待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
雄英の校門前から車で走ること、結構な時間。途中で休憩を取りつつ、儂等三人は対個性……何じゃったっけ? そうそう、たるたろす。たるたろすとか言う、悪党収容施設にやって来た。たるたるそおす、みたいな名前をしてるからどんな建物かと思いきや、いざ近くまで来てみればとんでもない建物じゃと言うことが分かった。まず、建物に向かう為の橋が約五
それでも記憶に残っていることは、たるたろすには凶悪な個性犯罪者が服役していると言うこと。あと、噂の上では生きて出ては来れないとか何とか。
そんな場所でここ最近、呪霊被害が頻発しているらしい。だから儂と緑谷は、呪術総監部から調査を依頼された。可能ならこの事件を解決して欲しいそうじゃ。
それにしても。とんでもないのぅ、たるたろす。二人と共に来るべきじゃなかったと、つい思ってしまう程に。呪術総監部からの信用を得るための仕事にしては、あまりに難し過ぎる。何故なら……。
残穢が、濃すぎる。本来目を凝らしてもうっすらとしか見えない呪術の気配が、ここは建物の外の時点でとんでもなく濃い。ここで派手な呪い合いが起きたと言われた方が、まだ納得出来そうな程じゃ。
長い橋の上から見える、高い壁に囲まれた海の上の大きな建物。その建物が霞んで見える程に、残穢が満ちている。いや、渦巻いていると言った方が良いぐらいじゃ。
「廻道少女、これは……っ!」
「ぃ、いったい何が……!? これ、何がどうなって……!」
緑谷とおおるまいとが、冷や汗をかいて息を飲む。目の前の光景が、二人には何か恐ろしいものに見えるようじゃ。何せ、儂とて一瞬気圧される程の残穢じゃからの。本音を言えば今から楽しみなぐらいじゃけど。これだけの残穢を残す呪霊じゃ。さぞ、儂を喜ばせてくれる猛者なのじゃろう。
あぁ、わくわくして来た。こんなものを見せられては、いつまで冷静で居られるか分からぬ……!
けひっ。ひひっ。
いかん、いかんぞ。まだじゃ、まだ。落ち着け、落ち着けよ
今は、今は二人に説明と指示を出さねば。飛び出すにはまだ早い。お楽しみは、やるべき事をやってからじゃ……!
「……ふうぅっ。もう見えとるようじゃが、それは残穢じゃ。術式を使用した痕跡での、通常うっすらとしか見えぬ」
「術式の痕跡……? これが……!?」
「そうじゃ。痕跡だけでこの有り様。たるたろすに居る呪霊は、とんでもない奴じゃろうて」
……まぁ。少し考えれば分かることなんじゃけど、呪霊と言うのは人の負の感情が溜まりやすい場で産まれてくるものじゃ。例えば病院、墓地、学校。その点で言えば、拘置所なんかでも呪霊は産まれるじゃろう。この建物に何人の悪党が収容されているのか分からぬが、看守なんかも含めると相当な数が居ると見て良い。
それ故に、負の感情が他の場所よりも溜まり易いのかも知れぬ。それにしたって、これだけの呪霊が産まれるにはそれ相応の年月が要るとは思うが……。
とにかく、じゃ。たるたろすで産まれた呪霊は、決して雑魚ではない。これだけの残穢を残しておいて雑魚じゃったら、拍子抜けも良いところじゃ。
「橋を渡り切る前に、情報が欲しい。おおるまいと、総監部から何か聞いてるか?」
「……ここ数日、タルタロスでは呪霊の仕業と思われる人的被害が頻発している。具体的には、囚人の意識喪失に混濁。中には、不審死した者も居る。
最初は
「人的被害の数は?」
「今日までに十八人。内、死亡したのは三人。意識喪失や混濁した者は、計十四人」
「残る一人は?」
「……カメラに映らない何者かに首を締め上げられたが、無事だよ。多少首回りに大きな痣が残ってるぐらい」
……ううむ。どうやら内部は、とんでもない事になっているようじゃ。人的被害の数は決して少なくない。むしろ多い。それだけ自由に呪霊が動き回っていると言うことじゃけど、解せぬ点があるのぅ。
これだけの残穢を残す呪霊の仕業にしては、死者の数が少な過ぎる。呪霊に襲われたと思われる十八名、その全員が死んで居てもおかしくはない。意識が戻らぬ者も、混濁している者も、呪われたと見るべきじゃろう。なのに、死んだのはたったの三人。しかも一人だけ、他と比べたら随分と軽傷じゃ。
「無事じゃった囚人と、話は出来るか?」
「勿論。捜査に必要だろうってことで、面会許可は出てるよ」
「……会わせてくれ。それと緑谷、おおるまいと。悪いがたるたろすに着いたら、お主等は帰ってくれ。邪魔になる」
「えっ。いやでも、廻道さん」
「危険じゃから帰れ。今回の依頼、お主等には無理じゃ」
正直、二人を連れて調査するような余裕は無い。呪霊と出会した時の事を考えると、居てくれない方が助かる。儂個人が楽しみたい気持ちは、もちろん有る。楽しみたいから、二人を邪魔に思う。
……じゃけど。それと同じぐらいに、危険を感じている。これだけの残穢を残す呪霊。もしかすると、儂より強いのかもしれん。流石に両面宿儺程の実力は持っていないじゃろうけど、警戒しておくに越したことはない。
何より……被身子と約束してるからの。生きて帰ると。
その為には、こやつ等が邪魔になる。共に行動するなど、論外じゃ。出来ることなら今の内から遠ざけておきたいが……。
「儂一人でやる。じゃから帰ってくれ」
「……駄目だよ、廻道さん。一人でなんて行かせない。危険なのは、分かってるけど……それでも……!」
いや、分かってないじゃろ。お主は、まっこと分かってない。呪霊を相手にするのがどれだけ危険なのか。今回の調査が、どれだけお主の身の丈に合っていないのか。知らぬとは言え、何一つ理解しとらん。
幾らこの時代の呪霊が雑魚ばかりでも、中には
領域展開なんて使われてみろ。儂以外は殺されるだけじゃぞ?
「絶対、一人になんてさせないから……!」
……。……はぁ。……困った。どうにも弱い。子供に懇願されると、つい許したくなってしまう。今は遠ざけたいのに。遠ざけなければならないのに。
結局こやつは、儂が何を言ったところでその意思を変えたりしない。儂一人では言いくるめることは出来ぬじゃろう。なら……、仕方ない。ここは儂以外にも言って貰うか。頼むぞおおるまいと。この阿呆に何とか言ってくれ。
「おおるまいと。こやつ何とかしろ」
「え? いや……私も緑谷少年に賛成だよ。廻道少女、君を一人で調査になんて行かせない。ほら、迷子にもなるしね」
「馬鹿を言うな。貴様もこやつも死ぬぞ。言っておくが、たるたろすに居るであろう呪霊は儂でも手を焼く。それだけの猛者の筈じゃ」
あと、儂の方向音痴はこの話に関係無いじゃろっ。
「君が手を焼くってことは、それ相応に危険ってことだろう? 私達を心配してくれるのはありがたいけど、私達も君が心配なんだ。一人で行かせるなんて真似は、させられない」
……まったく、この阿保共は。反りが合わぬ。儂が駄目と言ったら大人しく引き下がれ。そもそも、儂の言うことに従うと約束したじゃろうが。緑谷め、まさか忘れているわけではあるまいな?
ちっ。面倒じゃ。何としてでもこやつ等を帰らせなければ。
「貴様、跡継ぎが死んでも良いのか? 緑谷も、師が死んで良いのか?」
「何があっても、緑谷少年は死なせない。私も死なない。約束があるからね」
ああ、もう。面倒じゃ、まっこと面倒じゃ。殴ってでもこやつ等を追い払ってしまいたい。何なら今すぐ赤縛して、橋の上に転がしても良い。何でどいつもこいつも、命を無下にするような事を口走るのか。
いや、まぁ。
うむ、やはり
「さ、そろそろ着くよ。準備は良いかな? 緑谷少年に、廻道少女!」
「はいっ、オールマイト!」
「……はぁ」
やるしかない。こうなったら、二人を縛り上げてでも置いていく。建物の外に居てくれた方が好ましかったが、付いて来るつもりならば何としてでも儂は突き放すぞ。
取り敢えず、帳を降ろすとするか。いつ呪霊と鉢合わせても良いように、備えておくべきじゃ。
「闇より出でて闇より黒く
その穢れを禊ぎ祓え」
これで、外部からは建物内部で何が起きてるか分からなくなる。たまたま近くを通った一般人が、たるたろすの異変を感じることは無い。
何じゃ緑谷、こっちを見て。言いたい事があるなら言わんか。
「……常闇くんみたいな事するんだね、廻道さん。あ、もちろんカッコイイと思うけど……」
「阿保。帳じゃ帳。今この建物を結界で覆って、外から隠しただけじゃ」
「え、じゃあ今の……呪術なの?」
……、そう言えば帳について説明してなかったかの。いや、林間合宿の時にこやつは帳を目撃していた筈じゃけど……。まぁでも、詳細は話さなかった気がするのぅ。今度、幾つか呪術的な事を教え……るのは止めておくか。こやつが呪術師になることは無いんじゃから、教えたって仕方がない。
まぁ今後、呪術総監部の依頼を受ける上で役立つ知識については少しぐらいは教えてやるが。
車が停まる。さて、そろそろこの二人を赤縛して車に閉じ込めるとするか。ここまで来たのなら、後は儂一人だけで良い。こやつ等など、儂は知らん。知らんったら知らんっ。
という訳で残穢がヤバいタルタロスです。タルタロスは呪術的にやベーとこでしかないと思うんですわ。つまりそう言うことです。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ