待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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くっきんぐ。

 

 

 

 

 

「あ゛ぁあ゛ぁあ゛っっ!!」

「うぎゃぁあ゛あ゛っっ!!」

「ひぃい゛ぃいい゛っっ!!」

 

 昨日見た地獄絵図が、わいるど何たらによって作り上げられた訓練場に描かれている。

 個性伸ばしの訓練は、子供達には過酷のようじゃ。まぁ、無理もない。個性は身体機能、筋肉みたいなものじゃ。つまり、使えば使う程に強くなる。そして限界を超え、無理矢理使い続けることで防衛本能が働き、体はより個性に馴染む。或いは、個性が体に馴染むのか。どちらでも大した差は無いじゃろう。

 確かなのは、個性を伸ばすために尋常ではない負荷を体に強いること。それを教師が子供達に強要している。気に食わん。

 が。この鍛練が英雄(ひいろお)になる為に必要なもので、子供達がそれを受け入れている。だから儂は何も言わん。自らの意思で強くなろうと訓練に望んでいるんじゃから、それを否定するつもりはない。肯定したいとも思わんが。

 

 とにかく、じゃ。(びい)組も含めた、儂等四十一人は個性を伸ばす訓練を行っている。儂も個性を伸ばさなければならない。とは言え、儂は英雄(ひいろお)科の中で最も個性の扱いが遅れている。これまでろくに使ってこなかった上に、どんな使い道があるのかも分かっていない。呪力強化をすれば、竜巻を起こせることは分かっている。

 

 今回の訓練では、儂は自らの個性について詳しく調べることを第一とした。

 

 そうして分かったことは、やはり手で触れたものが回転するということ。右手で触れば右回転、左手で触れば左回転。両手で触ると、螺旋状に回転。あと、回転数や回転速度は割りと調節が自由ということ。そして個性を使った反動として、物凄く目が回る。いちいち気持ち悪くなって吐くのも嫌じゃから、個性と反転術式(はんてん)は併用することが必須じゃ。

 で、気付いたんじゃけど。自己補完の範疇での反転術式(はんてん)では、なんと回復が間に合わん。この事実から、儂は個性を使う度にそれなりの呪力を消費させられる。戦闘となると、ただでさえ血液の補充に反転術式(はんてん)を使わされるというのに。今生での儂の呪力量が前世の数倍でなければ、直ぐに呪力が枯渇してしまうところじゃった。もっとも、戦闘中に両方を全開で使えば今の呪力量でも呪力切れは免れんが。

 

 そう考えると、戦闘において主に使うのは赤血操術で良いと思うんじゃ。回転は……何かの補助的に扱いたい。回転で何が補助出来るかは、分からんけど。

 

「……ふぅ。しっかし、酷い有り様じゃのぅ」

 

 訓練場の隅。今日も木陰で勉強している被身子の隣に、腰を降ろす。今朝の訓練が始まってから、どの程度時間が経ったかは知らん。知らんけど、回転についてはある程度分かった。個性を使う感覚も、何となく理解出来た。このまま訓練を続けても良いが、夜の予定を考えると……くらすめえと達のように必死にはなれぬ。呪力はしっかり残しておきたいし、体力も使いたくない。じゃから、こうして勝手に休憩を取る。

 

「サボると怒られちゃいますよ?」

「気が乗らん」

「じゃあ、私もちょっと休憩するのです」

 

 椅子に座っていた被身子が、勉強道具を片付けた。足元の手提げ袋にしまったと思ったら、儂の隣に座る。そして抱き付いてきた。だけではなく、首に顔を埋めて来た。

 人前なのに甘えるな。まぁ、他の連中は儂等の事を気にする余裕はこれっぽっちも無いが。

 少し離れたところでは緑谷が……虎とか言う英雄(ひいろお)に殴り掛かっては殴り返されているし、遠く離れたところにある洞穴からは常闇の悲鳴が聞こえる。舎弟の姿は見えんが、爆発音は聞こえているので何処かで訓練に励んでいるのじゃろう。轟なんかは大きな金属(どらむ)缶の中で周囲に火を出したり氷を出したりしておる。

 

「っ、こら。何しとるんじゃ貴様」

 

 油断していると、首を甘噛みされた。くすぐったいから止さぬか。儂が変な気分になったらどうするつもりじゃ、貴様。

 

「何って、円花ちゃん成分を補充してるのです。円花ちゃんも、トガ成分を補給したらどうですか?」

「訳の分からんことを宣うな」

「んぎゅっ」

 

 首を噛まれた仕返しに、鼻を摘まんでやる。まったくこやつと来たら。甘えるのは、もう良いが変なことを口走るでない。自重という言葉を知れ。

 

「すんすん……」

「匂いを嗅ぐな」

「じゃあ舐めます」

「舐めるな。何なんじゃもうっ」

「んー……、だって。ほら、昨日しなかったじゃないですか」

 

 ……。それは、そうじゃけど。じゃからって、せくはらするな。儂が寮に帰るまで我慢してくれ。

 

「やっぱり、昨日お風呂でしちゃえば良かったのです。今日はします?」

「しない。それは帰ったらじゃ」

「むぅーっ。トガを欲求不満にさせると大変ですよ? 少しは発散させておかないとっ」

「まったく。被身子のたわけ。阿呆」

 

 このままじゃと収まりそうにないのぅ。かと言って、こんな所で始めるような趣味は無い。ので、少し誤魔化そうと思う。このまま拗ねられても敵わんし。じゃから……。

 

「んっ」

 

 良くないとは思いつつ、触れるだけの接吻(きす)をする。誰にも見られてない、よな……? 大丈夫じゃよな……??

 

「ん、ふふ……っ。そんなことされたら、もっと我慢出来なくなっちゃいますよぉ」

 

 いかん、逆効果じゃった。被身子がとんでもない顔で笑っておる。おい、肩に手を添えるな。押し倒そうとするなっ。そんな風に迫られたら、断り難いじゃろっ。

 

「廻道。勝手にサボるな」

「ぐえっ」

 

 じゃから! 捕縛布を首に巻き付けるなっ! 今回は許してやるが次は無いぞっ!? また同じ事をしたら、引き千切るからなっ!! 儂は本気じゃぞっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、最高の肉じゃがを作ろう!!」

 

 夕方。訓練が終わった後で、飯田が号令をかけた。

 肉じゃがて……。いや、夕飯は自分達で作らなければならないらしいが、じゃからって肉じゃがを選ぶのか。まぁ、それは良いとして。どうやら儂はこれから、くらすめえと達と協力して肉じゃがを作らなければならないようじゃ。

 料理、料理か……。最後に作ったのはいつじゃったっけ? と言うか儂、被身子や母に料理そのものを禁止されてるんじゃけど。たまに父に作ってくれと必死に頼まれる時が有ったり無かったりしたが、それも被身子と母からの圧が凄くて断っていたしのぅ。

 

 まぁ今回の場合、合宿で学ぶことの一部とすれば流石に料理することを許される、か……? いや、駄目そうじゃ。被身子が複雑そうな顔で儂を見ている。儂は何にも触らないでおこう。

 

「ええっと、まずみんなに伝えたいことがあるのです」

 

 何故か外に設置された調理場。手洗いうがいなどを済ませた全員が集まったところで、被身子が手を上げた。わざわざ何を言うつもりじゃ貴様。頼むから変な事を口走るなよ……?

 

「知っての通り、円花ちゃんはポンコツです」

「ぽんこつではない」

 

 こら。何で今、全員で被身子の言葉に頷いた?

 

「そんな円花ちゃんが料理をしたら、どうなると思います……?」

 

 おい。渇いた笑みを浮かべるな。儂はぽんこつではないし、別に禁止されているだけで料理ぐらい出来る。おかゆとおじやと雑炊と、あとうどんが作れるのはお主だって知っとるじゃろうが。そんな風にぽんこつ扱いするなら、もう作ってやらんぞ? 良いのか??

 

 だいたいっ! そうやって儂を調理場から遠ざけるなっ! 儂だってたまには料理ぐらい、料理ぐらい……!

 

「つまり……廻道はメシマズってことか!?」

「まぁポンコツだし、そりゃそうだよな……」

「はっ。料理も出来ねえのかクソチビ」

「闇の狂乱。禁断の蠱毒」

「き、貴様等……」

 

 どいつもこいつも、勝手なことを宣うなっ。常闇ぃ! 誰の料理が蠱毒じゃって!? 中学の調理実習の時は、まぁ確かに派手に失敗したとは思うが! じゃけど貴様じゃって、卵焼きを焦がしていたじゃろっ。あの惨劇を儂一人のせいにするなっ!!

 

「円花ちゃんは中学の頃、調理実習でクラスメート全員のお腹を壊しました。常闇くんは身を以て知っていると思いますが」

「待て被身子、あれは常闇も共犯じゃ。儂は悪くない」

 

 悪かったとしても、儂だけのせいではない。儂じゃって少し腹が痛くなった。まぁ反転術式(はんてん)で直ぐに治したから、儂の健康に大きな被害は無かったが。

 しかし、懐かしいのぅ……。どれ、昔を懐かしんでまた常闇と作ってみるか。なぁに、あれから儂等も成長している筈じゃ。料理はろくにさせて貰えないが、何とかなるじゃろ。

 

 よし、勝手な事を口にしている被身子は放っておいて調理に取り掛かるとしよう。肉じゃがと言ったら、まずはじゃがいもじゃ。皮……を剥くのは面倒じゃ。指を切るわけにはいかんし。取り敢えず鍋に水を張って芋を入れて、火に掛けよう。いや待て、先に調味料も入れてしまおう。確か肉じゃがは、醤油と酒と味醂と……ああそうじゃ。砂糖もじゃ。あとは……なんじゃったっけ? 出汁も入れたような……。お、乾燥昆布があるな。これも芋と一緒に入れておこう。分量は、……まぁ沢山入れておけば美味くなるじゃろ。小さじとか、大さじとか、いちいち計るのは面倒じゃ。被身子じゃって目分量でやっとるし。

 

「ちょぉおっと待った廻道ちゃん! 何してるの!? ねえ何してるの!?」

「うるさいのぅ。見ての通り肉じゃがを……」

「みんな! 廻道くんを調理場に立たせてはいけない! 食中毒を起こしては雄英の恥!!」

 

 ぬおっ。おいっ、急に後ろから引っ張るな。誰じゃ、無理矢理儂を抱き寄せたのは。被身子が見とるんじゃぞ。後で儂が大変じゃから、気安く触れるなっ。

 葉隠、貴様。後で責任取れ。被身子が妬いたら大変なんじゃからな?

 

「今ので分かったと思いますが、絶対に一人で料理させないで欲しいのです。さもないと全員、お腹が痛くなっちゃいますから」

「はい! 渡我先輩!!」

「貴様等……!」

 

 解せぬ。解せぬぞ。何で儂を調理場から遠ざけるんじゃ貴様等。こんな時だけ一致団結しおって。たまには儂にも料理をさせろっ。これでも病人食は作れるんじゃ! 肉じゃがぐらい作れるに決まっとるじゃろ!?

 

 

 

 

 

 で、この後。儂は何もさせて貰えなかった。下準備も調理も、皿出しも盛り付けすらも。唯一許されたのは、全員分の箸を配ることだけじゃった。まさか皿洗いすらさせて貰えないとは……。

 

 何でじゃ。何で貴様等、儂に料理をさせないんじゃ?

 

 おかしい……。解せぬ……。何でなんじゃぁ……!









※円花の料理はダークマター。病人食はトガちゃんへの愛情たっぷりなので成功します。でもトガちゃんが風邪を引いてなかったら、ダークマターです。

三人称による補完は要りますか?

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