待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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飲ませるな。

 

 

 

 

 

 備品室の残穢が何だったのか。それを知ることは叶わなかった。

 夜間の外出禁止を言い渡された儂は、昼間の内に埃っぽい備品室をあれこれと調べてみたんじゃが、休み時間ではどうにも時間が足りない。ならば放課後に調べようと思ったんじゃが、舎弟に襟を掴まれて帰宅させられてしもうた。

 

 こやつ、実は口が悪いだけで爆豪婦人の言うことはちゃんと聞くのか?

 それとも担任の先生から儂の世話係を任命されておったからか?

 どっちにしても、備品室を調べたかった儂からすればこんな時に良い子面されても困る。としか言いようが無いんじゃが。まぁこの良い子面がこの先ずっと続いていくんじゃったら、舎弟は卒業かもしれんの。

 

 それはそうと。笑えない噂が折寺中学校に広まっておる。なんと、儂と爆豪が婚約しているそうだ。これは(まこと)に笑えぬ。身の危険を感じてるのは気のせいではない。頼むから、頼むから被身子の耳には入らないでくれ。後で大変な思いをするのは儂なんじゃ。どうしてこうなったんじゃ……。

 おい。儂のせいにするなよ小僧。儂とて迷惑なんじゃ。人の噂は七十五日と言うが、儂その間被身子に怯えて暮らさなければならぬのか?

 いや、いっそ自分から被身子に説明すれば良いのかもしれん。そしたら酷い事にはならんじゃろうて。ならん筈じゃ。ならんと言え小僧。儂に何かあったら貴様のせいじゃからな。

 

 ……まぁ明日から春休みじゃし。休み明けにはくらす替えがあるし、長めの休みを挟めば周囲からの変な興味も薄れていくことじゃろう。そう願う。

 

 さて。明日から春休みじゃ。この休みが終われば儂は受験生になる。希望する進路は特に無い。ただ、ひいろおになれと母には言われた。う゛ぃらんを捕まえたり、被災した地で人々を助ける仕事じゃな。率先して人助けをし、人々の注目を浴びる職業じゃ。正直言うて、あまり興味は無いの。

 

 儂は呪術師じゃ。死のうが産まれ直そうが、その立場から逃れることは出来ぬ。それにこの時代、他の呪術師が見当たらぬ。儂しか居ないのなら、儂が呪霊を祓うしかないじゃろ。

 とは言え、ひいろおにならなければ個性を自由に使えないのもまた事実。儂、個性届けは『操血』になってるんじゃよなぁ。帳を降ろせば外から見られることは無いが、既に中に居た者には見られてしまうからのぅ。

 

 ……そう考えると、術式を使う為に免許が要る。個性届けは『回転』で出すべきじゃったか。いや……、どのみち人に見られたら、いかんことに変わりないか。

 なるほど……。だから母は儂にひいろおになれと言ったんじゃな? 進路希望はひいろお科がある高校にしておくかの。休み明け、進路相談室とやらに行ってみるか。

 

 ところで! 今日もおやつが美味である。まふぃんなる焼き菓子を口いっぱいに詰め込むと幸せじゃあ。喉が渇くのが欠点じゃが、幸せの代償としては安い安い。帰宅早々こんなおやつを出すとは……本当に被身子はやりおる。儂の為に焼いたのか? うむ、苦しゅうない。もっと焼け。

 

「さっきから難しい顔して、どうしたんです?」

「……? ほんなはおはひとひゃんよ(そんな顔はしとらんよ)

「してるのです」

ひひょひゃんへ(しとらんて)

 

 あれこれと考えているのは事実じゃ。でも難しい顔など一切しとらん。口の中が甘くて幸せなのじゃぞ? そんな顔する筈無かろうて。いや、さっきから嫌いな飲み物が目の前に置いてあるからそのせいかもしれん。

 被身子。儂はそれ飲まんからな。絶対に飲まんからな。例えこの世の水全てがそれに変わっても、儂は渇いて死ぬからな!

 

「円花ちゃん。牛乳飲んでください」

「嫌じゃ!!!」

 

 拒否する! 儂は断固として拒否する! そんな牛の乳なんて、だいっ嫌いじゃ!

 例えもう身長が伸びなかったとしても、儂は構わん。身長の為に牛乳を飲むなんて、儂の人生にあってはならぬのじゃ。

 

 (まこと)に。真に嫌いなんじゃよ牛乳はっ。赤子の頃を思い出してしまう。被身子よ、お主知らんじゃろ? 自分よりも若い女に乳を飲ませて貰わねば死んでしまう、地獄のような環境を。そんな地獄に身を置く恐怖を。飲まねばひたすら心配されて、大騒ぎになるあの面倒さを。

 

 じゃから、儂は飲まぬっ。飲まぬったら飲まぬっっ。もう身長が伸びる見込みも無いんじゃから、飲まなくても良いのじゃ! 儂を見てちびと言った者は許さぬがな!!

 

「……飲まないなら、明日のおやつは無しなのです」

「待て被身子。お主、儂に死ねと申すか? そうなっても良いのか?」

「おやつ食べなくても、人は死なないですよ?」

「やじゃやじゃ! 飲みとうない!」

「じゃあ分かりました。こうしましょう」

 

 どうするんじゃ? お、何だ儂の代わりに飲んでくれるのか。うむ、最初からそうしろ。儂は牛乳なんて見たくもないんじゃ。で、何で牛乳飲む前に悪い顔をしたんじゃお主。

 ……おい待て。待たんか。何で牛乳を口に含んだままこっちに近寄ってくるんじゃ?

 

 貴様、何を考えておる。何をするつもりじゃ。

 おいって。迫るな。儂の後頭部に手を回すな。

 

 ……!

 

 これはいかんぞ、嫌な予感しかせぬ! 今した!! 逃げねば! この場から逃げねば! んむぅっ!

 

「んっ!? むぐ……っ。ちょ、ひみ……っ、んんぅ……っ」

「んっ、ちゅ……。ふふっ。今日の円花ちゃん……ミルク味です……」

 

 

 

 

 

 

 

 牛乳、やっぱり嫌いじゃ。嫌いったら嫌いじゃ。見るだけで嫌なのに、飲まねば口移しで無理矢理飲まされる。しかも、しかもじゃ!

 

「んふふっ、何だか……ちょっとえっち……」

 

 何て言いながら、被身子が満面の笑みで押し倒してくるのじゃぞ! 貴様、血だけじゃなくて牛乳まみれの儂にも興奮するのか!?

 

 どうなっとるんじゃその脳みそは!

 

 医者だ! 誰か医者を連れて来んか!! いやむしろ病院をここに建てろ!! 今すぐ! 今すぐにじゃ!!!

 

 

 

 ……ぐすっ。牛乳嫌いじゃあ……。飲みとうない、飲みとうない……。ぐすん……。

 

 

 

 

 





今日中に書ければえっちなやつ投稿しておきます。だからこちらの更新はありません。私からは以上です。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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