待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
取り敢えず、被身子と麗日と儂の三人で風呂に入る事になったわけじゃ。一旦着替えを取りに行った麗日を脱衣所の中で待っていると、これ幸いと被身子が
で、現在。麗日がやって来たから、全員一斉に服を脱ぎ始めた。被身子以外の誰かと裸を見せ合うことになるのは、どうも落ち着かんのぅ。と言うかあれじゃ、幾ら同性じゃとしても、あまり被身子の肌を人に見せたくないと言うか……何と言うか。こんな独占欲が強くなった覚えは無いんじゃけどなぁ。そもそも、気軽に儂以外の前で肌を晒さないでくれ。どうにも納得いかん。後でこの件について、言い聞かせておこう。
「……廻道さん。ちょっと肌、綺麗過ぎへん……?」
手早く服やら下着やらを脱ぎ捨て、備え付けの洗濯機に投げ入れていると何故か麗日が納得の行かない顔をした。何でじゃ。そもそも、人の裸を睨め回すな。失礼な奴め。
「そうなんですよぉ。円花ちゃん、昔からすっごくお肌が綺麗で。これで何もしてないんですから、狡いですよねぇ」
「えっ、何もしとらんの? ほ、ほんとに……?」
「してませんよ? 子供の頃からずっと一緒ですから、間違いないのです」
「はぁあ……すご……」
何か、見世物になった気分じゃ。肌の綺麗さなど、不潔でない程度に保てていればどうでも良いと思うんじゃけどなぁ。あと、被身子以外にじろじろと見られるのは落ち着かん。やられっぱなしは癪じゃから、麗日の肌を睨め回してやるとするか。
……いや、儂がやるのは良くないか。人として止めておこう。
「でも、お茶子ちゃんの肌も綺麗じゃないですか?」
「えっ、いや。ほら、訓練してるとやっぱりどうしても生傷が絶えんから……」
「そうですか? 私は素敵だと思うのです。でも、ヒーロー目指してたら傷とは無縁じゃ居られないですよねぇ」
「そ、そうなんよ。別に特別気にしてるわけとちゃうけど、でもやっぱ気になる時は気になると言うか……」
ううむ……。があるずとおくが始まろうとしている。先に風呂に入ってしまおう。被身子と麗日を二人きりにするよは良くないと思うんじゃけど、があるずとおくに巻き込まれたくない。
と言うか被身子、別に何もしてないわけでもない。常に
「渡我先輩も、綺麗やなぁ……」
「私は少し気を付けてますから。円花ちゃん並みに綺麗になるのは、ちょっと無理かなって思いますけど」
「私も、もう少し気遣った方がええんかな……?」
「……緑谷くんの為に?」
「うぇっ!? い、いやデクくんは関係あらへんよ!? 身嗜み! ミダシナミの話やから!」
……、麗日よ。そんなに慌てたら何も隠せないと思うんじゃけど。しかし変な奴じゃの、緑谷の為に綺麗で居たい? 何を考えてるのかさっぱり分からん。肌を綺麗にしたとしても、緑谷は気付かんじゃろ。そもそも、何で緑谷を気にするのかが分からん。
あと、そんな風に慌てるから被身子に標的にされるんじゃぞ。
「まぁでも、緑谷くんは実際カッコいいですよね。一生懸命で、余裕の無い感じが」
「……や、その、えっと……。そ、そうかな……?」
よし。先に風呂に入ってしまおう。待ってても仕方がない。があるずとおくは苦手じゃし、しかも長くなりやすいからの。
じゃからさっさと髪や体を洗って、一足先に湯船を堪能するとしよう。緑谷を格好良いとか言った件については、後で詳しく聞くとする。いや別に、嫉妬などしとらんが。誰をどう思おうが被身子の勝手じゃ。好きにしたら良い。ただ少し気になっただけじゃ。それだけで他意は無い。無いったら無い。
「アタックしないんですか? 緑谷くん、割りとお茶子ちゃんを意識してる部分あると思うんですけど」
「そ、そんな事あらへんって。や、やだなぁ何を言っとるん!?」
……全員で風呂に入るわけじゃから、付いて来るのは構わん。が、このがあるずとおくはいつまで続くんじゃ? 早いところ切り上げて欲しいんじゃけどなぁ。何で
取り敢えず浴室に入り、まずは体を洗うことにする。
「ぶっちゃけ、どう思ってるんです?」
「ど、どうって? 何が?」
「緑谷くんの事ですよぉ」
「べ、別に。何とも思ってへんから……っ。思ってへん思ってへん……!」
麗日よ。浴室とは言え、裸で天井まで浮いてしまうのはどうなんじゃ。中々不便な個性じゃよな。触ったものが浮き出してしまうのは。と言うか、吐くなよ? 風呂場で吐くなんて真似は流石に止せよ?
「うーん……、円花ちゃんはどう思います?」
「何がじゃ?」
「何って、お茶子ちゃんと緑谷くん。付き合ったら、お似合いだと思いません?」
「……まぁ、仲良しではあるからの」
実際、緑谷と麗日は仲良しではある。一緒に居ることが多いし、最近は少し距離が近くなったとも思う。何せここしばらく、共に訓練しているわけじゃし。まぁそれを言ったら、儂もあの二人とは一緒に過ごしているわけじゃけど。
まぁ麗日本人が違うと否定してるんじゃから、違うんじゃないのか? 儂としては、あの男の何が良いかはさっぱり分からん。があるずとおくは理解不能じゃ。
それよりほら、さっさと儂を洗わんか。どうせ髪を洗いたがるんじゃろ、お主。好きにさせてやるから早くしろ。儂は早く湯船に浸かりたいんじゃ。
「うーん。どっちかがその気になれば、直ぐにくっ付く気がするんですけどねぇ」
「そんな暇、こやつ等に無いじゃろ」
「それはそうですけどぉ」
……何でかは知らぬが、どうも納得しとらんようじゃ。ここで被身子と一緒になって麗日を焚き付けることは簡単じゃけど、それをする気にはなれん。があるずとおくを長引かせたくはないし、たまには我慢させることを覚えさせねば。特に今回の場合、思惑通りに事を運べると思わないでくれ。
ってこら、いきなり熱いお湯を掛けるな。一声掛けぬか阿呆。
「ダブルデート、してみたいのです……」
……。……仕方ない奴じゃの。まっこと仕方ない。そんな顔をされると、儂はどうにも弱いんじゃ。だぶるでえと、とやらがそんなにしたいのかこやつは。たまには振り回される側を尊重して欲しいんじゃけど……。
仕方ない。儂からも、それとなく促してみることにするか。別に恋愛すること自体は、そう悪い事じゃないからの。何だかんだで楽しいものじゃし、誰かと両思いで居続けることは良い事じゃとも思う。まぁ、今回は何をするつもりもないが。そもそも、何をどうしたら良いのか分からん。
「で、麗日。いつまで浮いとるんじゃお主は」
風邪を引いても知らんぞ、まったく。そもそも裸で浮かび上がるな。年頃の
まぁ良い。何やら独り言を繰り返しては物思いに耽ってるようじゃから、しばらくは放っておいてやるとするかの。
それはそれとして、やっと被身子が儂の髪を洗い始めた。頭皮を揉まれると、心地が良くて気が抜ける。このまま身を委ね切ってしまいたいところじゃけど、麗日が隣で浮いてるからそうもいかん。何もかも被身子に任せてしまったら、せくはらされる可能性が有るんじゃ。髪と背中は被身子に任せるとして、他の部分は自分で洗うとするかのぅ。
「も、もう。変な事言わんといて……」
やっと麗日が降りてきた。気恥ずかしいのか、まだ少し変な顔をしておるが取り敢えず体を洗い始めたようじゃ。どうもこやつも、があるずとおくは苦手らしい。いや、恋愛関係の話が苦手なのか? 初な奴じゃの。そういう部分も緑谷とお似合いなような気がする。だからと言って何をする訳でも無いんじゃけど。
どれ、少し話題を変えてやるとするか。
「訓練をしてて、何か分からんことはあるか?」
「え? うーーん……。これって聞いて良いのか分からないんやけど……」
「何じゃ?」
「廻道さんって、誰に戦い方を習ったん? 術式の扱い方とか、色々。何か、何でも出来るみたいな感じがするんやけど……」
「……」
……、答えにくいのぅ。誰に? と聞かれても、素直に答えることは出来ぬ。じゃってほら、全ては平安時代に学んだことじゃし。基礎的な術式の扱いは親から、それ以外は我流。体術なんかは……呪詛師や武芸者と手合わせしている内に覚えたものじゃし。大抵は命懸けじゃった訳じゃけど。
過去の経験を今の体に当て嵌めてるだけなんじゃよなぁ。何せ二度目の人生じゃからの。この事は誰にも話すつもりはないし、墓場まで持っていくつもりじゃ。
「あ、ごめん。聞いちゃあかんかったよね。忘れて」
「詮索しないでくれると、助かるのぅ。ちょいと複雑なんじゃ」
「……フクザツなんだ……。うん、じゃあ気にしないでおくね。ごめん」
「別に良い。気にするな」
なんて話している内に、気が付けば髪も背も被身子に綺麗に洗われてしまった。手早く体の全面を洗った儂は、風呂椅子から立つ。真っ先に湯船に飛び込んでしまいたいが、まぁまだ我慢しよう。今度は儂が被身子を洗う番じゃ。ほら、さっさと椅子に腰掛けんか。
◆
「ああ゛ぁ……。極楽極楽……」
「円花ちゃん、年寄りくさいのです」
「まぁでも、訓練後のお風呂は骨身に染みるよねぇ……」
被身子を洗い終えた後で湯の中に浸かると、いきなり気が抜けた。疲れた体に熱い湯が染み渡って、これは……。
出来れば温泉に浸かりたいところじゃけど、雄英に温泉は無いからのぅ。その辺を掘ったら出て来たりしないのか? そしたらほら、浴場を作るなり湯を寮まで引いてたりすれば毎日温泉に入り放題になるじゃろ? ならんか。また行きたいのぅ、温泉。
そうじゃ。呪術総監部から給料が出てるんじゃから、今度被身子と二人で温泉旅行でも行こう。寮の門限が有るから日帰りになってしまうが、それでも温泉は楽しめる。
まぁ、幾ら振り込まれているのかは知らんけど。そもそも儂、七山に口座番号を教えた覚えがないのぅ……。まぁ良いか、給料については後で聞いておこう。
「ふへぇ……」
「もぅ。お風呂入ると、ふにゃふにゃなんですから」
「お主じゃってそうじゃろぉ」
真後ろに座っている被身子に体を預けると、腹に腕を回された。隣に麗日が居るんじゃから、せくはらは無しじゃぞ。このくらいの
「うわぁ……。廻道さんが溶けてる……」
「お風呂に入ると、だいたいこうなのです。お風呂大好きなんですよねぇ、円花ちゃん」
「大丈夫? 溺れたりしない?」
「流石に溺れたことは無いですけど、何度か沈んだりはしてます」
「えぇ……? だ、大丈夫なん……??」
何か、失礼な物言いをされているような気がするのぅ。まぁ良いがの。今は風呂を堪能することが優先で、他の事に構いたいとは思わん。この心地好さに身を浸して、当分は何も考えたくないんじゃ。のぼせない程度に長湯して、それから食事にして、あとは被身子をじゃな……。
「こうして抱き締めてれば大丈夫なのです。たまに寝ようとするから、気を付けなきゃですけど」
……仕方ないじゃろ。湯船が気持ち良いからつい目蓋を閉じてしまって、寝てしまって良いかなと考えてしまうんじゃ。うたた寝しそうになると、大抵は被身子にせくはらで起こされるんじゃけど。今は麗日もおるし、せくはらは無い。じゃから儂も、寝ないように気を付けねば。
いかん。目蓋が重くなり始めている。しかし、まだ湯に浸かっていたい。あと十分、いや三十分ぐらいは……。
「廻道さん、湯船で寝たらあかんよ? 危ないから」
「わかっとるわかっとる……」
「本当に分かってるのかなぁ……」
おい……、何じゃその目は。まるでぽんこつを見たかのような目を儂に向けおって……。ぽんこつ扱いは止さぬか、たわけ。風呂に入っただけでぽんこつ扱いされるのは、解せぬ……。
「円花ちゃん。そろそろ上がりましょうか」
「えぇ……? やじゃやじゃ、もっとぉ……」
「駄目ですよぉ。これ以上は寝ちゃうのです。ご飯も食べなきゃですし、それに構ってくれなきゃヤです」
「……まったく。しかたないのぅ、ひみこは」
それはもう名残惜しいんじゃけど、今日はもう湯から出ることにしよう。どうせ明日の朝には入ることになるんじゃし。何なら夜中に入るかもしれんし。長湯するのは、その時で良いか。
湯船の中から立ち上がるのは今の儂には重労働なんじゃけど、腹も空いているし被身子を放っておくと後でどうなるかも分からん。お風呂は一旦お預けじゃ。後で楽しむとしよう。
「……後で、また入る……」
「はい。後でまた入りましょうねっ」
「え、また入るん? 二人とも、ほんとにお風呂好きなんやね?」
まぁ風呂好きなのは否定しないが、それとは別の理由で浴室を使うことになるからのぅ。麗日は気付いておらんようじゃが、さっきから被身子が儂の首筋を見詰めてるんじゃ。誰も居なければ噛み付かせてやったんじゃけど、今は人が居るからの。すまんが、もう少しだけ我慢してくれ。
さて、まずは夕飯じゃ。腹を満たして、それから部屋に戻りたい。済ませられることは、さっさと済ませてしまおう。いつ被身子が噛み付いてくるか分からんからの。そうなってしまったら、色々と始まってしまうんじゃ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ