待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

153 / 553
お部屋観賞。常闇の部屋

 

 

 

 

 

「円花ちゃん、起きてください」

「んん……。何じゃ被身子ぉ……」

 

 被身子に抱かれた後。気持ち良く寝ていると、起こされた。寝惚け眼でも分かる。外は暗い。儂、どうやら結構寝ていたようじゃ。こんなに爆睡するつもりはなかったんじゃけど……結構激しくされたからのぅ。

 今後、無防備な格好はしないようにしよう。でないと被身子に滅茶苦茶にされてしまう。あぁでも、あれはあれで悪くない気が……。ううむ……。

 それにしても儂、いつの間に寝てしまったんじゃか。

 

 気怠い体を起こすと、部屋の様相が違うことに気付く。抱かれる前は床に布団だけが敷いてあった感じじゃけど、今はちゃんと部屋になっている。机に座布団。本棚に窓掛け。床は畳では無いが、部屋の隅には畳っぽい敷物。あぁ、多分あれを敷くんじゃから儂を起こしたんじゃな。すっかり眠りこけてしまって申し訳ない。二人で過ごす部屋なんじゃから、手伝うべきじゃったのに。

 

「ん……退く」

「ごめんなさい。起こしちゃって」

「いや、良い……。手伝う」

「じゃあ、布団だけ畳んでくれますか?」

「んん……ふわぁ……」

 

 いかん、眠い。ぐっすり寝ていたのに、不思議と眠い。被身子に滅茶苦茶されたせいかのぅ。次は勘弁して欲しい。これからはもっと身なりに気を遣うとしよう。出ないと今日みたいに抱かれてしまう。

 首を左右に振ることでまだ残る眠気を振り払い、ひとまず布団を畳む。すると被身子が、敷物を広げた。邪魔にならぬよう畳んだ布団の上に腰掛ける。それで気付いたんじゃけど、何で全裸になっとるんじゃ儂。いつの間に脱がされたんじゃっけ。駄目じゃ、眠い。被身子が滅茶苦茶したせいじゃ。頭が回らぬ。

 

「んん。こんな感じですかねぇ」

「すまぬのぅ。任せっぱなしにして……」

「良いですよぉ。円花ちゃんのお世話は私の役目なので」

 

 そうか? そうかも知れぬのぅ。いや、もう少し儂に何かさせてくれても良いんじゃぞ? 家事とか、家事とか家事とか。別に掃除ぐらいなら出来るし、片付けじゃって出来ないわけじゃ……。

 こうも何でもかんでも身の回りの世話をされるのは、人として駄目になる気がする。今日はもう良いから、明日からもう少し自分の事は自分で出来るように……させて貰えるかの?

 

「ん!」

「ふふっ。はい」

 

 お礼も兼ねて、両腕を広げる。すると被身子は直ぐ、儂に抱き付いてきた。から抱き締め返す。少し汗の臭いがする。儂が寝てる横で、一人で部屋の用意をしてくれていたんじゃ。多少疲れているじゃろうから、労らなければ。どうするか、このまま寝てしまうか? いやでも、夕飯は食べなければ。明日から忙しくなるんじゃから、体力の温存と回復に努めて……。ぁ、駄目じゃ。眠い。起きてられぬ。いやでも、もう少し被身子の頭を撫で、撫で……。

 

 駄目じゃ被身子ぉ、そんな風に軽く背中を叩いたり頭を撫でると儂は直ぐ眠くなってしまうんじゃぁ。お主、何でそんな簡単に儂を寝かし付けられるんじゃ。

 もう、良いか。このまま被身子と添い寝して、途中で目が覚めることがあればその時に何をどうするか考えよう。とにかく今はこのまま寝てしまって……んん……。

 

「廻道ちゃん、渡我先輩、居るー? 入るよー?」

 

 ……誰じゃ。寝ようとしてるのに部屋に訪ねて来た空気を読めない奴は。いや、声からして葉隠じゃけど。何の用じゃ何の。仕方ない、眠くて仕方ないが起きるとしよう。いや、いっそ無視して……。

 

 かちゃり。

 

 ……かちゃり? おい、何勝手に扉を開いてるんじゃ貴様。儂は寝たいのに。

 

「今女子のみんなでね、みんなの部屋を見て回らないかって話になってて二人もど、……ぅ……」

 

 勝手に入ってきた葉隠が、畳んだ布団で抱擁(はぐ)し合っていた儂等を見て固まった。表情は分からぬが、雰囲気で何となく驚いていることが分かる。何で固まってるんじゃこやつ。人を見て驚くとは失敬な。

 

「あー、えっとぉ。ご、ごゆっくり!」

 

 いや、何の話じゃ何の。勝手に部屋に入って来たと思ったら、勝手に慌てて出ていって……。何がしたいんじゃあやつ。まぁ良い、寝るとしよう。儂は寝る。寝るったら寝る。少し眠気が無くなってしまったようなような気がするが、このまま被身子を抱き締めていれば寝れる。

 じゃからほら、被身子。もっと撫でろ。儂を寝かし付けてくれ。今宵はもう、何も考えずに寝てしまうから。

 

「あー、えっと……服着ましょうか。円花ちゃん」

「やじゃ。このまま寝る」

「……着ないと、また襲っちゃいますよ?」

「んん……」

 

 首を軽く噛まれた。何じゃもう、まだし足りないのか? さっきはあんなに好き勝手してたのに?

 仕方ないのぅ、嫁の性欲が強いと大変じゃ。でも欲求不満にはさせたくないしの、今日はとことん付き合ってやるとするか。そう言えば、新たに始まった寮生活の中でどうやって被身子に血を吸わせれば良いんじゃ……?

 いや、別に血を与えるだけなら何も難しくはない。口に指を突っ込んで血を出せば良いだけの話じゃ。が、それでは満足してくれないじゃろう。欲望のままに首に噛み付かれることになる。それは構わんが、そうさせてしまうと色々血塗れになってしまう。布団とか部屋とか儂とか。となるといつも通り浴室で血を吸わせるのが良いんじゃけど、この寮にはくらすめえと達が居るからの。目撃されると面倒じゃから浴室は避けた方が良い。

 被身子が血を溢さなければ良いだけの話なんじゃけど、まぁ無理じゃ。こればっかりは絶対に無理じゃ。血を吸ってる時の被身子は、まっこと理性が無い。

 

 ううむ……。何か打開策を考えねば。出来れば今日噛み付かれてしまう前に。遠慮なんてさせたくないしのぅ。現に今も、しつこく甘噛みし続けている。さっき儂を抱いている最中に噛み付いてこなかったのは、こやつなりに我慢してるということじゃし。

 

 ……。目が覚めてきた。取り敢えず服でも着るか。このまま裸で過ごしていると、また襲われてしまう。嫌ではないが、自重はしたい。これまで通り二人きりの寮生活じゃ無いんじゃから。

 

「……服、何処じゃ?」

「あ、起きました?」

「うむ。お陰様での」

 

 被身子の事を考えてたら目が覚めた。とは言わぬが。言ったらほら、大変なことになりそうな気がするし。

 

「良かったです。じゃあ、何着ます? いつもの部屋着は駄目ですからね?」

「なら、着物にしようかのぅ」

「じゃあ、出しますね。着付け、手伝いますよぉ」

「いや、一人で着れる」

「良いじゃないですか。私と円花ちゃんの仲ですし」

 

 ……まぁ、良いか。とにかく服を着よう。あれこれ考えるのはその後じゃ。目が覚めてしまったわけじゃし、しばらくは眠くならないじゃろう。と言うか、今何時じゃ? 夜なのは分かるから……着替え終わったら夕飯でも食べておくか。いやその前に、水分補給が先じゃの。儂は喉が渇いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着替えて冷蔵庫に有った水を飲んで、それから夕食でも食べようと被身子と部屋を出た。で、廊下を歩いて階段を下り一階に向かうと、くらすめえと達に遭遇した。ほぼ全員が集まっている。何してるんじゃこやつ等。

 

「あ、円花ちゃんに渡我先輩。荷解き終わったん?」

「はい。ついさっき終わったのです」

「お、じゃあ廻道と先輩も参加しようぜ! お部屋披露大会!」

「……お部屋……披露、大会……?」

 

 何じゃそれ。何訳の分からん事を口走ってるんじゃ切島。しかしお主、髪の毛を下ろすと大分印象が変わるの。赤くなければ誰か分からんかったかもしれん。普段は刺々しいんじゃけど髪を下ろすとこう……犬のような……。

 

 

「フン。下らん……」

 

 

 遠くから常闇の声が聞こえた。つい振り返ってみると、階段からもっとも遠い部屋の前で見慣れた鳥頭が腕を組んで扉に寄り掛かっている。ふむ……お部屋大会とやらに興味は無いが、個人的にあやつの部屋に興味が有る。何せ儂、友人の部屋に入ったことがない。常闇とは被身子の次に付き合いが長いのに、あやつの家に訪問したことは一度も無い。まぁどんな部屋かはだいたい想像出来るが、一度見てみたいのは事実じゃの。

 じゃってほら、毎年儂の誕生日に訳の分からん物を贈ってくるんじゃぞ。この鳥頭。今年は柄も鞘も刀身すらも赤黒い模造刀じゃった。しかも被身子の分も含めて二振り。どういう思考をしたらあんな物を贈れるのか。今年も例年通り実家の押し入れ行きになったのは、話しておくべきかの?

 

「よし、ならまずは常闇の部屋から見てみよう」

「ま、待て廻道っ。こっちに来るな! これより先は資格者しか入れな――」

 

 何を慌てているんじゃこやつ。さては照れているのか? そもそも、部屋に入るのに資格も何もないじゃろ。必要じゃったとしてもほら、儂と常闇の仲じゃし。許されるじゃろ。

 という訳で、扉の前の常闇を押し退ける。お主なぁ、もう少し体を鍛えろ。いやまぁ中学の頃と比べたら筋肉が付いているが、それでもまだまだじゃ。そんなだから間を詰められると弱いんじゃぞお主。英雄(ひいろお)目指すなら、おおるまいと程とは言わぬが……せめて舎弟か轟程度には鍛えておけ。

 

「じゃ、失礼するぞ。……うわっ」

 

 うわっ。何じゃこの部屋、暗っ。壁には訳の分からん物が飾られているし、家具は全て黒色で統一されておる。こんな部屋で過ごしていたら目が悪くなるんじゃないか? 儂の父みたいになっても知らんぞ?

 

「黒!!」

「怖!」

「貴様等……」

 

 儂に遅れて部屋に入って来たくらすめえと達が、各々感想を述べると常闇が震え始めた。珍しく怒っているようじゃ。しかしの常闇、こんな部屋にしてしまったお主が悪いような気がしないでもないぞ? 何でこんなに真っ暗なんじゃ。

 

「このキーホルダー、俺中学ん時に勝ってたわあ……」

「男子ってこういうの好きなんね」

「剣だ……カッコイイ……」

「出て行け!!」

 

 いや、そんなに怒るでない常闇。あれじゃ、興味本意で突撃した儂が悪かった。後で謝るからそんなに機嫌を損ねるでない。

 

「ん? これは……」

 

 ふと、目に付いた物がある。真っ黒な机の上に置いてある、白い手帳。少し使い込んであるようじゃ。それが懐かしかったから、つい手に取ってしまった。悪いとは思ったが好奇心で開いてしまった。中に書いてあるのは……。うむ、見なかったことにしておこう。訳が分からん単語の羅列が書き込んであった。儂には少しも分からん内容じゃったけど、多分理解しない方が良さそうじゃ。

 

「それは見るなっ! 呪われるぞっ!!」

 

 引ったくられたわ。呪われるて……。

 お主なぁ、儂があげた物を大事にするのは良いが、もう少し使い方と言うものを……。いや、まぁ良い。大事に使ってくれているのなら良しとする。そもそも、どう使おうがこやつの自由じゃし。

 ってこら。部屋に居られたくないのは分かったから、そんなに背中を押すな。くすぐったいじゃろ。

 

 部屋を出ると、常闇の部屋に一歩も入らないで居た被身子と目が合った。三白眼が、じっとり儂を見ている。

 

 あ、これはいかん。

 

 

 

 

 

 







この辺原作読み返してて思ったんですけど、フィジカル足りてないところ可愛いですよね、常闇くん。いや、相手は女子とは言えヒーロー志望二人なんで仕方ないのかなとは思いますが。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。