待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「君達、無事か!?」
誰じゃこの、ぴちっとした男。でにむ……とか言う素材の服で全身を固めておる。奇っ怪な。儂は知らんぞこんな奴。いや、そんな事は良い。それよりもじゃ。
おおるまいとが、帳を破ってこの場に来た。だけではない。続々と、
おおるまいとの動きを僅かでも目で追えるとするなら、それは才能と言って良い。もしかすると、もしかするかも知れぬ。あの背広男は後継者を探していると言った。……手小僧が後継か?
分からん。分からんが……警戒しておくに越したことは無い。
「よく頑張った! 後は我々プロに任せて、君達は下がろう。なに、これだけの面々……直ぐに終わらせる!」
「小僧! 常闇を止めれるか!?」
「余裕に決まってんだろ! 目え閉じてろクソが!!」
「待て! バクゴー!!」
でにむ男の制止を振り切り、舎弟は飛んだ。直線的に、全速力でだあくしゃどうへと向かっていく。未だ暴れているだあくしゃどうに躊躇いなく突っ込む度胸は、後で褒めてやるとしよう。あやつ、どうも惜しいんじゃよなぁ。呪力さえ持っていれば、儂が呪術師として鍛えてやっても良いのに。
っと、いかん。余計な事を考えてる場合ではない。もう舎弟が、巨大化しただぁくしゃどうの背後を取った。次の瞬間に備え、儂は目を逸らす。巻き込まれては不憫じゃから、側に居たでにむ男の胸ぐらを掴んで屈ませる。
「ギャッ!!」
派手に光った。と思ったら、大暴れしていただあくしゃどうが小さくなって常闇の中に避難した。あやつは個性の制御が課題じゃの。あれだけの力、今度是非味わってみたい。きっと楽しい。たまには、くらすめえと達と力比べするのも悪くないかもしれんのぅ。
「頭冷えたか鳥頭! 手間かけさせんじゃねえっ!」
「ぐ……、すまない。頭に血が上った……」
「どうでも良いわ! さっさと動け! 呪霊がそこに居んだわ!」
……。舎弟、あやつ少し変じゃの……? さっきもそうじゃった。呪霊は見えていない筈なのに、一つ目の奴に爆破を直撃させていた。空気がどうとか宣っていたが、どういう理屈で察知しとるんじゃ? ただの偶然か……? それとも、儂の知らん方法で呪霊を察知している?
細かい事は、後で確かめるとしよう。おい待て小僧。貴様なんで常闇の襟首を掴んだ? 何をするつもりじゃっ!
「死ねえぇえ!!」
こらっ! 常闇を爆破で投げ飛ばすなっ! 貴様何を考えて、ああもうっ。
「常闇っ」
飛んで来た常闇を、どうにか抱き留める。ぐえっ、鳩尾に嘴が刺さった。術式と呪力で体を強化していても、痛いものは痛い。倒れこそしないものの、勢いで少しばかり体が後退したのも事実。くそっ、あやつ覚えてろよ!? 後でやり返すからなっ!? 儂の親友を思いっきり投げおって……!! 後でお灸を据えてやるから、さっさと貴様もこっちに来んか小僧!
「っ、すまん廻道。ありがとう」
「無事なら良い。しかし、派手に暴れたのぅ」
「……頭に血が上った。ところで、はな、離してくれ……っ!」
「おぉ、すまんすまん。お主の頭は抱き心地が良い感じでの」
つい撫で回してしまうんじゃよなぁ、この鳥頭。それはそれとして、一つ目と枝に目を向ける。何じゃこやつ等、とっくに傷は治っているくせにまだ動こうとせん。儂を待っている……ように見える。
なるほど。その気になったわけじゃ。少しずつ儂を消耗させても
「よし、常闇。舎弟と逃げろ。後はもう、大丈夫じゃ」
「駄目だ廻道。逃げるなら一緒だ」
「良いから帰れ。儂は、大丈夫じゃから」
この戦場の奥では、おおるまいとと背広男が戦っておる。二人で楽しみおって。儂を仲間外れにするのは許さんぞ。気絶している悪党共を名前も知らん
ならば、儂がこの場から離れることは出来ぬ。個性だけでは呪力に立ち向かえない。一つ目と枝も居るしのぅ。外から
つまらない時間がようやく終わる。ここから、ここからじゃ。もう一度楽しい時間を……!
「ダークシャドウ!」
「は?」
ちょっ、こら……! 何を考えてるんじゃ常闇っ。儂をだあくしゃどうに抱えさせるな! この場から離れようと駆け出すんじゃないっ。おいっ、空を飛ぶな! だあくしゃどうの背に立って空を駆けるなっ! 小僧は小僧で、少し離れたところを飛んでおるし! だあくしゃどうに気を遣えるなら、儂にも使えっ!
やじゃやじゃ! 儂はここに残るんじゃ! 残ってあの一つ目や枝と思う存分呪い合いたいっ!
じゃからっ、邪魔をするな!! 本気で殴るぞ!? だあくしゃどうの横っ面を殴り抜いて良いのか!?
「んな時にじゃれ合ってんじゃねえっ! 鳥頭! さっさとクソチビ連れて逃げやがれ!!」
「分かってる! お前も来い!」
「俺に命令してんじゃねえ! さっさと動けや!!」
「任セロ! モウ怪我サセネェッ!」
ぐぬぬっ。貴様等、貴様等ぁ……っ! 儂から楽しい時間を取り上げるつもりか!? じゃけど、そうはいかんからなっ!? 今回ばかりは譲らん!!
そもそも! 儂を抱えて逃げたら呪霊共が追っ掛けて来るじゃろうがっ!
あぁ、遠ざかってしまう……! けど、大丈夫じゃ。あやつ等は追って来るじゃろう。こうなったらひとまずはこやつ等に身を任せて、この場から距離を離す。下手に戦場に居ては、
ある程度の距離が離れたら、その時はだぁくしゃどうの腕から逃れよう。そして今度こそ、誰にも邪魔されない楽しい時間を過ごすんじゃっ。よし、それで行こう! そうしよう!!
起き上がった脳無達が、
いかん。いかんぞ。羨ましがってる場合ではない。何せ一つ目の奴が、儂等に向かって走っている。途中、たまたま一つ目の進行方向に居た
……もう、追い付かれるな? ここまでじゃ、すまん常闇。あと舎弟も。
「行け、儂が
だあくしゃどうの腕を払い、地面に着地する。そして儂は、来た道を駆け戻る。常闇も舎弟も、ここまで来れば巻き込まれることはないじゃろう。呪霊共は、わざわざ儂を深追いして来たんじゃ。どうしても儂の命を奪いたいらしいの。
まぁ、死んでやるつもりは毛頭無いが!
「っ、駄目だ! 廻道!!」
「てめっ、クソチビ! 何やってんだ!!」
さぁ、もう一度楽しい時間がやって来た。向こうの戦場から大して離れられていないが、十分じゃろう。
今度こそ。今度こそっ! 満足するまで呪い合おう! 儂は逃げも隠れもせんぞ、呪霊!!
◆
儂に向かって真っ直ぐ向かってくる一つ目に、儂も駆け寄る。距離は一瞬で縮まり、お互いに拳を振りかぶる。
「廻道! 円花!!」
「喧しい!!」
儂が勢いのままに右拳を突き出すと、まったく同時に一つ目も右拳を突き出した。こやつと儂の拳は激突し、互いの呪力がぶつかり合ったことで四方八方に呪力が散る。衝突により生み出された衝撃は凄まじく、肩どころか上体に響く。
拳のぶつけ合いで打ち勝ったのは、儂じゃ。儂の拳が、一つ目の拳を思いっきり砕いたからの。じゃけど、油断はしない。この呪霊は、どうせ直ぐに傷を治す。と言うか治せる。身体の一部が砕けた程度では、呪霊は死なん。確実に祓うには、頭を潰すしかない。
早速手傷を負ってしまった一つ目は顔を歪めながらも、左手を突き出してきた。やはり呪力の流れが分かりやすい。術式を使おうとしてるのか、そのまま呪力で儂を殴ろうとしているのか。そこまでの判断は付かぬが、一つ目の動きは目で捉えられる。
突き出された左手を、左手で打つ。耐える自信はあるが、わざわざ焼かれてやる理由も無い。それから腹を蹴ると、一つ目は血を吐きながら数
どうやら、枝の奴も追い付いて来たようじゃの。良い、良いぞ。ここからは一対二じゃっ。
一つ目を追撃しようと前に踏み込むと、足元に花畑が広がった。おぉ……、綺麗じゃのぅ、お花畑。やはりそのうち被身子と一緒に、ぐえっ。
「げほっ、性悪め……!」
花畑に気を取られていると、足元から飛び出てきた木の根が腹を突き刺した。幸いにも、体が吹き飛ばされた。また貫通などしたら、面倒じゃからの。しかしまぁ、あの花畑は鬱陶しいのぅ。いちいち気が緩んで仕方ない。あの枝、庭園でも作った方が良いんじゃないのか? 良い庭師になれると思うぞ??
吹き飛ばされてしまったが、何とか体勢を整えて着地する。それと同時に首や手首から血を飛ばすと、一つ目の出した火とぶつかった。当然、負けるのは儂の血じゃ。血を燃やし尽くしても勢いが衰えない火を寸前で避け、両手を叩き合わせる。が、地面から飛び出て来た木の根で両手を弾かれた。百斂を囮に相手を誘う動きは、こやつ等相手ではもう出来そうにないな。
ひひっ。学習しておる。儂を呪う為に、殺す為に、あの呪霊達が成長しようとしている。嬉しい。嬉しいのぅ! 嬉しくて嬉しくて、つい駆け出したくなるっ。
よし、駆けるか! この喜びのままに、真っ直ぐあやつ等に向かって駆けよう! そして祓おうっ!!
【漏瑚、ここは私が。貴方はもう下がってください】
「余計なお世話だ。まだやれる。儂とお前で、廻道円花を殺すぞ」
儂を前にしながら、呑気に話おってっ。許さん、許さんぞ! もっと儂に集中せんか貴様等っ。儂を殺すことだけを考えて動け!
決して近くはなく、けれども遠くもない距離。それを強化しきった体で駆け抜け、もう一度一つ目の前に立つ。拳を握り振りかぶりながら、体外に出した血液を大きな刃にし、枝に向かって飛ばす。そして直ぐ、一つ目を殴るっ!
儂の一連の動きを前に、枝も一つ目も再び術式を操る。が、させぬ! 一つ目が両手から火を放つ前に、その両手を殴り弾くっ。枝には追加で血液を飛ばし、術式の使用に集中させないっ。
「どっ、こいせえっ!」
両腕を弾かれて無防備になった一つ目に、全体重を乗せて拳を叩き込む。手応えは……。
「がはっ!」
あるのぅ! この軽い体に腹を殴られた程度で、血を吐くな。たわけっ。そんなじゃからこの時代の呪霊は弱いんじゃ! もっと根性を見せぬか根性を! 貴様等はまだ骨がある方なんじゃから、もっともっと気張って見せろ!!
吹き飛んだ一つ目に向かって、駆ける。また足元から木の根が飛び出て来たから、前方に跳躍することでそれを避ける。着地と同時に一つ目を潰すため、宙で足を振り上げ狙いを定めた。が、一つ目を庇うように枝が立ち塞がった。ならば仕方がない。貴様を踏み潰すことにしよう。
振り下ろした踵が、枝の顔面に触れた。その際、目玉の位置から飛び出ている枝が砕けた。
……ほう?
「まだじゃ!」
着地と同時、赤縛を放ち腕を体に縛り付ける。それからもう一度、顔面を殴り抜くっ。
あぁ、やはりそうか。こやつ、顔面の枝が弱い。どうやらそれ以外の部分は頑丈のようじゃが、弱点が分かった以上はそこを攻めさせて貰おうか!
「くそっ、花御!」
鈍いっ。鈍いのぅ。今更慌てて、枝を助けようとするな。貴様が直ぐに動かぬから儂は枝を何度も殴れたし、貴様が動く頃には枝の前から離れている。二歩三歩と距離を取り、今一度両手を叩き合わせて音を立てる。
「ちっ!」
儂に穿血を撃たせまいと、一つ目が火を飛ばして来た。股を割り体を下に落とし、火そのものを避ける。開脚姿勢のままじゃが、百斂は継続中じゃ。その事に気付いたのか、よろけていた枝が儂に走り向かう。が、それでは遅いっ。
「穿血」
片膝をつき、同時に血を放つ。止められることなく放つことが出来た穿血は、枝の腹を容赦なく貫いた。が、枝は腹に風穴を開けられても倒れない。やはり頑丈じゃなこやつは!
【……もう引きなさい漏瑚。貴方まで祓われることはない。巻き込まれぬよう、下がって】
「……!」
おい、待て貴様っ。何で下がって行くんじゃ! 逃げるな! もっと儂を楽しませてくれ! おいっ。おいったら!
【廻道円花。今の我々では、やはり貴女は手に余る。……しかし、これならばどうでしょう?】
おっ。おぉ……! 何じゃ貴様、いきなり呪力を立ち上らせて。掌印まで組んで! しかも何じゃ貴様っ! 左腕を生やせるなら、最初から生やさんか! まぁそんな事は良い。それよりもじゃっ。やはり、使うつもりじゃな? もっと早く使えと思わなくは無いが、まだやる気があるのなら幾らでも付き合ってやるっ。
【領域展開―――】
世界が、塗り変えられていく。呪力が迸り、儂を閉じ込めようと結界となる。良いじゃろう、招かれてやる。誰かの領域を体感するのは、久しぶりじゃ! これから更に楽しくなるなんて、今宵は何て素敵な日じゃっ!
【
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ