待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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再試験当日。

 

 

 

 

 

 新学期、四日目。今日、緑谷の謹慎が解ける。校外活動(いんたあん)については、実はこっそり教えておいた。それが逆効果になってしまったような気がする。寮を出る時、やたらと息巻いておったからのぅ。変に空回りしなければ良いが、緑谷じゃからの。何事も無ければ良いんじゃけども……。

 儂はと言うと、おおるまいとに連れられて雄英を出た。今は車の助手席に乗って、再試験が行われる会場に向かっておる。何せ、今日は仮免を取る為の再試験日じゃ。昨日、一昨日と被身子に勉強を教えて貰ったので準備は万全。今日に向けて、昨晩は夜更かししないように気を付けた。今月の生理はもう終わっとるから、安心して試験に挑める。さっさと再試験に合格して、仮免を取得しなければ。でないと、この先の授業と言うか……校外活動に支障が出る。仮免が有るか無いかでは、やれる事に大きな差が有るからのぅ。

 それに、再試験には自力で合格したい。また不合格になってしまうと、呪術総監部に仮免を交付されてしまう。呪術師をやっていく上ではそれでも構わないし、むしろ楽じゃとは思う。が、周りが実力で仮免を取得しているのに、儂だけ公安の都合で仮免を与えられるのは何か違う。狡をしている気分になる。それが嫌じゃから、しっかり勉強し直したわけじゃ。

 

 あれだけ被身子に教えて貰ったんじゃから、何としてでも合格しなければ。決して、合格祝いに被身子がはんばぁぐを作ってくれるから、……なんて理由で頑張るわけではない。

 

 ……それにしても、試験会場が遠いのぅ。もう一時間も車が走っておる。そろそろ座り疲れて来たと言うか、座り心地が良くて眠くなってきたと言うか。いっそ、寝てしまうか? いや、ここで寝てしまったら昨夜覚えたことが頭から抜け落ちてしまいそうな気がするの。着くまでに、復習しておいた方が良いような気もする。

 

「廻道少女、インターン先は決めた?」

 

 無言で運転するのに疲れたのか、それとも話したいことの前振りか。骸骨面のおおるまいとが口を開いた。

 ……校外活動(いんたあん)先? そんなもの、何一つ決めとらん。目星も付けとらん。じゃって、英雄(ひいろお)としての活動に興味が無さ過ぎての。仮に希望があるとするなら、雄英の側に居る英雄(ひいろお)が好ましい。そもそもこの校外活動、やるかやらぬかは任意じゃ。なら、わざわざ雄英の外に出て英雄(ひいろお)活動をしたいとは思わん。轟や舎弟なんかは通常の授業を受けることになるそうじゃし、儂もそうしようかの。

 

「……いや。興味無いのぅ」

「そう言うと思った。もっと経験を積ませてからの方が良いと思うから、私はインターンについては反対だけど」

「緑谷はどうさせるんじゃ? お主の下か?」

「いや、私はインターンを受け入れられない。生徒受け入れの実績が無いからね」

「実績?」

「今回のインターン、生徒を預かる事が出来る事務所は、職場体験で一年生の受け入れが多いところに限るんだ。私は君しか受け入れてないから、条件に当て嵌まらない」

 

 ……。何じゃかよく分からぬが、どうやらこやつの事務所は、校外活動先としては選ばれなかったようじゃ。それならば、緑谷を受け入れられないのも仕方ないじゃろう。ただ、それはそれとして貴様。最近緑谷を放って置き過ぎでは無いか?

 最後にしっかり面倒を見ていたのは、あい・えきすぽじゃった気がするが。師としてそれは駄目じゃろ。緑谷じゃぞ、緑谷。もっと丁寧に教えてやらんか。あやつを鍛えることは別に儂でも出来るが、教えられるのは戦い方のみ。英雄(ひいろお)としての教えは、何一つ出来ぬ。

 呪術師として活動するのは勝手じゃけど、弟子を放置してまでやる事では無いじゃろう?

 

「そう言えば、君のインターン先としては熱烈な立候補が有ったよ。ギャングオルカって知ってるよね? 仮免試験の時に居たみたいだけど……」

「は?」

 

 何故、あの鯱頭から誘いが来とるんじゃ。儂、特に何もしてないじゃろ。真正面から殴って、後は赤縛しただけじゃ。その直後に儂は気を失ったし、試験も終了になったと後で聞いた。なのに何で誘われているのか。謎じゃ。解せぬ。

 

「元々、職場体験の時にも来てたんだよね。どう? 受けてみるかい?」

「興味無い。いんたあんは、行かなくても良いと思っとる」

 

 参加が任意であるのなら、校外活動をするつもりがない。呪術総監部から仕事を振られる事を考えれば、昼間に英雄(ひいろお)の下で働く理由も無いんじゃ。昼間は英雄(ひいろお)候補生として、夜は呪術師として。そんな二重生活を送るつもりは無いからの。せめてどちらかひとつにして欲しいのぅ。儂の体は一つしかないし、何より被身子に心配されるような真似はしたくない。

 

「当面は呪術師としての活動に専念する。ってことで良いのかな?」

「そうなるじゃろうな。一つ目の対策はまだ何も出来とらんが」

 

 明日から、轟に練習相手になって貰おう。火の対策をどうにか会得したい。どうすれば良いのかはさっぱりじゃけど。赤血操術では、火をどうこうすることは出来ぬからの。単純に相性が悪過ぎる。

 

「っと。そろそろ試験会場だ。廻道少女、準備は良いかな?」

「うむ。手早く受かってくる」

 

 あれこれ話していると、ようやく会場に辿り着いたようじゃ。さて、ここからは集中するとしよう。結果は変わらずとも再試験に落ちてしまったら、被身子に顔向け出来ぬ。何としてでも合格して、総監部に狡をされることなく仮免を取得しなければ。

 

 で、会場は何処じゃ? そこの建物に入れば良いんじゃな? ……よし。

 

「廻道少女、そっちじゃないからね?」

 

 

 ……。そういうのは、車を降りる前に言わぬかっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受かった。合格した。これで儂は仮免を取得出来た。轟や舎弟を除いたくらすめえと達と比べたら少し遅れてしまったが、とにかく仮免を得た。これで少しは、将来に向けて進むことが出来たのぅ。しばらく、勉強やら試験やらはしたくない。やたらと集中力を使ってしまったからの。精神的な疲弊が大きい。まさか筆記の再試験は儂だけじゃったとは。試験官は儂が解答欄を埋め切るまで寝ておったし。何じゃあの、目良とか言う奴。試験官としてそれで良いのか……?

 まぁとにかく、晴れて仮免に合格出来たわけじゃ。なので今は、再び車に乗って雄英に戻ってる最中での。もう昼になってしまっているから、車内ではあるが被身子に持たされた弁当を開いた。

 

 ……のぅ、被身子。白米の上に桜でんぶで文字を書くのは良いんじゃけど、合格おめでとうと書くのはどうなんじゃ? 儂が再び落ちてたら笑えない事になってたんじゃが?

 まったく。無条件で儂を信じおって。仕方のない奴じゃ。帰ったら構い倒してやろう。合格出来たのは被身子のお陰なんじゃから、そのお礼も含めて何かしてやらねば。

 

 で、おおるまいとよ。貴様よく食べるのぅ。帰り道の途中、はんばぁがあ屋でこやつは昼食を購入しとったんじゃけども……量が尋常ではない。軽く三人前ぐらいは注文していたような気がする。何でも、肉体が健康になったから食事が楽しくて仕方ないらしい。筋肉の塊じゃから基礎代謝がとんでもないのは分かるんじゃけど、それにしたって食べ過ぎなのでは? 太るぞ?

 

 ……何? 体重が戻ってちょうど良い? 個性を失くした事を機に徹底的に体を鍛え直したから、むしろ食べなきゃ体が持たない?

 

 この筋肉阿保。さては脳まで筋肉じゃな? それは知ってたつもりじゃけど、更に磨きが掛かったらしいの。

 

「廻道少女こそ、もっと食べた方が良い。しっかり食べて、しっかり体作りをしよう!」

「いや、儂少食じゃから」

 

 くらすの男子と比べたら、の話じゃけども。それに食事は量より質じゃ。前世は質より量じゃと思ってたんじゃけど、今生は食うに困らんからの。飢餓に苛まれる事も無いし、食べたいと思ったものは何でも手軽に手に入る。しかも被身子が用意してくれる食事はしっかり栄養について考えられておるから、儂が食事について考える必要は無い。それに、今以上に食べれるようになりたいとは思わんからの。今ぐらいがちょうど良い。三食食べれて、おやつも楽しめるぐらいで儂は十分。まぁ、被身子や母の手料理以外を食べる気にならぬのも事実なんじゃけど。

 

「もう少し筋肉を付けた方が色々役立つと思うけど……筋トレする?」

「しない。筋力より体力の方が欲しい」

「じゃあ、マラソンとかどうかな?」

「それならお主と手合わせしてる方がよっぽど体力作りになると思うが」

「んん〜〜。実戦がトレーニング派か……」

 

 いや、どちらかと言えば実戦が娯楽派じゃけど。戦うのは楽しい。猛者と呪い合うのは嬉しくて仕方ない。あれに勝る愉悦など、殆ど無いからの。強いて言えば、被身子とお互いに求め合うと戦闘に似た愉悦を感じることが出来るが……まったく同じではない。戦闘は戦闘、情事は情事じゃ。

 

「と言うか貴様。緑谷の面倒をちゃんと見ろ」

「それについては……廻道少女に任せっきりで申し訳ない。今は私も忙しくてね……」

「儂じゃって忙しいんじゃけど?」

「め、面目無い。今日は少しなら時間を作れるから、久しぶりにちゃんと指導しようかな」

「そうしろ。何でもかんでも儂に任せるな」

 

 儂じゃって、これから忙しくなるじゃろう。昼間は学校、夜は呪術師。被身子の相手を疎かにするつもりもないし、緑谷への指導も考えなければならん。いずれ緑谷に構ってられなくなる時間が来てもおかしくないと言うのに。

 ……よし、ごちそうさま。今日のお弁当も美味かった。やはり被身子が作るお弁当は素晴らしい。これ以上のお弁当など、無いような気がするの。儂だけが味わえるものと考えると、少し優越感がある。

 

「っと、廻道少女。少し寄り道しても良いかな?」

「何故?」

「だってそこに(ヴィラン)が……」

 

 おおるまいとが指差した方向を見ると、車道の真ん中で悪党(う゛ぃらん)達が暴れておる。何か、やたらと図体が大きい奴じゃ。

 

「……はぁ。仕方ないの、儂も手伝おう」

「では、華々しい仮免デビューと行こうか!」

 

 こうして。儂は今日一日おおるまいとに振り回されることになる。呪力だけでとても以前のようには動けぬ筈なのに、それでもこやつは目に付いた悪党を片っ端から片付けてしまう。お陰で、儂が寮に帰れたのは夕食の時間になってからじゃ。いい加減にしてくれんかのぅ、この筋肉阿保は……。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。儂の仮免取得について被身子は盛大に祝ってくれた。まさか食後にけえきが出てくるとはの。砂藤と共同で作ったそれは結構大きくて、まさかくらすめえと達全員とけえきを食べることになるとは。尚、轟と舎弟はこれから頑張ろうという事でやたらと励まされていた。

 こやつ等が仮免を取得出来るのは、三ヶ月後。それまで、差が付いてしまうのぅ。どれ、少し二人に教えてやるとするか。儂も轟とは手合わせしたいからの。しばらくは、儂の火対策に付き合って貰おうと思う。

 ……舎弟については、まだ緑谷に謝っとらんからの。鍛えてやるのは後じゃ、後。







※現在のオールマイトの体重は肉体が新鮮故に274キロです。うーん、やはりゴリラ廻戦。

三人称による補完は要りますか?

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