待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
納得いかん。まっこと、納得出来ん。何じゃあの呪霊。あれだけの実力を持ちながら、儂の前から逃げおって。何が使命じゃ。そんなものより儂と死ぬまで呪い合え。せっかくの猛者じゃったのに、何でまたお預けされなければならぬのか。
解せぬ……。許さん……。次に会ったら覚えておけよ、おおるまいと擬きめ……!
あとなぁ! 緑谷!! 貴様許さんからなっ!? 儂の楽しみを邪魔した挙げ句、儂の言う事をまるで無視しおって!! おおるまいともおおるまいとじゃ! 儂を小脇に抱えたことは許してないからなっ!?
どいつもこいつも、儂の機嫌を損ねるような真似ばかりしおって……!!
ふんっ。もう良い。もう拗ねた。ご機嫌斜めじゃっ。当面誰とも口を聞かん。被身子は別じゃけどな。ふんっ!
……で、ここは何処じゃ? あの呪霊が居た結界は、あやつが居なくなった時点で崩れた。結果、上下左右が出鱈目になっていた部屋は元に戻り、普通の部屋と姿形を変えたわけじゃ。
どうやらあやつ、この建物を基準として結界を構築し、空間を出鱈目に弄っていたようじゃの。そんな芸当をしたのは姿を潜めていたかったのか。それとも何も考えないでやったのか。どちらにせよ、結界は消えてなくなった。であれば、あの呪霊はこのたるたろすから居なくなったと見るのが正解か? また現れる可能性は、無くもないんじゃけどな。何せ、れでぃ・ながんが呪われている。いずれもあやつを殺す為に戻ってくる筈じゃ。そう考えると、とても解決したとは言えぬ。いずれまた、囚人達が被害に遭うじゃろう。何か対策せねばならん。と言っても、儂にやれることはそう多くないんじゃけど。
「い、つつ……。廻道さん、平気?」
「……」
口は聞かん。ありったけの不満を込めて、この阿保を睨み付ける。
とにかく。こんな阿呆は放っておいて、今はおおるまいとと合流しよう。それと、れでぃ・ながんを保護したい。このまま放っておくと、命に関わる。その旨を呪術総監部に話さなければの。
「えっ、と……。ぉ、怒ってる……?」
あ゛? 見て分かれ。儂は絶賛ご機嫌斜めじゃ。機嫌の悪い奴に機嫌が悪いかどうか聞くんじゃない。余計に機嫌が悪くなるじゃろ。これ以上儂の神経を逆撫ですると言うなら、相手が幾ら子供でも許してやらぬぞ。いつまでも儂が親身に接してくれると思うなよ。そんなのは被身子だけじゃってことを学べ。ふんっ。
取り敢えず、部屋を出るとするか。ここは多分……れでぃ・ながんが収容されていた部屋の真下じゃろう。なら、適当に廊下を歩いて元に戻るとしよう。む、扉が開かぬ。何でじゃ? よし、壊す。随分と頑丈そうな材質で出来ているようじゃが、関係無い。憂さ晴らしに壊してしまおう。何、責任は呪術総監部が取るじゃろ。知らんけど。儂の機嫌を損ねた輩が悪い。恨むならそっちを恨め。
拳を振り被る。力任せに殴ろうとすると、その瞬間勢い良く扉が開いた。
「緑谷少年! 廻道少女!!」
喧しい。扉が開いたと思ったら、冷や汗を浮かべたおおるまいとが部屋に踏み込んで来た。その図体で出入り口に立つな。通れないじゃろ、たわけ。
「良かった。無事だった……! 怪我は!?」
「だ、大丈夫です。でもすみません、呪霊……逃げたみたいで」
「逃げた!? いや、二人が無事で良かった。とにかく、怪我はないみたいだね。よ、良かった……」
おい。儂の肩を掴むな。怪我をしてるかしてないかなんて、見れば分かるじゃろ。いちいち肩やら腕やら脇やらを叩いて調べるな。せくはらじゃぞ、せくはら。被身子以外にせくはらされたって、儂は何も嬉しくない。教育委員会に訴えてやっても良いんじゃぞ。ぴいてぃいええ、とやらに告発してしまっても良い。あれじゃ、儂が被身子のくらすめえとを全員殴った時に出て来た連中じゃ。あれはあれで殴りたくなったもんじゃ。何なら今でも、多少恨んでおる。何が父母と先生の会じゃ。教育環境の向上を目指すなら、まず学校から虐めを失くせ。
……あぁ。余計な事を思い出してしまって、苛々して来た。
「ここで、何があったんだい?」
「呪霊が居ました。その、ヒーローの呪霊だって」
「ヒーローの呪霊……? えっ、何それ……??」
「僕も分かりません……。ええっとその、廻道さんが何か知ってると思いますけど……」
二人して儂を見るな。儂は口を聞きたくないんじゃ。機嫌が悪い。後にしろ後に。と、言いたいところじゃけど……情報共有はしておくか。呪霊がどのように発生するかは大まかに話したと思うが、詳しく話したことは無かった筈じゃからの。
まったく。呪術総監部もいい加減じゃの。まぁ、あの背広男に情報を盗まれているなら仕方ないところではあるが。
情報が儂頼りになるとは、これ如何に。あの背広男め……。許さん。
「……はぁ。呪霊と言うのはな、様々な感情が集まって出来るものじゃ。主に負の感情であることは間違いない。
呪霊の中にはの。自然への畏怖で産まれてくる奴もおる。神野で相手にした花御や、一つ目……漏瑚なんかがその類いじゃ。あやつ等は自然と、大地……或いは火山への畏れが産んだ呪霊じゃろう」
「つまり……ヒーローの呪霊って」
「ひいろおへの畏れや恨みが集まって産まれた呪霊、かもしれんな。
ちなみに、呪霊の強さはだいたい感情の強さや数で決まると言って良い」
「それって……! とんでもないんじゃ……!?」
そうじゃ。とんでもない。この超常時代、
つまり、あの
……そして。
「下手をするとあの呪霊、儂より強いぞ。唯一の救いは、もう呪胎を果たしてこれ以上姿形が変わることは無いってことぐらいかの」
「呪胎……?」
「進化じゃ。今後あやつは術式を使い続け、強くなるじゃろう。ここで祓っておきたかったんじゃけど、誰かさんが邪魔じゃったからのぅ」
じっとり、緑谷を睨んでおく。こやつが居なければ、祓えていたかも知れぬ。やはりこの場で祓えなかったのは痛手じゃ。あの呪霊は、今後多くの被害を出すじゃろう。儂が祓うまでに、どれだけの犠牲が出るのかも分からん。
ただひとつ、もしかすると。あの呪霊は悪党しか狙わん。ただの勘じゃけどな。確証は何一つ無い。
「廻道少女、今後タルタロスで犠牲者が出る可能性は?」
「知らん。ただ少なくとも、あやつはここから逃げた。外に出たと考えるのが自然じゃろ」
「ひとまず危険は去ったと、考えても良いのかな……?」
「それも知らん。戻ってくる可能性は無いとは言えん。確かなのは、犠牲者の数は今後増えていく。それは総監部に伝えておいてくれ。
それと、今回の依頼は失敗したとも言っておけ。状況が悪くなったんじゃからな」
まったく、呪術師としては情けない話じゃ。子供に気を取られて呪霊を祓い損ねるなど、有ってはならぬ。じゃけど、子供を見捨てるような真似は主義に反する。これだけは変えられない。こうなったら、緑谷を徹底的に鍛え上げるしかないじゃろう。次にあの呪霊と出会った時、例え緑谷と一緒じゃったとして確実に祓えるように。
あぁ……、苛つくのぅ。何で子供を呪術師として育てねばならんのじゃ。それ自体が儂の主義に反するような行為じゃと言うのに。
呪霊から身を守る術は幾らでも教えてやるが、呪術師として育てるとなると……。納得いかん。まっこと、納得いかん。
「あと、もうひとつ。れでぃ・ながんの保護を要請しとけ。あやつ呪われてるから、この先どうなるかも分からん」
「の、呪われ……っ!?」
「相手は呪霊じゃぞ。今後、呪われた人間なんて幾らでも出てくる。今の内に慣れとけ」
「何とかする方法は……!? 呪われた、だなんて……!」
「簡単には行かない。今すぐは諦めろ」
呪いを解く方法は、幾つか有る。幾つか有るが、そのどれもが簡単には行かぬ。
例えば呪いを中和するには、正の力が必要になる。反転術式じゃの。しかし儂は、反転術式を他者に使用することが出来ぬ。後で聞いてみるが、おおるまいとも恐らく無理じゃろう。
例えば、手っ取り早く
それと、あとひとつ。呪力を用いて少しずつ呪いを紐解いて行く方法。これなら儂も出来るが、とにかく時間が掛かる。別に大人が呪われてどうなろうが知ったことでは無いんじゃけど、呪術師として目撃してしまった以上はその役割は果たさなければのぅ。
あぁ、色々と面倒じゃ。やるべき事が増えていく。呪術師としての活動を望んでいたとは言え、組織に属すると途端に動き難くなる。昔のように、一人で自由にやりたいものじゃ。しかし当面は、緑谷やおおるまいとと行動を共にすることになるじゃろう。早いところ独り立ちしてくれんかの、こやつ等。そしたら儂が楽なんじゃけど……。
「……最後にここを見回って、今回の依頼を済ませよう。それで良いな?」
ひとまず。今回の依頼を終わらせるとしよう。この建物の全てを見回るのは骨が折れそうじゃけど、やるしかあるまい。他に呪霊が産まれている可能性は限り無く低いとは思うが、念の為じゃ念の為。未だ残り続ける残穢の中に、雑魚呪霊が紛れ込んでいるかもしれんしの。これだけの残穢に寄り付く呪霊が居るとは思えんけど。
……それにしても。たるたろすの内部を全て見回るのにどれだけの時間が掛かるんじゃ? これ、朝までに終わらないんじゃ……。
……ま、まぁ。何とかなるじゃろ。なる、よな……??
ガチ不機嫌円花です。このストレスはトガちゃんで発散するのか、トガちゃんに発散して貰うのか。どっちでしょうねぇ(すっとぼけ)
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ