待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「取り敢えず一年A組。また全員集まれて何よりだ」
今日から雄英高校は全寮制となる。なので全員、制服を着て新たに建築された寮の前に集合している。もちろん儂も、そして当たり前のように被身子も。いや、お主……普通科じゃろ。それも二年生。何でここまで着いて来たんじゃ。しかも物凄く不満そうな顔をして。
まぁ、気持ちは分かるんじゃけども。
全寮制になったこと、何より
でも、以前より明らかに危険性が薄れて来たのは事実でもある。
そうなってくると、もう儂等二人を付きっきりで警護しなくて良い。これからは一生徒として扱うとのことで……。まぁつまり、儂等も他生徒同様の寮生活を送ることになったんじゃ。しかしこの事が、被身子の機嫌を損ねた。気持ちは分かるがのぅ、今回に関しては。
じゃって、ほら。儂等は今まで、二人きりで寮生活を送ってきた。なのに全寮制が始まるにあたって、別々の寮に入ることが決まってしまった。これからは寝食を別々にしていくことになる。それは……寂しいけれど。でも仕方ないんじゃ。学校側がそう決めたのなら、逆らう余地がないと言うか……。
「色々と話したいことが有るが、その前に渡我。何故ここに居る」
相澤が被身子を睨むのも無理はない。二年生で普通科の被身子がここに居る理由が無いからの……。今朝から絶対に儂から離れたくないこやつは、今も儂に抱き付いておるし。離れる気配が微塵も無い。お陰で、流石に少し暑い。朝とは言え日差しが強い中、被身子とくっ付い居てはどうしても熱が籠る。
「相澤先生、トガは特待生特典をここで使いますっ。むしろここしかないのです!」
学生証を取り出し、掲げた被身子が堂々と宣った。被身子? 何しとるんじゃお主??
特待生特典……?
「特待生特典……? って何ですか渡我先輩」
「簡単に言うと、特待生から雄英に我が儘をひとつ言える権利なのです! 条件すっごく厳しいんですけど、私はクリアしてますし!」
なるほど? そんな特典が特待生に有ったのか。それを今から使うと。どうやら被身子が言っていることは正しいようで、相澤先生が頭を抱えた。すまぬの、知ってるとは思うが被身子はこんなじゃから諦めてくれ。下手に逆らおうとしない方が良い。と言うか、逆らわないでくれ。儂が後で大変じゃから。
ちなみに。こんな調子になった被身子は、好きにさせておくのが後で面倒にならない為の秘訣じゃぞ。要するに被身子を制御するのは諦めて、振り回されろってことじゃ。
「という訳で、卒業まで円花ちゃんと同じ寮・同じ部屋で過ごします!」
「……はぁ。分かった、校長に申請しておく」
「いやったー! これで卒業まで一緒に暮らせるのです!」
「まだ通ると決まったわけじゃない」
「相澤先生の許可が有れば通すって根津校長は言ってました!」
「……はぁ。まったく……」
まったくこやつは。これこれそんなに騒ぐな。嬉しいのは分かったから、少し落ち着け。いつの間にそんな申請を根津校長にしたんじゃお主。それと
ぐぇっ。抱き締めるのは良いが儂の顔を胸に埋めるな。い、息苦しい……! おい峰田、変な目で儂等を見るなっ。
「話を戻す。君達には今後ヒーロー免許、その仮免取得に向けて動いて貰う。残る夏休みを無為に過ごさせるつもりはない。
だがその前に話すこともある。青山・飯田・切島・轟・緑谷・八百万。この六人はあの夜、廻道・常闇・爆豪の三人を救出しに動いた」
……あぁ、これは良くないの。まっこと良くない。相澤が怒るのも無理は無い。結果として全員無事に戻って来れたが、場合によっては誰かしら……或いは全員が怪我をしたり、死んでしまったりしてもおかしくはなかった。今こうして全員が集まっていられるのは、単純に運が良かったからに過ぎぬ。
儂等三人の救出が上手く行ったからと行って、お咎め無しという訳にはいかんらしい。
「色々棚に上げて言わせて貰うよ。本来ならこの一件で俺は、常闇・爆豪・葉隠・耳郎以外を除籍している。
が、そうも言ってられない事情が有ってな。今雄英から人を減らすわけにも行かなくなった。今後君達は、正規の活躍で俺の信頼を取り戻してくれると助かる」
まぁ、こればっかりは仕方ないの。説教そのものは手短に終わったが、最後に相澤先生は生徒全員を睨み付けた。今後何か間違ったことをしたら、その瞬間に除籍されそうじゃ。
大丈夫じゃろうか、特に緑谷と轟。この二人は感情的に動いてしまう節がある。反省はしているようじゃが、また神野のような状況があれば動いてしまうのではないか?
……そうならんように、後で少し話しておくとするか。儂がどうこう言ったところで直ぐに変わるわけが無いんじゃけど、念の為に釘は刺しておこう。
「それと廻道、緑谷。お前達は今から応接室だ。付いて来い。他の連中は荷解きを始めて、生活環境を整えておけ。以上」
……何でじゃ。何でそんな事、……っておい。先に進むな。連れて行くつもりならしっかり案内せんか。儂一人で向かって良いならそうするぞ? なぁに、応接室の場所なら知っておる。確か昇降口から真っ直ぐ廊下を歩いて……。で、昇降口は向こうじゃから……。
「……うむ、こっちじゃな」
「何処に行く気だ廻道くん! ちゃんと相澤先生に付いて行きたまえ!」
「廻道さん、一緒に行こう。一人で出歩かない方が良いよ……?」
何? 昇降口はこっちじゃないのか? それはそれとして、大きな建物じゃの。新しい寮。こんな住まいでくらすめえと達や被身子と暮らすのか。中々騒々しくなりそうじゃ。
◆
応接室に着くと、見覚えの有る大人がそふぁに腰掛けていた。呪術総監部の……七山じゃの。神野の警察署で何時間も儂を待たせた不届き者じゃ。しかも、おおるまいとまで居る。緑谷まで呼ばれたということは、……なるほど。呪術総監部は、しっかりと仕事をしているようじゃ。どうやって二人が呪力を持っていることに気付いたのかは、分からぬが。
これからどんな話がされるのかは、だいたい想像出来るのぅ。おおるまいとは良いとして、緑谷まで巻き込むのは忍びない。こやつが目指すところは
ところで、何で相澤は応接室の出入り口で腕を組んで突っ立って居るんじゃ? 会話に参加するつもりは無いらしいが、担任として話は聞いておくと言ったところか? 知らんけど。
「どうも、廻道円花さんに緑谷出久くん。私は呪術総監部の七山です。この度訪問した訳は、二人に大事なお話が有るからのことです」
「み、緑谷出久です。あの、呪術総監部って……」
「その説明はこれからするよ。緑谷少年、取り敢えず座ろうか。廻道少女も」
「そうさせて貰おうかの」
大きなそふぁに腰掛けているおおるまいとに促され、儂と緑谷は今日も膨らんでいる筋肉阿呆を挟むように腰掛ける。対面には、七山が来るように。
しかしのぅ、おおるまいと。
「呪術総監部って言うのはね、簡単に言えばヒーロー公安委員会みたいなもの。違いがあるとすれば、管轄するのが呪術師。対策を取るのが呪詛師や呪霊。
基本的な活動は公安と変わらない。で、良いんだよね? 七山くん」
「その通りです。もうひとつ付け加えるなら、呪術総監部は世間やヒーローには隠された存在です。もちろん警察にも」
世間はともかく、
とは言え、呪力や呪霊について知ってしまった者は居るんじゃないのか? 神野での一件、脳無は暴れていたし呪霊に焼かれた
「それで、何で緑谷まで呼んだ?」
「彼が最近、呪力を獲得したとの情報を得ましたので。現状、呪術師になれる者は数が少ないですから」
「要は勧誘か。緑谷、断って良いぞ。と言うか断れ」
「えっ」
えっ。では無い。そもそも、子供が聞いて良い話では無いんじゃ。どんな事情が有ったとしても、儂は緑谷を呪術師にするつもりはない。呪術総監部がこやつを呪術界に引き摺り込もうとするなら、儂はそれを止める。
別に、緑谷ならば或いは呪術師になれるじゃろう。こやつの今までの行動を見れば、素質が無いとは言い切れぬ。呪術師をやる上で何より大事な素質が有るのは事実じゃ。が、駄目なものは駄目じゃ。儂は認めぬ。認めてしまえば、儂の主義に反する。
「廻道さんは……受けるの?」
「いずれ受ける。七山、すまんがひいろお免許の取得しなければ保護者の承諾が得られん」
「そうでしょうね。それは想定の範疇です。なので……」
七山が、すうつの懐から変な札を出した。そこには何故か儂の顔写真と、名前が書いてある。免許証のように見えるが、何じゃそれ?
「これは、個性特別使用許可証。略して個性特許とでも呼びましょうか。貴女が呪術師をやる上で必要なものは、これ一枚でクリア出来ます」
「……」
とんでもない話になって来た。呪術総監部は、何がなんでも儂が欲しいようじゃ。そこまで惚れ込まれているとは思わなかったのぅ。はて、どうしたものか。
儂は両親の言い付けを破るつもりはない。本音を言えば、個性特許とやらは喉から手が出る程に欲しい。が、
……目指すか無いのが現状とは言え、やりたいとは思えんのじゃよなぁ。
「……七山さん。現状A組は、ヒーロー免許取得に向けて動いています。まずは仮免からですが」
「相澤さん。それを呑気に待っている余裕は、お恥ずかしながら呪術総監部にはありません。表向きにはなっていませんが、既に呪霊の仕業と思われる大きな人的被害が発生しています。これを早急に対処したいので」
「でしたら、それはオールマイトで良いでしょう? それで問題ない筈です」
まぁ確かに、その通りではある。その通りではあるが、現状のおおるまいとでは不安が残るのも事実じゃ。大抵の呪霊は儂にとって雑魚じゃけど、おおるまいとや緑谷にとっては違うじゃろう。呪霊や呪詛師が相手となると、こやつ等に任せっきりにする訳にはいかんのじゃ。
「いいえ。ぶっちゃけて言いますが私は廻道円花も緑谷出久も信用していません。ですので、今回の呪霊被害の調査及び可能ならば解決を二人にお願いしたい」
「儂一人で良いじゃろ。大抵の事は儂だけで解決出来る」
「その証明をなさって欲しいんですよ、廻道さん。呪術総監部に必要な人材かどうか、把握しておきたい。
それに私は、子供を呪いだの何だの、そんな不明瞭なものに関わらせたくないのが本音です」
「なら儂等を勧誘するな。たわけ」
「仕事ですので、私情は挟みません」
……こやつ、もしかして良い大人か? 会うのは二度目じゃからって直ぐに信用するつもりはないが、子供を大切にしようとする姿勢には好感が持てる。少しぐらいは信用しても良い、のかもしれぬ。いや駄目じゃ、まだまだ信用は出来ぬの。そもそも公安委員会だの、呪術総監部だの、何で呪術師をやる上で組織に属さねばならないのか。
儂、
「……僕、受けます」
「は? おい、緑谷」
受けるんじゃない。たわけ。
何を考えてるか知らぬが、お主がやるにはまだ荷が重い。時期尚早過ぎる。まだまだ呪力操作が覚束ないじゃろ、お主。第一、儂は認めぬぞ。駄目ったら駄目じゃ。
「呪術師になるつもりは、正直無いよ。でも、僕は呪力を持っているから。僕に出来ることが有るのに、やらないで居るなんて真似はしたくないんだ。
それに……廻道さん独りに背負わせたくない」
「では、呪術総監部として呪霊被害の調査を緑谷出久くんに依頼します。どうしますか? 廻道円花さん」
「……はぁ……。仕方ない、それは受けてやる。儂と緑谷で、呪霊を祓えば良いんじゃな?」
「可能でしたら、そうしてください」
残念ながら、緑谷の意志が固い。梃子でも動かぬ顔をしている。勘弁して欲しい。そんな顔をされたら、儂は動かざるを得なくなってしまう。被身子に心配させたくないのに、何でこうなるんじゃ。両親の言い付けを破ることにもなるし。
……解せぬ。後でどう被身子に言い訳するべきか。絶対に機嫌を損ねるよなぁ、これ。いかんのぅ、まっこと良くないのぅ……。
「七山くん。付き添いとして私も行って良いかな? ほら、二人に何かあった時の為に」
「……そうですね。バックアップとして参加してください。ですが飽くまでメインは二人です。ではこちらの契約書にサインを。何せお給金が発生しますので。
難しく考えず、アルバイトとでも思ってください」
ふざけおって。許さんぞ呪術総監部。嫌いじゃ、この七山とか言う大人。いつか呪ってやる……!
特待生特典は生やしました。独自展開も生えました。
別々の寮で毎晩泊まりに来るトガちゃんとか、寂しくて一人でしちゃう円花とか美味しいネタ満載なんですけど、下手に距離取らせるとそれはそれで不満たらたらのトガちゃんが特待生剥奪されかねないので。チウチウも有りますしね。まぁこんなでも勉強めっちゃ頑張ってるのでご褒美ってことで……。
おかしい……二年生なのにめっちゃ一年A組と絡んでいる……。
仮免取得と並行して
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ