待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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タルタロス。その後

 

 

 

 

 

 回転の使い道が分からぬ。この個性を呪力強化すれば竜巻を起こせることは分かった。しかし、それだけでは使い物にならん。個性を使う度に竜巻を起こしていたら、それだけで儂の前に有る物が軒並み吹き飛んでしまう。我ながら使い勝手が悪過ぎる個性じゃと思う。そのお陰で、緑谷や麗日の苦労が良く分かるが。まぁそんなものを知ったとて、回転の使い道は分からぬままなんじゃけど。

 麗日を緑谷と共に保健室に運んだ儂は、一人で保健室を出た。訓練場に戻ろうかと思ったんじゃが、眠くて眠くて訓練を続けるのが面倒になって来た。欲を言えば今すぐ寮に帰りたい。被身子と一緒に、昼過ぎか夕方ぐらいまで寝てしまいたいのぅ。後で相澤に叱られたくないから、結局は訓練場に戻らなければいかんのじゃけど。

 

 ……、しまった。一人で保健室を出るべきではなかった。このままではまた、方向音痴とか言われてしまう。下手をするとくらすめえと達が儂を捜索し始めて訓練どころじゃ無くなってしまうの。それは流石に申し訳なく思う。が、うむ。まぁ何じゃ……。その、じゃな。

 

 どうやって保健室に戻れば良いかも分からぬわ。がははは!

 

 などと、笑っている場合ではない。幸いにも携帯電話(すまほ)巫女装束(こすちゅうむ)の懐に入れてある。これで緑谷に電話すれば良い訳じゃ。我ながら、賢い。いや、元々阿呆ではないし、阿呆になった覚えも無いが。無いったら無い。もっと言うと、ぽんこつでもない。

 

 取り敢えず。今すぐ緑谷に電話をして……。あぁ……。

 

 携帯電話(すまほ)が真っ暗な画面のまま動かん。側面のすいっちを押しても、うんともすんとも言わぬ。これはあれじゃ、電池切れじゃ。そう言えば最近、充電してなかったの……。普段あまり使わないから、すっかり忘れていた。

 

 という訳で。何と助けが呼べぬ。あぁ、これは困った。こうなったら仕方ない。誰か通り掛かるのを待って居よう。立ってるのも面倒じゃから、壁に寄り掛かって座るとするか。夏休みとは言え、学校。雄英は全寮制になったんじゃから、生徒なり教師なりが儂の前を通るじゃろう。

 

 

「……はぁ」

 

 

 いったい何をやってるんじゃか。気が抜けていると言うか、状況判断がままならん。眠気のせいか、頭の片隅に常に被身子が居る。気がする。じゃって、自分から好意を口にするようになってから被身子への気持ちが止まらんと言うか。ただでさえ近い距離を、もっと埋めたくなってしまったと言うか。要するに、好き過ぎてどうにかしてしまいそうってことなんじゃけども。

 あやつ、ずっとこんな調子で儂を好いているのか? ずっとこんな風に、儂を想い続けて……?

 

 ……仕方ないを通り越して、とんでもない奴じゃの。でも、あんなに愛の言葉を欲しがる気持ちも分かる気がする。申し訳ない事をしてたんじゃな、儂。好意はしっかり相手に伝えた方が良い。そんな事、死ぬ前から分かってた筈なのに。産まれ直した後で、あんな悪女に気付かされるとは……。

 

 あぁ、もう。被身子の事を考えてたら、被身子に会いたくなってきた。あの笑顔が恋しくて堪らん。困ったのぅ。まっこと、困った。

 

 被身子に思考を独占されつつ、しゃがんだまま天井を見上げる。また溜め息を吐いた辺りで、聞き覚えしかない重い足音が聞こえた。同時に、静かな足音も。これ幸いと首を動かすと、やはりおおるまいとが直ぐ近くを歩いていた。隣には、七山も居る。

 ちょうど良い、声を掛けて訓練場まで連れて行って貰うとするか。そう思い、重たい腰を上げると……。

 

「あ、廻道少女。ちょうど良かった、探してたんだ」

「おはようございます、廻道さん。緑谷くんの居場所はご存じですか?」

 

 先に声を掛けられた。まぁ良い。

 

「緑谷なら保健室じゃ。あやつがどうかしたのか?」

「保健室!? まさか腕が……!?」

 

 顔を青くするのは良いが、その図体で儂に詰め寄るな。肩を掴むな、何でそのまま儂を持ち上げた? 握力自慢か? それとも筋力自慢か? 蹴るぞたわけ。

 

「違う。麗日が個性の副作用で動けなくなったから、保健室まで儂と運んだんじゃ」

「あぁ、そう言うこと……。良かった、てっきり腕が動かなくなったのかと……」

 

 下ろされた。何じゃこやつ。妙な真似をするのは止せ。一瞬せくはらかと思ったし、何なら顔面を蹴飛ばしてやろうかと思ったぞ。

 

「それについては、まだ大丈夫じゃ。で、何の用じゃ七山」

「あなた達の昨日の働きについてです。緑谷くんも交えて話したいので、これから宿直室までご同行して頂けますか?」

「……何処じゃそれ」

 

 そんな部屋、雄英に在ったかのぅ? どうも覚えとらん。儂が知らぬだけで、最初から在ったかのかもしれん。

 まぁとにかく。宿直室に行けば良いんじゃな? どうやって行くんじゃ??

 

「あー、七山くん。廻道少女は極度の方向音痴だから、君が案内してくれるかな? 私は緑谷少年を連れて来るから」

「……何故雄英の生徒を、部外者の私が。いえ、分かりました。場所は把握していますので」

「HAHAHA! じゃあ、任せたよ。絶対に廻道少女から目を離さないように! 迷子になるから!!」

「は? ならんが??」

 

 おい、誰が迷子になるって? 迷子になるとか言う方が迷子になるんじゃぞ貴様。後で道に迷っても、儂は助けてやらんからなっ。筋肉阿呆!!

 

 ……って、もう居ない。廊下を走るなたわけ。教師が走ると、生徒に示しが付かんじゃろうが。まったく、あの筋肉阿呆は落ち着くということを知らんから困る。とにかく、宿直室とやらに案内して貰うとするか。訓練には戻れぬが、まぁその辺の言い訳はこやつ等が適当に並べてくれるじゃろう。そうでなきゃ困る。

 

「あんな筋肉は放っておいて、先に向かいましょうか」

「うむ。あやつは放っておこう」

 

 七山と意見が合致した。必要以上に仲良くするつもりは無いんじゃけどな。おおるまいとが何処までも筋肉阿呆で居るのが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……宿直室とやらは、かつて儂と被身子が使っていた寮じゃった。何でじゃ、何で此処を宿直室になどしたんじゃ雄英は。そんな真似をするぐらいなら、卒業まで此処に住ませてくれても良かったのではないか? 寮が変わって色々と大変なんじゃぞ。具体的に言うなら、人目を盗むことが。

 まぁ。呪術を外部から隠さなければならなくなった今、宿直室を使うのは正解じゃ。少なくとも生徒は寄り付かんじゃろうし、此処を利用することを事前に伝えておけば教師も来たりしないじゃろうからな。

 

 久しぶりにかつての寮に足を踏み入れると、違和感が凄まじい。大きくは変わっていない筈なのに、何かが大きく変わったように感じる。変わらないと言えば、部屋の隅に置かれた作業台ぐらいか。物が大きいから、流石に新しい寮には運べない。と言うか、置く場所が無い。今の寮は部屋が狭いからの。

 あ、そうじゃ。ついでじゃから作業台で携帯電話(すまほ)を充電しよう。

「それで、何の用じゃ?」

「それは、二人が来てから話しましょうか。それまでは別の仕事をしてますので」

 

 居間のそふぁに腰掛けた七山は、鞄から取り出した板電話(たぶれっと)を使って何かし始めた。まぁ、放っておくか。仕事と言うならそっとしておいてやろう。僅かな空き時間でも仕事しなければならない辺り、呪術総監部は相当忙しいらしいの。最近改めて作られた部署らしいが、人手は足りてなさそうじゃ。

 おおるまいとや緑谷が来るのを黙って待っているても手持ち無沙汰じゃし、儂も何かして暇を潰すか。

 

「起動。呪眼(のろいまなこ)作成」

 

 久しぶりにはなるが、作業台を起動してみた。本音を言うと呪眼(のろいまなこ)なんてもう作りたくは無いんじゃけど、子供達が壊すかも知れんからの。予備を今の内に作っておいてやるとする。たまに此処に顔を出して、作業させて貰おう。そんな暇が今後あれば、じゃけど。

 

「そう言えば、つい最近まで呪眼(のろいまなこ)と言う呪霊が見える眼鏡を作成していたらしいですね」

「総監部と契約する前なんじゃから、秘匿は無効じゃろ」

「いえ、そういう話ではありません。それ、大量生産出来ますか?」

「無理じゃ。一つ作るのに時間が掛かるし、作れるのは儂だけじゃし」

 

 まぁ作ろうと思えば一日に数度は作れるんじゃけど、呪力消費が自己補完の範疇を越えてしまうからのぅ。あと、単純に面倒なんじゃ。出来ればもうやりたくない。

 取り敢えず椅子に腰掛けて、眼鏡が作られていく様子を見守る。もう何度も見た光景じゃ。数秒後、台座の上に眼鏡が出来た。ので、少しずつ呪力を流し込んでいく。やはり面倒じゃの、この作業。どうも好きになれぬ。

 

「でしたら至急、幾つか作って頂きたい。そうですね、取り敢えず三つ程 」

「……儂、仮免取得で忙しいんじゃけど?」

「では仮免試験日の夜までそれ以外の仕事は振りません。緊急事態以外では」

 

 ……はぁ。また作らねばならぬのか、呪眼(のろいまなこ)。被身子との時間が減ってしまうが、総監部から頼まれたなら仕方ないか。仮免試験日の晩までは働かされることも無いようじゃし、それならば引き受けるとするか。

 では、早速始めるとしよう。と、思ったら。宿直室に誰か入って来た。玄関の方を見てみれば、緑谷とおおるまいとが見えた。間が悪い奴等め。せっかく儂がその気になったと言うのに……。

 

「おはようございます、七山さん」

「おはようございます、緑谷くん。では、昨晩の件についてお話しましょうか。

 まず、昨晩はお疲れ様でした。今後、お二人を呪術師と認めさせて頂きます」

「は?」

 

 いや……昨晩の依頼は失敗したじゃろ。呪霊は逃してしまったし、被害は今後増えていく。取り逃がしたのは儂の失態じゃ。なのに信用されるとは、これ如何に。何を考えてるんじゃ、こやつも呪術総監部も。

 

「最初から成否は見ていないんですよ。要はあなた達二人が呪術師として働けるかどうか、それが知りたかっただけですから。

 お二人は、十分に働いてくれました。ヒーローの呪霊の撃退並びに目的の解明、タルタロスの見回り、被害者の保護要請。解決とは行きませんでしたが、出来る限りの事はしてくれました。そこまでしてくれれば十分です」

「……まぁ、信用してくれるならそれでも良いが。それで? れでぃ・ながんや、ひいろおの呪霊はどうするんじゃ?」

 

 七山の言い分に納得は出来ぬが、取り敢えず呪術総監部からの儂等は信用されることになった。……らしい。裏で何を考えているのかは知らんけど。呪力と言う未知の力を手元に置きたいではないのか? こやつ等にとっては未知みたいなものじゃし。そう考えると、面倒な事になるかもしれん。政に関わるつもりは無いんじゃけど、この時代は呪術師が少な過ぎるからのぅ。総監部に勤めろと言われたら面倒この上ない。やらんぞ、儂は絶対にやらんからな。

 

「取り敢えず、二人はそちらにお掛けください」

「あ、はい。失礼します」

「もう少し気楽で構いませんよ、緑谷くん。固くなっても疲れるだけなので」

「そう言われても……」

 

 何で緊張してるんじゃろうな、緑谷。まぁ相手は大人じゃし、多少威圧的に見える面もある。子供からすれば取っ付き難い大人じゃよな、七山は。

 七山に促されて、緑谷もおおるまいともそふぁに腰掛ける。

 

「まぁまぁ緑谷少年。彼もこう言ってることだし気楽に行こう。今から固くなってたらいざって時が来る前に疲れちゃうから」

「そういう事です。労働は糞なので、多少不真面目に取り掛かるぐらいがちょうど良いかと」

 

 不真面目て。しかも労働は糞と言い切りおった。とんでもない奴じゃなこやつ。大人としてどうなんじゃそれは。

 

「では、まずヒーローの呪霊について話しましょう。今朝、神野警察署の前に拘束された(ヴィラン)が十五名届けられる事件が起きました。全員意識が混濁しておりましたが、今は回復しつつあるようです。被害者の様子を見るに、ヒーローの呪霊の仕業と断定して良いかと。

 この呪霊について、呪術総監部は様子見と判断しました」

「……! また犠牲者が……っ。て言うか、待ってください! 様子見って!?」

「話は遮らないように。……続けますよ?

 やってること自体はヒーロー活動のようなものですし、犠牲者は多くても死者は少ない。対策もコンタクトも、ろくに取れませんから」

 

 とんでもない事を、淡々と口にしないで欲しいのぅ。やってることが英雄(ひいろお)のようなものじゃとしても、呪霊は呪霊じゃ。なのに、様子見? どうやら呪術総監部は、呪霊の脅威を甘く見ているらしい。どうなっても儂は知らんぞ。後で慌てて泣き付いてきても、様子見なんて馬鹿げた判断をしたのは貴様等の方じゃからの。

 

「呪霊を放っておくなんて……。廻道さん、何とかしなきゃ」

「いや、何ともならんが?」

「えっ。でも、動かなかったらまた犠牲者が……!」

 

 こやつの言いたい事は、分かる。

 例え英雄(ひいろお)の呪霊じゃったとしても、あやつがやっているのは決して英雄(ひいろお)活動などではない。ただの粛清じゃ。傲慢で自分本位の暴力とも言える。それは英雄(ひいろお)を目指す者には、とても許せない行為じゃろうて。

 それに、あの呪霊はおおるまいとと同じ姿形をしておるしの。その辺りの事も緑谷の神経を逆撫でしているようじゃ。儂としても放っておくつもりはないが、何とかしようにも何ともならんのが現実じゃ。

 あの英雄(ひいろお)気取りの呪霊が何処に居るのか分からぬ以上、こちらから仕掛けることは出来ない。まして呪霊は非術師に見えぬから、足取りを追うことも出来ぬ。儂等三人だけで日本を隅々まで探すなんて真似も出来ぬしの。

 

「緑谷。呪術師は、ひいろおとは違う。全ての命を守ろうなどと思うな。そもそも物理的に無理じゃ。儂等三人だけで何処に居るかも分からん呪霊を、日本中探し回れと?」

「それは、そうかもしれないけど……。でも、だからって放っておくことは出来ないよっ。今この瞬間にもあの呪霊は誰かを襲ってるかもしれないのに……!」

「呪術師は儂等三人しか居ない。であれば、どうしても犠牲は出る。そこは割り切れ」

 

 僅かな犠牲すら緑谷としては許容したくないのかも知れぬが、無理なものは無理じゃ。こやつに呪術師をやらせるのは、駄目かもしれん。素質が有ったとしても、向き不向きは違うからの。

 どうも緑谷は、英雄(ひいろお)と呪術師を同じものとして見ている節がある。なまじ一人で何でもしてきた奴が師で、その師も呪術師として活動を始めたわけじゃから、変な影響を受けているのかも。

 まったく、師としてもう少し緑谷に言い付けておかんか。最近雄英の外で何をしてるかは知らんが、もっと緑谷に構ってやれ。後継に選んだなら、付きっきりで面倒を見んか。この筋肉阿呆。

 あと緑谷。納得出来ないのは分かったから、儂を見詰めるな。分かった、分かったからそんな目で儂を見るな。まったく、仕方ない奴じゃの……。

 

「……それで、れでぃ・ながんは?」

「ひとまずタルタロスとは別の拘置所に移しました。彼女に接することが出来るのはごく僅かな人間のみに絞っています。

 それで、廻道さん。彼女が掛けられた呪いとはどのようなもので?」

「そこまでは知らん。命に関わるかもしれんし、そうじゃないかもしれん」

 

 あの呪霊が人にどのような呪いを掛けたのか。そこまでは呪いが効力を発揮しなければ分からん。予測が出来ないわけでもないが、あの呪霊の術式が何であるかも定かではないしの。

 ただひとつ言えるのは、れでぃ・ながんが今後ろくな目に遭わんのは確実じゃということ。体調不良程度で済むなら良いが、場合によっては精神が壊される可能性じゃって有る。その辺りは、今後観察していくしかあるまい。

 

「解呪は可能でしょうか?」

「今すぐは無理じゃ。儂が詳しく調べれば何か分かるかもしれんが、そちらに付きっきりになる」

「……死なせたくはありませんが、死んでしまうのなら仕方ありませんね。こちらも当面は様子見と行きましょう。

 廻道さん、貴女は呪眼(のろいまなこ)の作成を。もしレディ・ナガンの呪いが進行するようなら、その時はヘルプをお願いします」

「七山くん。彼女を放っておくのかい?」

 

 おおるまいとも、呪われた人間を放って置きたくは無いらしい。気持ちは分からないでもないが、儂としても割り切って欲しいのぅ。英雄(ひいろお)気分で呪術師をやられても、正直困る。

 

「優先順位の話です。今必要なのは、呪霊対策の強化。あなた方が居るとは言え、何でもかんでも呪いから守るなんて事はどうしても出来ませんから。今は切り捨てるしかありません」

「……なら、せめてレディ・ナガンには私が付こう。ほら、またヒーローの呪霊が彼女を襲うかもしれないし。緑谷少年達は仮免を取らなきゃいけないから、そちらに集中して貰わないと」

 

 ……どうあれ、英雄(ひいろお)の呪霊も、れでぃ・ながんの事も様子見か。この人数ではやれる事は限られているし、今現状として全ての呪術的問題に漏れなく対応する術は無い。おおるまいとが個性を失わなければ、或いは可能だったかもしれぬが。緑谷とは別々に日本全国を駆け回って貰えば、ある程度は何とかなったかもしれん。

 ただこれも、緑谷が個性を十全に扱える、と言う前提なんじゃけども。

 

 どうあれ現状、儂等にやれる事は限られている。とは言え……呪われた人間をそのまま放っておくのも良くないか。取り敢えず、やれる限りの事はしておこう。中々面倒じゃし、何の成果も得られぬまま終わるかもしれぬが。少なくとも、やって無理なら緑谷もおおるまいとも納得するじゃろ。多分じゃけどな。

 

「七山。今夜、れでぃ・ながんに会えるか? やれることは無いと思うが、一応どの程度の呪いなのかは見ておきたい」

「……分かりました。手配しましょう。詳細は、後で連絡しておきます」

「相分かった。ところでおおるまいと、寝ておきたいから今日の訓練はもう出なくとも良いか?」

 

 今晩も呪術師として動くなら、流石に寝ておきたい。自業自得では有るんじゃけど、今の儂は結構な寝不足じゃからの。こんな時は訓練なんてせず、被身子と昼寝してしまうに限る。いや、あやつの勉強を邪魔するわけにはいかぬから……せめて膝ぐらいは占領したいのぅ。一人で寝ても良いんじゃけど、それはほら……何か物足りないと言うか。

 

「あー……、じゃあ、相澤くんには私から話しておくよ。でも廻道少女、呪術師に専念するなとは言わないけど、仮免試験の事を忘れないように」

「相分かった。緑谷、悪いが寮まで案内してくれ。一人じゃ帰れんから」

 

 いや、別に一人でも帰れるんじゃけどな? ただ今は眠いから、普段より道に迷い易いかも知れんじゃろ?

 じゃからほら、念の為に道案内して貰うだけじゃ。迷子になってその分睡眠時間が減るなんて事態は、何としてでも避けなければ。っておい、何で苦笑いしとるんじゃ貴様。常闇みたいに呆れたら許さんぞ。たわけ。

 

「廻道さん、今夜……僕も付いて行って良いかな……?」

「駄目じゃ。そんな暇が有るなら、お主は少しでも体を鍛えろ。もしくは寝ろ。……れでぃ・ながんの事は儂がやっておくから、もう気にするな」

「……気にしない、なんて無理だけど……。でも、うん。廻道さんにお願いするね」

「うむ、引き受けよう。ほら、さっさと案内してくれ。儂は眠いんじゃ」

 

 ……ううむ。今晩も出掛けることになるのか。せっかく呪術師として活動出来るようになったのに、それを少し不満に思ってしまうのは……眠くて正常な判断が出来ないからと言うことにしておこう。別に、決して、被身子から離れ難いからそう思っているわけじゃない。眠くて苛々して来たから、拗ねているだけじゃ。うむ、そういう事にしておこう。

 

 儂は、眠いから、不機嫌なだけじゃっ。それ以外の理由は無い。無いったら無いんじゃっ。

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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