待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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また予約投稿を失敗してストックをふたつ放出した阿呆が居るらしいですね。これは円花のせいです。ポンコツを書いてるとポンコツになる、あると思います。


信じられる。

 

 

 

 

 

 おおるまいとが、もう以前のようには戦えない。平和の象徴は、近い内に必ず失われる。なんて噂が、世間に流れ始めたようじゃ。

 神野の悪夢と称されるあの事件、その時におおるまいとの真の姿(とぅるうふぉおむ)が報道されてしまった事が原因じゃろう。あやつの弱体が人目についてしまったことで、今後この国の悪党共がどう動くかは分からん。今ならばおおるまいとが出て来ても問題は無いと、動き回る輩も出てくるかも知れぬ。表向きおおるまいとはまだまだ戦えると笑顔で報道陣(ますこみ)に応えていたが、一般市民は疑念の種を植え付けられた。

 今後おおるまいとは、呪力のみで以前のように立ち回らなければならない。正直言って、無茶じゃ。幾ら呪力で肉体を強化したところで、わん・ふぉお・おおる程の力は引き出せない。それでもまだ、仮初めでも見かけ倒しでも平和の象徴を続けようとするのは如何なものか。

 それと、儂がおおるまいとの後継なんて根も葉も無いくだらん噂が余計に広まった。最近、いんたあねっとを監視している被身子がそう教えてくれた。何で監視しているかというと、儂に関する噂が気になってのことらしい。たまに儂への誹謗中傷を目の当たりにして盛大に機嫌を悪くするのは、勘弁して欲しいの。許さんぞ不特定多数共。儂の被身子に不快な思いをさせおって。儂が大変じゃろ、儂が。

 

 ここ数日で起きた事と言えば、だいたいそんな感じじゃ。儂は相変わらずの外出禁止。ただそれも、あと数日じゃろう。昨日、雄英から手紙が届いた。何でも最近の情勢を鑑みて、全寮制にするとか何とか。既に寮生活を送っていた儂や被身子には関係無い話じゃと思うが、わざわざ通知してきた。律儀なものじゃの。

 

「それで、円花は今後どうするの? ヒーロー科、辞めるの?」

 

 朝食を食べに席に着くと、母からいきなりの質問が飛んで来た。そう言えば、宿(ほてる)であった出来事の事後報告をしておらんかった。どうやら被身子も話していないらしい。もうこの件について話したくなかったんじゃろう。儂の隣で頬を膨らまして母から顔を逸らした辺り、きっとそうじゃ。

 とっくに話しているものかと思ったが、話していないのなら仕方ない。儂から伝えるとするか。

 

「辞めぬよ。ひいろお科」

「へぇ……。被身子ちゃん、納得してないみたいだけど?」

 

 今朝は黒眼鏡(さんぐらす)をしていない母が、被身子を見て目を細めた。儂を睨まないでくれ。それ、魂読んどるじゃろ。いい加減分かるんじゃからな? 親なら娘のぷらいばしいを守らんか。

 

「この話題をすると拗ねるんじゃ。今後は控えてくれると助かる」

「じゃあ今回だけ聞こうかしら。それで? どんな約束をして被身子ちゃんを説き伏せたの?」

「心配させないし、怖がらせない。……それと当面は、大人しくしていようと思う。泣かせたくないからの」

 

 呪術師としての活動を辞めるつもりは微塵も無いが、今後立ち回り方を変えた方が良いのは事実じゃ。これでも反省しとるんじゃよ、儂。馬鹿なことをしたと猛省中じゃ。

 何より、もう被身子を泣かせるような真似はしたくない。こやつが心から笑っていないと、儂が落ち着かん。

 

「……ふぅん? 円花にしては殊勝な心掛けかもね。でも、それじゃ駄目でしょ」

 

 ……、……いや……そんな事は……有る、のか? おい被身子、駄目か? 二つでは足りぬのか?

 つい被身子の顔を見ると、目が合った。拗ねた表情のまま、睨まれた。これは……母の言う通りかも知れぬ。ど、どうしたものかの……。どうすれば良いんじゃ儂は。これ以上何かを譲歩しようにも、それでは被身子が納得してくれぬじゃろうし……。うぅむ……。

 

「嫁となる人を怖がらせたり、心配掛けたりするのは伴侶として言語道断。その二つはね、そもそも伴侶としてやっていく上での前提よ?

 それに円花の場合、ヒーロー活動するんだから心配させたり怖がらせるなんてこれから幾度となくあるでしょう?」

「いや、でも母。儂はひいろおにはならんし、そんな事は」

「呪術師として活動したって、同じことでしょ?」

「……」

 

 ぐぅの音も出ぬ。何なら英雄(ひいろお)活動をするよりも、心配掛けたり怖がらせたりしてしまうのかも。そもそもが無茶な話でもある。じゃけど、それでも。もう心配させぬと決めた。怖がらせぬとも、約束した。けれどもやはり、呪術師を続けるなら危険はどうしてもある。これを完全に排除することは出来ぬ。

 駄目、か? 結局また……心配させたり怖がらせたりしてしまうのか? それは、嫌じゃの……。

 

「被身子ちゃん。本当に良いの? このまま円花がヒーロー科に居て」

「……嫌です。でも、円花ちゃんのやりたい事を否定したくないから。あの人達みたいになるぐらいなら、……我慢するのです」

「あのね被身子ちゃん。大切な人が心配だから、傷付いて欲しくないから何かをして欲しくない。

 そう思うのはね、当たり前で普通の事なの。だから、もっと我が儘で良いのよ。嫌なんでしょ、円花がヒーロー科に居るの。いつも通り我が儘言って、円花を困らせても良いの」

「そうそう。変なところで遠慮しないで、円花なんて思いっきり困らせたら良い。それぐらいが丁度良いんだよ、円花には」

 

 おい、父。一番最後に席に着いて話に参加するのは良いが、儂をこれ以上困らせようとするな。被身子を宥めるのは、ただでさえ大変なんじゃ。これ以上大変になったら、それこそ儂はどうにかしてしまう。じゃから変に被身子を肯定して背中を押すような真似は、止めてくれ。と言うか、何で二人はいつも被身子の味方をするんじゃ。たまには儂の味方をしろ、たわけ。

 だいたい娘に向かって、なんかとか言うな。親としてどうなんじゃそれは。

 

「あら? 被身子ちゃんに困らされるのが好きな円花にとっても都合が良いでしょ? 被身子ちゃんに振り回されるのが幸せだものねー?」

「そんな変な趣味は無いっ。訳の分からんことを言うな!」

 

 と言うか、魂を読むな魂を! 狡じゃそれは!

 

「はは。振り回されるのが幸せだなんて、誰に似たんだか……」

「どう考えても貴方でしょ?」

「そうだったかな? そうだったかもね」

 

 ……。朝飯が不味くなりそうじゃ。何で朝から両親が惚気ているところを見なければならぬのか。そもそも、真面目な話の最中に戯れるな。いつまでも仲睦まじいのは夫婦として良いことだとは思うが、儂等の前では少し自重してくれぬか?

 そう言うのは二人きりの時にしてくれ。頼むから。

 

 まぁ、でも。笑顔のある食卓は良いものじゃ。暖かで、悪くないと思う。今の父と母を見た被身子は、小さく笑っておるし。

 

「さて、話を戻しましょうか。

 被身子ちゃん、嫌なら嫌って言いなさい。そこは遠慮しちゃ駄目よ。まして両親と同じになりたくないなんて理由で、自分の気持ちから目を背けちゃ駄目」

「……」

「何より、貴女らしくない。そんな子に、円花をあげるつもりはありません」

「……確かに、嫌だなとは思います。ヒーロー科を辞めて欲しいと、やっぱり少しは思っちゃうのです。でも」

 

 頭を抱き寄せられる。離さないと言わんばかりに、腕に力が込められている。両親の前では止めてくれ。と言うか人前で抱き寄せるのは、どうしても気恥ずかしいから止さぬか。

 

「もう心配させないって、怖がらせないって円花ちゃんは約束してくれました。その言葉を、信じないなんてことは出来ないのです」

「……被身子ちゃん。言っておくけど信じて待つのは、かなり辛いよ? 死にたくなるぐらい苦しい時がある。それでも、待つの? 円花を信じて?」

「……はい。だって、円花ちゃんは私のお嫁さんです。私のヒーローです。私が、一番信じてる人です。愛してる人です。だから、だから……何があっても絶対信じるの」

 

 ……気恥ずかしいことを言うな。そんな風に言われたら、何がなんでも応えてしまいたくなる。自分で言うのも何じゃけど、少しは儂を疑ってくれ。こうも真っ直ぐ断言されるのは、それはそれで落ち着かぬ。こう、呪術師的に。つい腹の内を探ろうとしてしまうと言うか……。

 まぁもっとも、被身子の腹の内が分かったことなんて殆ど無い気がするが。大部分が理解不能な気さえしてくる。ずっと一緒に居るのに、今でも時々訳が分からん。

 

 ひとつ確かなのは、儂を愛して止まない事か。それだけは、絶対不変じゃ。間違いないと断言出来る。

 

「……輪廻、どう思う?」

「そうねぇ。うちの子には勿体無いなぁって。だってこんなに綺麗な魂をしてるのに」

 

 ……、綺麗な……魂? 被身子が……?

 いや、母。何を言っとるんじゃ。被身子じゃぞ? 儂を振り回して困らせて、好き勝手にし続ける悪女じゃぞ? まだ汚いとか、どす黒いとか言われた方が納得出来るんじゃけど?

 

「被身子ちゃんの魂って、綺麗なのよね。どこまでも自分に素直だから、眩しくって。たまーにとんでもない色をする時もあるけど、そんなところも魅力的なのよねぇ」

「えへへ……。よく分からないですけど、輪廻ちゃんに褒められて嬉しいのです」

 

 おい母。そうやって被身子を甘やかすな。たまには叱れ、たまには。母がそんなじゃから、こやつはいつまで経っても我慢を覚えないんじゃぞ? そして儂が大変になるんじゃ!

 

「じゃあ、これでも大丈夫ってことだね?」

「どうかしらねぇ。未来なんて、誰にも分からないんだから」

「はは、なら大丈夫だ。円花、絶対に被身子ちゃんを裏切らないように。こんな良い子、他には居ないんだから」

 

 おい、父まで被身子を甘やかすな。そうやっていつもいつも被身子の味方ばかりして……!

 そもそも、儂が被身子を裏切るような真似をすると思っているのか? 心外じゃ。流石に怒るぞ??

 

 ……いや、まぁ。この間のは、裏切ったと言っても過言ではないが。仕方なかったとは言え、泣かせてしまったのは事実じゃし……。

 

「本当に、それで良いんだね?」

「はい。円花ちゃんを信じます」

「そっか。じゃあこの話はもうしない。被身子ちゃんを信じる。

 さ、朝ご飯にしようか。お母さんの料理が冷めちゃう前にね」

 

 父よ、もう冷めている。それに今日の朝食を作ったのは、被身子じゃ。見て分かれ。いや無理か、眼鏡しとらんし。まっこと、目が悪い奴じゃのぅ。後で母に謝っておけよ、儂はどうなっても知らん。儂や被身子に泣き付いたって、助けてはやらんからな!

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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