待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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筋肉の躍動。

 

 

 

 

 

『今日もオールマイトが事件解決!? 弱体化されたと噂されるNo.1ヒーロー、後継者を連れて(ヴィラン)確保!!』

 

 居間で被身子と砂藤共作、渾身のちょこれえとけえきをそふぁの上で食べていると受映機(てれび)が変な特集を流しておる。画面の中では、おおるまいとが巨体の悪党に車を投げ付けられとるんじゃけど、危うげ無く受け止めている。その光景は直に見たんじゃけど、流石に度肝を抜かれた。儂でもそれは出来ぬからの。車を吹き飛ばすことは可能じゃけど、真正面から投げられた車を受け止めて、更に投げ返すなんて真似は無理じゃ。これだから筋肉阿保は。

 あと、何で儂も受映機(てれび)に映っているんじゃ。誰じゃ動画を撮影して、放送局に提供した輩は。お陰で、またくだらん噂が流れてしまうではないか。緑谷に申し訳ない。それにこの映像を被身子に見られたら心配させてしまう気がするの。

 ……うむ。ちゃんねるを変えよう。そうしよう。そう思って、りもこんに手を伸ばすと……凄まじい勢いで横から掠め取られた。

 

「あーー! 廻道がテレビ映ってる!!」

「マジ!? マジじゃん!!」

「ちょ、ボリューム上げてボリューム!」

 

 き、貴様等……! 被身子には知られたくないと言うのに。そんな真似をしたら、今洗い物をしとる被身子の耳に届いてしまうじゃろっ。

 

「そんなに騒いで、どうかしたんですか?」

 

 あ……。被身子が来てしまった。まだ前掛(えぷろん)をしているが、濡れた手を手巾(はんかち)で拭いているから洗い物は終わったんじゃろう。急に騒々しくなった事を不思議に思ってるようじゃけど、受映機(てれび)を見て納得したようじゃ。

 

「うっわ、何をどうしたら車を投げ返せるわけ……?」

「流石オールマイトだよねぇ。弱体化なんて本当にしてるの?」

「あ、廻道ちゃんが(ヴィラン)赤縛ってる!」

 

 映像を逐一実況しないで欲しいのぅ。何だかむず痒くなってくる。あの筋肉阿保の事は幾らでも言ってくれて構わんが、儂について語るのは止めてくれ。これはあれじゃ、運動会の録画を後になって見せられた時と同じやつじゃ。変に気恥ずかしい。

 英雄(ひいろお)が人気商売と言うのは分かるんじゃけども、将来もこうして世間に姿を晒す羽目になると考えると……。ううむ、やはり英雄(ひいろお)になどなるべきで無いのぅ。呪術師としての活動に支障が出そうじゃし。人前で派手な真似をするのは、控えるとしよう。

 

『神野の悪夢から一ヶ月。オールマイトの弱体化が心配されている現在ですが、このように(ヴィラン)を捕らえる事が出来るなら心配ないかと思われます。流石No.1ヒーロー、平和の象徴!』

『いや、しかしですね。やはり後継者と噂されるヒーロー候補生の『ブラッディ』を連れているのは、オールマイト本人としても引退を考えているからなのでは? 次に神野のような惨劇が起きれば、彼も無事とは言えないかも知れませんよ?』

 

 ……おい。おい。誰じゃか知らぬが、ぶらっでぃと呼ぶのは止さぬか。儂の英雄名(こおどねえむ)は、頼皆なんじゃけど? 何で雄英の外に居る輩は、どいつもこいつもそっちで呼ぶのか。そもそもおおるまいとが外でぶらっでぃなどと呼ばなければ、こんな事にはなってないんじゃけど?

 

 あやつめ。許さん。今度、あの筋肉阿保の口から訂正させるか。そうすれば、世間は儂を頼皆と認識するじゃろう。……するよな?

 

「円花ちゃんのヒーロー名って、頼皆ですよね? すっかり別の名前で定着しちゃってるのです」

「うむ。いい加減にしてくれんかのぅ……」

「では廻道くん! テレビ局に抗議しよう! 正しい名を広めて貰うべきだ!」

「頼れるみんなのヒーローで、頼皆ですものね」

「でもさ、ブラッディも良くない? 個性と合ってると思うし」

 

 騒がしいの、くらす委員共。静かに受映機(てれび)を見れぬのか。まぁ、儂の気持ちを汲もうとしてくれるのはありがたい。耳郎の言い分も、理解が及ばぬわけでもない。言いたい事は分かる。が、儂は頼皆と名乗りたいんじゃけどなぁ。呼び名など変でなければ拘りは無いんじゃけども。名は体を表すと言うし、廻道円花よりも長い付き合いの名じゃから頼皆の方が好ましい。

 別に、廻道円花が気に入らんとは思ってないが。この名はこの名で、大事なものじゃ。今の儂は廻道円花なんじゃから、この名のまま過ごしたい。将来的には渡我でも構わんのじゃけど。

 

「被身子はどっちが良いと思う?」

「え? ……うーん……。どっちでも良いと思います。どんな風に名乗ってても、円花ちゃんは円花ちゃんですし」

「そうか。ならやはり、頼皆じゃの」

 

 今の儂は廻道円花じゃけど、過去の儂は加茂頼皆じゃった。それを忘れないで居る為にも、やはり英雄名(こおどねえむ)は頼皆の方が好ましい。まぁ、頼れる皆の英雄(ひいろお)になんてなるつもりは無いんじゃけど。そもそもじゃな、頼皆はそういう意味では無いんじゃよ。誰も気付かぬようじゃけど。

 

「廻道。今日の(ヴィラン)確保の件、良ければ詳しく教えてくれないか?」

「は? 何じゃ急に」

「あ、廻道。それ俺達も聞きたい! オールマイトの活動を間近で見てたんだよな? 廻道が何考えて動いてたとかさ、色々参考にさせてくれねーか?」

 

 ……えぇ? やじゃあ……。何で美味いけえきを食べているのに、あの筋肉阿保の活躍を思い出さなければならぬのか。そもそも、あの時の儂は何も考えてなかったんじゃけど? あんな筋肉阿保が、呪力で光りながら悪党を相手取る姿を見て、何か考える方が難しいと思わぬのか?

 個性を失ってるのに、何で呪力だけであれだけの動きをするんじゃあやつは。あそこまで肉体を鍛えた呪術師なんて、儂は見たこと無いんじゃけど。だいたい、筋肉と呪力だけで物事を解決する姿の何が参考になると言うのか。何の参考にもならんじゃろっ。

 

「頼むよ廻道! 俺達、もっともっと前に進みてーからさ!」

「お、たまには良いこと言うじゃん上鳴」

「たまにって何!? 酷くね!?」

 

 ……はぁ。仕方ない。これは話してやらなければ、いつまでも部屋に戻れぬじゃろう。どいつもこいつも、儂を期待の眼差しで見詰めおって。仕方ないから、仮免を取った後の儂が何を見て来たのか教えてやろう。何の参考にならなくても、儂は知らんからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 では、少し思い出すとするかの。今日の昼頃、被身子のお弁当を食べ終えた辺りで往来の真ん中で悪党が姿を見せたわけじゃ。そしたら儂の横……運転席に居たオールマイトは手に持つはんばぁがあを丸飲みして、どりんく片手に外に出たわけじゃ。仕方ないから儂も外に出ると、華々しい何とかなどと言っていた。なんじゃったっけ……? まぁ、良い。

 助手席から外に出ると、何台も並んだ車の先で図体の大きい悪党が道を塞いでたわけじゃ。どんな見た目って、あの鯱頭みたいな。個性は鮫だったらしいの。それで、既に別の英雄(ひいろお)が対応しとったんじゃけど、相手が巨体故に上手く行っていないようじゃった。実際、よく暴れておったわ。これは後で聞いた話なんじゃけど、個性を増強させる薬物を使っていたらしい。少々錯乱気味に見えたが、それは個性が増強された結果本能剥き出しじゃったとかどうとか。

 

 で、呪力を纏ったおおるまいとが悪党に向かって跳んで行ったわけじゃ。儂は前に並ぶ車を足場にして、付いて行ったと。そしたらおおるまいとの登場に悪党は驚き、現場の英雄(ひいろお)は喜んでいた。その後、儂が追い付く頃には既に一発殴っておったの。ただ、相手はおおるまいとより一回りも二回りも巨体じゃったから効いてはいたものの気絶する程では無かった。離れたところから血でも飛ばそうかと思ったんじゃけど、……少し見ておきたくてのぅ。ひとまず何もしないで見物しておった。

 悪党は激昂し、周囲など気にせず滅茶苦茶に暴れおったわ。相手がおおるまいとでなければ、もっと被害を出していたじゃろう。で、途中で近くの車を投げ飛ばしたと。それをおおるまいとは受け止めて、投げ返した。正直、度肝を抜かれたの。今でもあれはどうかと思うんじゃ。車の中には誰も居なかったのは不幸中の幸いとでも言うべきか? 居たら、大惨事じゃったかもしれん。

 まったく、力押しも大概にして欲しいものじゃ。何なんじゃあの筋肉阿呆。

 

 で、鮫頭は車を投げ付けられて……これまた倒れはしなかったものの大きく姿勢を崩した。そこを見逃さなかったおおるまいとは直ぐに距離を詰め、何度も殴って最後は殴り飛ばした。何故か儂の方に。避けても良かったんじゃけど、その時の儂は車の上じゃ。避けたら車が潰されるし、そもそも車の中には人がおった。じゃから、まず飛んでくる悪党を赤縛して、その後おおるまいとの方向に向かって全力で殴った。あまり飛ばし過ぎるような真似は避けようと思って、殴り飛ばすと言うよりは叩き伏せた。結果上手く行って、悪党は地面を二転三転。それでもまだ辛うじて意識を保っていた辺り、中々頑丈な奴じゃった。まぁ、切島には劣ってそうじゃったけども。

 

 おおるまいとに殴り飛ばされ、ついでに儂に縛られ殴られた悪党はもう動けそうに無かった。が、それでもまだ暴れ足りないのか足掻いておったわ。途中、洋袴(ずぼん)の後ろ腰に差し込んであった拳銃を取り出そうとしていたから、頭を踏んで今度こそ気絶させておいた。で、拳銃は念の為に没収して、後で取り返されるなんて事態が起きても良いように儂の血を隙間から浸透させて固めておいた。

 

 この後は……鮫頭を警察に引き渡して、儂等は一旦車に戻った。一時間もしない内に再び帰路に着いたんじゃけど、帰り道の途中で何度も悪党が現れての……。それだけならまだしも、事故が起きてもおおるまいとは動いてしまうから、まったく帰れなかった。大抵の事はおおるまいとが解決してしまうんじゃけど、その中でもうひとつ印象に残ってることがある。

 

 それはの……。坂道で止まれなくなってしまった大型貨物車(とらっく)を、おおるまいとが真正面から受け止めたことじゃな。車を投げるだけではなく、結構な速度で止まれなくなっていた貨物車(とらっく)を危うげもなく止めおって。どうなっとるんじゃあやつの筋肉は。ここまで来ると、もう筋肉ではない別の何かな気がしてならん。

 

 とまぁ、そんなこんなで色々と有ったわけじゃ。色々と。もう儂、あやつと出掛けたくないんじゃけど。二度と儂を連れて英雄(ひいろお)活動などしないで欲しい。寮に戻って来れたのは、夕方になってからじゃぞ? 何で一時間で済む帰り道に、四時間以上も時間を取られなければならぬのか。お陰でおやつを食べ損ねたし、最悪じゃもう。まぁ、そちらについては食後のけえきが美味かったから許してやらんでもないがの。被身子と砂藤に感謝して欲しいのぅ。まったくあの筋肉阿保は……!

 

 

 

「……な? 何の参考にもならんじゃろ?」

「殆ど筋肉だけで解決してる……」

「もしかしてヒーローって、オールマイト並みの筋肉必須か……?」

「エンデヴァーとかもムキムキだしな……。みんな! 筋トレしようぜ!!?」

 

 おおるまいとよ。お主のやり方は、どうやら何の学びにもならなかったらしいぞ? 筋肉と呪力で何でもかんでも解決しようとするのは止めておけ。教師としては駄目じゃと思う。

 

 さて。取り敢えず今日有ったことを話したから、儂は部屋に戻るとするかのぅ。今日はもう疲れたんじゃ。こんな時は、被身子と二人でゆっくりするに限る。そう思ってそふぁから立ち上がると、語ってる最中に儂の隣に腰掛けていた被身子も立ち上がった。当然と言わんばかりに手を握られたので、握り返しておく。

 

 ……はぁ。今日は疲れてしまった。再試験が終わってからの帰り道を思い出すことになったから、余計に疲弊してしまった気がするの。よし被身子、部屋で甘やかしてくれても良いんじゃぞ? 抱擁(はぐ)でも接吻(きす)でも、何しても良い。じゃからほら、甘えさせてくれ。もちろん、儂もお主を甘やかすから。

 

 じゃから、ほらっ! 早く部屋に向かうんじゃ!

 

 

 

 

 

 








まぁオールマイトは真希さんとか虎杖以上のゴリラだと思ってください。そのくらいのつもりで書いてます。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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