待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

185 / 553
新学期の朝。

 

 

 

 

 

 んんっ。……んぅ、違うぞ被身子ぉ。そう、そうじゃ……けえきはそうやって重ねると、そう……何と家になるんじゃ。良く出来たのぅ、流石儂の許嫁じゃ。これで立派な甘味建築士じゃの。ふへへ……。

 

 

 ……。…………。………………。

 

 

 あぁ……、目が覚めた。窓から朝日が差し込んで、眩しい。そうか、儂はあの後、ずっと気絶していたのか。鯱頭に赤縛を放った後から、記憶が無いのぅ。一度病院に担ぎ込まれたような気がしたが、あれは夢じゃったか? ここ、病院か? いや、違うの。見慣れた天井が目に入ったから、ここは寮か。

 ……儂、どのくらい気絶していた? とにかく、喉が渇いたし腹が空き過ぎて気持ち悪い。昨夜はどう過ごしていたのか、まるで思い出せぬ。変な夢を見た気がする。内容はまったく覚えておらぬが、とにかく変な夢を見た。……多分じゃけど。

 

 ところで、被身子は? 被身子は何処じゃ? 首が痛いのは気のせいじゃない。取り敢えず反転術式(はんてん)じゃ、反転術式(はんてん)

 

 ……うむ。問題なく回せるの。頭痛も腹痛も無い。と言うことは、生理が終わったのか。よし、今回も儂の勝ちじゃ! これに懲りて、二度と来るな!! 生理なんて大っ嫌いじゃ!!!

 

 はぁ。昨日は酷い目に遭ったのぅ。生理の時に動くのは止めておこう。緊急時なら話は別じゃけど、それ以外は被身子に世話されるだけにしておく。出来れば二度と生理なんて来ないで欲しいが、向こう数十年は付き合うことになるじゃろう。儂としてはさっさと閉経してくれて構わんのじゃけど? 子供を産むつもりなんてないし、そもそも被身子との間に子供は作れん。じゃから子供を産む機能なんて不要じゃ、不要。

 

 なんて事を考えつつ体を起こすと、部屋の中に被身子が居ないことに気付く。朝じゃからの。朝飯を作ってくれてるんじゃろう。と言うか、今は何時じゃ? ……八時半? 新学期早々に遅刻か……。このまま手早く準備したとしてそのうえ道に迷わなければ、教室に着けるのは九時半過ぎか。となると、もうのんびりしてしまうか。取り敢えず風呂に入って、朝飯を食べたい。被身子の姿が見えぬのは、もう登校してしまったからじゃろう。……ぐぬぬ、昨日の礼を言いたかった。放課後になったら、たっぷり甘やかすことするか。

 取り敢えず、動こう。まずは風呂じゃ。着替えは……風呂手拭(ばすたおる)と一緒に用意されてるの。

 布団から立ち上がると、何か変な感触がした。これはあれじゃ、渇いた血を割った時のような……。何事かと思い布団を見ると、枕に血が付いている。まったく被身子め。さては儂が寝てる間に噛み付いたな? どうせなら起きてる時にして欲しいものじゃ。仕方ない、洗濯機に入れておいてやろう。枕ごと入れて良いじゃろ。

 

 よし、着替えは持った。枕もじゃ。風呂に入るとしよう。風呂は……一階の端じゃったな。っと、着替えから何か落ちたの。

 ……手紙? 被身子の文字じゃのこれは。なになに……。

 

 

 ――― 私の愛しい円花ちゃんへ。

 

 ごめんなさい。今日は夏休み明け通例のテストがあるので、円花ちゃんをほったらかしにしちゃうのです。

 

 朝ご飯は用意してあるので、緑谷くんに温め直して貰ってください。それと、昨晩どうしても我慢出来なくてチウチウしちゃいました。トガは悪い子です。反省します。後で電話しますので、出てくださいね。あなたの愛しい被身子より

 

 追伸。書くか悩んだんですけど、仮免試験は ……不合格なのです。実技はともかく筆記が駄目だったので、三日後の再試験で良い点取れれば仮免取得になるそうです。 ―――

 

 ……。仕方ないのぅ。そういう訳なら、居ないことを許してやるとする。噛んだことについては、後でお説教じゃ。何で儂が起きてる時にしないんじゃ。そしたら昨日はもっと楽だったかもしれないのに。まったく、被身子のたわけ。阿保。血狂いっ。そして仮免試験には、やはり落ちてしまったか。筆記の出来映えは良くなかったからのぅ……。駄目じゃったか……ううむ……。

 

 ところで、何で緑谷に朝飯を温め直して貰わなければならないんじゃ? あやつ、今は教室じゃろ……。まぁ良い、とにかく動こう。この手紙は、捨て……ると被身子が機嫌を損ねるのでは? 取っておくか……。取り敢えず、机の上に置いておこう。後で使い古した筆記帳(のおと)にでも挟んでおくとする。

 

 部屋を出て、廊下を歩き階段を下る。すると、掃除機の音が聞こえてきた。誰か掃除をしているようじゃ。被身子か? いや、この時間は教室じゃ。寮には居ない。……誰じゃ? 泥棒? いや、泥棒が寮を掃除する理由は無いか。

 

 気になるから音がする方に向かうと……。何故か緑谷と舎弟が、朝から居間を掃除しておる。何しとるんじゃこやつ等。

 

「あ、廻道さんおはよう。体調はどう? 大丈夫?」

「うむ、迷惑掛けたの」

「ううん、気にしないでよ。仮免……残念だったね……」

「まぁ、落ちると思っとったよ。筆記試験で何をしたか、まったく覚えとらんからのぅ」

 

 ところで。

 

「何で掃除しとるんじゃ? 舎弟も一緒のようじゃが……」

 

 二人とも綿紗(があぜ)を顔やら腕に付けておるし。こやつ等、何をした?

 

「あ、えっと……。その……昨晩、かっちゃんと喧嘩して謹慎処分に……」

「……は?」

 

 は?

 

 ……は?

 

「いや、何しとるんじゃ貴様等」

「面目無い……。その……えっと……」

 

 ばつが悪そうな顔をした緑谷が、舎弟に視線を向ける。……そうか、舎弟から喧嘩を売ったのか。それで、緑谷が喧嘩を買ったと。何しとるんじゃこやつ等。じゃから寮を掃除しているのか。

 まっこと仕方ない奴等じゃの。二人揃って間抜けか? 間抜けなのか? よぅし、貴様等は今日からぽんこつじゃ! もう二度と儂をぽんこつ呼ばわりするなよっ。

 

「起きたのかよ。てめえ、何で仮免落ちてんだ。受けたなら受かれや」

「そう言う貴様は? 受かったんじゃろうな? まさか、儂みたいに筆記で落ちたかの……?」

「ナメんな、実技で落ちたんだよ俺は!!」

 

 えぇ……? 何で落ちてるんじゃこやつ。いや、まぁ……何となく想像は付くが。じゃってほら、こやつの態度は相変わらずじゃし。救助の方で落とされたんじゃろう。

 ……態度を正さねば拳骨と言ったんじゃけどなぁ。早速拳骨しておくか。緑谷と喧嘩までしておるし。これは捨て置けん。まったく、こやつと来たら。被身子とは別の方面で手間が掛かる。

 

「よし小僧。そこに直れ」

「ああ゛っ!?」

「拳骨すると、言ったじゃろっ」

 

 それなりに跳び上がり、脳天に拳を叩き付ける。良い音がした。そんなに強く叩いた覚えは無いが、小僧は多少ふらついた。後に、物凄い形相になって儂の胸ぐらを掴んだ。

 

「てめえ! 何すんじゃ!!」

「か、かっちゃん駄目だよ! 謹慎延びちゃう……!!」

「……ちっ! 謹慎解けたらぶっ殺すからなチビ!」

 

 ううむ。反省の色が見えん。……が、何じゃ? 緑谷に大して突っ掛からん。以前なら、話に割り込んで来た緑谷を殴るぐらいした筈じゃけど……。何じゃこやつ。昨晩、儂が気絶してる間に何が有ったんじゃ?

 

「それとチビ! デクの個性の事、俺も聞いたからよお! てめえも知ってたんだってな!?」

「……おい緑谷、話したのか?」

「その、うん……。かっちゃんが気付いて、それでオールマイトが話したんだ」

 

 ……まぁ、それならば良いか。良いのか? まぁ流石に、小僧が言い触らすような事は無いと思いたい。何だかんだで、律儀な部分がある奴じゃからの。と言うか、何じゃ? こやつ等が仲良くしているところを見ると……何だか気色悪いのぅ。二人して熱でもあるのか?

 

「こ、今度から四人の秘密になったから。だから、よろしくね廻道さん」

「まぁ、それは別に良いんじゃけど。で、小僧。何で貴様は緑谷と喧嘩したんじゃ? その辺り、詳しく話さんか」

「……話さねえ。言えっか、クソが」

「そうか。この間の件、被身子にでも話そうかのぅ」

「てめ……っ! 後で話せば良いんだろクソが!!」

 

 最初から素直にそうしろ、たわけ。まったくこやつと来たら。

 

 ……さて、と。取り敢えず疑問も晴れたし、風呂に入ろう。それから朝食を摂って……教室に向かうとするか。十時過ぎには教室に着くじゃろ。最悪、こやつ等に道案内して貰うとしよう。

 

「つーかよお、何だその枕は! 何で血塗れになっとんじゃ! 股に挟んで寝たんじゃねえだろうな!!」

「かっ、かっちゃんそれは聞かない方が……!」

「洗ってやるから寄越せチビ! 他に血塗れになってねえだろうな!?

 おいクソナード! こいつの朝飯温め殺しとけ!!」

 

 ううむ……。何だかとんでもない事を言われた気がする。股から血が出ていたのは事実じゃけども、流石に枕を挟んで寝るような真似はしとらん。今穿いてる下着も洗わなければのぅ。ついでじゃから任せるか? いや、流石にそんな真似をしたら被身子に怒られるか……。下着は洗濯機に放り込んでおくことにしよう。

 それはそれとして、おい小僧。何じゃその失礼な物言いは。よし、枕投げる。全力で投げるっ。顔面に向かって投げてからなっ!

 

 

 よっ、こいせぇっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 で。この後。儂は風呂を済ませた後にすっかりし忘れていた水分補給をして、朝食を食べながら小僧から話を聞いた。どうやら、積もり積もったものが仮免試験不合格を機に爆発してしまったらしい。更に神野での一件を、何も出来なかったと思い悩んで居たようじゃ。それでどうしても、自分のやり方が正しいのかどうか確かめたかったんじゃと。その上で、何でおおるまいとに緑谷が選ばれたのか。それも知りたかったと。

 ……何で話し合いで解決出来ないんじゃこやつ。昨晩の喧嘩は、殴り合いではなく口喧嘩程度で済んだのでは……?

 

 まぁ、今後緑谷に突っ掛かったりしなければ大目に見てやるとするか。それはそれとして貴様っ、何で被身子の豚汁に一味を掛けたんじゃ! せめて七味にせんか七味に!! お陰で豚汁の味が台無しじゃ!!









という訳で、円花は仮免不合格です。実技で落ちた訳ではないので、筆記のやり直し。お一人様で筆記再試験です。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。