待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
『
儂と常闇、そしてだあくしゃどうで助けた出した人数が六人を越えた辺りで、会場の各地が爆破された。舎弟の奴が暴れ始めたのかと思ったんじゃけど、直後の放送で違うことに気付いた。正直、喧しくて鬱陶しい。無視したいところじゃけど、
なら、放送通りに動くしかないのか。今、儂等が居るのは即席の救護所。少し離れた所に見えるのは……何じゃあれ。
どちらにせよ……とんでもない面構えじゃの。殆んど悪党では?
「……はぁ。常闇、避難誘導。儂、あれの相手をしてくるから」
「いや、俺が行く。廻道こそ避難誘導を頼む」
「儂が出来ると思うか?」
「……確かに。無理はするな、俺が渡我先輩に殺されるから」
いや、もう既に無理しとるんじゃよ。まだ何とか立っていられるんじゃけど、戦うとなるとろくに動けぬじゃろう。呪力も術式も、個性じゃって使い物にならんのじゃ。今の儂が
それでも、ここは儂が迎撃に向かうのが正解じゃ。避難誘導など出来ん。しても良いが、あらぬ方向に誘導してしまいそうじゃしの。
……はぁ。いつもなら大いに楽しみたいところなんじゃけど、今ばかりはそうも言ってられん。何で今日は生理なんじゃ。ふざけおって。それなりに強そうな奴がそこに居るのに、全力を出せぬとはの……。
この後、儂は気絶するかもしれんのぅ。じゃけど、やるしかないか。すまん被身子、先に謝っておく。
取り敢えず、悪党に向かって軽く駆ける。いつもより遥かに遅い速度しか、今は出せぬ。駄目元で呪力強化してみるが……やはり操作も出力も安定しない。無いよりは、まだ良いと思うことにする。
って、うお。儂より先に駆けていた他校の生徒が、鯱頭に吹き飛ばされた。地面を砕く……いや、揺らす個性を受けてもあの鯱頭は平然と動いて見せた。やはりそれなりに強いようじゃ。
惜しいのぅ……。こんな体調でなければ、楽しい時間じゃったのに。あとなぁ常闇、この外套を羽織ってると動きにくいんじゃけど?
「この実力差で、殿一人? なめられたものだ……」
「いや、二人じゃ」
「ぬ?」
取り敢えず、どうにか鯱頭の懐に踏み込めた。相手の体躯は、儂より遥かに大きい。やるなら思いっきり行かなければならぬじゃろう。何せ足腰にろくに力が入らん。これでは殴っても、大した威力は出せぬじゃろう。ぐぬぬ……。
「どっ、こいせえ!」
振りかぶった拳を、真っ直ぐ突き出す。手応えは……いつもより全然無い。あぁ、駄目じゃこれ。こんな有り様じゃ、戦いにならん。拳は何とか鯱頭の腹にめり込んでくれたが、まるで効いてる気がしない。
「……小さい割りに、そこそこ力が有るようだな。だが!」
「っっ」
んぐっ!? な、何じゃこれ……! 脳天に頭突きをされて何か音がしたと思ったら、体が痺れて動かぬ……っ。お陰で、呆気なく転んでしまった。しかも立てぬ。うぇ、また気持ち悪くなって来た。おえっ……。
「そんな程度ではな。勇ましさは買うが、大人しく避難誘導をしていれば良いものを……」
喧しい……! 生理でなければ、貴様なんぞ楽に倒せる。こちとら、術式も呪力もろくに使えないんじゃぞ。それでも立ち向かった事を褒めてくれんかのぅ。
あぁ、もう良い。このまま倒れて居よう。体は痺れとるし、気持ち悪いし。頭痛も酷くなって来た。生理のせいなのか、頭突きをされたせいなのかは分からんけども。
「っっ、廻道!!」
……おい、常闇。何してるんじゃ貴様。避難誘導してたんじゃないのか。止めておけ、その鯱頭の実力はお主より上なんじゃぞ。幾らだあくしゃどうを纏っているからって、何とか出来る相手ではない。
「新手か」
「ぐ……っ!!」
……あぁ、殴り飛ばされてしもうた。それにしても、深淵暗躯を使う常闇を軽々吹き飛ばすか。やはり強いの鯱頭。明日になったら、儂と手合わせしてくれんか? 貴様なら、それなりに楽しめると思うんじゃ。少なくとも退屈はしない。何なら雄英で教師をしてくれんかのぅ……。って、ぬおっ。冷たっ!
……! 轟ぃ!! 儂ごと鯱頭を凍らせようとするな! こやつが防がなかったら、儂も巻き込まれてたところなんじゃが!? 何考えとるんじゃ貴様!!
「吹ぅうきぃ、飛べぇええええ!!」
……、……。今度は、なんか喧しい奴が空から来た。だけではなく物凄い風に顔を叩かれた。いい加減にしてくれ、儂が鯱頭の足元で倒れてるのは見えとるじゃろうが。許さん、どいつもこいつも。後で一発殴る。拳骨じゃ拳骨。絶対許さんからなっ。
「
何じゃあやつ。平然と空の上に立ちおって。いや、飛んでいるのか。見たところ、個性は風の操作か? 中々強そうな個性じゃの。何で轟を見て、顔をしかめるのかは分からんが。
「お前は、救護所の避難を手伝ったらどうだ? こっちは俺がやる」
「むむむ……」
……珍しいの。轟が食って掛かった。体育祭以前のあやつならばあり得た話じゃが、最近の轟としてはやはり珍しい。気がする。まぁ感情的になるところがあるからのぅ。あの喧しい奴が気に食わないんじゃろ。舎弟と言い、何で儂のくらすめえとは感情任せに動いてしまうんじゃ。さては阿保か? 阿呆なのか?
って、こら! 鯱頭に向かって火を出すな! あと、貴様もじゃ喧しい奴! まったく同時に風を出すな! そんな真似をしたら……!
「何で炎だ!! 熱で風が浮くんだよ!!」
ほら、炎と干渉しあってろくな事にならん。風も炎も、鯱頭から逸れおったわ。何しとるんじゃこやつ等。これじゃ駄目そうじゃ。もしかして、鯱頭に全員倒されてしまうのでは? そうなる可能性が高くなってきた気がする……。
「さっき氷結を防がれたからだ。俺の炎も風で飛ばされた」
「あんたが手柄を渡さないように合わせたんだ!!」
「は? 誰がそんな事するかよ」
「するね! だってあんたはあの、エンデヴァーの息子だ!!」
あぁ、もう知らん。もう儂は知らん。どうなっても助けてやらんからな。そもそも、儂は痺れて動けぬし。生理と麻痺が重なって大変なんじゃ。
勝手にしろ、たわけ。試験に落ちても自業自得じゃ。頼むから、儂を巻き込んでくれるなよ。後で被身子がどんな顔をしても、庇ってやらんからなっ。
と言うか喧しい奴。貴様、それを言ったら駄目じゃろ。轟が気に食わんのは分かったから、煽るような真似をするな。轟に父親の話題を振るな。
「……
ほら見ろ。鯱頭まで呆れているぞ。何でこうも、仲が悪いんじゃこやつ等。ってこら、鯱頭っ。儂を掴むな、持ち上げるな貴様っ。ぐぬぬ、体が動かん。口も動かん……!
「そら見ろ。お前達が馬鹿な真似をするから、仲間が人質に取られたぞ」
「……廻道っ!」
「あんたのせいっス!! どうすんだ!!」
いや、貴様等のせいじゃけど。これが実戦じゃったら、儂は死ぬかもしれないんじゃけど?
「どうもこうも、助けるしか無いだろ。そんな事も分からねぇのか?」
「だったら邪魔すんなって言ってんだ!!」
「お前こそ邪魔すんな」
……はぁ。気持ち悪い。吐きそうじゃ。頭も腹も痛いし、泣きたくなってきた。大泣きして良いか? 良いよな? 観客席で見てる被身子に二人して刺されてしまえ。大丈夫じゃ、殺されそうになったら止めてやるから。儂が子供を見殺しにしない主義で良かったな。そうでなければ、被身子に殺されてるぞ貴様等。ぐすっ。
「大人しくしてな! ヒーロー!!」
おぉ……。今度は鯱頭の部下? と思われる奴等が現れて……銃みたいなもので、変な物を撃ち出しておる。轟は右腕が固められてしまった。喧しい奴は避けているが、そのうち当てられてしまうじゃろう。
そんな中で、轟が炎を出した。そして喧しいのが風を出した。結果は、さっきと同じ……ではないのぅ。轟の炎が、近くで倒れてる奴に向かっていく。これ、いかんのでは? い、いかん……!
駄目元で、首から大量の血を出……したつもりなんじゃが、大して出てこない。これではあの炎を遮ることが出来ぬ。あぁ、もう大惨事じゃのこれ。一人焼け死んだかも知れぬ……。おい、それは儂の主義に反するんじゃが? 貴様等……!
「っ、何をしてんだよ!!!」
おっ、緑谷。今度は緑谷が駆け出して来て、焼かれそうになっていた奴を炎から助け出した。良くやった、褒めて遣わす。ついでに、そこの阿保共にもっと言ってやれ。何なら儂の代わりに拳骨してくれ。思いっきり頼むぞ。
「……取り敢えず、邪魔な風だ」
「っっ!!?」
また、音が発せられた。その直後、喧しい奴は空から落ちた。で、この鯱頭は片手で儂を掴んだまま轟に近付いて、轟にも音を出した。これで、二人も痺れてしまったのぅ。さっきからろくな事になっていない。緑谷が居なかったら、もっとろくでもない事になっていた。
「っ、ぐ……廻道……!」
「……」
何じゃ轟。倒れたまま儂を見詰めたって、何にもならんぞ。儂は今、動けぬ人質じゃ。さっき術式を使ってしまって、余計に苦しい。もう気絶しそうなぐらいじゃ。音も段々聞こえなくなってきた。その内、意識を失うじゃろう。儂はもう何も出来ん。無理じゃ。
……ん? 風? おい、まだ炎を使うのか貴様等。それでは駄目に決まって……あ、熱いっ!!
おい、おい何じゃこれ! 風と炎を合わせて儂と鯱頭を閉じ込めるなっ。
「廻道、わりぃ……! 動いてくれ……!」
は? いや、無理じゃ無理。動けんて。痺れてるんじゃぞ。幸い、熱くて意識はしっかりしておるがの。
……。…………。
あぁ、もうっ。まっこと仕方ない奴等じゃ。……ぶえっ。お、おいこら鯱頭。儂の頭に水を掛けるな。どこから取り出したんじゃそれ!
「風と炎の熱風牢獄か。良いアイデアだ……。が、通じなかった場合は?
撃った時には既に、次の手を講じておくべきだ」
この鯱頭、余裕綽々じゃの。残った水を頭に掛けて、悠長に構えておる。炎と風に囲まれても、こやつにとっては大したこと無いのか。やはり明日、手合わせしてくれんかのぅ。駄目か? 儂と戦わんか?
また、音が響いた。同時に、儂等を囲う炎の風が吹き飛んだ。
「で、次は?」
とんでもない悪人面をしおって。嫌いではないがの。仕方ない、やるだけやってみるとするか。どうせ、ろくな結果にはならんじゃろうけど……。
意識を、術式順転にのみ集中する。出来る限りのいつものように、術式を操れるように。
―――赤縛。
……あぁ、いかん。また意識が途切れる。ただでさえ生理で貧血なのに、そのうえ血を使ったらそうなって当たり前か。さっきも炎を止めようと、血を使ったことじゃしの……。
何とか鯱頭に赤縛を使った後。儂は再び気を失った。
そして、次に目が覚めたら寮じゃった。……試験は? おい、儂の合否はどうなったんじゃ??
然り気無く円花を配慮するギャングオルカ。あの人、あのなりであのランキング三位で子供好きって滅茶苦茶可愛い人ですよね。そもそもシャチ頭が可愛くない筈がないんですよね。でも「で、次は?」の顔は怖いと思います。なにあのガンキメ顔……怖……。そりゃヴィランっぽいヒーローランキング三位ですわ……。多分円花も将来はランクインしてると思います。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ