待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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麗日と緑谷。そのいち

 

 

 

 

 

 くあぁ……っ。んん、今日も眠い。寝不足が続いている。昨晩は、被身子と盛り上がってしまったと言うか、被身子が盛り上がってしまったと言うか。いや、ずっと流されるままの儂も儂じゃったけど。

 昨夜、寮に帰ったのは真夜中の二時半。帰りの道がたまたま空いていたのと、おおるまいとが休憩も取らずに車を走らせてくれたからの。お陰で早く帰ることが出来た。その後の事は……まぁいつも通りと言えばいつも通りじゃの。儂が帰るまで起きて居てくれた被身子と入浴して、血を吸わせて……後は流れに逆らうことも出来ず布団の中へ。で、二時間程は二人で盛ってしまったと。寝ることが出来たのは、朝の四時。今日は朝の七時から訓練で……二時間程しか眠れなかった。

 じゃから、とても眠い。眠くて堪らん。今日は訓練場の隅で寝過ごしたい欲求があるが、寝惚けたりしたら相澤先生からどんなお仕置きをされるか分かったものじゃない。しかし体を動かす気にはなれぬので、壁に寄り掛かって座り、手のひらの上で石ころを回転中じゃ。

 景気良く爆発音が響いている。くらすめえと達の……掛け声が木霊している。そして儂の直ぐ側では……。

 

「うわっ!?」

「あかんよデクくん。受け身はしっかり取らんと、怪我しちゃうから」

「ぅ、うん。ごめん、麗日さん。付き合って貰っちゃって……」

「良いよ良いよ、私も訓練にもなってるし。一緒に頑張れるって、何か良いね! ……うっぷ」

「麗日さんっ!?」

 

 麗日と緑谷が、仲良く鍛練中じゃ。と言うのも、現在緑谷は両腕に深刻な問題を抱えている。次に同じような怪我をした場合、腕が使い物にならなくなると医者から宣告されている。この問題は反転術式(はんてん)を回せるようになれば解決出来るんじゃけど、残念ながらこやつはまだ呪力の掛け合わせが出来る程の操作精度が無い。

 ひとまず腕に負担を掛けぬ戦い方として、組技を重点において鍛えることにした。相手の姿勢や重心を崩せれば力は必要無いからのぅ。

 で。ずっと儂が教えても良いんじゃけど、儂は儂で個性の鍛練が有る。そこで麗日に協力をお願いしたら、快く協力してくれた。お陰で儂は自分の鍛練を行いつつ、緑谷の鍛練も見てやれるようになった訳じゃ。

 

 それにまぁ、こやつ等の相性は悪くないと思う。学校生活の中で、行動を共にしていることは多いしの。そう言った意味でも、麗日は今の緑谷にとってちょうど良い。

 

 にしても緑谷。貴様、昨日よりも動きが固くないか? 儂に投げられ続けてた時はもっと自然に動けてたじゃろ。何をそんなに緊張してるんじゃ、こやつ。

 ちなみに、麗日は周囲に混凝土(こんくりいと)の岩やら石やらを浮かせ続けたままじゃ。何でも浮かせられる重量には上限があるらしく、それを越えると激しく酔ってしまうらしい。じゃから、酔った状態でも動けるように敢えて許容量を越えた重量を浮かせ、その状態で緑谷に組技を教えていると。お陰で顔色が物凄く悪い。何なら何度も吐きかけている。

 少し、親近感が湧くの。儂もほら、回転させ続けると反動で目が回るし。やり過ぎると嘔吐してしまう。まぁ儂の場合は反転術式(はんてん)を強く回せば副作用は踏み倒せる。が、個性を使う度に呪力を多く消費するのはよろしくない。じゃから呪力消費を自己補完の範疇で済ませられるよう、体に酔いの耐性を付けておきたい。だから、さっきから石ころをぐるぐる回しては自分から気持ち悪くなってる。うえっ。

 

「じゃあデクくん、今の流れでもう一回やってみ、っ、おろろろろ」

「わあっ!? 麗日さんっっ!?」

 

 ……麗日。儂の目の前で吐くのは止さぬか。つられて儂まで吐きそうになってしまう。貰い嘔吐と言うやつじゃな。うっぷ、いかん。吐きそうじゃ。反転術式(はんてん)反転術式(はんてん)っと……。

 こんな調子だと、いつになったら副作用を気にせず個性が使えるようになるのやら。眠くて身が入らん。被身子は今何をしてるじゃろうか? 寝てるかもしれんが。ううむ、夜の営みは自重した方が良いかもしれん。このままだと色々と支障が出てしまう。しかし、あやつを我慢させるのは難しい。儂もつい甘やかしてしまうからのぅ。

 いっそ、部屋を分けて貰うか? いや、それは寂しいからやじゃ。

 

 駄目じゃ、思考が纏まらん。止めじゃ、止め。こんな時は寝てしまうに限る。相澤に見付かったらお説教ものじゃけど、ほら、昨晩働いていたわけじゃし。多少は許して……、……貰えぬよなぁ……。……はぁ。何とかして起きておくか。

 

「くぁ……っ。緑谷、介抱してやれ。多分しばらくは動けんじゃろうから」

「うん。少し落ち着いたら、保健室に連れてくね」

「そうじゃの。組技の手応えは?」

「んん……。力任せになら、投げれるけど。でもそれだと腕に負担が掛かっちゃうし、手応えは勿論あるんだけど……何かしっくり来ないと言うか……。腕を使わずに済むのならそうしたいんだけど。あ、いやっ、麗日さんや廻道さんの教えが悪いって訳じゃ無くてね!?」

「麗日の組技はどちらかと言うと腕力に頼らんものじゃから、今のお主にはちょうど良いとは思うんじゃけども」

 

 麗日による組技の指導を見ていて、思う。あやつの組技は体捌きや動きの流れからして、腕力は必要以上に使っとらん。流れの中でしっかりと相手の姿勢を崩し、その上で投げている。そもそも相手の勢いを利用する投げが多い。じゃから、今の緑谷には有用な戦法の筈なんじゃけどなぁ。腕に必要以上の力を込めずに済むんじゃから。

 

「う、うん。そうなんだけど。つい力が入っちゃうと言うか、必要以上に身構えちゃうと言うか……」

 

 ……どうも、麗日に教わる組技は緑谷の意識と噛み合わんらしい。良い案じゃと思ったんじゃけどな。

 対人戦闘において、組技は有用じゃ。手札として持っていて良い。ただこやつの場合、ここまで積み上げたものが打撃一辺倒じゃったからのぅ。間合いの取り方なんかはその辺りの影響が出ておる。

 しかしもう、拳が主体の戦い方は出来ない訳で。じゃから組技を覚えさせようとしてるんじゃが、どうも芳しくない。となると後は……蹴り技か。それも良いが、打撃ばかりをやらせるのはどうかと思う。こやつの場合、とにかく何でも一人で出来るようにならなければならぬからの。平和の象徴を継ぐつもりなら、近接戦闘において出来ないことは無い方が良いじゃろう。

 幾ら出鱈目な個性を持っていても、拳ばかりで何でもやってしまうのはどうかとも思うし。

 

「その。どうしても拳以外で戦うイメージが出来ないって言うか……。やっぱその、拳で戦うべきかなって」

「拳だけで戦える状況じゃないんじゃから、切り替えろ。壊れかけの武器に縋るような真似は止せ。

 ……あと、麗日を背負ってやれ。腕が不安なら儂が運ぼうか?」

「いや、大丈夫だよ。麗日さん、背負うね?」

「おぇ……っ、いや、汚したら悪いから……うっぷ……」

 

 ううむ、しばらく駄目そうじゃの麗日。今にも死にそうな顔になっておる。これは、当面動けぬじゃろう。ひとまず保健室に運んで、後は儂が教えるとするか。仮免まで、儂等にゆっくりしている暇は無い。出来る限り時間を無駄にしないようにしなければ。

 とは言え、被身子との時間は意地でも作るがの。じゃってほら、構わないで居ると拗ねられてしまうし。儂じゃって被身子とゆっくり二人きりの時間を過ごしたいわけで。

 

 ……取り敢えず。麗日を保健室まで運ぼう。緑谷は大丈夫と言っているが、途中で背負うのを代わってやるとするか。腕に負担を掛けるのは良くないからの。悪化でもしたら、それこそ大変じゃ。

 

「ごめんね、デクくん。訓練の時間が……」

「気にしないでよ。手伝って貰ってるのは僕なんだから」

「うぅ……ごめん、ありが、うぇえ……っ!」

「わぁあっ!? 麗日さんしっかり!!」

 

 緑谷に背負われた麗日が、またも盛大に吐いた。酔ってる最中に体を動かし続けると、こうなるんじゃな。儂も気を付けるとしよう。緑谷の肩や背中が嘔吐物まみれになってしまった件は……見なかったことにしておこう。

 ……まぁ、あれじゃ緑谷。男子足るもの、女子(おなご)にされた事は許してやらんと。こやつの場合、心配が勝るじゃろうから許す許さないでは無いと思うが。

 

 そんなこんなで。ひとまず麗日を保健室まで運ぶことになった。その旨を相澤に伝えると、儂と緑谷は訓練続行を指示されたから、それは無視することにした。どこの時代に体調不良の子供を放ったままにする鬼畜がおるんじゃ。……いや、この時代に居たか。相澤貴様、さては鬼畜か? 鬼畜生か?

 

 ……何? 甘やかすな? 喧しい。子供の躾方(しつけかた)を覚えてから、儂に意見してくれ。

 まぁ、平安時代の基準で言えばくらすめえと達は成人しとるわけじゃけど。でも今の時代、成人は十八からじゃし。それまでは子供じゃ、子供。大人になるまでは甘く接したって良いんじゃ。ただし被身子は除く。大人になっても甘やかしてやろう。

 

 じゃって、儂の嫁じゃもん。溺愛したって、何も悪くなかろう?

 

 

 

 

 

 

 

 







夏休みの間は寝不足が続きそうなバカップルです。もう駄目かもしれん。元から駄目? それはそう。

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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