待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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呪いの診察。

 

 

 

 

 

 何だかんだで峰田が吊し上げられた後。儂は被身子を宥めることに専念した。とにかく機嫌を直して貰わないと、色々と困るからの。なので、それはもう大変じゃった。何が大変って、途中で七山から電話が有ってのぅ。どうにかして被身子を落ち着かせた後に着信したものじゃから、今夜も儂が出掛けると知った被身子は拗ねてしもうた。お陰でまた宥める羽目になって……。

 

 で、現在夜の十一時。雄英から近場の警察署、その地下にある拘置所でれでぃ・ながんが収容されてるそうじゃ。本音を言うと、近くで良かった。出来ることなら直ぐに済ませて、早めに寮に帰りたい。でないとほら、被身子の機嫌がまた悪くなるかもしれん。儂としても被身子とゆっくり過ごしたいからのぅ。少なくとも、夏休みの間ぐらいは。仮免を取ったら……また色々と忙しくなるじゃろうし。

 

「また会いに来たぞ。調子はどうじゃ?」

 

 今回は、おおるまいとと二人で来た。警察署の入り口で手続きを済ませ、警察官の案内で地下へと向かう。妙に音が反響する廊下を進んでいくと、れでぃ・ながんが収容されている牢屋に辿り着いた。

 鉄格子の向こう側に居る彼女は、簡易的な寝具の上に腰掛けている。首に巻かれた包帯が、少々痛々しく見えるのぅ。気軽に声を掛けると、睨まれた。

 

「……あんた一人か?」

「この場ではの。ちょいとこっちに来てくれぬか? その首がどうなってるか見ておきたい」

「公安の指示か?」

「いや、儂の意思じゃ。呪われた奴を放っておく程、耄碌(もうろく)しとらん」

 

 まぁ、放っておいても良いんじゃけども。大人が呪い殺されようが何だろうが、儂が気にすることではない。ただ、放っておいたら緑谷が気に掛けてしまうからの。何もしなければ何もしないで頼み込まれることになるじゃろうし、そうなると結局は放っておけなくなってしまう。

 

「ほれ、こっちに来てくれ。さっさと済ませて帰りたいんじゃ」

「……」

 

 ううむ。どうも信用されとらんのぅ。寝具(べっど)に腰掛けたまま動こうとしないし、儂を睨んでくるし。どうもこやつは公安や、公安と関わりのある者に近付きたくないようじゃ。警察に牢の鍵を借りておくべきじゃったか。中に入ってしまえば無理矢理にでも話を進められたんじゃけど……。

 仕方ない。時間を掛けるとするか。この状況では当人が見せてくれなければ、呪いを調べることは出来ないからの。出来れば目視だけではなく、実際に触れておきたいところでもあるし。

 

「信用出来ぬならそれでも良い。儂は見ての通りの子供じゃし」

 

 立ちっぱなしで待つのも疲れるから、取り敢えず鉄格子の前で床に座る。椅子も借りておいた方が良かったかもしれん。まぁ、巫女装束(こすちゅうむ)が汚れても別に良いか。いつまでも綺麗に着ていられる物でも無いしの。

 

「あんた、何で公安に入った? スカウトか?」

「入っとらんよ。いや、入ったことになる……のか?」

 

 公安に入った覚えはないが、確か呪術総監部は公安が改めて設立したんじゃったか? なら……大きくみれば儂も緑谷も公安に入ったことになる……のか?

 まぁ、それはどうでも良い。結局のところ呪術師として活動出来るのならそれ以外は気にする必要が無い。

 

「公安なんて辞めた方が良い。汚いものを見せられるだけだ」

「例えば?」

「……それは話せない。一応な」

「ならそれは後で七山にでも聞いておこう。まぁ儂の事は気にするな。気に入らなければ離反するだけじゃし」

「は?」

「何じゃ? おかしな事は言っとらんじゃろ?」

 

 今のところ儂と呪術総監部の利害が一致しとるから、呪術総監部の下に属しているだけじゃ。総監部が気に入らんことを儂にやらせようとするなら、それに従う道理は無い。例えば子供を殺せとか言われたら、儂はいつでも歯向かうぞ。相手は誰であれ殺人はしないが、まぁ殺さなければ何しても良いじゃろと思っている節はある。被身子の事を考えると、法に触れずに解決出来るならそれが一番良いんじゃけども。

 

 出来れば犯罪は犯したくない。清廉潔白な人生を歩みたいなどとは思っとらんが、被身子や両親を裏切るような真似だけは絶対にしないと決めておるからのぅ。

 

「まぁ、儂の身の上を気にする必要はお主には無い。上手いことやるつもりじゃからの」

「……だったら尚更、公安は辞めな。後悔してからじゃ遅いんだ」

「そんなもの、幾らでもして来た。ひとつふたつ増えたところで何も変わらん」

 

 どうもこやつは、何か公安に対して思うところが有るらしい。せめてもの良心か、ただの気紛れなのか。どちらにせよ、儂が気にする必要は無いじゃろう。誰に何を言われたって、呪術師の道からは逃れられん。ただ、英雄(ひいろお)免許を取ったら呪術総監部の下で働かなくても良いかもしれんな。独立して個人事業主(ふりいらんす)として活動しても良いのかも。その辺り、いずれ被身子と相談しておくか。

 

「もう一度聞いておくんじゃけど、調子はどうじゃ? 気分が悪いとか、夢見が悪いとか、肩が凝ったとか、あの呪霊に会う前の自分と何か変化は?」

「……無い。首の痣が消えないだけだ」

「そうか。直接見たいんじゃけど、見せてはくれぬのか?」

「……子供に見せるもんじゃねェよ。私は大丈夫だから、帰りな」

 

 ううむ、取り付く島も無い。やはり子供扱いされるのは癪じゃの。実際見てくれは子供じゃから仕方ない事では有るんじゃけど、年齢を理由に突き返されるのはどうにも納得いかん。早く十八になりたいものじゃ。呪術師としての活動に支障が出る。やはり不便じゃの、未成年で居ることは。被身子と結婚も出来ぬし……。

 

 ……さて。どうしたものかの。儂としては、れでぃ・ながんに掛けられた呪いを見ておきたい。やれる事は特に無いが、それでも知っておく事は出来る。あの呪霊の呪いがどの程度なのか知ることが出来れば、今後の対策に役立つんじゃけども。

 

 考えるのが面倒になって来たの。どれ、無理矢理にでも見させて貰うか。そうと決めたら、この鉄格子は壊してしまおう。何、儂一人が入れる程度に歪めるだけじゃ。呪力があればどうとでもなる。

 床から立ち上がり、れでぃ・ながんを見詰めたまま鉄格子に手を掛ける。と、その時。

 

「お、おいっ!」

 

 れでぃ・ながんが少し慌てて、同時に喧しい音が響く。何でかは知らぬが、警報が鳴り響きおった。耳が痛くなりそうな音が連続して聞こえるが、無視じゃ無視。

 

「ちょぉおおおっっと待ったあ!!」

 

 鉄格子を歪めようと腕に力を込めた辺りで、おおるまおとが全速力で駆け寄って来た。何じゃこやつ。そんなに慌てて儂の邪魔をしようとするな。もうお主は以前程強くないんじゃから、力尽くで止めようとしても無駄じゃ無駄。まったく、仕方のない奴じゃの……。まだ個性を失ったことを実感してないのか?

 

「廻道少女! その鉄格子触るとセンサーが反応して警察来ちゃうから! 直ぐ離して!!」

「は? そんな事は聞いとらんが?」

「ごめんね!? 私、言うの忘れてたね!? だって触るとは思わなかったからさ!!」

「……はぁ。分かった分かった。これで良いんじゃろ」

 

 どうやら、鉄格子そのものに触ってはいかんようじゃ。多分、脱獄させない為に用意された機能か何かなんじゃろう。れでぃ・ながんはたるたろすに居たわけじゃからの。世間的……と言うか警察的には、警戒し過ぎるに決まってるか。となると……やはりれでぃ・ながん自身に歩み寄って貰うしか無いか。困った、儂一人じゃ説得出来そうにない。

 

「あんた、まさかとは思うが知らなかったのか?」

「じゃから聞いとらん。何か言ってた気がしないでもないがのぅ」

「滅茶苦茶かよ……。どうなってんだこの子」

「んん……面目無い。この子色々と自由奔放だからね……。いや、決して悪い子じゃないんだけど所々ポンコツで……」

「失敬な」

 

 当人を前にして何を言っとるんじゃこやつ等は。儂なんて被身子や母と比べたら自由奔放でも何でもないんじゃけど? お主等もあやつに振り回されてしまえば良いんじゃ。そしたら儂をそんな可哀想なものを見るかのような目で見れなくなるから。

 あと、ぽんこつ扱いするな。おおるまいとや緑谷の方がぽんこつじゃろうがっ。まったく!

 

「……とにかくじゃ。儂はお主の状態が見たい。見させてくれ」

「……はぁ。仕方ねェ子だよあんた。また鉄格子に触れられても敵わないし、ほら……これで満足か?」

 

 何で呆れてるんじゃこやつ。解せぬ。

 まぁ良い。取り敢えずれでぃ・ながんは、首の包帯を取って鉄格子の直ぐ側まで来てくれた。直接触れたいところじゃけど、それは止めておくとする。仕方ないから目視で済ませることにしたんじゃけど、ううむ……。やはり、良くないのぅ。

 解呪の類いは決して得意では無いんじゃけど、そんな儂でもいかんと思ってしまう程にれでぃ・ながんの状態は悪い。何でこうも呪われていて平然としていられるのか。もしや見た目こそ派手じゃけど、効力自体はそうでもないのか? 或いは、まだ印付けられただけとか?

 分からんの。儂は戦闘専門じゃから、細かい事はどうにもなぁ……。

 

 ただ、ひとつ分かることが有る。れでぃ・ながんの首を変色させているこの呪いは、あの呪霊の気配が非常に強い。恐らくじゃけど、これだけの気配を醸し出していたら他の呪霊はこやつに寄り付かんと思う。それすらも殆どが推測で、それ以外の事は何も分からんって事でも有るんじゃけど。まさかこんな事になるなら、もう少し天元の奴に結界術か解呪について教えて貰うべきじゃった。

 

「……相分かった。もう良い、騒々しくしてすまなかったの」

「まったくだ。あんた、本当に公安か?」

「一応な。さておおるまいと、儂は帰るぞ」

 

 今から帰れば……一時ぐらいには寮に帰れるじゃろう。そしたら風呂に入って、被身子と少しはゆっくり出来る。また明日の朝には訓練じゃ。今晩ぐらいはぐっすり寝ておきたい。たまには儂が被身子を抱き枕にしても良いんじゃないか? よし、そうしよう。

 

「ブラッディ、彼女に掛けられている呪いについて何か分かったかな?」

「何も分からんと言うことが分かった。細かい事は苦手なんじゃよ」

「……そ、そうか。君でも分からないのか……」

「儂とて、何でもかんでも出来る訳じゃない。ただ、大抵の呪霊はれでぃ・ながんに寄り付かんと思う」

「ん、分かった。その事を報告しておくよ。

 それとブラッディ。警察の方に送って貰うように頼んだから、ちゃんと指示に従って帰ってね? こんな時間に迷子になったら大変だから!」

 

 また方向音痴扱いしよる。まったく、どいつもこいつも。貴様がそんな風に儂を扱うから、儂を見ているれでぃ・ながんが顔をしかめておるぞ。解せぬ。何で囚人にまでぽんこつ扱いされなければならんのか。方向音痴であることまで聞かれてしまったし。

 はぁ、もう良い。さっさと帰ろう。あとの事はおおるまいとにでも任せて、儂は寮に帰る。少しでも早く、被身子に会いたいんじゃ。好きと言うのは厄介じゃの。少し離れてるだけでこんなに会いたくなってしまう。こんな調子では、もう被身子から離れられそうにない。

 

 

 まぁ、離れるつもりは少しも無いんじゃけど!

 

 

 

 

 

 








レディ・ナガン、ポンコツに少し絆されそうの図。

三人称による補完は要りますか?

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