待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
おはようございます。むくり。
朝になったので目を覚ましたトガの目に入るのは、もちろん同じ布団ですやすやしてる私の円花ちゃんです。ちっちゃくて表情豊かで、たまに大口を開けて自信満々に大笑いする。そんな子供っぽさが抜けない、私の大好きな許嫁なのです。奥手でヘタレで甲斐性無しですが、ここ最近は好意をちゃあんと伝えてくれるので、それがもう嬉しくって嬉しくって。
だから。夜になると、つい盛り上がっちゃうんですよね。昨晩もいつものようにチウチウしてたら日付が変わる前に始まって、気が付いたら夜中の二時を越えていました。お陰で少し寝不足な日々が続いているので、夏休みが終る前には生活リズムを整えなきゃと思ったり、思わなかったり。だって円花ちゃんがカァイイから、ついしたくなっちゃうんですよねぇ。最近はチウチウされるとえっちな気分になっちゃうみたいで、すーぐ熱っぽい目で欲しがるから大変なのです。いや、ちっとも大変じゃないんですけど。円花ちゃんに求められると、それはもう嬉しいので。
「ぐぬぬ……。違ぅ、ぷりんは枕に……そう……へへへ……」
……。どんな夢を見てるんでしょうか。円花ちゃんは、たまに意味不明な寝言を言うのです。後でどんな夢を見ているのか聞いても、全く覚えていないみたいですけど。
カァイイカァイイ寝顔をいつまでも眺めていたい気分ですが、そうも言ってられません。トガの一日は、円花ちゃんのお世話と円花ちゃんを愛でることで忙しいのです。特に朝は、割りと戦争みたいなところが有るんですよねぇ。だから、もう起きなきゃ……。
……いけないんですけど、ちょっと悪戯したくなったのでまずは円花ちゃんの寝顔をスマホで撮影します。パシャリ。こうしてトガ秘蔵の円花ちゃんの寝顔コレクションが、毎日増えていくんですよね。そろそろアルバムにしようか悩ましいところなのです。まぁそんな真似をしたら、円花ちゃんはどん引きしちゃうんですけど。ただ、最終的には許されるって分かってるので、いつかやります。トガだけの宝物にするのです。
あとぉ……、やっぱり目が覚めたらキスしたいですよね。だからこうしてキスします。えい。
んふふ。朝から奪っちゃいました。ついでに首に吸い付いて痕を残しておくのです。円花ちゃんは結構眠りが深いので、多少悪戯し過ぎても起きません。流石にえっちなことを沢山すると起きちゃうんですけど、程々だったら何をしてもすやすやのままなのです。
ほんっと、無防備ですよねぇ。今だって生まれたままの姿で眠りこけてますし。そんなだからトガがいつでも襲いたくなっちゃうんですよ? その辺り、分かってるんですか? 分かってませんよね?? だから今夜も襲います。
「ん、んん……っ」
さて。寝顔も堪能しましたし、悪戯もしました。今朝の円花ちゃん成分の補給は少し済ませたので、まずは着替えと洒落込みましょう。裸のまま寮内を彷徨く趣味は流石に無いので。前の寮だったら、別に裸でも良かったんですけど。円花ちゃんしか居ませんでしたし。でも今は、一年A組のみんなが居るのでちゃんと服を着ます。
今日は何を着ましょうかねぇ。洋服……んん、いや……やっぱり和服ですかね。円花ちゃんが大好きな
円花ちゃんが着物好きなので、トガもすっかり一人で着物が着れるようになりました。
そう言えば円花ちゃんて、男性用の着物を着たがる事が多いんですけど……。何ででしょうね? まぁ、結構似合ってるので嫌ではないんですけど。実は男装癖が有るってカミングアウトされても、受け止められる自信があります。円花ちゃん、ひょっとして性自認が男性だったりしませんか? それなら納得出来る事が幾つか有るんですよねぇ。聞いてみたい気がするんですが、本当に性自認が男性だったらデリケートな話になってしまうので。だから私からは聞き出さないつもりなのです。でも、何があっても良いように勉強はしておくべきかなって思います。トガは良妻なので。
こっそり部屋から抜け出して、色々済ませたら朝ご飯を作りましょう。円花ちゃん、朝は絶対に味噌汁を飲みたがるので必然和食寄りになるのです。さらっと毎日飲みたいなんて口走るんですよねぇ。もちろん、毎日作ってあげるのです!
◆
「あ、おはよう渡我先輩。今朝も早起きだ……」
「おはようございますお茶子ちゃん。眠そうですね」
「毎日朝も早よから訓練やから……。ふわぁ……」
「おはよう被身子ちゃん。今朝も良い匂い」
「おはようございます梅雨ちゃん。今朝も自信作なので!」
食堂のキッチンでせっせとお味噌汁を作っていると、食堂に人がやって来ました。お茶子ちゃんは眠そうで、梅雨ちゃんは朝でもしっかりしてるのです。現在A組、つまりヒーロー科の皆さんは仮免取得の為に頑張っています。もちろん、円花ちゃんも。だからトガは仮免試験が終るまで円花ちゃんをしっかり支えるつもりなのですが、それはそれとして後輩達の面倒も見てあげようかな? なんて思ったり。トガは円花ちゃん第一ですけど、後輩も大事にしたい良い先輩なので。それに、いつも円花ちゃんがお世話になってますから。少しぐらい恩返ししないと。
だから、今朝はお味噌汁を沢山作りました。と言っても流石に二十二人分は無理なので、私と円花ちゃんの分を除いて先着三名様程度ですけど。
「お味噌汁飲みます? 少し多めに作ったので」
「え、良いの?」
「あら。それじゃあ、ありがたくいただくわね。でも良いの? 円花ちゃんが拗ねたりしない?」
「大丈夫ですよぉ。拗ねた円花ちゃんもカァイイので!」
「それ、大丈夫なんかなぁ……」
大丈夫です。だいじょーぶっ。円花ちゃんの分はちゃんと取って置きますし、手料理を振る舞ったぐらいじゃ嫉妬はしないのです。それに、嫉妬してる円花ちゃんはそれはそれでカァイイですから。ジト目になって頬を膨らませて、分かりやすく拗ねる姿はとってもカァイイの。拗ねてます? って聞くと「拗ねとらん」って不貞腐れるのはもーっとカァイイんです。
何より、円花ちゃんはトガが大好きなので。ちょっとやそっとじゃそれが変わったりすることはないのです。だから、沢山甘えちゃったりやり過ぎちゃったりするんですけど……。まぁそれは、円花ちゃんが悪いので。……別に責任転嫁ではないですよ?
「……おはようございます、渡我先輩。蛙吹も麗日もおはよう」
「おはよう常闇ちゃん」
「おはよう常闇くん。今朝も真っ黒だぁ……」
……トガ的要注意人物が、今朝もやって来ました。立派な鳥頭の常闇くんです。円花ちゃんが特別仲良くしてる男の子で、今もまだ変な言葉選びを続けている彼です。私とは目を合わせて話してくれない、素っ気ない後輩でもあります。ちょっと脅し過ぎましたかねぇ。でも、トガの前で円花ちゃんとあんなに仲良くされると我慢ならないので仕方ないのです。
……はぁ。円花ちゃんの無防備さには困っちゃうのです。もしかして、私を嫉妬させたくてわざとやってる……? ううん、無いですね。あれはそう言うのではなく、素です。それはそれで困るから止めて欲しいなぁ……。
「あ、常闇くんもお味噌汁飲む? 渡我先輩が多めに作ってくれたんだって」
「……それは、廻道に悪い。確かに渡我先輩の味噌汁は美味いが……」
「常闇ちゃんなら譲ってくれるんじゃないかしら? 二人は仲良しだもの」
……んん? 私、常闇くんに味噌汁を振る舞った覚えは無いんですけど。何で味を知ってるんでしょうか? もしかして円花ちゃん、お弁当を分けたことがあります? 冬はスープジャーにお味噌汁を入れて持たせてますけど、もしかしてそこから?
別に、お弁当を味見させるぐらい良いですけど。良いですけど、何でよりによって常闇くんなんですか。そこはまだ緑谷くんとかの方が良いです。
「い、いや蛙吹……。そんなに仲良しでも……」
「え、仲良しじゃないの? ほら二人って、休憩時間とかいっつも一緒やん。授業とかでもペア組む時はだいたい……」
「う、麗日! 今は言わないでくれ……!」
「……何で、今は言っちゃ駄目なんですか? 私は聞きたいですけど」
「……」
むぅ……。やっぱり授業中なんかは一緒にしてるみたいですね。ってことは、今やってる訓練なんかも二人で居る時間が多いんでしょう。常闇くんも何だかんだで優しいですから、円花ちゃんから近付いて来られたら避けようが無いのかもしれないのです。
「わ、わざとじゃないんです先輩っ。廻道とは、本当にただの友人で……!」
慌てて否定されると、それはそれで疑ってしまうのです。こんな時でも目を合わせない辺り、私に後ろめたい事が有るみたいですね。きっとそうです。こうなったら、訓練の見学でもしに行きましょうか。よし、決めました。今日はそうします。円花ちゃんの邪魔はしたくないんですけど、色々と確かめなきゃいけないので。
「……これ気になってるんですけど、ぶっちゃけ円花ちゃんの事をどう思ってます?」
「……それは、その……。友人、です」
「……」
「……」
……嘘は言ってないみたいですね。相変わらず、目を合わせてはくれませんけど。でも常闇くん、最近コスチュームの変更したって聞きましたよ? この間、談話スペースで障子くんとか口田くんとかと話してましたよね? たまたま耳に入ったんですけど、何でも和装に変えたとか。それって、円花ちゃんからの影響ですか? 円花ちゃん、コスチュームは巫女装束ですもんね。実は然り気無くお揃いにしたかったとか、そんな下心が有ったりします?
やはり要注意人物なのです。油断出来ません。まさか円花ちゃんが浮気なんてする筈無いですけど、もし常闇くんがその気になって迫ったりしたら……。…………。
「……すみません。少し嘘を吐きました。真実は、……廻道に憧れてる節が、あります」
んん……。それは、……まぁ、仕方ないのです。だってほら、円花ちゃんって強いですから。個性、と言うか術式の扱い方とか体育祭での活躍とか、ヒーローを目指してる男の子からすれば憧れちゃっても仕方ないのです。特に常闇くんは、円花ちゃんの運動神経がちょっと良すぎる事も知ってるでしょうし。A組の中では、一番付き合いが長いですし。
それに……。憧れた人になりたくて、その人の真似をしてしまう気持ちは分かります。そういうの、痛いぐらいに分かっちゃうのです。だって私も、そうだから。着物を着るようになったのは、円花ちゃんとお揃いが良かったからで……。少しでも近付きたくて。あんな風に、生きてみたくて……。それはすっごく、難しいことですけど。円花ちゃん自身になるには、絶対に簡単じゃないのです。
だって円花ちゃん、すっごく優しいから。口では違うと言いますけど、誰でも受け入れちゃうんです。あの爆豪くんにすら、優しいんですよ? あんな人を受け入れるなんて真似、トガにはとても出来そうにないのです。
「あんなポンコツだけど、やっぱり廻道は凄いんです。あんな風に戦えるようになりたいと、思ってます」
「それ、男のイジってやつだね……!?」
「別に意地では……、いや……そうだな。意地だ。廻道に負けたくない。あの背中に、追い付きたい」
「ケロケロ。頑張りましょう、常闇ちゃん。私も、円花ちゃんの隣に立ちたいもの」
……まぁ、そういう事でしたら少しは許してあげるのです。少しだけです。私は円花ちゃんみたいに優しく出来ないので。だって、独占したいって思っちゃうのです。円花ちゃんに
「ふあ……。朝から何を話してるんじゃ貴様等……。んん、おはよぅ被身子……」
あっ。円花ちゃん。つい時計を見ると、……いつの間にか円花ちゃんが起きて来る時間になってたのです。起こしに行こうと思ってたんですけど、常闇くんに気を取られ過ぎました。起きる瞬間の円花ちゃんはとぉってもカァイイのに、見逃しちゃった……。やっぱり常闇くんは要注意です。今後もしっかり警戒しておきます。
それはそうと、よくここまで一人で来れましたね……? 奇跡かもしれません……。奇跡ですよね、これ……?
「か、廻道……っ!?」
「喧しいぞ常闇。朝から騒ぐなたわけ。ふわあ……ねむ……」
もぅ、そんな大口開いて欠伸して。着てる服だって、私のシャツ一枚だけっぽいですし。絶対、ブラしてませんよね……。下手したらパンツも……。そんな無防備な姿を人前でしないで欲しいのです。円花ちゃんは自分がカァイイ女の子って自覚が足りないです。
「朝から何を慌ててるんじゃ貴様。落ち着きの無い奴じゃのぅ」
「止せ廻道っ、渡我先輩の前では止めてくれ……!」
むーーっ。またそうやって常闇くんの頭を撫で回して。と言うか常闇くん。別に円花ちゃんに撫でられるのは嫌いじゃないんですね? 私の前だから止めて欲しいだけみたいです。
……ふーーん? これは、後でどういう事なのか問い質さないと。ほんっと、油断も隙もありません。あんなに円花ちゃんは私のって公言してるのに。これはもう、人前で抱いちゃうぐらいしないといけませんねぇ。流石にそういう行為を見せ付けるのは……ちょっと気恥ずかしいですけど。何よりあんなカァイイ円花ちゃんを人に見せたくないのです。でも、そのくらいインパクトがある事をしておきたいですよねぇ。どうしましょうか? これは、何回目かの脳内会議をした方が良い気がするのです。多少過激な結果に終るかも知れませんが、円花ちゃんなら最終的に受け入れてくれるのを知ってるので!
んふふ。何をしましょうかねぇ……っ。今のままだと足りないみたいですし、やっぱりプルスウルトラは必須なのですっ!
「……なぁ、常闇。被身子を止めてくれんか? あれは駄目なやつじゃ……」
「絶望的に不可能。渡我先輩を一度でも止めれたことが有るのか? だいたい、廻道がスキンシップをしなければ良いだけの話で……!」
「このくらいの事は他の男子達もしとるじゃろ。何で儂は駄目なんじゃ儂はっ。不公平じゃぞっ!」
「男女格差を調べてくれ! 自分が女子だって分かってるのか!?」
「知っとるがっ。この体は十六年目じゃけど!?」
「ならいい加減分かってくれ……! 頼むから……!!」
……はぁ。もぅ……。またそうやって仲良くして。やっぱり私を嫉妬させたいんですか? トガをヤキモチにさせて、どうされたいんですか?
取り敢えず一言、これだけは言っておきましょうかねぇ。
「―――円花ちゃん。今夜は寝かせないのです」
「今夜も、の間違いじゃろっ!?」
次回は仮免試験と言いましたね? あれは嘘です。ちょっとトガちゃん視点書きたくなったので、差し込みました。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ