待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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青山の様子。そのいち

 

 

 

 

 

 

 英雄(ひいろお)仮免許取得の為にくらすめぇと達が必殺技開発に勤しんでる中、儂は個性制御を身に付ける為に小石をぐるぐる回しておる。右に左にぐるぐると。お陰で目が回って仕方がない。何なら吐き気が凄い。物凄い。なんなら、今日だけで何度も吐いてるぐらいじゃ。幾ら反転術式(はんてん)を回せば回復すると言ってもじゃな? そう何度も何度も吐いてると流石に気が滅入る。ので、勝手に休憩することにした。もうやじゃ、こんな訓練はひとうない。うえっぷ……。おぇ……っ。

 

 あぁ、もう。気持ち悪い気持ち悪い。どうしてこの体はこんなにも目が回り易いのか。どうにも個性に体が追い付いておらん。あと何度平衡感覚を失えば、この体は個性の反動に慣れてくれるのやら。……なんて、思っていると。

 

「ぅ……っ! お、お腹が……!!」

 

 今日も今日とて阿鼻叫喚な訓練場の隅で、青山が腹を抱えてしゃがみ込んだ。こやつはこやつで大変じゃな? 個性を使う度に腹を痛めておるからのぅ。青ざめた顔で死にそうになっておる。大丈夫かこやつ……。

 

 ……まぁ、顔が青いのは儂も同じか。回転のせいで気持ち悪くて敵わん。

 

「……おえ……っ。生きてるか青山……」

「……な、何とかね……☆ うぐ……っ」

 

 駄目じゃこりゃ。殆ど死んでるようなものな気がしてならん。儂も回復しきるまでは気持ち悪いままじゃし、もうこんな訓練は止めじゃ止めっ。やってられん……!! 良いじゃろ別にっ、術式が有るんじゃから!!

 

「うぇえ……っ」

 

 いかん。儂もしゃがむとしよう。幾ら気になったとはいえ、気持ち悪いまま動くべきではなかった。まったく、我ながら何をしてるのやら。これでは被身子にぽんこつ扱いされてしまう。それはごめんじゃ。断じてごめんなんじゃ。

 ……とは言え。まぁ目に付いてしまったなら放っておくことは出来ん。青山が腹を痛めるのは訓練の場であれば日常茶飯時みたいなものじゃけど、今回は普段とは少し違う気がしての。何が? と聞かれたら答えようは無いんじゃが。何と言うか、そうじゃな……。こう、感覚的に何かが違う。そう思った。

 

「……ふぅう……」

 

 ……ん。良し。気持ち悪くなくなった。反転術式(はんてん)が無ければ長時間気持ち悪いままかもしれんと考えると、やはり個性を使いたいとは思わぬなぁ……。やはり要らんのでは? 触れたものがぐるぐる回るからって、何かに役立つとはあまり思えぬし。

 

「儂は休憩するが、お主はどうする?」

「……。……も、もうちょっと……頑張るよ……っ」

 

 ……? いや、お主……。

 

 ……まぁ、良いか。何か引っ掛かったような気がしないでもないが、気のせいじゃ気のせい。立ってられぬ程に腹が痛むなら訓練は止めるべきじゃと思うが、当人がやる気なら放っておくとしよう。いよいよ駄目そうなら、拳骨で止めてやろう。と言うかお主、(まこと)に大丈夫なのか?

 

「廻道さん。今、大丈夫でしょうか?」

「廻道〜〜! ちょっと聞いて欲しいんだけど、良い??」

 

 腹を抱えたままの姿勢で立ち上がる青山を眺めていると、いつの間にやら八百万と芦戸が儂の側まで寄って来ていた。

 

「ん? あぁ、良いぞ。今は休憩中じゃし」

「でしたら、少々相談したいのですけれど……」

「まぁ構わんが。それで? 何が聞きたい?」

 

 もう吐き気は収まったし、視界も回っとらん。が、精神的に疲弊してるのは事実じゃから休憩がてら八百万や芦戸の相談を聞くとしよう。どうせ休憩中は暇じゃしの。話し相手が居るぐらいが丁度良い。

 ……まぁ、この二人が儂に何の相談がしたいのかは分かる。どうせ、必殺技についてじゃろ? 誰かが何かを伸び悩む度に、何故か儂に助言して貰おうと寄って来よる。たまには相澤先生とか他の教師に聞いたらどうなんじゃ? 儂ばかりに聞いても、為にならんと思うんじゃがなぁ。それと、ばつの悪そうな顔をするのは止せ。子供がそんな顔をしてると、放っておけないじゃろ。

 

「お恥ずかしながら、私は必殺技の開発が滞っておりまして……。個性伸ばしの方は順調なのですが……」

「……あぁ、なるほどな……」

 

 言われてみれば、確かに。八百万の個性で必殺技を作るとなると、それは他のくらすめえと達より難しいじゃろう。じゃってこやつの場合、あまりにもやれる事が多過ぎる。創造と言う個性は、効率が良い構築術式みたいなものじゃ。確か呪力の代わりに体内の脂質を使う……んじゃっけ? まっこと、便利な個性じゃよなぁ。その気になれば何じゃって出来てしまう。

 じゃからこそ、何をどうすれば良いのか分からなくなってしまったんじゃろう。こやつの頭の良さなら直ぐにでも打開策が見付けられると思うんじゃけど、必殺技に拘ってるせいか視野が狭まってるようじゃ。

 

「……まぁお主の場合、他の連中と同じやり方では駄目じゃろうな」

「やはりそう、……ですわよね。私もそう思っていました」

「んん、そうじゃなぁ……。お主、武器術は?」

「武器術、ですか?」

「そう、武器術じゃ」

 

 かつて、あの時代で。儂は構築術式を持った呪術師と手合わせしたことがある。その時の術師は、構築術式で様々な呪具を構築して数多の手数で攻め込んで来た。刀やら槍やら弓矢やら。次の瞬間に何が飛び出してくるか分からん手合わせじゃったけど、あれはあれで楽しかったと覚えとる。ひとまず八百万も、あんな感じで戦えるようになったら良いのでは? それが必殺技になるかどうかは知らんけど、今のまま何も持ち得ないよりは良いじゃろう。そこは間違いない。

 

 と、なると。こやつは様々な武器を扱えるようになった方が良いな。今の時代、武器というものは無数に有る。それら全てを使いこなせるようになれとは言わんし、そもそもそんな真似は時間が幾ら有っても足りないじゃろう。仮免試験までには絶対に間に合わん。が、方向性の有る無しの差は大きいものじゃ。

 

「今のお主じゃ、近接戦闘は相当不利じゃろ? 体育祭じゃ常闇に良いようにされとったからの」

「……はい。手も足も出ませんでした……」

「なら、常闇に勝てる程度に武器術を鍛えろ。お主の場合、様々な武具を用意出来るのが利点じゃ。非力さは手数で補え。

 ……まぁこれは、戦闘に限った話じゃけど」

「……なるほど……。なるほど……! 分かりましたわ!」

「ぉ、おう……。頑張れよ……?」

 

 急に元気になったの……? 何か思い浮かんだ事でも有るんじゃろうか? それならまぁ、放っておくとするか。やる気を出して訓練に戻ったんじゃから、わざわざ呼び止める必要も無い。

 それで次は……芦戸か。儂に何を聞いて欲しいんじゃ? もしや必殺技が出来上がったのか?

 

「廻道、ちょっとこれ見て欲しいんだけど!」

「ぅ、うむ」

 

 直ぐ側に有る岩に向かって、芦戸が構えた。両手の指をこう、鉤爪のように曲げた変な構えをしておる。何をする気じゃこやつ?

 

「こーんな感じで、どう……っ!?」

「……」

 

 腕を振り上げつつ岩に向かって踏み込んだと思えば、全身を大きく捻って両腕を振り回しおったわ。で、指の隙間から酸が飛び出て目の前の岩に引っ掻き傷……のようなものが出来たの。なるほど、体の捻りと腕を振る勢いで酸を上手い具合に飛ばしたのか。思いっ切り酸を飛ばすわけじゃから攻撃範囲はそれなりじゃ。ただなぁ、英雄(ひいろお)が使う技としては駄目な気がしてならん。

 

「名付けて、アシッドネイル! 的な!?」

「それ、大して強くないぞ」

「……え、マジ?」

 

 残念ながら、大した技ではない。盛大に酸を飛ばしてるだけじゃからの。それは厄介と言えば厄介なんじゃけど、悪党に有効かと言うとそうではないじゃろう。酸程度で怯むような小心者が悪党になるとは思えんし。

 

「まぁ、近間で酸をばら撒くのは良いんじゃけどな。周囲を考えろ周囲を。何でもかんでも溶かすつもりか?」

「んん……っ、やっぱ駄目かーーっ」

「全身を使って酸の飛距離を上げようとした点は悪くない。もう少し指向性を持たせておけ」

 

 酸の飛ばし方や扱いについては、まだまだ方法を探るべきじゃの。今回は良い結果を出せなかったが、いずれは良い結果になるじゃろう。多分。個性の事は詳しくないから、何とも言えんところじゃけども。

 

 さて……。そろそろ個性制御の訓練に戻るとするか。さっきから相澤先生が儂を睨んでいる……気がする。このまま勝手に休憩し続けていると、髪の毛が逆立ちそうじゃ。あやつを怒らせるのは得策とは言えんから、気が乗らなくとも訓練に戻らなければ。

 

 ……とは言え。

 

「……んんむ……」

 

 また個性で石ころを回して気持ち悪くなるのは、嫌なんじゃよなぁ。個性順転の制御ばかりをするのは、何と言うかこう……懲り懲りじゃ。飽きたとも言う。いやまぁ、訓練や鍛錬に飽きなど感じはしないんじゃけど。ただほら、同じ訓練ばかりでは気が滅入るじゃろ? いつまでもいつまでも石ころを回し続けて、吐きたくないし。じゃからこう、試しに個性順転以外の事をじゃな……?

 

 あ、そうじゃ。個性順転を、反転させてみたらどうなる? 術式反転ならぬ、個性反転。個性に反転術式を流し込んだらどうなるのか気になるところじゃ。いや、回転が反転して何になるのかなんて分からんけど。まさか右回転が左回転になる……とかじゃなかろうな? もしそうなら、反転する意味がない。左回転させたいなら、左手で個性を使えば良いだけの話じゃからのぅ。

 

「……よし、やるだけやってみるか。おぉい、相澤。少し試したい事があるんじゃけど」

 

 一応、許可は取ろう。個性反転を試すのは良いが、何が起こるか分からんからの。夏合宿の時みたいに竜巻を起こしてしまったら大惨事じゃ。訓練場とは言え、ここは室内なんじゃからな。

 取り敢えず遠くに居る相澤先生を手招きすると、黙って儂の方に歩き始めた。儂の前に来るまで少し時間がかかりそうじゃから、念の為個性に反転術式を流し込めるか確認してみる。……うむ、まぁ……出来そうじゃな? 多分出来ると思う。こう、感覚的には。

 

「どうした? 何を試したい?」

「空気を回しても良いか? どうなるか分からんから、いかんと思ったら抹消してくれ」

「ここでは駄目だ。訓練場が吹き飛びかねん。……外に出るぞ」

「相分かった。そうしよう」

 

 個性反転は軽く試すつもりではあるが、うっかり竜巻を起こして周囲を吹き飛ばすわけにはいかん。そんな事になったら大惨事じゃ。場所は変えるしかあるまい。

 

 そんなこんなで。儂は個性反転を試す為に、担任と共に外へ出た。夏合宿の時と言い、こやつとは妙に行動を共にしているような……そうでないような。ここに被身子が居なくて良かった。もし居たら……それはもう大変な事になってたかもしれん。主に儂が。

 

 ……まぁ、それはそれで良いんじゃけども。

 

 

 

 

 

 

 






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