待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
お部屋披露大会が、まだ続いている。男子の部屋は一通り見たから、これから見るのは
「まぁ、こんな感じじゃの。満足したか?」
被身子が準備してくれた部屋は、何が特別な訳でもない。常闇みたいに暗くないし、青山みたいに眩しくもない。棚があって机があって、布団ある。生活に必要な物は一通りある感じじゃ。着物を掛けておく為の
「ぉ、おお……。何か、普通だ……」
「これが雄英バカップルの愛の巣かぁ……」
「普通過ぎて逆に申し訳無くなってきた」
何じゃその感想。まぁ、部屋なんてそんなものじゃろ。必要な物だけが有れば、そうそう変なことにはならぬ。強いて言うなら大衣桁が少し邪魔になるかもしれぬが、被身子と二人で暮らす分には問題ないじゃろう。床が畳じゃったらもっと良かったんじゃけど、無いものは仕方ない。畳を模した敷物で我慢することにする。今度、轟に畳を敷いて貰うのも良いかもしれん。
ちなみに、峰田が儂等の部屋に入ろうとしたところで被身子が冷たい笑みを浮かべた。目が笑っとらん。一歩でも踏み入ろうものなら刺すとでも言いそうな圧を前に、峰田は震えた。これこれ、そう殺気立つな。被身子、お主昔から男子に対して警戒心が強くないか? 別に儂に危害を加えるようなくらすめえとは、……居るには居るか。被身子からすれば、実際に儂に危害を加えた者が一人おる。
「もう良いですよね。次行きましょうか、次」
冷たい笑みを継続中の被身子が、また儂を抱き寄せながら言い放った。圧が凄い。
後でしっかり労らなければ。今回はどんな労い方をするべきか。それが悩ましい。
その後、三階に向かった儂等はまずは葉隠の部屋に。透明人間の部屋は、透明じゃなかった。当人が透明なのだから、そこは何もかも透明な部屋で過ごして欲しかった気がする。残念ながら普通の部屋じゃ。儂と被身子の部屋と大して変わらぬ。
「つまらん……。部屋も透明じゃないのか……」
「透明人間だからって部屋まで透明な訳じゃないよ!?」
つい本音を溢すと葉隠が叫んだ。でもでもじゃって、ちょっと見たかったんじゃもん。透明な部屋で過ごす、透明な葉隠。
ううむ。男子達の部屋が個性的過ぎたせいか、変な期待をしてしまっている。
次に覗いたのは、同じ階の耳郎の部屋じゃ。
「思ってた以上にガッキガッキしてんな!?」
上鳴が叫んだ。確かに耳郎の部屋は楽器だらけじゃ。でも、琵琶や琴は無いんじゃな。琵琶に似たような形をした楽器はあるが、どう見ても琵琶ではない。
最後に楽器に触ったのは……何時じゃっけ。学校の授業で現代の楽器に触ったことはあるんじゃけど、あれは全くの別物じゃ。平安時代の楽器と似たような形をしている物もあるが、どうにも勝手が違う。お陰で大分困惑しながら授業を受ける羽目になってしまった。
「耳郎、琵琶は無いのか? 琴とか太鼓とか」
「琵琶? 無いけど……。えっ、廻道音楽やるの? 和楽器?」
「多少、遊びの範疇で」
「マジ!? それは意外なんだけどっ!?」
まぁ、話したことはないしの。ただ経験はある。今生では一度も触ってないから、前世の時のようにやれるかは知らぬがの。
で、被身子。何で目を丸くしとるんじゃ? そう言えば話したことは無かったかのぅ……。あと耳郎、被身子の前で食い付くな。
「円花ちゃん、音楽趣味でしたっけ……?」
「楽器を扱えると子供が喜ぶから、少し覚えた」
「……?」
飽くまで、少しじゃけど。齧った程度じゃから、本格的な演奏は無理じゃ。練習すれば出来るようになるじゃろうけど、そんな暇は今生では無い。何せほら、学業に呪術師、そして被身子の相手で忙しいんじゃ。
って、おい。何でそんな目で儂を見るんじゃ。嘘は言っとらんぞ。どいつもこいつも意外そうな顔をしおって。解せぬ。
で、じゃ。耳郎の部屋で変に注目された後、次は四階に。芦戸の部屋は、こう……派手と言ったら良いのか? 柄物が多い印象じゃ。奇抜な気がするが、まぁ男子達の部屋と比べたら大したことはない。と、思う。
麗日の部屋も、普通じゃった。変な部分は無いし、部屋ってそんなものじゃよな。と思わされた。
「なんかこう……フツーにフツーのジョシ部屋見て回ってると、背徳感出てくるね……」
「禁断の花園……」
尾白と常闇が訳分からん事を言っておる。部屋は部屋じゃろ。背徳感も何もない。さては阿呆かこやつ等。
その後。お部屋披露大会に参加していない梅雨の部屋は見ないことになって、最後に八百万の部屋を覗くことになった。
覗いてみると、……。さては阿呆か? 阿呆なのか八百万?? 何で部屋の殆どを
にしてもじゃ。こうも大きな
「まさかお部屋の広さがこれだけだとは思っておらず……」
なるほど、ぽんこつか。さては、ぽんこつか。ぽんこつなんじゃな?
仕方のない奴じゃの!
それと! 夕飯にしよう夕飯に! 儂は腹が減ったんじゃ!!
◆
「それでは! 爆豪と梅雨ちゃんを除いた……第一回部屋王暫定一位の、発表です!!」
もぐもぐ。夕飯微妙じゃ、微妙。被身子の手料理が食べたい。何で被身子と母の料理以外は美味しく感じない体になってしまったのか。はんばぁぐが美味しくない。解せぬ。まっこと解せぬ。はんばぁぐは何より美味しい食べ物の筈なのに、美味しくない……。ぐぬぬ、被身子のはんばぁぐが食べたい。今度作って貰おう。肉団子でも良いぞ。
ちなみに、儂は常闇に投票しておいた。誰も見向きもしないと思ったら可哀想での……。峰田と少し悩んだが、そこは付き合いの長い方を優先とした。まぁ、儂以外で常闇に投票している輩は居ないじゃろう。残念ながら。
「投票数五票! 独走首位になったのは、砂糖力道!!」
「はぁあああっ!?」
「ちなみにほぼ全ての女子票。理由はケーキ美味しかったから、だそうです」
……。部屋王とは? 良いのかそれで?
まぁ、良いか。茶番は放っておいて飯にしよう飯に。今は空腹を満たすことしか考えられぬ。こんなに腹が減ったのは被身子のせいじゃ。まさか昼間から、それも寮に入ったその日に抱かれるとは思いもしなかった。まったくこやつと来たら。どこまでもどこまでも仕方のない奴じゃ。身が持たぬ。いい加減、儂を抱く回数を減らさせるべきか?
いやしかし、我慢させるのは気が引ける。でも、抱いて良い条件ぐらいは決めておくべきかもしれん。どうしようかの? 何も思い浮かばぬ。
じゃって、ほら。別に……嫌と言うわけじゃ無いからの。求められるのは嬉しく思う。こうやって甘やかすから、自制しなくなったのは重々承知しているつもりじゃが。
……また今度考えよう。
「廻道さん。良いかな……?」
夕飯を食べ進めていると、緑谷が声を掛けてきた。明日からの事を、今の内に相談しておきたいのじゃろう。そうじゃな、ちょうど良いから話しておくとするか。勿論、被身子にも。
「んくっ。例の件か?」
「うん、アルバイトの件」
「……アルバイト? 円花ちゃん、緑谷くんとバイトするんですか?」
「うむ。すまぬが、呪術師として仕事を頼まれた。明日の夕方からじゃ」
「……むぅ」
ぐぬ……。睨まないでくれ。お主の気持ちは分かっている。林間合宿であんな事が有ったばかりじゃし、当面は大人しくしているつもりじゃった。けど、緑谷が呪術総監部からの依頼を受けてしまったからのぅ。こうなると、儂に選択肢は無い。それでも、せめて被身子に相談してから決めるべきじゃった。
「じゃあ、明日は夜まで居ないってことですか?」
「多分深夜まで帰れぬ」
「……だったら、今晩は沢山甘やかしてください。そしたら許してあげます」
「う、うむ。相分かった……。少し緑谷と話して良いか?」
「ちょっとだけですよ。ちょっとだけですからね? あと、応接室で何があったのか後で詳しく話して欲しいのです」
「うむ、すまぬの……」
……これは、早急に話を終わらせるとしよう。でないと被身子が拗ねてしまう。今宵は目一杯甘やかして、少しでも御機嫌取りをしておきたい。
って、今は抱き付くな。まだ儂が夕飯食べてるじゃろ。
「基本的な調査は儂がするから、お主はそれを手伝ってくれるだけで良い。呪霊を見掛けたとしても、相手にするなよ」
「う、うん。僕は何を手伝えば良いかな……?」
「まぁ、一緒に動いて気付いた事があったら教えてくれるだけで良い。基本的には全て儂を任せろ。手が足りなくなったら、その都度言うから指示に従ってくれ」
「……」
何じゃ、顔をしかめおって。儂の指示が気に入らんようじゃが、お主に出来ることはそう多くない。正直に言ってしまえば、今回の依頼をお主が受けたこと自体儂は気に食わぬ。幾ら呪力を持っていたとしても、個性が強力でも、緑谷は呪術師じゃない。呪術師になって欲しいとも思わん。
子供を巻き込むのは、そもそも反対なんじゃ。今回お主が同行出来るのは、お主が譲りそうにないから儂が譲歩しただけ。そこの辺り、こやつは理解しているのか?
「緑谷、分かったか?」
「……うん、分かった。でも、僕に出来ることは遠慮しないで何でも言ってね?」
「じゃったら、今からでも断ってくれんかのぅ。それが出来ぬなら、現場では儂の指示には絶対従え。絶対、勝手に動くなよ」
「……」
「話は終わりじゃ。儂はこれから被身子を甘やかすから、他に話があるなら明日にしてくれると助かる」
「分かった。じゃあ、また明日……」
ううむ。どうにも納得してないようじゃ。こやつ、呪霊がどれだけ危険か分かっていないのでは? そこまで馬鹿だとは思いたくないが、緑谷じゃしなぁ。誰かの為なら直ぐに駆け出してしまうこやつに、言葉で何を言っても無駄かもしれん。
それでも、何も言わない訳には行かぬ。こやつの身を守るのは儂じゃ。平和の象徴の跡継ぎが呪い殺されたなんて話は、笑い話にもならぬからの。
さて。これから被身子に、何があったかしっかり話さねば。それから許して貰って、沢山甘やかして……。
「被身子」
「はい」
「必ず生きて帰る。約束する」
「……当たり前なのです。それで、何が有ったんですか?」
……ううむ。何処から話そうかのぅ。取り敢えず呪術総監部の事からか? いや待て、それは秘匿義務に反する。呪術に関することを一切非術師に伝えちゃいかんのは、面倒この上ない。もう被身子は知ってるんじゃから、全て洗いざらい話してしまっても良い気はするが……。
うむ、話そう。被身子には包み隠さない。全部話して、その上で納得して貰う。説得出来るかどうかは、分からぬけど。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ