待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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無防備円花。

 

 

 

 

 

 労働(あるばいと)することになってしまった。呪術総監部の下で。明日から緑谷と共に、夕方から深夜にかけて呪術師として働かねばならぬ。受けるつもりはなかったんじゃけど、緑谷が動いてしまったから仕方が無い。おおるまいとの支援も有るから、危険はそうそう無いじゃろう。何より、何かあれば儂が戦えば良いだけの話。

 結局、個性特許は押し付けられてしまった。今回の件で必要になるからの。調査が終わり次第、返却する手筈になっておる。問題があるとすれば、この労働と仮免取得の為の訓練を並行して行わなければならないと言うこと。昼間は勉強に訓練、夕方からは労働。ただでさえ忙しいのに、更に忙しくなってしまった。緑谷め、こうなることを分かってて総監部からの依頼を受けたのか? そうでなかったらただの阿呆じゃぞ?

 

「お帰りなさい円花ちゃん。あと緑谷くん。呼び出し、何でした?」

 

 寮に戻ると、居間……? 談話室……? のそふぁに腰掛けていた被身子が笑顔で儂と緑谷を出迎えた。長く四角い机の上には、勉強道具が幾つも広がっている。どうやら勉強でもしながら、儂の帰りを待っていたらしいの。荷解きは? もう済んだのか?

 

「た、ただいまです。渡我先輩」

 

 おい緑谷。何で被身子の笑顔を見て固くなる。かぁいいじゃろうが。もしや、かぁいいから固まったか? どうも女子(おなご)慣れしてない節があるよなぁ、こやつ。そろそろ慣れろ。麗日とは自然と談笑出来とるじゃろうが。

 

「うむ、ただいま。儂等の部屋は何処じゃ?」

「右側二階、階段から見て一番奥なのです。案内しますね」

「いや、勉強してるんじゃから案内は要らん。一人で」

「行けませんよね?」

「いや、行」

「行けませんよね?」

 

 ……。何じゃもぅ、被身子のたわけ。悪かったな、方向音痴で。儂じゃって少しは困ってるんじゃ。行きたいところに一人じゃ行けないのは、結構大変なんじゃぞ?

 まぁ、どんなに迷ってもいつかは辿り着けるわけじゃから良しとしているが。

 だいたい、方向音痴は直らん。死んでも直らなかったんじゃ。解せぬところではあるが、もはや儂にはどうしようもない。

 

「じゃ、じゃあ僕は荷解きしてくるから。廻道さん、また後で詳しく話そうね」

「相分かった。後で話そう」

 

 そそくさと逃げていったように感じなくもない。何で被身子から目を逸らして駆けて行ったんじゃあやつ。変に顔が赤いから熱中症か何かか? 被身子を見ただけで?

 ……何でじゃ。冷房が利いてるんじゃから大丈夫じゃろ。そもそもさっきまで野外で運動していた訳でもあるまいに。解せぬのぅ。まぁ今日は体調が優れなかったということにして、……。

 

 ……被身子? おい、何でそんなに胸元を開けとるんじゃ。下着は見えとらんが、胸の一部が見えてるぞ。気付いとらんのか? まったく、こやつと来たら。

 

「じゃあ行きましょうか、新しい部屋」

「うむ。じゃけど被身子、(ぼたん)を閉じろ。風邪引くぞ?」

 

 被身子に手を引かれて、寮の中を歩いていく。談話室は広く大きく、何なら窓も大きい。まるで硝子の壁じゃの。その向こう側に見えるのは、多分庭。庭の向こうには大きな硝子。なるほど、この建物の形は何となく分かった。食堂や浴場に通じていそうな扉や暖簾も直ぐに目に付いた。風呂場は広いのかもしれん。温泉だったりしたら嬉しいんじゃけど、せいぜい銭湯じゃろうな。それでも良しとする。広い風呂は歓迎じゃ。

 

 まぁ、被身子の事を考えると……別に狭くとも良いが。

 

 

「……はぁ。見られ損なのです。緑谷くんにも見られちゃいましたし」

「は? 何を言っとるんじゃ貴様」

 

 階段に差し掛かると、溜め息を吐いた被身子にじっとりと睨まれた。何故かは知らぬが、不満そうじゃ。……何故……?

 

「円花ちゃんこそ、ちゃんとボタン閉じてください。上から覗かれたらどうするんですか」

「覗く奴などおらんじゃろ。それに暑いし。お主、よく真夏に厚着出来るな?」

 

 被身子は夏だろうと、かあでぃがんを着ていることが多い。夏は薄手の物を、冬は厚手の物を着ている。いつでも手のひらが隠れそうなぐらおの長袖じゃ。もうすっかり見慣れた姿じゃけど、最初の頃は変な格好に見えたものじゃ。

 

「袖が少し余ってるのがカァイイのです。円花ちゃんが着たらもっとカァイイと思うんですけど」

「着ない。何で夏に厚着しなければならんのじゃ」

「むぅーっ。分かんない円花ちゃんは嫌いです。馬鹿」

 

 ぬぐ……。いや、じゃって。夏に厚着をする理由なんて分からぬし。お主じゃって暑いから(ぼたん)を外していたんじゃろ? いつぞやにお洒落は我慢とか言っていたような気がするが、それで熱中症になっても儂は知らんぞ?

 と言うか、そんな目で儂を睨むな。分からんものは分からんのじゃ。

 

「円花ちゃん。せめてブラウスの下に肌着を着てください。ブラ、透けたらどうするんですか?」

「……? いや別に、どうもせぬが」

 

 ぶらが透けて見えたって何にもならんじゃろ。

 

「……」

 

 被身子? 何でそんなに睨むんじゃ。何故そんな不機嫌になる?

 

 うぅむ、儂、何か間違えたか……? いやしかしのぅ。ぶらなど透けたところで、何か大事になるとは思えぬし。やはり被身子の考えていることは、少しも分からぬ。分かる時もあるが、そういう時は大抵迫られているか押し倒されている時で。

 つまり、分かったとしても手遅れってことじゃ。まっこと遺憾ではあるが。

 

「じゃあトガも無防備になります。ボタンも開けちゃうしスカートはもっと短くしますし、肌着も着ません。ブラは透けやすいものにします」

「いや、風邪引くじゃろそれ。さっきから何を言って……」

「もうっ! 円花ちゃんは無防備なのです! 人前でボタン開けるし、スカートで扇ぐし、おへそ何かも出しちゃったりして! そんなだと男の子に変な目で見られるんですよ!?」

 

 階段を上り始めると、被身子が足を止めた。と思ったら、両肩を壁に掴まれ壁に押し付けられる。いかん、怒らせてしまったか……?

 

「ぃ、いや、じゃって……、夏は暑いから……。男子じゃって、儂と似たようなことをしとるじゃろ?」

 

 上鳴とか舎弟とか、瀬呂とか。制服を着崩すその度に飯田に説教されていたような気がするが。

 

「……分かりました。じゃあ円花ちゃんが無防備な格好をする度に、私が襲います。外でも教室でも、何処でもです」

「おい待て、止さぬかそれは。人前でされたいなんて趣味は……」

 

 公序良俗を守らぬか。たわけ。

 体育祭の時に自分が何をして、結果どうなったか忘れてしまったのか? 次やったら特待生剥奪なんじゃぞっ。

 

「じゃあ直してください。今後はちゃんと制服を着て、ガード固くして。じゃないと、ほんとに何処でも襲っちゃうのです」

「ぅ、うむ。分かった、分かったから離れてくれ。今後は気を付ける」

「あと、部屋の中でだけなら無防備になって良いです。襲い易いので」

 

 何なんじゃもう。無防備になるなと言ったり、無防備になれと言ったり。そもそもじゃな、儂が涼しい格好をすることの何処が無防備なんじゃか。これでも中学の頃は真夏でもちゃんと制服を着ていたんじゃ。常闇がうるさかったからの。じゃけど今年の夏は例年より暑いそうじゃし、実際に暑い。制服を着崩したって良いじゃろ?

 

「……いまいち分かってない顔してるので、これはお仕置きですねぇ。円花ちゃん、さっそくしちゃいましょうか」

「ぉ、おい……。落ち着け被身子。落ち着くんじゃ。寮に入って早々するような事では……。せめて、せめて夜になってから……!」

「だーめーでーすー。もう許しません。さ、新しいお部屋に行きましょうか」

 

 いかん、逃げねば。一度この場から逃げて、被身子が落ち着いてから部屋に向かおう。一時間ぐらい離れれば、多分こやつは落ち着いてくれる筈じゃ!

 ってこら、被身子っ。儂を引き摺ってでも部屋に向かうなっ! 手を離せ手をっ! 何でこんな時だけ力が強いんじゃ貴様ぁ!

 

 

 

 

 

 

 で、この後。儂は部屋に連れ込まれて、それはもう好き勝手にされた。くらすめえと達が荷解きをしている最中なのに、儂等は肌を重ね合わせていたと。

 

 声、大丈夫じゃったかのぅ?

 

 ……何? 女子棟二階は私達しかいないから平気?

 

 いや、そういう問題じゃ……。そういう問題なのです……?

 

 被身子の阿呆。たわけっ。へんたい!  接吻(きす)魔! 抱擁(はぐ)魔! けだもの!!

 

 

 あんな雑に儂を抱くな! 次は許さんからな!!?

 

 

 

 

 

 

 








※新寮に入寮早々致してしまうバカップルの図。円花が無防備だから仕方ないね。パンツ穿くの面倒臭がったりブラ着けなかったりするガードゆるゆる女の子だ、面構えが違う。まぁこんな風に抱かれたとしてもしっかり悦んじゃうし、そもそも本気で抵抗してませんけどねこの子。でも雑に抱かれるのは嫌らしいです。

三人称による補完は要りますか?

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