになった今、廻道から呪霊対策を教えて貰え。それと並行して個性を伸ばしてもらう。尚、この個性伸ばしは廻道と爆豪は免除とする」
……何て? 貴様、今なんと言った?
「教師陣で話し合った結果、お前達二人の個性を伸ばすのに時間を取らせるのは合理的じゃないと判断した。既に出来てるからな。
よって、爆豪には別の課題を与える」
いや、そこではない。そこじゃないんじゃ。呪霊対策を、くらすめえとに教えろと?
……。まぁ、仕方ないか。最低限、呪霊と遭遇しても生き延びられる方法を教えておくとしよう。大した事は教えぬ。呪力の無い奴に呪術的な事を詳しく教えても仕方ないからのぅ。
「儂は? 教えるだけか?」
「そうだな。お前は今回、どちらかと言うと教師側に付いて貰う。午前中は呪霊対策、午後は……この辺りの呪霊を祓うのを手伝ってくれるか?」
「……相分かった。一通り祓っておく」
「一人で出歩くなよ。遭難されたら洒落にならん」
「じゃから、方向音痴扱いするな。たわけ」
まったく、失礼な奴じゃ。森の中を歩いたぐらいで遭難してしまう程、儂は方向音痴ではない。少しばかり人より道に迷い易いかもしれんが、大丈夫じゃっ。
……なんて強がりは、もう止めた方が良いかのぅ。実際、儂は方向音痴じゃ。でもでもじゃって、面と向かって方向音痴扱いされると反発したくなるんじゃよ。
あと、ぽんこつ扱いは絶対に許さぬ。誰がぽんこつじゃ誰が。
「と言う訳で、廻道。始めろ。時間は有限、無駄を許容することは出来ない」
「うむ。じゃあまずは……取り敢えず呪霊を見るところから始めるか。緑谷、そこの小さいやつを取っ捕まえてくれ」
「えっ、僕!?」
「助手じゃ助手。一人じゃ大変じゃから、少し手伝え」
そもそも、儂の弟子じゃろうが。なら儂を手伝うぐらいしてくれ。まったく、気の利かん男子じゃのぅ。
……さて。どう教えるか。取り敢えず、もっとも簡単な対処法から教えておくか。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ