待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「で、いつまで待たせるつもりじゃ?」
警察署に向かった後。儂を待っていたのは、警察による簡単な事情聴取と手厚い保護。灌水浴に新しい着替え、食事まで振る舞って貰った。そこまでは良かったと思う。被身子が迎えに来る前に体を綺麗に出来て良かったと思うし、食事については……まぁ良しとする。儂の聴取に当たった女性警官の善意で振る舞われたものじゃし。味についての不満は口にしないでおいた。
ただ、その後が問題じゃ。儂、机と椅子が置かれただけの部屋で二時間も待ち惚けさせられている。何でも、儂と話したい奴が居るそうじゃ。誰だか知らんが、いつまでも待たせないで欲しいの。部屋から出ようとすると、扉付近で椅子に腰掛けた警官に止められるし。厠に行くのもいちいち許可を取らねばならんから一苦労じゃ。
……何でこんな扱いを受け取るんじゃ儂は。犯罪者になった覚えは無いんじゃけど。いやまぁ、今回件で術式を使い続ける羽目になったから法には触れてしまってんじゃが。しかしそれならば、くらすめえと達だけが帰された理由が分からん。聞くところによると、常闇や舎弟は警官に家まで護送されたとか何とか。何で儂だけ部屋に閉じ込められとるんじゃ? 解せぬ。
「も、もうそろそろ着く筈だから待ってね。騒動のせいで、交通網が麻痺してるみたいで……」
「それは一時間前にも聞いた。帰って良いか? 儂、早く帰りたいんじゃけど」
「んん〜〜。その、貴女は今回の事件の重要参考人だから……まだ帰してあげられなくって」
「常闇と舎弟は帰したのに?」
「……えっと、もう少し待ってようか。そうだ、コーヒーでも飲む?」
「飲まん」
と言うか、飲めん。珈琲は嫌いじゃ。
どうやら警察としては、何がなんでも儂を帰したくないらしいの。しかし上からの指示に疑問があるのか、扉の前の警官は儂が話し掛ける度に困惑して落ち着きが無い。重要参考人をここまで引き留めようとする理由は分からぬが、儂に落ち度は無いと見た。儂を犯罪者として拘束しているのなら、こんな風な態度は見せぬ筈じゃからの。
この調子じゃと、あと何時間待たされるかも分からん。困ったのぅ。あまり帰るのが遅くなってしまうと、被身子や両親に心配されてしまう。ただでさえ今回の事で心配させてしまったと言うのに。もしかして儂、今日中に帰れなかったりするか? それは勘弁して欲しいが、有り得ん話でもない気がする。
なんて思っていたら、部屋の扉が控え目に叩かれた。もう何時間も儂と共にこの部屋に居る警官は勢い良く立ち上がり、静かに扉を開く。扉の向こうに立っていたのは警官二人と、赤い翼が目立つ男。それと、すうつ姿の眼鏡男じゃ。赤い翼の方は、間違いなく
誰だか知らんが、儂を何時間も待たせおって。許さん。
「あー、えっと。はじめまして、廻道円花さん。俺はホークス。常闇くんの職場体験先って言えば分かるかな?」
にやけた顔で、
いやまぁ、舎弟と比べたらこんな男でも良い方かも知れんが。少なくとも髪型の強制はしておらんようじゃし。
「良いんですか? 未成年を不当に拘束して。幾ら重要参考人だとしても、やり方ってもんがあると思うんですけど」
「任意の事情聴取が長引いたという事で済ませます。既に残業ですが、手早く業務を片付けるとしましょう」
「……はいはい。さっさと終わらせましょう。何でもこの子、愛する婚約者が帰りを待ってるそうですから。早く帰してあげないと可哀想です」
扉が閉まる。気が付けばこの部屋には、ほおくすとやらと見知らぬ男、そして儂の三人のみ。女性警官は二人が部屋に入った時点で、直ぐに出て行った。
「はじめまして。私は公安委員会、そして今回新たに設立された呪術総監部の者です。正確には改めて設立された部署ですが、まぁそちらは良いでしょう」
「廻道円花じゃ。貴様は?」
「僅かに残された資料によると、呪術的に名前を名乗るのは悪手とのことで。呪われたら一溜まりないので、伏せさせていただきます。しかし、呼び名が無いと困るのは事実ですので……」
「……
「では七山とお呼びください。廻道円花さん」
……真面目なのかふざけているのか、まるで分からん奴等じゃ。この眼鏡男のどの辺が七山なのかまるで分からぬ。ただひとつ言えるのは、この二人が呪術に何かしらの関わりがある存在と言うことか。呪術総監部とやらが何かは知らぬが、この名前を聞くのは初めてじゃない。あの背広男も口にしていた。
総監とか言ってるわけじゃし、官職か? 呪術の官職? そんなもの、この国にあったんじゃな。
「呪術総監部と言うのは、簡単に言えば呪術師を管理する政府機関です。とうの昔に解体されていた機関ですが、最近頻発している事件を機に急遽再建されまして」
「……で。その呪術総監部が儂に何の用じゃ?」
「この超常時代初の呪術師が貴女だからです。子供を特別扱いするのは気が引けますが、貴女が特別な力を持っていることは事実ですので」
「誰から聞いた?」
別に、呪力や術式を隠している訳ではない。最近は話す機会が多く、くらすめえと達全員も知っている事じゃ。ただ、学校関係者や家族……そして被身子以外には話していない。情報の出所は、雄英かくらすめえと達のどちらかじゃろう。ただ、くらすめえとが国……つまり公的な機関に話したとは思えん。となると、恐らくは教師の誰かじゃろう。別に必要と思ったなら誰に話しても構わんが、せめて儂に一声掛けてくれ。急に公安だの総監部だのが接触してきたら、何事かと警戒してしまうから。
「今回の事件……雄英生徒拉致事件とでも言いましょうか。この事件、拉致された被害者の情報を出したのは根津さんです。万が一が有り得ると言うことで、事件以前より貴女の持つ力について公安や警察に情報共有を為されました」
「儂が呪詛師になるとでも思ったのか? あの鼠……」
「いえ、最悪は貴女が殺害されることで
……そう言えば、そうじゃったの。保須市での事件の後、儂はおおるまいとから警察に呪力や呪霊について話して貰っていた。更には今回の拉致事件で、ようやく国が動く気になったと言うことか? 対応が後手に回り過ぎている気がするが、組織というものはそんなものじゃ。ましてわざわざ総監部を再建したとなれば……、まぁ詳しいことは分からぬが対応が遅れるのも仕方がない。と思うことにする。本音は、さっさと接触して来いの一言に尽きるが。
「今回の拉致事件解決に当たって、プロヒーローが何人か負傷してね。エッジショット、シンリンカムイ、Mt.レディが重度の火傷を負ったんだ。突然間近で炎が発生して。特にエッジショットは、手先の火傷が酷かったとか。
ヒーロー達の目撃証言から、君や君の友人が何もない空間目掛けて攻撃している事も確認してる。信じ難いけど、呪霊が居るって言うのは間違いないってことだよね?」
「そうじゃ。あの場には呪霊が居た。火を操る呪霊と、植物を操る呪霊。後者は祓ったが、火の方は何処かに消えたの」
あまり良い気分ではないのぅ。事実を話しているのに、疑われると言うのは。ほおくす、とか言う
「ひとつ失礼な事を聞きますが、五年前に国立図書館や国会議事堂、公安資料室や総理大臣邸宅で発生した呪術的資料の窃盗事件。これは貴女が?」
「は?」
何じゃそれ。知らん。疑いの目を儂に向けるな。何で儂がその事件に関わっていると思ったんじゃ。有らぬ疑いを掛けるでない。そんな真似しとらんし、する理由も無いんじゃけど?
「……知らないみたいですね。て言うかそれ、世間に公表されてない事件でしょ七山さん」
「だから聞いたんです。ですが今の反応を見るに、彼女では無さそうです。となると……呪詛師に分類される
……なるほど。あの背広男が呪術界の情報を独占していると言っていた理由はこれか。恐らく呪霊を使い、密かに集めて回ったんじゃろう。ということは……あやつが言っていた事は全て事実である可能性が高いのぅ。呪力からの脱却やら、呪術総監部の解体やら、五条の血筋がどうとか。まぁ五条の血筋については未だに信用する気がせん。
「ひとつお尋ねしますが、貴女は何処で呪術についての知識を? 誰かから教わりましたか? それとも、五年前に盗みを働きましたか?」
「……」
ううむ、困ったのぅ。何で儂が呪術について詳しいかなんて聞かれても、前世の記憶があるからとしか言えぬ。実は平安時代の呪術師で、何か知らぬがこの時代に産まれ直した。なんて言ったところで信じて貰えるとは思えん。幾ら個性が何でも有りみたいな力じゃとしても、流石に産まれ直すなんて個性は無かろう? そもそも、個性の出現は百二十年ほど前の話じゃ。平安時代とは、あまりに時代が違う。
どうしたものかの。上手い言い訳が思い浮かばん。こうなったら全て話してしまうか? いやしかし、流石に荒唐無稽というか。何というか……。
ああもう、細かい事を考えるのは得意じゃないんじゃ。そんな事、儂にさせるな七山と、ほおくす。
「……、分かりました。話せないのならそれでも構いません。縛りなる契約の線もありますし。では、最も大事なお話に入りましょうか」
「……そうしてくれ」
深く追究しないでくれるのは、助かる。訳の分からん話をせずに済むからの。で、最も大事な話とは何じゃ? ここまで話が本題ではないとは思わなかったが、したい話があるならさっさと済ませて欲しいものじゃ。このままでは、家に帰れるのが何時になるか分からぬし。
「廻道円花さん。呪術師として働くつもりはありませんか? もしその気があるなら、こちらの契約書にサインを」
「する」
「いやいや、即答って……。よく考えた方が良いんでしょ。これ読んでも同じ事言えるの?」
何じゃ貴様。儂を呪術師として雇いたいのが公安や呪術総監部の意思なんじゃろう? じゃったら、儂はその話に乗るぞ。そもそも断る理由が無い。今すぐ呪術師として活動出来るようになるなら、願ったり叶ったりじゃ。
「まずこれを読んで。分からないところがあったら、説明してあげるから」
「……これを読めば良いんじゃな?」
「そ。ちゃんと読んでね。その上で、改めて聞くから」
何だか知らぬが、ほおくすに紙を一枚渡された。随分と文字が細かい気がする。これを全部読むのか……。面倒じゃけど、目を通して置くとしよう。
……なになに? 呪術師の義務に関する覚書?
ふむ、なるほど。だいたい、と言うか殆どは平安時代に呪術師が守っていた事と同じじゃの。要するに、指命を果たして非術師を守れ。そして呪術は秘匿しろ。と言うことじゃの。特に問題はない。そうして来たつもりじゃし、そうしていくつもりじゃ。まぁ問題があるとすれば、既にくらすめえと達や教師に呪術について教えてしまっていることじゃ。
まさか署名した瞬間、罰せられるのか? じゃとすると、面倒じゃの。死刑になんかはならんと思うが……。ここだけ聞いておくか……。
「儂、既に秘匿を破っとるんじゃけど? これは罪に問われるのか?」
「いいえ。それらの義務は我々と契約をしてから発生するものです。それ以前のものは不問にさせていただきます。それ以外に質問は?」
「無い。署名しよう。これから呪術師として活動させて貰うが、構わんな?」
「そのつもりで来てますから。ただし、貴女を呪術師として認めるにはひとつ条件があります」
この期に及んで、まだ何か有るのか。仕方ない、聞いておいてやろう。
「保護者の承諾を得てください。貴女は、まだ未成年ですので」
……。……それは、ううむ……。いきなり困った。どうしようもないかも知れん。じゃってほら、
許可、貰えるかのぅ……? 貰えなかったら、儂はいったいどうすれば良いんじゃ……??
円花、スカウトされるの巻。当人乗り気ですが、保護者の承諾を得なければなりません。七山は呪術総監部にちゃんとした大人が欲しいと思ったので急遽産み出しました。公安絡みと言うことで、ホークスも登場させました。廻道家の出番はもう無いつもりでしたが、もう少しありそうですね。
それと呪術師の義務に関する覚書はだいたい呪術原作と同じになります。違う点は呪術高専が無いので、その辺りの義務が無いぐらいですかね。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ