待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
仮免試験日、当日がやって来た。が、行きたくない。行きたくないんじゃ。じゃって生理が来てしまったんじゃもん。こんな調子では、筆記試験やら実技試験どころではない。本音を言えば、今回の試験は見送りたい。布団から出たくない。被身子から離れたくない。ふえぇ、むりぃ……っ。
「円花ちゃん、お薬飲みましょうね……。飲んだら、少しは楽になれるのです」
「やじゃあ、やじゃやじゃ」
おくすり、のみたくない。何で飲ませようとするんじゃあ。そんな事より、儂をもっと抱き締めてくれ。何なら噛み付いてくれ。この下っ腹の痛みも頭痛も気持ち悪さも何とかしてくれぇ……!
おい、おいってばぁ。何で錠剤を用意しとるんじゃ貴様……。飲まんぞ、飲まん飲まん。薬は嫌いなんじゃ。って、何じゃそれ。木の匙に薬なんて乗せても儂は口を開かんぞ。絶対に嫌じゃ。……ん? 何じゃその
「はい、円花ちゃん。あーんです、あーん」
「ぅうう……」
匙の上に、
「大丈夫ですよぉ。苦くないですから。これ、噛まずに飲んでください」
「うぅ……。やぁじゃあ……」
「円花ちゃん、お願い」
「ぅう、ううぅ……っ」
うぅ、そんな顔しないでくれ。飲む、飲むから……。おくすり、飲む……。うぇえ……。
仕方なく口を開き、匙を口の中に入れて貰う。おえっ、甘ったるい……。何じゃこの
「……んくっ」
んぇっ。嫌な感じじゃ。もう飲んだ、薬は飲んだ。じゃから後は、被身子に抱き付いて寝るんじゃ。仮免試験なぞ知らん。今日は無理じゃ。無理ったら無理。在学中に取れば良いんじゃから、また来年にでも受ければ良いんじゃ。もう儂は寝る。寝るったら、寝るっ。起きてたくない。このまま被身子と布団で過ごすんじゃ。こら被身子、もっと頭撫でてぇ。ぎゅってしてくれ。じゃないとやじゃやじゃっ。もう無理じゃ、今日は無理。動きたくない。仮免試験など知ったことでは無いんじゃ。うぅう……。
なんて思っていたら、部屋の扉を誰かが叩いた……。音が頭に響く。誰じゃ、ふざけた真似をしおって……!
「廻道、何をしている。とっくに全員集まってるから、早く来い」
相澤先生が来ていた。うるさい。動けないんじゃから仕方ないじゃろ。儂の事は置いていってくれ。って被身子、儂から離れるんじゃない。今は一人にしないでくれ。泣くぞ? 泣き喚くぞ? ぐすぐすっ。
「相澤先生、円花ちゃん……生理なので」
「……随分と間が悪い。廻道、動けるか?」
「うぅう……。むりぃ……」
「……駄目か。参ったな。今日は大事な日なんだが……」
うぅ、うるさいんじゃ……。静かにしてくれ、頭に響く。被身子は離れてしまったし。もうやじゃ、寝る。ふて寝する。痛過ぎて寝れる気がしないが、起きていたくもない。とにかく薬が効いてくるまで、寝っ転がっていたい。体を起こしたくなんて無い。相澤、貴様知らんじゃろうけど大変なんじゃからな。生理は、すっごく大変なんじゃぞっ。貴様も女になれば良いんじゃ。うぅ、生理と無縁の男が羨ましい……っ。
「渡我、仕方ないから廻道は抱えて行く。今日ばかりは休ませられない」
「……ですよね。心配なので、私も付いて行って良いですか?」
「悪いが、会場に着くまで廻道の世話を頼む。必要なものを準備して、……十五分後までに寮前に集合」
「はい。準備しますね」
やじゃやじゃ、布団から出たくない。そもそも相澤、儂と被身子の部屋に入ってくるな。儂を抱え上げようとするな。おい止せっ、貴様にそんな事されても何も嬉しくないんじゃっ。被身子に抱え上げられるならまだしも、何で担任に運ばれなければならないんじゃあ……!
◆
うぅ、気持ち悪い。何で生理なのに、仮免試験を受けなければならないのか。薬を飲まされたお陰か、下腹部の痛みや頭痛は弱い。が、気持ち悪さだけはしっかり残っている。こんな状態で試験など……絶対に無理じゃ。儂、仮免試験落ちたわ。こんな状態で合格出来るような結果を出すことは出来ぬ。
ぐぬぬ。何で会場に着いてしまったんじゃ。椅子に座ってることすら辛いのに、筆記試験やらなんやらを受けなければならんとは……。ふえぇ、やじゃあ……。何もしたくない。被身子に抱き付いたまま、じっとしていたい。許さん……許さんぞ生理……。うぅう……。
「円花ちゃん、立てますか? 無理なら支えますから」
「うぅう……っ。むりぃ、やじゃあ……っ」
動きたくない。立ちたくない。そもそも立ち上がれぬ。車酔いまでしてしまったのか、今にも吐きそうじゃ。林間合宿の時と言い、何でこんな目に遭わねばならんのじゃ。まっこと無理じゃ。無理ったら、無理。このまま被身子と一緒に居る。一秒じゃって離れたくない。仮免試験なぞ、受けたくない。
でも、でも……。仮免試験は、どうしても受けねばならない。仮免は欲しい。緊急時に個性を使っても罪に問われなくなるんじゃから、持っておくべきじゃ。何かあった際、人目を気にせず術式や個性を使えるようになるんじゃから。
う、うぅ……。被身子ぉ、お願いじゃからそんな心配そうな顔をしないでくれ。笑ってくれなきゃ嫌じゃ。いつもみたいに笑って、少しでも安心させてくれぇ。
「円花ァ、大丈夫カ? 元気出セ元気……!」
視界の端に、だあくしゃどうが居る。その奥には鳥天狗のような常闇も。何じゃ貴様、さっさと会場に向かわんか。
でも、心配してくれてるのは分かる。くらすめえとの前で弱味を見せるようなことはしたくないんじゃけど、こればっかりは抗えぬ。苦しい、辛い、泣きたい。
「渡我先輩、後は俺が。任せてくれますか?」
「……はい、そうですね。私の入れないところではお願いするのです」
「ありがとうございます。廻道、ダークシャドウで運ぶからしっかり掴まってくれ」
「円花、掴マリナ。運ンデッテヤル」
掴、まる? だあくしゃどうに、運ばれろと?
うぐぐっ。魅力的に思えるが、それも嫌じゃ。こんな事でいつまでも弱った姿を晒したくない。被身子になら幾らでも甘えたいが、被身子以外には甘えたくないんじゃ。うぅう、立つ……。頑張って、立つんじゃ。ふえぇ……。
「うぅう……っ」
隣に座る被身子を支えにしながら、どうにか立ち上がる。体を動かすことすら、今は重労働じゃ。動きたくない。気持ち悪い。くらくらする。血が足りていないのか……? 分からん、分かりたくもない。今は、何も考えたくない。一秒でも早く、今日と言う日が終ってくれることを願う。明日にさえなれば、楽になれると言うのに……っ。
「ふえ……」
あ、これは駄目じゃ。立ってられん。吐きそうなぐらい気持ち悪くて、手足に力が入らぬ。視界が揺れて、あぁ……これは転ぶのぅ……。
「円花ちゃん!?」
「廻道!!」
「円花ア!」
う、うるさい。そんな全員して慌てるな。床に倒れるだけじゃ。何なら、そのまま寝る。もう動きたくない。ここまで頑張ったんじゃから、もう良いじゃろ。やはり仮免試験は、また来年にしよう。来年じゃ来年。今年はもう諦めじゃ。目を開けていることすら、無理なんじゃ。
……? うぅ、何かおかしいの……。転んだのに転んでない。床にぶつかるかと思ったんじゃけど、何かが儂と床との間に挟まっておる。何じゃこれ、この感触には覚えがあるんじゃけど……。分からん、今は何も考えたくない。この感触が何であるかなんて、どうでも良い……。
「ァ、危ネェ……!」
「ほ……。ありがとうございます、常闇くん」
「恐縮の至り。廻道、運ぶぞ?」
「うぅう……」
何だか知らんが、体が浮いた……気がする。もしかして儂、だあくしゃどうに抱えられている……のか?
「ダークシャドウ。丁重に運ぶぞ」
「アイヨ!」
どうやら、だあくしゃどうに抱えられている……らしい。うぅ、気持ち悪い。吐き気が凄まじい。薬で痛みは和らいだが、代わりに痛み以外のものが増幅しているような気がする。辛い、苦しい。生理なんて嫌いじゃ。まっこと嫌いじゃ。頼むから、誰かどうにかしてくれぇ……っ!
仮免試験ですが円花は生理です。生理でピンチ的な話を書く気無かったんですが、仮免試験なら比較的命に関わらず平和的に書けるなと思ったので。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ