待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
もぐ。被身子の作った、かれえらいすが美味い。程良く辛くて、具沢山で。しかも付け合わせに、はんばあぐ。もぐもぐ。美味い。やはり食事は、被身子が作ってくれたものに限る。
あの後。
で、じゃ。帳を上げた後、儂は直ぐに発見された。わるいど何とかの、らぐどおるとか言う
その後、何とか宿泊施設に戻れた儂を待っていたのは相澤からの説教じゃ。今日は、よく叱られる。その後、半分呆れた被身子にも説教された。もう半分は、純粋に儂を心配してのことで……。途中から
それと、夜に行われる筈じゃった昨日の補習は無くなった。夜も相澤と呪霊を祓いに外に出る予定じゃったけど、夜に迷子になったら洒落にならんと言うことで中止に。もう少し儂の方向感覚を信用して欲しいんじゃけど?
けぷっ。ごちそうさまでした。かれえらいす、美味かった。じゃがいもや人参がごろっとしてて、はんばあぐはいつも通り美味いし、大変食べ応えがあって満腹じゃ。満足じゃ。
……それでのぅ。今、困っていることがひとつあるんじゃ。それは、何故か首に捕縛布が巻き付けられているということ。そして捕縛布の端を、被身子が握って離さないということじゃ。
「被身子、もうこれは良くないか……?」
「駄目なのです。今日の円花ちゃんは勝手に何処かに行こうとしちゃうので、もう絶対に一人では出歩かせません」
「いやでも、後は風呂に入って寝るだけじゃし。必要なかろう……? 第一、相澤先生が困ると思うんじゃが……」
「相澤先生には許可を貰ってますので。とにかく、今晩は一人で出歩けると思わないでください。何処に行くにしても絶対に、私が付いて行くのですっ!」
……。諦めた方が良いか。飼い主に首輪を引っ張られた犬のような気分になるが、今宵は仕方ない。被身子の好きにさせておくしかない、か。と言うか、風呂の時はどうするんじゃこれ。まさか入浴する際にも巻かれたままなんてことは……無い、よな……?
食器を下げ、それから部屋に戻ると、もう床に布団が敷かれている。
誰か、誰か助けてくれぬかのぅ? 少し期待を込めて、女子部屋に居るくらすめえと達を見詰めてみるが……どいつもこいつも笑顔で手を振るだけじゃ。葉隠はどんな表情をしてるか分からんが、何か雰囲気が笑っている。気がする。
もしや儂、明日の朝までこのままか? まことに??
「うっわ。廻道、犬みたい。渡我先輩、それ相澤先生に借りたの?」
「はい。迷子防止用に借りてきました」
「あ、はは……。まぁそうしとくのが安全かな……」
「そうね。ちょっとでも目を離したら、迷子になっちゃうもの」
「やっぱりさー、とんでもない方向音痴だよね。そのくせ本人に自覚が無いし……」
好き勝手言われている。解せぬ。儂は子供達の安全の為に呪霊を祓いに行ったというのに。しかも貴様等の為に、結びたくもない縛りを結んだんじゃぞ。悪党の親玉と。この事は誰にも話せぬのが、今は少し辛い。汚名が返上出来ぬ。ぐぬぬ……。
「でも廻道さん、ありがとうございます。ここに近付きそうな呪霊を祓う為だったと、相澤先生から聞いておりますわ」
や、八百万……。そうか、お主は分かってくれるのか。儂がわざと迷子になっているわけでも、何なら方向音痴でもないことを分かってくれてるのじゃな……っ! 流石、副委員長じゃっ。
「んん、でも……。だからって一人で行くのは、良くないと思うんやけど。あんまり渡我先輩に心配かけたらあかんよ?」
麗日、貴様……。容赦ない物言いをしてくれるの……。もう良い。もう儂は風呂に入る。こんな時は湯に浸かって、綺麗さっぱりしてしまえば良い。大抵のことは風呂に浸かれば何とかなるんじゃ。出来れば温泉が良いが、ここの露天風呂は中々良い感じじゃからのぅ。
うむ。露天風呂が待っていると考えたら、楽しくなってきた。着替えを持って、さっさと汗を流しに行くとしよう。そうと決まれば、ぐえっ。
おい被身子、引っ張るなっ。首が締まるっ。
「円花ちゃん、何処に行くつもりですかぁ?」
「ふ、風呂じゃ風呂っ! ほら、お主も入るじゃろっ!?」
「そうですね。お風呂、行きましょうか。今日は念入りに綺麗にしてあげますね」
「う、うむ。頼んだ……」
圧が。圧が凄い、物凄い。もしかして、今宵はもう被身子に歯向かわない方が良いのか? い、いやしかし……。儂が止めないと、こやつの暴走はどこまでも続いてしまう。特に今晩は要注意じゃ。被身子の笑顔から凄まじい圧を感じる時は、色々と大変じゃからの。
お仕置きは……、まぁ甘んじて受け入れるつもりではあるが。それでもここが寮の中でなくて良かった。もし寮じゃったと考えると……。
……。…………。………………。
よし、もしもを考えるのは止めておこう。そうしよう。
さてっ。風呂じゃ、風呂っ。汗を流して湯に浸かって、明日に備えて就寝しなければ!
◆
ふぅ。良い湯じゃった。露天風呂の中で、被身子にこれでもかと唇を奪われたことについては……今日は許す。心配かけた儂が悪いとは思うし。昼間に相澤と呪霊を祓いに森を歩き回った件については、もう許して欲しいところじゃけど。
せめてもの救いは、風呂上がりに捕縛布を巻かれなかったことか。代わりに、思いっきり手を握られてしまっているが。
「恋バナしよーーっ!」
「恋バナーー!」
女子部屋に戻ると、布団の上に座った寝間着姿の芦戸と……何処に居るかまるで分からぬ葉隠が訳の分からんことを宣った。明日も早いんじゃから、さっさと寝た方が良いと儂は思うぞ。何でそんなに元気なんじゃ。今日は儂との訓練や個性伸ばしで一日中動き回っていた筈じゃろ……?
があるずとおくが始まろうとしているから、儂は寝るとしよう。話題を振られる前に、寝てしまおう。どうにも苦手なんじゃ。
「じゃ、儂は寝るから……」
片手は被身子に握られっぱなしじゃから不自由なものじゃけど、それでも逃げるように布団に潜り込む。儂は寝る。寝るったら寝るんじゃ。明日も呪霊を祓わなければならないし、何より夜の事を考えたら今の内に休んでおきたい。明日の晩、儂は
「いやいや、廻道と渡我先輩はメインなんだから起きてないと駄目だって。ほぅら観念しろー!」
おいっ。掛け布団を剥がすな芦戸っ。き、貴様何をしておる……! 儂はもう寝るんじゃから、があるずとおくに巻き込むなっ。そんなに楽しそうな顔をしたって、許さんぞっ。
「ずばり! 二人はどんな馴れ初めだったの!? 根掘り葉掘り、詳しく聞きたいなぁー!」
「んふふっ。いきなりそれ、聞いちゃうんですか?」
「そりゃ、一から聞きたいところはあるしね。ほら、二人っていつでもベタベタしてるじゃん?」
「もちろん。大好きで、愛してますから。トガには円花ちゃんしか居ないのですっ」
……。喧しい。うるさい。掛け布団を返せ。儂はもう寝たいんじゃ。こうして横になったんじゃから、後はもう静かに眠りたい。隣で座っている被身子は、やけに嬉しそうに笑っておるし……。まぁお主に限っては、笑顔で居るなら何でも許してやるつもりじゃが。しかし、それでも限度と言うものはあるぞ? あるんじゃからな??
「それで、お二人はどのような出会いをなさったのでしょう? きっと、素敵な出会いをなさったんですよね?」
八百万? 何で興味津々になっとるんじゃ? おい、貴様も恋ばなとやらをしたいのか? そこは早く寝ろと全員に言うべきではないのか?
おい。おいったら。そんな気恥ずしくなってしまう事を、いちいち聞くな。被身子も話そうとするなっ。
「思えばあれが始まりだったんですけど。円花ちゃん、いきなりプロポーズして来たんですよねぇ」
「えっ!? 廻道ちゃんから!?」
「それほんと!?」
「ケロケロ。でも、納得出来るわ。円花ちゃん、被身子ちゃんの事が大好きだもの」
「あー、分かる。廻道って駄々漏れだし」
……。うるさい。あの時は、そういう意味で言ったわけじゃない。ただ単に、被身子が不憫で見てられなかっただけじゃ。じゃからせめて、儂の前でだけは笑えるようにそう言っただけで。
そもそも貴様等、被身子の笑顔を知らんじゃろ。あの呪霊も逃げ出すような笑みを見たこともないくせに、勝手な憶測を繰り広げるな。
だいたいっ、駄々漏れってなんじゃ駄々漏れって。被身子が好きであることは否定出来ぬが、駄々漏れになっている覚えは無いんじゃがっ!?
そんな小恥ずかしい真似はしておらんっ!
「ちなみに、どんなプロポーズだったの? 廻道ちゃんの事だから……やっぱポンコツな感じ?」
「それはぁ……内緒なのです。私と円花ちゃんだけの、大事な思い出ですからっ」
うむ、そうじゃ。被身子、これ以上は何も話すな。頼むから黙ってくれ。そしてもう、儂と寝てくれ。があるずとおくなんてしてないで、さっさと横になって儂を抱き締めんか。最近、お主に
ほら、早くしろ。今すぐ抱き締めろ。そして寝ろ。そしたら許してやるから。今なら不問にしてやるから。な? なっ??
「みんなは、恋してないんですか?」
「い、いやいやっ。恋なんて、恋なんてしとらんよっ!?」
喧しいぞ麗日。何でそんな大袈裟に反応したんじゃ、こやつ。何か妙に慌ててる素振りじゃが……。まぁ良いか。そのまま挙動不審を続けて、皆の注目を集めてくれ。お陰で儂は気恥ずかしい思いをしなくて済む。今の内にさっさと寝てしまおう。少し寝にくいが、目蓋を閉じれば直ぐに寝れるじゃろ。多分。
「お茶子ちゃん、ちょっと」
「え、何……?」
「まぁまぁ、ちょっと」
……。おい、どっか行くな。儂の側に居ろ儂の側に。儂が離れようとするとくっ付いて来るくせに、何で自分からは離れようとするんじゃこやつ。それは許さん。もう儂が寝るんじゃから、さっさと横にならんか。たわけ。
で? 何を話すつもりじゃ貴様。
「――、―――……ですか?」
「うぇっ!? いや、べ、別にそんなんじゃ……!!」
「それ、もう答え言ってるのです。お茶子ちゃん、カァイイねぇ」
……さては、浮気か? これが浮気か? それは流石に許さんぞ?
おい。麗日、儂の被身子じゃぞ。儂の。変に近付くんじゃない。例え被身子に手招きされたとしても、内緒話などするな。
いかん。段々と苛ついてきた。これでは寝れん。があるずとおくに混ざりたいとは思わんが、このまま被身子が他の輩と夜更かしするのは気に食わん。儂、こんなに嫉妬深かったか? 被身子じゃあるまいし……。
いや、でも。まぁ、これも被身子とお揃いと考えたら……。うむ……。
やはり、毒されている気がするの。それを嫌とは思うことは無いが。
……たまには、毒された者らしく振る舞うとするか。今だけじゃ、今だけ。
そうと決まれば、よし。取り敢えず芦戸に奪われた掛け布団を奪還するか。した。
「被身子」
「はい。何ですか?」
「もう寝るぞ。寝るったら寝るんじゃ」
「わぷっ!? ちょっ、円花ちゃん……っ!?」
掛け布団を上手いこと羽織りながら、そのまま被身子を押し倒す。で、布団にくるまる。ついでに被身子に抱き付くとしよう。
夏にこうも密着して寝るのは暑いだけとは思うんじゃけど、今は苛ついているのでこれで良しとする。後先など知らん。まぁ、熱中症にはならんじゃろ。多分、じゃけど。
「貴様等もさっさと寝ろ。明日も早いんじゃから」
なんて言ったところで、多分こやつ等はまだ寝ないとは思うが。それに付いては好きにしたら良い。好きにしたら良いが、被身子と喋るのは駄目じゃ。儂のじゃ、儂の。
「……妬いてます?」
うるさい。分かってるくせに、いちいち確認するな。被身子の阿呆。良いじゃろ別に。たまには嫉妬のひとつやふたつぐらい。
だいたい、貴様は直ぐに嫉妬するんじゃから儂に嫉妬するななんて言葉は絶対に言わせん。儂だって嫉妬する時もある。じゃから、今晩ぐらいは儂を宥めるのに苦労したら良いんじゃ。
被身子の浮気者。儂が居ながら他の女と楽しげに話すなど……。許さん。まっこと許さん。そんな風に頭を撫でたって、許して貰えると思うなよ。
「んふふ。もぅ……今日の円花ちゃんは、いつもよりカァイイのです」
喧しいわ。たわけ。ほら、妙なことを言っとらんでもっと頭を撫でろ。そしたら少しは許してやっても良い。儂が寝るまで甘やかしたら、ちゃんと許してやらんでもない。
じゃから、ほら……。もっとじゃ、もっと。
人前での
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ