待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「まったくもぅ、何やってるんですか……」
「め、面目ない……」
朝から廊下で舎弟を殴ってしまった事は今でも反省しとる。で、居た堪れない気持ちで全ての授業を終えた放課後。あの小僧は誰よりも先に教室を出て行ってしまったので、儂は緑谷の案内で家に帰ることにした。舎弟とは幼なじみ……と言うことで、道案内して貰うことにした訳じゃ。いや別に一人でも家に帰れるが、被身子や両親には一人で出歩くなど釘を刺されているからの。これについては、まっこと解せぬけども。
……とにかく。とにかくじゃ。儂は緑谷に案内して貰う形で、ひとまず校舎から出た。昇降口で上履きから
「まぁ、大体の事情は電話で聞きましたけど。転校二日目で喧嘩なんて、駄目なのですっ」
「んぐぐ……。す、すまんて……」
呆れ顔の被身子に、両頬を摘まれた。くらすめぇとの前でこうも頬を弄り倒されるのは不本意じゃけども、しでかしてしまったのは儂じゃからの……。好きにされるしかない。ってこら、
「っぷは……! こら、被身子っ」
「んふふ。見せ付けちゃいましたっ。
円花ちゃんはっ、私の許嫁なのでっ!!」
こ、声が大きい。悪どい面をして、無駄に声を張るんじゃない。周囲の子供達を威嚇するんじゃないっ。直ぐ側に居る緑谷が固まってしまったじゃろ!
……、まったく! 被身子は直ぐそうやって儂を自分のものじゃと主張するんじゃから……っ。人前での
「それで、そちらの男の子は誰です? また浮気ですかぁ? トガが居るのに……!!」
「浮気なぞしとらんわ、たわけ。舎弟が先に帰ったから、緑谷に道案内をじゃな……!」
「は? それって……下校デートって事ですか!?」
「ち、違うっ! 断じて違うからな!?」
思いっ切り肩を掴まれた。ぉ、おい……。何でそんな、不満そうにしてるんじゃお主は。頬を膨らませて、儂を睨むな。それは早とちりじゃ、早とちりっ。
「むーーっ。すぐそうやって男の子と仲良くなるんですから……! 常闇くんの次は爆豪くんで、その次は何とか谷くんですか!?」
じゃ、じゃからっ。何でお主は直ぐ嫉妬するんじゃっ!? お主と儂は許嫁じゃろ! じゃったら、儂は被身子としか関係を持たぬが!?
「ぇ、えっと……。廻道さん……?」
「ん、んん……っ。ぷはっ。す、すまん緑谷……! こやつは儂の許嫁で、渡我ひみ……んんぅ……!」
ん、んん……っ。何で唇を奪うんじゃ被身子……! これでは、何も緑谷に話せんじゃろっ。しつこく
「……っはぁ……。初めまして緑谷くん。私はトガです、渡我被身子。円花ちゃんの許嫁で将来を誓い合った仲なので、あんまり円花ちゃんと仲良くしないでくださいねぇ……」
「えっ、あ……っ。えっと……! は、ひゃい……!?」
冷ややかな笑みで自己紹介するのはどうかと思うぞ……? お主、そんなじゃから友達が居ないのでは……? 儂を第一にするのは良いが、じゃからって友達を作らんのは如何なものか。雄英では、被身子に友達が出来ると良いんじゃけどなぁ。どうにもこやつは、儂以外が見えてないと言うか。見ないようにしているような気が……。
……ま、まぁ……。そうしたいならそうすれば良いとは思うが。しかしじゃからって、儂以外にろくに興味を示さんのは……色々と心配じゃ。友達は作っておくべきではないのか? せめて一人ぐらい……。うぅむ……。
「……すまん緑谷。被身子はいつもこうじゃから、慣れてくれると助かる……」
「い、いつも……?」
「いつもじゃ……」
「そうさせてるのは円花ちゃんですけどねぇ。トガにやきもちさせる酷い許嫁なのです」
「んん……っ。こ、こら……!」
また唇を塞がれた。流石にこういう事は人前でするなっ。いったいどうしたらこやつは儂の言う事を聞くようになるのか、誰か教えてくれ。でないと身が保たないんじゃが……!? って、こら……! 耳に触るなっ。それはせめて二人きりの時にせんか、へんたいっ!!
「……まぁ、見せびらかす趣味は無いので
「へんたい! 阿呆っ。被身子のたわけ!」
「たわけはどっちですか、まったくもぅ。事情は後でちゃんと聞きますけど、暴力は駄目なのです暴力は」
「んぐぐっ。そ、それはすまんて……!」
また鼻を摘まれた。良い様に扱われてしまっている気がするのは、絶対に気のせいではない。今回は儂にも非があるが、じゃからって何で儂だけこんな風に扱われなければならぬのか。どうにも解せぬ。
……はぁ……。切り替えよう。暴力はいかんかった。これでは小学生の頃とまるで変わらん。事情がどうあれ、先に手を出してしまうのは良くない。次回からは……拳骨は止めておこうかの……。しかし、言葉より先に手が出てしまう気がしてならん。
「と、言うわけなので! 円花ちゃんはトガが連れ帰るので緑谷くんはここで結構ですっ!」
「ぁ、ハイ……。えっと、じゃあ……あとはお願いシマス……?」
「お願いされました! 円花ちゃんのお世話は私の役目なので、覚えておいてくださいねぇ」
「は、ひゃいっ」
いや、被身子。緑谷に詰め寄るのは止せ。そやつ、
……。それはそれとして……。
「ほら、もう良いじゃろ。帰るぞ」
そろそろ帰るとしよう。このまま校門前で立ち往生するのは、何と言うか色々と良くない気がしてきた。明日は明日で、ろくでもない噂が流れてるんじゃろうなぁ……。
「はぁい。帰り道で、何しでかしたのかちゃんと教えてくださいね」
「ぅ、うむ……。じゃあ緑谷、また明日」
「……うん。またね、廻道さん」
……うぅむ。緑谷、返事をするのは構わんのじゃけど変に見詰めるのは止した方が良い。儂の為に、是非止めてくれ。お主がそんなんじゃと、隣に居る被身子が……。被身子が……っ。
「……要注意人物がまた増えたのです……。どうして円花ちゃんってこう……、直ぐ男の子を絆すんですか……!」
「絆しとらん絆しとらん。ただの学友じゃって、まったく……」
すまん緑谷。たった今、お主は被身子に敵認定されてしまったようじゃ。逞しく生きてくれ。大丈夫じゃ、刺されるようなことにはならんはずじゃから。……ならんよな?
とにかく。今日はもう帰ろう。転校二日目にしでかしてしまって、何と言うか気が重い。帰ったら間違いなく説教が待ってるからのぅ。父からの拳骨は確実じゃ、間違いない。
「あ、廻道さん……!」
被身子と手を繋いで歩き始めると、やけに大きな声を緑谷が出した。何事かと思い振り返ってみたら、何か言いたそうにしておる。何じゃもう、仕方ないから聞いてはやるけども。
「……今日は、ありがとう。その、殴っちゃったのは良くないし喧嘩は駄目だと思うけど……」
「……そうじゃな。次からは気を付けよう。それと、別に礼を言われる筋合いは……」
「それはそのっ。普通って言って貰えて、嬉しかったんだ。だから、ありがとう……!」
「気にするな。馬鹿は殴って正すものじゃからの、がははは!」
もっとも、今も昔も馬鹿に付ける薬は無いんじゃけどな。反転術式を施しても、馬鹿は直らんかった筈じゃ。馬鹿は死ぬまで馬鹿なんじゃよ、うむ。じゃから言う事を聞かせようと思ったらじゃな、ぶん殴ってしまうのが存外手っ取り早かったりするんじゃ。
って、いかん。いかんぞ。被身子がまた冷ややかな笑みを浮かべとる。こ、これ以上嫉妬させてしまう前に家に帰るとしよう。でないと、後が大変じゃ。具体的には今夜、両親が寝静まった後辺りが大変になってしまう……!
「ほ、ほれ。帰るぞ被身子……! なっ?」
「……むーー……。後で吠え面かかせてやるのです……」
とんでもない事を口走りおったわ。これは……今夜は寝れぬかもしれんのぅ……。どうしてこうも、嫉妬深い女になってしまったんじゃか。謎じゃ。とてつもなく、謎じゃ……。
……。……そんなこんなで。儂は不機嫌な被身子と共に帰路に着いた訳じゃ。家に帰ったら、これでもかと
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ