待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
仮免試験まで、残すところ二日。試験当日が目前まで迫っている故、訓練も座学もより一層厳しくなっておる。特に座学。中でも法律関連を丸暗記するのが面倒この上無くての。被身子の協力が無ければ、駄目じゃったかもしれん。あやつが作ってくれた手製の問題集は、中々役に立った。明日の晩には、念の為もう一度教えて貰いたい。実技だけの試験ならば、特に何もせずとも合格出来ると思うんじゃけどなぁ。何で筆記試験まであるんじゃか。解せぬ。じゃけど、もっと解せぬことがある。
仮免試験の当日、生理が来る可能性が高い。被身子曰く、当日に来るらしいの。何でじゃあ……。何でそんな大事な時に、生理が来るんじゃ。儂、駄目かもしれん。仮免は取れなさそうじゃ……。何で別日に受けることが出来ぬのか。
ぐぬぬ。誰か何とかしてくれ。儂を助けてくれ。生理が来ないようにすることは出来ぬのか……?
はぁ。こうなったら、お薬を飲むしかないのか? 出来ることなら飲みたくないんじゃけど、今回ばかりはそうも言ってられぬか……。えぇ、やじゃぁ……。何で被身子の生理はあんなに軽いのに、儂の生理はあんなに重いのか。個人差が有るとは言うが、流石に納得いかん。生活習慣か? 被身子に任せきった生活習慣が悪いのか?
「美味い……美味、うま……」
にしても。それにしてもじゃ。被身子が作ってくれたぷりんが美味い。これで試作じゃと言うのじゃから、恐れ入る。ただでさえ儂の胃袋を掴んで離さないのに、更にこれ以上離さんと言うのか貴様。……許す。もっと美味しいおやつと料理を献上せよ。まっこと被身子無しでは生きれぬ体にされてしまっている気がするが、まぁ良しとする。今度何か、褒美を与えねば。何をしたら喜ぶかのぅ。何をしても喜んでくれそうな気がするが、どうせなら盛大に……。
そう言えば、呪術総監部から儂の口座に大金が振り込まれていたの。これで何か贈り物をするか、それとも結婚の為の資金として貯蓄しておくか悩ましい。
なんて、母には見せられない思考をしつつ居間で
『緊急速報です。北海道、渡祇井馬市にて、大規模な火災が発生しました。これにより札幌市全域が南側から次々と焼失、被害者の数は計り知れず全国よりヒーローが派遣されていますが生存者の発見は絶望的かと思われます。……繰り返します―――』
「えっ」
「これ、ヤバいでしょ……」
「何で? 何があったの……!?」
画面の中では、燃え盛る市街の様子が上空から撮し出されている。そこに街が在ったと言われても分からない程に、何もかもが炎で埋め尽くされているようじゃ。悪党の仕業にしては、やり過ぎじゃの。いや、そもそも悪党の仕業なのか? 幾らなんでも、無理がある。これ程までの被害を
であれば……可能性はひとつか。あの一つ目、随分派手にやっているようじゃの。こればっかりはやり過ぎじゃ。何人が犠牲になったかも分からん。
何を考えているんじゃ、あの呪霊は。ここまで派手な真似をして……。それが、背広男からの
指示じゃったのか? いや、あの男は死んだ。おおるまいとが殺した。であれば、呪霊操術の支配からは逃れている……筈じゃ。
ではこの惨状は、被害は、あやつ自身の意思でやったことか? 何の目的で、何もかもを焼き払った? これがもし一つ目……漏瑚の奴がやった事じゃとするなら……。
あぁ、最悪じゃ。これから北海道に派遣される
「……物騒なのです。これ、みんなはどう思います?」
隣に腰掛けている被身子が、ゆっくりと口を開いた。大事じゃからの、流石に気になるらしい。
「分からないわ。何か新しい情報が入れば良いけど……」
「
「梅雨ちゃん、自然災害って可能性は……?」
「その線も否定出来ないわね」
「……多分、違う……。みんなこれ見て」
梅雨や葉隠、そして麗日の会話に顔をしかめた芦戸が割って入った。そして儂等に向かって
……これで、分かった。この大災害は、あの一つ目が行った。悪党の仕業である可能性はまだ拭い切れぬが、十中八九は呪霊による犯行じゃろう。仮にこれが悪党の仕業ならば、
「……っと。すまん、電話じゃ」
机の上に置いといた儂の
「もしもし」
そふぁから立ち上がり、居間から離れつつ電話に出る。
『七山です。廻道さん、今流れているニュースは見ましたか?』
余程慌てているのか、声が大きい。そんなに叫ばずとも聞こえるから、少し落ち着け。まったく……。少し
「うむ、見た。
『……今のところは、まだ何も。ですが呪霊被害が発生したとみなして、動くつもりです』
「そうしてくれ。その可能性が高いからのぅ」
もしもあの大惨事を引き起こしたのが一つ目ならば、呪術師として無視出来ぬ。あれは早急に祓った方が良いじゃろう。何故北の大地を燃やしに行ったかは分からぬが、あやつの事情はどうでも良い。あそこまでやってしまったのなら、もはや捨て置けぬ。次の被害が出てしまう前に、あの呪霊は祓いたい。相性は最悪じゃが、どうにかしなければ。
あの時祓い損ねた呪霊が、まさかここまでやるとは。あの時、深追いをしてでも確実に祓っておくべきじゃった。
『ひとまず、調査にはオールマイトを向かわせます。増援が必要となった場合、声が掛かると思ってください』
「今すぐ行かなくて良いのか?」
『仮免試験前でしょう? 行かせたくても、行かせられませんよ。仮免試験が終る頃に何も分からなければ、その時は貴女にお願いします』
「……相分かった。必要になったらまた連絡してくれ」
『ええ、では』
……。電話が切られた。儂は今から北海道に行かされるかと思っていたんじゃけど、どうやらそうでは無いらしい。おおるまいとが向かうのであれば、調査だけならば問題無いじゃろう。調査を進めて行く内に、あの一つ目と戦うなんて事になってしまえば話は別じゃけど。
電話が済んだので居間に戻ろうと振り返ると、被身子や
「……円花ちゃん。北海道、行くんですか?」
「……聞いてたのか?」
「廻道、スピーカーになってたけど?」
……何、じゃと……? いかん、しまった。そんな操作をした覚えは無いんじゃが、指で電話に出たのが間違いじゃったか。じゃから七山の声がやたらと大きかったのか。
これは、失敗したの……。つまり先程の通話内容は被身子や
「ってことはさ、つまり……。北海道に行くってこと!? 駄目だよ廻道ちゃんっ、渡我先輩を一人にしちゃ!」
「いや、それはそうなんじゃけども」
人には決して言えぬ色々な意味も含めて、被身子を置いて北海道に向かうのは儂個人としては気乗りしない。葉隠の言うことは正しい。が、呪術師としては、もちろん被身子は置いて行く。絶対に連れて行くわけにはいかん。危険じゃからの。何も無ければ連れて行っても良いんじゃけど、何も無いなんて都合の良い事は起きぬじゃろう。
と言うかじゃな、葉隠。わざわざそふぁから立ち上がってまで、儂に詰め寄るな。距離が近いんじゃ距離が。出来れば半径一
「調査が上手く行かなかったら、行っちゃうんですか……?」
「……そうなる、のぅ……」
ううむ、困った。そんな顔をしないでくれ被身子。そんな風に寂しそうにされるとじゃな、離れ難くなってしまうじゃろ。こやつ、こんなに寂しがりじゃったっけ? いや、そんな筈は無いとは思うんじゃけど……。
……いや、寂しがりじゃったかも知れん。じゃってほら、今でも休み時間になれば必ず儂の居る所に顔を出すんじゃから。どれだけ儂から離れたくないんじゃこやつは。まったく、仕方ないのぅ。仕方ない仕方ない。この甘えん坊め。
「ほら、おいで」
立ったまま、両腕を広げる。すると直ぐ嬉しそうにして、猛然と儂に駆け寄っ……いやむしろ、跳び付いて来た。出来る限り優しく抱き留めてやると、思いっきり抱き締められた。ぐえっ、も……もう少し加減せぬか……! 身長差を考えろ身長差を! 顔が埋まるんじゃっ!
「あーはいはい。そういうのは部屋でしてよ部屋で」
「ケロ……。恋するのは良いことだと思うけど、節度は持たないと駄目よ二人共」
「ですが、こうやって愛し合う姿は……素敵だと思いませんか?」
「まぁ、確かにちょっと羨ましくはあるよね。青春に全力投球しちゃってさー」
……こやつ等。好き勝手言いおって。顔は見えぬが、呆れてるのは声で分かるんじゃからな?
だいたい、恋愛とは馬鹿になることじゃって誰か偉そうな奴が言ってたじゃろ。貴様等じゃって誰かと愛し合えばこうなると思うんじゃけど? こうならなかった奴だけが儂等に石を投げろ。それ以外は許さんぞ??
あ、そうじゃ。どうせならこの際、聞いておくとするか。こやつ等なら、被身子も反対しないじゃろうし。……多分。
「十八になったら結婚式を挙げるんじゃけど、お主等来るか?」
「えっ!?」
「えっっ!?」
「えぇえっ!!?」
いや、何でどいつもこいつも驚くのか。儂と被身子が許嫁なのは知ってるじゃろ。なら、いずれは結婚式を挙げることになるのは分かってた事じゃろうに。
まぁ
……で、被身子よ。何で固まった? おい、今度は何なんじゃ。おいったら。
「も、もぅ……。それは不意打ちですよぉ……えへへぇ……」
いかん。今聞くべき事ではなかった。聞かなければ良かった。いやでも、どうせ後で聞くことになるんじゃから今聞いたって……。あぁもう、待たぬか被身子。ここは共用の居間じゃっ、人前でして良いのは
ぐえっ。こら、押し倒すなっ。駄目ったら駄目じゃっ。
呪術原作において北海道は試される大地なんだそうですが、何がどう試される大地なんでしょうね……。その辺小説とかにあるのかな……。巨大な霊場ってなに……??
マイギートー → ートーギイマ → トギイマ → 渡祇井馬市。尾白くんの出身中学と被っちゃうことには目を瞑りました。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ