待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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※呪術本誌のネタバレ注意になります。本誌で開示された設定はなるべく出さないようにしているんですが、ちょっとどうしても避けられそうになかったので。


時代の変化。

 

 

 

 

 

「くぁ……」

 

 うぅむ……。欠伸が、欠伸が出てしまう。昨晩、被身子を抱いた。と言うか、抱かされた。

 それ自体は良かったんじゃけど、つい盛り上がってろくに寝なかったのはいかんのぅ。でも、被身子は嬉しそうにしとったし、儂も楽しかったし……。たまには良いものじゃ、儂の方から抱くと言うのも。かなり気恥ずかしい思いはさせられたがの。でも、最後は被身子が笑ってくれたから……良しとしておこう。

 結局、何だかんだではあるものの被身子は儂が英雄(ひいろお)科に居続けることを許してくれた。今後は、心配させないようにしなければ。怖がらせるのも、駄目じゃ。まぁ、悪党(う゛ぃらん)連合の親玉は恐らく死んだ筈じゃ。生きていたとしても、牢の中。もう儂が狙われることは無いと思いたい。今回の拉致事件のような事は、二度と起こさぬ。被身子に嫌われたくないからの。

 

 被身子と二人で灌水浴(しゃわあ)を済ませ、揃いの着物に着替え終わると部屋の扉を誰かが叩いた。父か母でも来たのかと思って扉を開けると、そこに居たのは……。

 

「私が! 廻道少女に用があって、お話に来た!!」

 

 筋肉阿呆じゃった。しかし無駄に元気じゃ。血色も肌の色も、見違えるぐらいに良い。どう見ても普段の数倍は元気がある、気がする。じゃけど少しだけ、笑顔が違う気がする。

 ……そうか。やはりお主はもう……。そんな気はしていたが、実際に見せられるとなると少しばかり動揺してしまう。

 じゃって、あのおおるまいとがもう戦えないなんて信じたくない。こやつは本気の儂と呪い合える数少ない猛者なのに。あの時の続きはもう無いのだと実感してしまって、気が沈む。

 

「もう動けるのか。しばらく入院するものかと思ったが……」

「んん……実は、怪我はどうにかなってね。そもそも入院してない。それでどうしても直接、君に話したいことがあって」

「……入れ。少し散らかってるが、気にしないでくれると助かる」

 

 実は今、寝具(べっど)の上が大変な事になっていたりする。後ろで被身子が慌ただしくしているのは、少しでも見映えを良くしようとしているからで……。いや、違うの。被身子、風呂場に汚れた掛け布団なんかを投げ込むのはどうなんじゃ? 後で戻して置かねば。

 取り敢えずおおるまいとを部屋に案内して、椅子に座らせる。平然と動いていても、怪我人で有ることに変わりはない。それに、客人じゃからの。

 

「それで、話って何じゃ?」

 

 寝具(べっど)の端に腰掛けながら、早速本題に入ることを催促する。おおるまいとが、浴室から戻って来た被身子を見た。聞かれたくない話をしたかったようじゃけど、今回は諦めて欲しい。見ての通り、しばらくは儂から離れないからのぅ。こら、抱き付くのは良いが耳に接吻(きす)するな。人前じゃぞ、人前。まったく仕方ない奴じゃ。頭を撫でてやるから、それで我慢して欲しい。そんな不満そうにされたって、今は駄目じゃ。駄目ったら駄目なんじゃっ。

 

「……真面目な話になるんだけどね。(ヴィラン)連合のトップを、昨夜私が討ち取った。多分もう、君は(ヴィラン)に狙われない」

「そうか。あの背広男は死んだのか」

「今度こそ、間違いなく。だけど、死に際……ひとつ気になることを言ってね。

 廻道少女、呪術師や呪詛師は呪術的に死なない、もしくは生き返ることは可能だったりする?」

「……」

 

 可能か不可能かで言えば、可能じゃ。天元のように不死の術式を持っていれば、死ぬことは無い。歳は重ね続けてしまうがの。しかしあの背広男の術式が不死の類いだったなら、おおるまいとに殺されるなんて事は無かった筈。

 

「……あやつ、自らの術式について何か言っていたか?」

「幾つかは語ってくれたよ。呪霊操術と言う術式、五年前に死に掛けて……その時呪力を得たとも」

 

 呪霊操術? ……なるほどのぅ。だからあの男は、呪霊を従えてたのか。それはもう良い。死んだのであれば、今後悪党(う゛ぃらん)連合が呪霊を使役することは無いじゃろう。ただ、それよりも……。

 

 ……不死の術式以外で不死になる方法……? 不死、生き返り……生き返り? とある呪物が何処ぞの術師の成り果て、なんて話は聞いたことがある。ただそれは生きていると言えるのか微妙なところじゃ。死んでいると言うにも、微妙じゃけど。

 

 ううむ、分からんな。分からんが、有り得ぬと断ずることも出来そうにない。

 

「まぁ、可能性が無いとは言えん。何らかの手段を用いれば、死ななかったり生き返ったり出来るかもしれんのぅ。黒沐死なんかは二度も祓うことになったし」

「……黒沐死……? あぁ、ゴキブリの呪霊。

 ……廻道少女。呪術師や呪詛師が死後、呪霊になったりすることは?」

「有る。ただそれは呪力で殺さなかった場合の話じゃ」

「……呪霊として復活する線は無し、か。となると、あの(ヴィラン)は何か復活する術を用意しているのかも知れない」

「かもしれんの。それがどの程度のもので、いつ効力を及ぼすのかは分からぬが」

 

 あの背広男は死んだ。と、思われる。いきなり話がきな臭くなって来たの。あやつが生きているとするなら、また使役された呪霊が襲ってくるかも知れぬ。まぁ良い、猛者ならば大歓迎じゃ。

 

 しばらく、警戒しておくとするか。あの男が復活する可能性を視野に入れて、準備しておくのも良いかも知れん。

 

 それはそれとして、ついでじゃから聞いておくとするか。おおるまいとには、ひとつどうしても聞かなければならない。

 って、こら被身子。そんなにくっ付くな。然り気無く腹を擦るな。会話に混ざれぬからって、せくはらするのは止さぬか。

 

「おおるまいと。あの発言は何じゃ?」

「あの発言?」

「背広男を殺した後に言っていた言葉じゃ」

「……」

 

 ……。なるほど。その話をするには被身子が邪魔と。なら、仕方ないの。今度また、二人きりか緑谷を交えて聞くとしよう。

 

「……廻道少女。私ね、見てくれは元気でも……やはり以前のようには行かない」

「だから、円花ちゃんを平和の象徴にするってことですか?」

「いや、何を言っとるんじゃお主」

 

 急に話に参加して来たと思ったら、突拍子もないことを言いおって。儂、その話はしたくないんじゃけど? 世間がどう思っていようが、例えおおるまいとから頼まれることがあったとしても、儂は平和の象徴になどならぬ。それは緑谷が継いでいくものじゃ。儂が継いだり、背負ったりすることは決して無い。じゃから、平和の象徴の話をされても困る。

 

「だってオールマイト……先生、そんな感じの話をしようとしてますよね?」

「……まぁ、そうなるかな?」

 

 いや、確かにそう見えるかも知れんが。じゃけど儂は継がんぞ。継がんったら継がん。名を継ぐという行為にある種の憧れが無いと言ったら嘘になる。何せ継げなかったからの、当主の座を。

 

 ……そういう意味では、少し緑谷を羨ましく思う。平和の象徴と言われる男に、信じて託されたわけじゃからな。

 

「次の平和の象徴が必要になるとは、考えているよ。だけど、私の後継が現れるその時がいつになるかは分からないのも事実だったりする」

「その内、出てくるじゃろ。後世のひいろお(・・・・・・・)は信用出来ぬか?」

誰より信じてるよ(・・・・・・・・)。平和の象徴だった私が、信じないでどうする? って話さ」

「じゃったら、気にしなくて良い事じゃ。象徴が不在の間、多少世の中は荒れるかも知れぬがのぅ……」

 

 おおるまいとが、もう戦えない。時代の変化が訪れたと言って良い。こやつが居たことで日本の悪党(う゛ぃらん)犯罪率は、他国と比べて異様に低かった。それは平和の象徴が、一人で抑え込んで居たからに他ならない。その代償は、これから支払っていくことになる。

 日本の治安は、少しずつ悪くなっていくじゃろう。おおるまいとが現役の頃でも、悪党(う゛ぃらん)はそれなりに活動していたんじゃ。これから悪党(う゛ぃらん)共がどう動くかなんて分かりきっとる。そう考えると、今まで以上に悪党を警戒しなければ。被身子や子供達に危害が加わるのは、嫌じゃからのぅ。

 

 それにしても、遠回しに本題を進めるのは止めてくれ。被身子が気付いたら、お互いに大変じゃろ?

 

「……忘れてるみたいだから、もう一度言っておきます。円花ちゃんは、私のヒーローです! 盗らないでくださいっ!」

「ぐえっ」

 

 き、急に首に抱き付くな。勢いのまま押し倒すなっ。何でそこで張り合おうとするんじゃお主は……! おおるまいとっ、目を丸くしてないで儂を助けんか! 秘密を共有してる仲じゃろっ!?

 こやつを上手いこと言い聞かせてくれ! 儂には、とても無理じゃから!!

 

「HAHAHA! 盗らないよ。でも渡我少女、今後は廻道少女から目を離さないように!

 何せ彼女は、重要視され始めているからね……!」

 

 ……圧が、圧が凄い。被身子の冷たい笑みとは別種の圧力が有る。その図体で豪快に笑うのは止さぬか。ところで貴様、もしや呪術総監部に接触されたか?

 その可能性は、大いに有るのぅ。おおるまいとも呪力を持っているからの。

 そう言えば、こやつの呪力はどうなった? 個性の残り火に附随していた呪力は、失われてしまったのか?

 

「今後、私は君の活動を支援するつもりだ。それが私から君に出来る、せめてものお礼なんだ」

「大袈裟な……。礼をされる筋合いは無い」

「いや、あるよ。廻道少女、私ね……反転術式が使えるようになったんだ」

「は?」

 

 は……? 今、何と言ったこやつ。反転術式(はんてん)を使えるようになった、じゃと……? 儂が教えても使えなかったのに? 何で今更になって……。

 ……。あぁ、そうか。黒閃か。あれが発生してしまったから呪力が何であるのかを理解して、その結果……反転術式を会得したと。なるほどのぅ、じゃから入院していないわけじゃ。普段より元気に見えるのは、そのせいか。

 

 いや、待て。それならまだ戦えるんじゃないのか? あの馬鹿げた個性が消えてしまったとしても、それだけの肉体に呪力が合わされば……今まで通りとはいかんが、戦えるじゃろ。

 

 というか貴様、才能を溢れさせるのも大概にしろ。黒閃を経験したからと言って、即座に反転術式(はんてん)を回せるようになるなっ。

 

「お陰で、今では寝ても覚めてもこの姿さ! もう以前のようには行かないが、それでもまだやれる事はある! だけど……」

「だけど?」

「それでもやっぱり、次は君達だ(・・・・・)。まだまだ戦うことは出来るけど、君達の育成やサポートに専念したい。またあの男が動き始める前に、私の全てを注ぎたいんだ。何せ、次に戦う時は……」

 

 ……。……そうか。そうじゃろうな。昨日の戦いで、おおるまいとは傷だらけになっていた。(まこと)の姿を人目に晒してしまう程、追い詰められていた。しかし今は、あの個性を完全に失った。残り火とは言え、わん・ふぉお・おおるを以てしても簡単には行かぬ相手と、いずれ再び相見(あいまみ)える。そうなってしまったら、その時……。

 

 おおるまいとは、今度こそ死ぬじゃろう。

 

 そうなる前に、やれる事をやっておきたいと。お主はそう言いたいんじゃな?

 

「相分かった。お主には色々と協力して貰う。

 ……よろしく頼む」

「こちらこそ、改めてよろしく!」

 

 これから、緑谷は大変じゃの。元気になったこの筋肉阿呆に、鍛えられるわけなんじゃから。無論、儂も鍛えてやるがな。悪党の親玉、おおる・ふぉお・わんが復活するなら、立ち向かうには呪術師としての力も要る。向こうが呪力や術式を持っているのなら、個性だけで立ち向かうのはとても無理じゃ。

 

 

「だから! 円花ちゃんは、あげません!!」

 

 

 ぐえぇ……っ。こら、被身子っ。腕に力を込めるなっ。首が締まる、締まるから止さぬかっ! 何でおおるまいとにまで嫉妬するんじゃ貴様は!

 

「HAHAHA! 渡我少女、ほどほどにね。でも、その調子だ! しっかり廻道少女を抱き留めて置くように!

 あ、それとここでの話はオフレコで頼むよ!」

 

 お、おい貴様……! 被身子の背中を押すんじゃないっ。そんな真似をしたら、儂がもっと大変じゃろっ!

 この状況を悪化させるな! これ以上酷くなったらどうするつもりじゃ!!

 

 

 

 

 

 










オールマイト引退と言いましたね? あれは嘘です。
と言うのも、AFO戦で黒閃を出して反転術式会得はオールマイトが呪力を得た時点で考えていたネタだからです。これにより新鮮なオールマイトになりました。お肌つやつや内臓完備。これからは常時マッスルフォームです。トゥルーフォーム好きですし、オールマイトの魅力のひとつなんですけど、反転術式回したら内臓が治ってしまうのでどうしても……。あ、でもネタ思い付いたんでトゥルーフォームなきゃヤだ!って人は安心してください。書いてる僕もヤなので解決策を見付けました。次のオールマイト回で出します。

OFAは原作通り消失しているので、今後のオールマイトは呪力強化&反転術式で戦うことになります。つまり、ゴリラ廻戦ってことです。

AFOが呪力持ちだったのは、ずばり死にかけて脳が変異したからです。術式は生まれ持っての物なので、呪霊操術にしました。無為転変と大いに悩みましたが、その場合呪詛師大量発生でヒーロー側がどうしても詰むので、まだマイルドな呪霊操術にって感じです。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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