待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「捕まえて来たよ、廻道さん」
「うむ、ご苦労。さて全員、
「はい円花先生!」
「はいポンコツ先生!」
「よし瀬呂。貴様は後で殴る」
「い゛っ!?」
何で早速ぽんこつ扱いしたんじゃ、こやつ。
頼呂とか言う阿呆は放っておいて、教えていくとするか。緑谷に取っ捕まえて貰ったのは、
緑谷の両手にしっかりと捕えられている雑魚呪霊の頭を掴み、くらすめえと全員によく見えるように掲げる。
それにしても。くらすめえと全員が眼鏡をしているのは不思議な感じがするのぅ。形状をこんたくとれんず……とか言うのにするべきじゃったか? いやしかし、子供の目玉に硝子を着けさせるのはどうかと思う。で、被身子。なに然り気無く儂の後ろに回って肩に腕を回してるんじゃ?
まったく、こやつと来たら……。
「これが呪霊じゃ。
「廻道先生! 質問よろしいでしょうか!?」
「良いぞ。何じゃ飯田」
高らかに右手を挙げるのは良いとして、何で眼鏡の上に眼鏡をしてるんじゃ貴様。ああそうか、
「その蠅頭という呪霊が四級未満と言うことは、四級はもちろん三級や二級等の呪霊が居ると言うことでしょうか!?」
「その通り。四から順に上がっていって、三、二、準一、一と上がり、一番上は特級と言う。これは呪霊だけに当て嵌まる等級ではない。呪術師や呪詛師なんかにも使われるの」
「なるほど、ありがとうございます! ところで、廻道先生はどの等級に!?」
……。こそばゆい。儂を先生として見るのは良いが、別に敬語を使う必要は無いじゃろ。まぁ良い、好きにさせてやるとするか。飯田は真面目が過ぎる奴じゃからのぅ。
「知らん」
あくまで、今生では。いや、よく考えてみたら前世の等級も儂は知らんの。一級ぐらいはあると思いたいが、二級かも知れん。せめて準一級が良いのぅ。まぁ、前世の事はどうでも良い。もっと言うなら、儂自身の等級もどうでも良い。大事なのは、呪い合う相手の等級じゃ。特級が好ましい。実力があるなら、一級でも可。それ以下は論外じゃ。雑魚じゃ雑魚。
「え、知らないんだ……」
「いや、ポンコツだから忘れてるってだけかも知れねーぜ……?」
「よし上鳴。貴様も後で殴る」
「え゛っ!?」
まったく。油断も隙も無い。そうやって直ぐ儂をぽんこつ扱いするのは止さぬか。そろそろ怒るぞ?
「儂の等級はどうでも良い。それを知ったところで何にもならん。
それより、緑谷以外が呪霊に出会ってしまった場合の対処法を教える」
非術師が呪霊と相対してしまった場合、どうすれば良いか。これは至極簡単な事じゃ。何も難しいことはない。足さえあれば、誰にでも出来るじゃろう。
「全速力で逃げろ。間違っても戦おうとするな」
「……は? おい待てクソチビ。俺達には、呪霊と戦うなってか……?」
「その通り。何せ貴様等には、呪霊を祓う術が無い。下手に何とかしようとして、呪われてみろ。場合によっては死ぬぞ?」
そう。呪力が無い者が呪霊をどうこうすることは出来ぬ。じゃから、取れる選択肢は逃亡だけじゃ。下手に応戦して呪われたら、それこそ命に関わる。例えこやつ等全員が戦う為の呪具を持っていたとしても、儂は同じ事を言う。
呪力が無いと言うことは、呪いへの耐性が無いということでもある。儂や緑谷、そしておおるまいとと違ってくらすめえと達は一度でも呪われてしまったら大変な事になるじゃろう。
儂が解呪してやれれば良いんじゃが、生憎反転術式を体外に作用させることが出来ぬ。
「……円花先生。呪われたら、どうなりますの……?」
「呪い次第じゃけど……軽い呪いならば肩凝りとか頭痛とか、悪夢を見るとか金縛りとか。重い呪いなら死ぬの。即死出来たら運が良い方じゃ」
「運が悪いと……?」
「苦しみながら死ぬ。呪いなんてのは、大体そんなものじゃ」
呪われて死ぬ者は、残念ながら前世で山程見てきた。今生でもそうじゃが、儂が解呪することは出来ぬ。どうも、そういう才能に儂は恵まれない。じゃから呪われる前に呪い殺すしか、儂には手段が無い。それしか知らぬのじゃ。
「じゃあ、呪霊に襲われたら何も出来ないってこと……? ま、マジかよぉ……っ!」
「そうじゃ峰田。何も出来ぬし、何もしようとするな。この眼鏡は、あくまで呪霊を避けるものじゃと思ってくれ。戦う為じゃない」
「の、呪われたら……助けてくれるよな……?」
「いや、無理じゃ。呪われたら儂は助けられん。まぁ仇は討ってやるから、そこは安心しろ」
「いや、安心出来ねぇよっ!!?」
そう言われてものぅ。どうしようも無いのが現実じゃ。そこは諦めて欲しい。子供を見殺しにする趣味は無いが、どうしようもない時じゃってある。儂の手の届く範囲に居る呪霊は根こそぎ祓ってはおくが、それでも呪われる可能性は零じゃない。
「繰り返すが、呪霊と遭遇してしまったら直ぐに逃げろ。
呪霊の中には話し掛けたり目を合わせようとしてくる呪霊も居るから、そういう輩は無視しておけ。こちらが認知しなければ、何もしてこないのが殆どじゃから」
「廻道、呪霊に個性は通用しないのか?」
「しない。呪霊は呪力でなければ傷ひとつ付かん。……試してみるか?」
「ああ」
「じゃあ轟、こいつに向かって個性を使ってみろ。ほれ」
手にした蠅頭を、森に向かって投げる。と、同時。儂等の側に巨大な氷壁が出来た。うむ、涼しい。夏の暑さに轟の氷は持って来いじゃ。
で、雑魚呪霊がどうなったかと言うと……。まぁ一応氷漬けにはなっとるの。ただ、祓えてはいない。氷の中でも徐々に徐々に動き始めておるし、そのうち氷の中から平然と抜け出すじゃろう。
「見ての通り、呪力が無ければどんな攻撃をしても無傷じゃ。そういう理だと思って諦めてくれ」
「……見てぇだな。廻道はどうやって呪霊を祓ってるんだ?」
「どうって。単純な呪力操作や放出、後は術式を使ったりして祓っとる」
実演してやりたいところじゃけど、蠅頭が氷の中ではのぅ。穿血を撃ったとしても、これだけの氷を貫通することは難しい。まっこと、儂の術式は轟の個性と相性が悪い。ついでに、小僧の個性ともな。
「呪霊というのは、人の負の感情が集まって産まれるものじゃ。負の感情が溜まりやすい所には居ると思って良い」
「具体的には?」
「学校、病院、墓場。廃れた建物、刑務所、海に山に森。他にも色々じゃ」
特にこの時代は、呪霊の数が多過ぎる。雑魚ばかりなのが幸いじゃけど、もしも力を持った呪霊が山程出てきた場合……多くの非術師が犠牲になるのぅ。その可能性は、今後無いとは言い切れぬ。
……どうにもおかしいんじゃよな、この時代。呪術師も居ないみたいじゃし。存在を秘匿してるとしても、儂に接触してこない筈が無いんじゃ。儂が呪霊を祓い始めてから、そろそろ十二年じゃぞ? 好き勝手呪霊を祓ってる呪術師が居たら、関わってきそうなものじゃが……。
まぁ、細かいことは良いか。気にはなるが調べる方法が無い。呪術や呪霊の存在は秘匿されてる筈じゃから、そう考えると普通に調べるだけでは情報は出てこないじゃろうし。
「良いか? 基本は逃げる。もし逃げられない場合は……呪霊からの攻撃は全て避けろ。でなければ呪われて死ぬと思え。
……と言う訳で。今からお主等には、儂の術式を避けてもらうか。なに、手加減はするから安心しろ。がはは!」
「えっ、いやいやいやっ!? がはは、じゃねえって!?」
「避けるだけじゃぞ? 簡単じゃ簡単。舎弟なんて準備さえしてれば穿血を避けれるんじゃし、お主等なら余裕じゃ余裕」
非術師ではあるものの、
この回避訓練を甘く済ませてやるつもりは無い。何せ命に関わるからのぅ。手厳しく行くとするか。
「で、最初は誰がやる? 儂は誰でも良いぞっ!」
「俺がやる。てめえ、全部避けてやるからな!!」
「避けれるものならな」
最初は舎弟か。穿血は本気では撃たんとして……取り敢えず赤縛を主体にやってみるとするか。じゃから被身子、そろそろ離してくれると嬉しいんじゃけど。そんな不満そうな顔をして、腕に力を込めないでくれ。お主を振り解きたくは無いんじゃ。
仕方ないじゃろ。色々教えてやらなければならんのじゃから。後で沢山構ってやるから、今は大人しく引き下がって欲しいのぅ……。
って、こら。冷たい笑みを浮かべるな。圧が凄いんじゃ、圧が。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ