待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
四方が金網で囲われただけの訓練場に来た。儂の個性を試すのであれば、室内では危険でしかないからの。くらすめぇと達をうっかり巻き込んでしまうわけにはいかんし、下手をすればそれこそ死んでしまう。なのでまぁ、相澤先生に連れられる形で別の訓練場に足を運んだわけじゃけども。
……なぁおい。その目は何じゃその目は。何で貴様、儂が何かをしでかすんじゃないかと警戒しとるんじゃ? 個性を試したいと言ったじゃろ。白い目で見るな、白い目で。
「それで、個性の何を試すつもりだ?」
「何って、反転してみようかと思っての」
「反転? 回転の向きをか?」
「いや、そうではなくて。まぁ見とれ、駄目じゃと思ったら抹消してくれればそれで良い」
まぁ、個性を反転させたところでただ単に逆回転が起きるだけかもしれん。わざわざ試す意味が無いような気がして来たんじゃけども、許可を貰ってる手前「やっぱり止めた」とは言えんのぅ。
取り敢えず、試してみるとしよう。何事もやるだけやってみたら良いんじゃ。結果どうなろうと、こやつが抹消してくれるじゃろ。がははは!
さて、それじゃあ。ひとつひとつ振り返りながら個性を使っていくか。まず、儂の個性は『回転』じゃ。触れたものをぐるぐる回せる。右手で触れれば右回転、左手で触れれば左回転。それから、両手で触ると螺旋回転じゃな。個性対象は……今のところは人間以外じゃ。人に試すとどうなるか分からん故、まだ人には個性を使ったことが無い。この辺りもいずれは試したいと思うんじゃけど、下手をすると殺してしまうかもしれんし……。まぁ、いずれじゃいずれ。
それから。個性は呪力強化することが出来る。呪力強化した場合、竜巻が出来る。儂は個性を鍛えては来なかったから、いずれ呪力無しでも竜巻を起こせるようになるじゃろう。使い所はかなり限定されるとは思うが。何せ、儂が起こした竜巻は三
で、じゃ。これから個性に反転術式を流し込んだらどうなるのか試す。個性が術式と同じように扱えるとするなら、性能が反転するのではないか? 回転が反転したとして、何が起こるんじゃろうか……?
相澤先生から十歩は離れ、儂は訓練場の中央へ。近くで使って下手に巻き込んだら、それはそれで大惨事じゃ。
……右手を前に出す。
回れ。……と言うのは、違うか。恐らくただの逆回転になるような気がするから、そうじゃなぁ……。ここは……。
「……逆巻け」
と、言うことにしておく。それで、順転と比べて何がどう変わったか見るとする。取り敢えず……個性を使えている感覚はあるのぅ。うむ、目には見えぬが空気が回り始めた。周囲に風が拭き始めて、徐々に勢いが増して行く。どうやら反転術式を流し込んだからって、回転そのものに変化があるわけでは……。
……いや、あるな? 確かに変わってる点が一つ有る。竜巻を起こす時は、周囲から風が集まって来る。が、今回のは周囲に向かって風が吹いておるの? つまり……回転の渦、その方向が逆になった……?
収束するのが竜巻ならば、発散(?)していくこの風は何と言えば良い? 旋風……は、違うか。って、おいおい。どんどん風が強くなっていくわ。ついさっきまではそよ風だったのに、今では立派な強風に……。いやこれは、突風じゃな……!?
「待て廻道、そこまでにしておけ」
個性の使用が止められた。気色悪い感覚がして、鳥肌が立った。思わず振り返ってみれば、相澤先生の目が光っておる。なるほど、儂の個性を抹消したのか。ならこれ以上この風が強くなることは……ぐえっ。し、視界が歪む……!!
「おぇええ……っ!!」
吐いた。盛大に吐いた。酔いも気持ち悪さも、順転の比ではない。いきなり限界を超えて、立ってられん程じゃ。だ、駄目じゃこれ……っ。気持ち悪いなんてものじゃ、ものじゃ……!! うえぇえっっ!!
い、いかん。いかんぞ……! 個性を抹消されて尚、回転が消えとらん。風は強くなる一方で、もはや強風ではなく暴風に……!! ぬ、ぬおっ!? 体が吹き飛ばされ―――!!
「廻道!!」
「ぐぇえ……っ!?」
吹き飛んでいく儂の体に捕縛布が巻き付いた。胸やら腹やらに硬質な布が食い込むのは、今は苦しいなんてもんじゃない。こ、この阿呆……! 助けるならもう少し優しく助けろ!! 目が回って気持ち悪いのに、腹や胸を圧迫するのは……!! お、おぇえ……っっ!!
回り回った視界の中で、相澤先生は儂ごと吹き飛ばされぬように踏ん張っておる。多分、恐らくきっと。ぐるぐるしとる視界では、周の状況がろくに把握出来ん。と、とにかく
「う……、っぷ。おぇえ……っ! ぐぇえ……っっ!」
き、気持ち悪い……! 気持ち悪い、気持ち悪いっ。
まさか、個性反転も術式反転のそれと同じか? 最低でも出力が二倍以上なのか……!? もしやそれで、反動まで二倍以上になっとるんじゃなかろうなっ!?
「おぐっ!?」
落ちたわ。吹き飛んだ体が地面に落ちたわ。背中を地面に、しこたまぶつけた。衝撃で息が詰まって、まだ残る気持ち悪さが増悪したような気がしないでもない。げほっ、ごほっ。流石に死ぬかと思った……! 個性事故が死因なんて、勘弁して欲しいのぅ……!
「ったく、無茶苦茶だよお前は……。竜巻の次は暴風か……」
「わ、わざとではな……っ。うぇえ……っ!!」
また吐いた。駄目じゃこれ、もう少し
どうにもこの体は目が回りやすいというか、酔いに弱いと言うか……。もう何というか、個性を扱うのが嫌になってきた。
「立てるか? 動けるなら保健室に行け。吐き過ぎだ」
「げほっ、そうしようかの……」
うぅむ……。気持ち悪い。吐き気が酷い。
まだ残る気持ち悪さと吐き気を何とか堪えつつ、どうにかこうにか立ち上がる。背中の痛みはもう無いし、一応手足は動く。なら、保健室までは歩けるじゃろう。歩けるよな? 歩いた瞬間にこれ以上気持ち悪くなる……なんてことは無いと思いたい。
「……ふぅ……。やはり駄目じゃな、個性を使うのは。どうにかならんかのぅ……」
「個性による反動は、ひたすら反復練習して体に馴染ませるしかない。ぶっ倒れるまで続けろとは言わんが、訓練は継続しとけよ」
「……えぇ……? やじゃあ……」
「おい」
睨むな睨むな。仕方ないじゃろ、どうにも気が進まんのじゃから。
相澤先生の言うことは、まぁ正しいものなんじゃろう。個性の扱いについては、
「とにかく保健室に行って、ばあさんに診て貰え。水分補給は欠かすなよ」
「……うむ。そうしよう……」
今日はもう何度も吐いてるからの。気持ち悪さで発汗もしとる。暑いし、水分補給はしっかりしなければな。取り敢えず、保健室に向かうとしよう。
……で。保健室って何処じゃっけ? 校舎は向こうじゃから……こっちか。
「おい待て。そっちじゃない」
「ぐえっ」
おいっ! 人が歩き出してるのに捕縛布を首に巻き付けるな貴様っ!!
回転くんの進化方向が定まったので、術式反転ならぬ個性反転回です。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ