待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
生理、辛い。痛くて気持ち悪くて、吐き気も有る。お薬を飲まされたから、いつもよりは多少楽……の筈なんじゃけど、全然楽とは思えぬ。無理じゃこれ。苦しい、誰か助けてくれ。今日は仮免試験当日なのに、何でこんな目に……。う、うぅ……っ。
筆記試験は、散々じゃった。辛すぎて問題文もろくに読めんかったぐらいじゃ。何か被身子に教わったような問題が幾つも書かれている気がしたから、教えて貰った通りに答えを書いた。……気がする。大丈夫じゃろうか? 駄目な気がする。仮免取得は、残念ながら来年にお預けじゃ。次こそは、生理が来てない時にやって欲しい。それなら間違いなく合格出来る、と思うから。
「ぅ、うぅう……」
被身子、被身子は何処じゃ? 何でこんな辛い時に、被身子が側に居ないんじゃあ。
「廻道くん、もう止めておこう。そんな状態じゃ何も出来ないだろう?」
「でも委員長、せっかくここまで来たんだからせめてやらせてあげようよ……!」
「いや、しかしこれでは……」
「放っときゃ良いんだよ。ヒーローやってりゃ、体調不良で現場出る時もあんだろ」
「ちょっと爆豪! 理解無さすぎでしょ!!」
「理解しとるわ!!」
う、うるさい。喧しい。儂を囲って大声で話すのは止めてくれ。頭に響くんじゃ。何だか情けない気分になって来た。ぐすぐすっ。どうやら生理じゃろうと、儂はしっかりせねばならぬらしい。でないと、何でか知らぬがくらすめえと達が騒ぎ出すんじゃ。それに、被身子に心配させたくないからの……。うぐぐ、こんなに辛いのにしっかりせねばならぬとは……。まっこと、仕方のない奴等じゃあ……。
それはそれとして、何でこの部屋は人で溢れ返ってるんじゃ。何人居るんじゃこれ。今は静かにして居たいのに、どうしても周囲が騒がしい。くらすめえと達が黙ったって、人の気配が喧しくて仕方ない。
『えー、ではアレ……。仮免のヤツを、やります。あー、僕はヒーロー公安委員会の目良です』
大きな壇上の上で、誰かが話し始めた。
うぅ、気持ち悪い。真っ直ぐ立ってられん。何かを考えることすら、今はしんどい。じゃから、未だ儂の体を支えてくれてるだあくしゃどうにしがみ付く。こうして支えて貰って居なければ、とても立っていられないんじゃ。ぐぬぬ……。
『―――えー、じゃあ展開後ターゲットとボールを配るんで……』
……たあげっと? ぼおる? を、配る? いかん、何も聞いていなかった。立っていることに必死で、どうにか倒れないようにしてるだけで精一杯で、目良とやらの話が何も耳に入ってこなかった。展開後って何じゃ? もう一回説明してくれ。いや、やはりしなくて良い。今は何度説明されたとしても、何も頭に入ってこないからのぅ……。辛い、まっこと辛い……。もうやじゃ生理……。二度と来ないでくれぇ……。 ぐすんっ。
「おいチビ。ターゲットにボールを三つ当てられたら脱落だ。逆に止め刺したらクリアって覚えとけ」
「……は?」
うぐぐ、何じゃ小僧。訳の分からん事を言いおって。そういうのは被身子だけにしてくれ。あやつ以外の発言に振り回されるつもりは無い。何せ、儂には余裕が無いんじゃから。何なら貴様の相手だってしたくないんじゃ。頼むから誰も話し掛けないでくれ。声が頭に響いて、頭痛が酷くなる。薬は効いている筈なのに、痛くて敵わん。
あぁ、早く明日になってくれ。そしたら楽になれるのに……!
「俺に勝っといて落ちんじゃねえぞ。落ちたらぶっ殺す!」
じゃから、うるさいんじゃ貴様ぁ……! 勝手な事を宣うな。そんなに拳骨を落とされたいのなら、後で思いっきり落としてやるぞ? 相変わらず態度が悪い奴じゃ。そろそろいい加減にしておけよ、たわけ。
何じゃかよく分からんが、とにかく何か始まるようじゃ。ところで、この変な器具は何じゃ? 気が付けば配布されてたこれじゃ。何でこんな玉と板を儂に渡してったんじゃ試験官共。舎弟が何か言っていたが、……何じゃったっけ? 球が三つで、止めがどうこう……。止め? 何の?
あと、芦戸に葉隠。何で訳の分からん板を儂の
『では始めましょうか。展開します』
展開……? 何を? 領域? いや、そんな筈は無いか。いかん、まっこと何も頭に入ってこない。やはりこんな状態では、試験など無理じゃ。仮免取得は儂には無理そうじゃの。もう諦めよう。立ってるのもやっとなんじゃから、何が出来るわけでもない。さっさと棄権でもして、被身子の下に戻りたい。相澤先生に怒られるかも知れぬが、こればっかりは仕方ないんじゃ。あぁ、気持ち悪い。頭痛い、下腹部も痛い。もう倒れてしまいたい。
……ん? 何か、部屋が動いて……? 違う、壁や天井が動いているのか。どうなっとるんじゃこの会場は。動く部屋など見たこと無いが?
おお、開いていく開いていく。どういう仕組みかは知らんが、とにかく壁やら天井やらが動いて……部屋そのものが無くなった。で、部屋の外側は……何じゃこれ。街? を、模した会場か。岩場とかもあるのぅ。どうなっとるんじゃこれ。
って、あぁ……。会場の端に設置された観客席に被身子がおる。距離はかなり離れているが、それでも目が合った。気がする。そんな心配そうな顔をしないでくれ。分かった、分かったから。儂は大丈夫じゃから。あんな顔をされてしまったら、何とかするしかない。体内外での術式操作はまるで当てにならんし、呪力操作だって今はろくに使えん。が、やるしか無いのぅ。どうするか。
ああ、そうじゃ……。もう面倒じゃから、何もかもまとめて吹き飛ばしてしまおう。もう体調が悪いんじゃから、多少新たに気持ち悪くなったって大丈夫じゃろ。……多分。
『では、スタートと言うことで。先着百名に入れるよう、頑張ってください』
どうやら始まったらしい。ので、今出来る限りの呪力操作と個性操作を合わせて空気を回転させていく。見る限り、周囲の受験生は子供ばかり。竜巻に巻き込んで殺すような真似はしたくないから、ある程度加減を……。しまった、本気も出せぬが加減も出来ぬ。個性の方は……どうやら普段通り動かせそうじゃけど、呪力の方はまるで駄目じゃ。出力がどうにも安定しない。操作自体も淀んでしまう。生理の時はろくに呪術が使えんと思っていたが、実際にやってみるとここまで制御出来ぬものか。
「ちょっ、ちょっと廻道!? 何してんの!?」
うるさい芦戸。頭が痛くなるから叫ばないでくれ。今は無理矢理、体調の悪さを無視しとるんじゃ。被身子に心配掛けたくないからの。じゃから今日ぐらいは、無理をしよう。後で一切動けなくなるかも知れんが、死ぬ事は無いじゃろう。
さて、どこまで回せば良いかの。どこまで回したら、何もかも吹き飛んでくれるかのぅ?
うぇっ、いかん。反動が来た。どうにか無視していた気持ち悪さが大きくなり過ぎて、とても立ってられん。
「おぇえ……っ」
最悪じゃ。何で吐かねばならぬのか。気持ち悪くて仕方ない。生理が来てる間は、個性を使うべきではないのぅ。って、いかん。半端なところで回転を止めてしまった。もう少し回転させるつもりじゃったんだが……。
「はぁあああ!? 竜巻ぃ!?」
「ばっ、逃げろ逃げろ! あんな巻き込まれたら死ぬぞ!?」
「あいつの個性、操血じゃねえのかよ!?」
猛烈な風を感じたと思ったら、幾つもの悲鳴が聞こえてきた。気持ち悪いのを何とか我慢して顔を上げると、儂の目の前で大きな竜巻が発生しておる。会場の大半を吹き飛ばしてもおかしくないぐらいの大きさじゃ。おいおい、ここまでやるつもりは無かったんじゃけど? 何でこんな事に……。ってああ、そうか。呪力出力が乱れるに乱れて、必要以上に個性を強くしてしまったらしいの。
ところで。儂の作った竜巻の中に幾つもの球が混じっておるのぅ。何でじゃ? 何でも良いか……。細かい事はいつも以上に考えたくないんじゃ。
「ああ゛っ、気持ち悪い……!」
まっこと気持ち悪い。また吐きそうなぐらいじゃ。視界はぐるぐる回ったままじゃし、頭も下腹部も痛いし。じゃけど、それでも。今だけは無理をしよう。後で動けなくなっても構わん。じゃって、どうせ被身子に見せるなら格好良い姿が良いからの。
気乗りは全くしないが、それでも戦うとしよう。何じゃったっけ? 止めを刺すとこの試験は合格? それなら、ちょうど良い奴等が目の前に山程おるの。儂の竜巻に巻き込まれて吹き飛ばされて、気を失った連中が。見渡す限り、死人が出てない。竜巻は大きかったが、やはり回転数が足りなかったようでの。威力と範囲は凄まじかったようじゃが、持続力が駄目じゃった。割りと直ぐに消えてしまったからのぅ。
まぁ、そのお陰で死人は出なかったわけじゃけど。
近くで気絶している子供に、球を三つ投げる。すると。
『最初の通過者が二人出ました。えー、夜嵐イナサくん、廻道円花さん。お二人は会場を出て控え室にどうぞ』
結局何がなんじゃかよく分からないままじゃったけども、何かこの試験を通過したので良しとしよう。あ、いかん。通過出来たと思ったら急に緊張が途切れて、……ふえ……っ。意識が……。
『あー、救護班。廻道円花さんの確――。今日の彼女は―――の、―――ですので―――』
あぁ、駄目じゃこれ。やっぱり駄目じゃ。生理の時に無理をすると、ろくなことにならん。目の前が真っ暗になって、音も聴こえなくなってきて……。儂、気絶するんじゃなぁ……。
なんて思いながら倒れ込んだら、儂の意識はそこで消えた。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ