待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「君は子供の命を見捨てられない。さぁ、どうする?」
……! この、性悪! 最低じゃ貴様っ! 儂があんなに楽しんでいたのに、水を差すような真似をしおって!
貴様等とて、楽しかったじゃろう!? 儂と呪い合えて、愉快じゃった筈じゃろう!? なのに何でこんな真似! こんな真似を……!!
ふぅう……。落ち着け、落ち着け……。今頭に血を上らせても仕方がない。あの背広男の意図がどうであれ、この場に常闇や舎弟が来てしまった。ついでに
儂は、手の届く範囲に居る子供を見捨てたくない。助けられるのなら、助ける。そういう生き方を、今になって曲げるつもりはない。この状況を作ってしまったのは、儂じゃ。あの時、呪霊の誘いになど乗らずに居ればこんな事にはならなかった。
じゃから、じゃから……。まっこと不服ではあるが、今は抑えろ。もう楽しい時間は終わりじゃ。ここからは、二人をただ守ることだけ考えれば良い。
くそっ。つまらんつまらん、つまらん! 何でいつもこうなるんじゃ! 儂はただ、心行くまで楽しみたいだけなのにっ!
「ふぅう……。……、お主等、無事か?」
無理矢理気持ちを切り替えて、ひとまず二人の無事を確認する。常闇も舎弟も、体に傷はない。拉致されたことで精神的に疲弊しているかもしれないが、取り敢えずは大丈夫そうじゃ。
悪党達への警戒を怠らず、二人に近寄る。ついでに常闇と舎弟の頭を撫でておく。気が抜けない状況であることは確かじゃけれど、少しぐらいは安心させてやりたい。
「廻道こそ、大丈夫か? 酷く……血塗れだ……」
「大丈夫じゃ。見てくれはこんなでも傷ひとつ付いとらん」
「無事かどうかは見りゃ分かんだろ! こんな時に気ぃ抜いてんじゃねえっ!!」
……喧しい奴じゃ。少しは人の気持ちを分かれ、小僧。そんなだから貴様は腫れ物みたいに扱われるんじゃぞ?
と、言ってやりたいところじゃけど、今はこやつが正しい。周囲には大勢の悪党。更にそれなりの実力がある呪霊が二体。気を抜くのは事が済んでからじゃ。これから儂等三人は、目の前の悪党共をどうにかしなければならない。倒すにしても、逃げるにしてもじゃ。
まずは、この状況をどうにかしなければ。子供達二人を守りながら、悪党達と戦う。数はこちらが不利じゃから、無傷で守ると言うのは流石に難しいかもしれん。さて、どうしたものかのぅ……。
「手短に伝えんぞクソチビ。オールマイトが来てる。
黒靄と火傷面はさっき気絶させられてるのを見た」
「ここは、助けが来るまで時間を稼ぐしかない。……か」
「そう言ってんだよ鳥頭!」
……。なるほど。儂が楽しんでいる間に、どうやら状況は好転しているらしいの。問題が有るとするなら、いつ
しかし、背広男が領域展開してくる可能性を考えたら……まだ使わぬ方が良いな。今この状況で領域の押し合いをすることは出来ぬ。あの男がどれだけの呪霊を操っているのか分からぬ以上、術式が焼き切れるような真似は避けなければ。呪力量にはまだまだ余裕があるから、持久戦になったとしても問題はない。
ただ、助けが来るまで二人が持ちこたえられるかどうか……。訓練と実戦は、違うからの。どうにかして助けが来るまで、時間稼ぎを……。
……。何を馬鹿な事を考えておる。助けが来ることを前提に考えるな。助けなど来ない。そう思って行動しろ。何故なら、帳が降りている。ならば、おおるまいとはまだしも他の
「儂が主体。お主等は援護。体育祭の要領で行こう」
「……駄目だ廻道。下がってくれ」
「何でじゃ? 儂が前に立った方が……」
「渡我先輩と約束した。廻道を見付けて、無事に連れ戻すと」
「てめえ等がサポート、俺がメインだ。きちっと俺を目立たせろやクソチビ、鳥頭」
おい。待て貴様等。なに勝手に話を進めてるんじゃ。貴様等こそ、後ろに下がれ。だいたいっ、いつそんな約束を被身子としたんじゃ常闇っ。儂と別れた後か!? そんな約束、今は拘っている場合じゃないじゃろっ!
「つー訳でよお! 生憎こっちはクソチビに怪我ひとつさせられねえんだわ! 迷子は家まで送ってやんなきゃなんなくてよお!!」
こ、小僧……っ。貴様まで訳の分からんことを言うな! 何なんじゃ貴様等っ。儂より弱いくせに、変な強がり方をするんじゃないっ!
相手には呪霊もおるんじゃ! 今の貴様等二人には見えてないじゃろっ。
ああ、もうっ。少し待たんか悪党共っ! それぞれ動き始めるんじゃない!
「赤縛っ」
ひとまず、常闇と舎弟に近付く悪党共に血を飛ばして牽制する。それぞれに向かって放った血の縄は、避けられたり防がれたりしておる。が、一人だけ……スピナーとか言う悪党は赤縛を避け損ね、足を縛られ転んだ。とぅわいすとやらが慌てて助けに動いておる。後の連中は真っ直ぐ儂等に向かって駆けている。
「死ぃいねやあぁあ!!」
おい小僧。景気よく爆破するのは良いが、爆炎や煙で視界を遮るなっ。そんな真似したら、だぁくしゃどうが動き難いじゃろうが。現に、まぐねやこんぷれすの相手をしているだぁくしゃどうが涙目じゃ。
仕方ない。出来る限り二人を援護してやるとするか。始まってしまった以上、もう悠長にはしてられん。場合によっては、この場に居る連中を一人残らず殺さねば。簡単に殺せそうなのは、呪霊と背広男を除いた悪党共だけじゃけど。
悪党達の奥で、一つ目が動いた。姿が消える。が、幸いあやつが見に纏う呪力の軌跡は見えた。
「っ、常闇!」
直ぐ隣に居る常闇を押し倒し、二人して地面に倒れる。直後、儂等の真上を炎が通り過ぎた。同時に、だぁくしゃどうが引っ込んでしまう。
あの一つ目は、常闇にとっての天敵でもある。しかも常闇からは、姿が見えぬ。突然現れる火など、堪ったものじゃないじゃろう。どうにかしなければ。しかし、この場に
「そのまま伏せてろ!!」
「っっ」
今度は、爆炎が儂等の上を通り過ぎる。同時に、どうにか常闇を引っ張ってその場から動く。小僧の奴、無茶苦茶しおって……! たまたま一つ目に爆破が当たったから良いものを……!
ちょうど良い。常闇を連れて、もう少し離れなければ。あの一つ目の動きは早く、速度だけならかなりのものじゃ。
「おい! 呪霊居んのか!?」
「二体な! 火を出す奴と、植物を操る奴!」
「二体も居んのかよ! ざっくり位置教えろや!!」
いや、位置を教えたところで貴様の個性じゃ呪霊を傷付けることは……。くそっ、考えてる余裕が無いっ。
「飛べ小僧!!」
「ああ゛っ!?」
舎弟が、爆破を駆使して真上に飛んだ。それから一瞬遅れて、地面から木の根が飛び出した。周囲には植物は無いと言うのに、何であの枝は木の根で攻撃出来る? あの木の根、実物じゃないのか?
いや、考えてる場合ではない。枝の奴が、小僧に意識を向けている。
「っ、もっと高く飛べ!」
「命令してんじゃねえぞクソがっ!!」
いちいち文句を言わんと空も飛べんのかこやつ!? まぁ良い、もう一度真上に向かって飛んでくれた。小僧が射程無いから逃れたからか、あやつの意識は儂……ではなく常闇に向いた。くそっ、徹底して二人は狙うつもりかっ。面倒この上ないっ。
常闇を抱き抱え、呪力と赫鱗躍動を併せて跳び退く。悪党から大きく距離を離すことは出来たが、一つ目も枝も距離など関係無い術式を持っておる。
悪党よりも、呪霊を何とかしなければ。しかし、枝との距離が遠い。だけではなく、一つ目の姿も見えん。何処に行……っ、背後か!! いかん、もう一度……!
「か、廻道……! 離してくれ……っ。抱き締められるとドギマギする……!」
「喧しい! 阿呆か貴様っ!?」
常闇を抱き締めたまま、無理矢理跳んだ。が、炎が背中を掠めた。熱いが、怯んでなど居られぬ。熱による痛みは無視して、今度は一つ目を視界に入れたままもう一度跳ぶ。これはいかん、舎弟から離れてしまっている。あやつはまだ空に居るようじゃが、安心は出来ぬ。一つ目が火を放ったら、舎弟は焼かれてしまうっ。
「行け、ダークシャドウ!」
「任セトケ!」
って、こらっ。動くな常闇! 何を考えてるか知らぬが、だぁくしゃどうを動かすなっ。
「だっ、てめ! 引っ張るんじゃねえっ!」
だぁくしゃどうが、宙に居る舎弟を抱き抱える。そして、直ぐに儂等の側まで戻ってきた。動きがいつもよりずっと早い気がするのは、今が夜じゃからか? それとも個性伸ばしの成果か? いや、良い。感心している場合ではない。
「てめえ鳥頭! 俺は飛べんだよ連れ戻すな!」
「悪い! けど呪霊が居るんだ、廻道から離れたらやられるっ」
「勘でどうにかすれば良いんだよ! 空気の感じで分かれや!」
「おい、喧嘩するなたわけ」
め、面倒じゃ……! とにかく面倒じゃっ。舎弟は直ぐ常闇に突っ掛かるし、常闇も常闇で勝手に動くし。今こうして居る間にも、悪党や呪霊は動いているしっ!
「円花ちゃん。ちょっとこっちに来なさいね……!」
「っっ!?」
な、何じゃおいっ。体が浮く。と言うかまぐねに向かって引っ張られておるっ。咄嗟に常闇を離すと、その瞬間儂の体はまぐねの居る方に引っ張られた。あやつの個性か? くそっ、今は厄介じゃっ。まずはあやつから何とかせねば、分断されてしまう!
「マドカッッ!」
「ぬおっ! 馬鹿、離せ!」
「離してたまるか!」
まぐねに引き寄せられている儂を、だぁくしゃどうが掴んだ。阿呆、何しとるんじゃ常闇っ。別に儂は大丈夫なんじゃから、下手に抗おうとするな!
「俺等を忘れちゃ困るぜ。廻道円花」
直ぐ側に、死柄木が居る。いや、死柄木だけではない。こんぷれすもじゃ。更に、一つ目の姿まで見えた。これは、いかん……!
「俺を無視してんじゃねえぞ!!」
今度は、小僧まで飛び出しおった。爆破で加速しながら、こっちに向かって来ておる。おい、この状況で儂を助けようとするんじゃないっ。それこそ悪党共の思う壺じゃろっ!?
いかん。まっこと、いかん。この状況は駄目じゃ。何とかしなければいけない。咄嗟に周囲に向かって血を飛ばす。今度は切り裂くつもりで、血の刃を幾つも。しかし、次の瞬間。
儂の体は、地面から飛び出た木の根に再び貫かれた。
「あ、ぐ……っ!」
腹に風穴が開く。地中から飛び出てきた根のせいで、だぁくしゃどうの手が離れた。舎弟が目を見開いておる。左右から迫っていた悪党二人は、いきなり足を止めた。儂の腹が貫かれたことが、想定外じゃったらしい。
「ぬ、ぐっ」
どうにか、腹を貫く木の根を殴り砕く。体は地面に落ちた。歯を食い縛り、術式で無理矢理血を止めて、跳ぶ。と、だぁくしゃどうに抱き留められた。
「か、廻道っ!」
「マドカ!」
喧しい、騒ぐな。内臓は消し飛んだが問題は無い。死ぬかもしれん大怪我を負ってしまったが、まだ生きているから大丈夫じゃ。
じゃから、そんな慌てた声を出して儂に駆け寄るな常闇。直ぐそこに、一つ目が居るんじゃ。枝もまだ、儂を見ている。畳み掛けてくるつもりじゃから、儂に近付くな……っ!
「―――っっ、廻道!!」
その時。だぁくしゃどうが膨れた。いや、巨大になった。おいおい、何じゃそれ。そんな事が出来るのか、だぁくしゃどうは。そんな真似が出来るのなら、普段から使わんかっ。
「おいおい、何だそりゃ……っ」
「やばっ、逃げろ!」
「これは、とんでもないわね……!」
悪党三人が、慌ててその場から離れる気配がする。から、直ぐに
「お、ぉおおおおっっ!!」
この、阿呆……! 短絡的に、激怒するな! こら、儂は大丈夫じゃ! 常闇もだぁくしゃどうも、少し落ち着けっ。
「おい、クソチビ! てめえ大人しくしとけっ」
傷を治し立ち上がろうとすると、今度は小僧に抱き抱えられた。おい、何でさっきから貴様等は儂を抱き抱えようとするんじゃ。止さぬかたわけっ。被身子以外にこんな事をされたって儂は何も嬉しくないんじゃ。まして戦闘の最中に、儂を助けようとするな!
「離せ阿呆っ! 怪我なら治したっ! 大丈夫じゃ!」
「ああ゛!? 怪我治せんのかよ、どうなってんだっ!」
「
無理矢理、小僧の腕の中から逃れる。戦場は、滅茶苦茶となり始めた。巨大化しただぁくしゃどうが好き勝手に暴れ、
相手がただの悪党だけならば、放っておいても良いじゃろう。しかし今は、呪霊まで居る。だぁくしゃどうの巨大さに一瞬面を食らったようじゃが、もう動き始めておる。一つ目が常闇に向かっていくのが見えた。いかん、どうにかしなければ……!
もう、領域を躊躇っている場合じゃない。術式は使えなくなってしまうが、子供の命を守るためならば仕方がない。
「領域」
呪力を練り上げ、掌印を組む。その時、何かが砕ける音がした。赫鱗躍動で引き上げた動体視力でも捉えるのがやっとの、高速の何かがこの場に飛来する。そして一つ目を、枝を、
そして最後に、もっとも奥で事を静観していた背広男に向かって拳を振るった。
「―――全て返して貰うぞ! オール・フォー・ワン!!」
「まさか君まで呪力を得てるとはね……! また僕を殺すか?! オールマイト!!」
※おや? かっちゃんの様子が……? 常闇くんはガチギレ中です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ