待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「穿血」
鯱頭に、改めて実力を見せろと言われた。こやつは、恐らくそれなりの猛者の筈じゃ。じゃから、本気で穿血を飛ばす。まずは小手調べじゃ。穿血にどう対応するのか見せて貰おう!
穿血に対応出来るのなら貴様は猛者じゃ! そうでないなら、ただの雑魚! さぁ、貴様はいったいどっちじゃ!? まさか舎弟に出来ることが、
音速で飛ぶ血液は、瞬く間に鯱頭へと到達する。が、鯱頭はそれを両腕を交差させることで防いだ。防御したことは褒めてやる。が、それでは穿血を防ぎ切れぬ。腕など、盾にもならん。
「ぐっ!」
……! おぉ……! こやつ、腕に着いていた籠手のような物で穿血を防ぎつつ、しゃがむことで血の軌道から体を逃した。最後に、残した腕を引っ込めてどうにか穿血を避けた。悪くない、良くもないがな!
穿血は、一度防いだり避けた程度で凌げる攻撃ではない。直ぐに別の攻撃に派生できるからの。今回は、血を放出したまま腕を真下に振るうとする。結果、穿血はしなりつつ軌道を変えて再び鯱頭頭へ。が、これもその場から跳び退く事で回避。それを追うようにもう一度腕を振って軌道を変えたが、その頃にはもう穿血に威力も速度も無い。結果、儂の血は拳で殴り払われた。
ひひっ。良いのぅ! 流石は、腕の立つ
「凄まじい攻撃だ。初弾からの追尾、最初だけの必殺技では―――」
何を喋っているかは知らぬが、穿血は小手調べじゃ。赫鱗躍動と呪力強化を重ね合わせ、一足で鯱頭の懐に跳び込む。前回とは比べ物にならんぞ、せいぜい耐えて見せろ!!
「どっ、こいしょおっ!」
全力で、速度と体重を乗せて鯱頭の腹に拳を叩き込む。が、寸でのところで反応して見せたこやつは腹と拳の間に左腕を差し込み、またも儂の一撃を防ぐ。とは言え想定外じゃったようで、悪党面の鯱頭は三歩ほど後ろに体が押し込まれた。そして今度は、左腕に着いていた籠手のような物が砕け散った。
何とも柔い鎧じゃ、話にならん! 儂の拳程度に耐えられぬ籠手が、いったい何の役に立つんじゃ!
一度潰した距離を、再び離すつもりはない。もう一度鯱頭に踏み込んだ、その時。
「ちっ」
嫌な予感がしたから、全力で後ろに跳ぶ。その直後に聞こえるのは、仮免試験の時にも聞こえた体が痺れる音じゃ。あの時は音を受けて全身痺れてしまったが、今回は避けることにする。厄介じゃの、あの音。見えぬ上に速い、恐らく防ぐことも出来ぬ。が、ある程度の距離を取ればうるさいだけで何の影響も無い。どうやら予兆も有るようで、しっかり鯱頭の動きを見ていれば回避出来る。仮に受けてしまっても、
問題があるとするなら、それは……。
「殴り辛いってことかのぅ……」
至近距離に居れば、音で麻痺させられる。殴り合いの中に音攻撃を織り込まれたら、少々面倒じゃ。本音を言えば何度でも殴り飛ばしたいんじゃけど、そうも言ってられんか。なら、距離を離して戦うとしよう。苅祓と赤縛を主に組み立てても良いが、不思議な事に音は炎を吹き飛ばせる。であれば、血を吹き飛ばされてもおかしくない。
あやつのあの音。連続して出せるのか? それとも、一度使えば溜めが要るのか?
……どちらでも良い。どうせこれから、探っていくんじゃからな!
首や手首から、血を飛ばす。今回は苅祓や赤縛ではなく、外に出した血液を捻りながら飛ばしていく。釘のような細さになった血液……血刃ならぬ血槍とでも言うべきか? 或いは血釘? まぁどうだって良い。いちいち名前など付けるつもりは無い。そういうの、儂は何も思い浮かばぬからの。
とにかく、じゃ。細く鋭い血液を幾つも飛ばす。石ぐらいには簡単に突き刺さるような鋭さじゃ。場合によっては鉄に風穴を空けれるかもしれん。そんな儂の血を、鯱頭はその場から横に転がることで避けた。さっきから、動きそのものは悪くない。個性も弱くない。むしろ強い部類じゃろう。
けひっ。あぁ、楽しいのぅ……! 猛者とこうして向き合えることが、喜ばしくて仕方ない!
もっとじゃ、もっと楽しみたい! 今日一日こうしていても、儂は構わんっ!
「ひひっ。そんなものか? 貴様、そんなものか?」
未だ儂は、血を飛ばし続けている。足をその場に固定して、鯱頭の動きを目で追いながら。向こうは向こうで、儂の様子を窺っているようじゃ。血の弾幕の中をどう切り抜けようと考えているのか、或いは血液切れを待っているのか。確かにこの調子で血を次々と飛ばしていれば、いずれ血液を補充しなければならない。その瞬間を狙っていると言うのなら、狙わせてやろう。対外操作を続けた事で失った血液など、今の儂は
とは言え、悠長に血液を減らすつもりもない。じゃから、ここからは飛ばし方を変えるとするか。
再び両手を叩き合わせ、穿血の準備を進めていく。この構えを見た鯱頭は、飛んでくる血を意にも留めずに真っ直ぐ儂へと向かって来た。あの音、どの程度の距離で体が麻痺させられるのか。それは分からぬ。分からぬから、赫鱗躍動で視力を引き上げ、わずかな動きも見逃さぬように注意する。
狙い目は、あやつが音を使おうとするその瞬間。の、直前。音が発せられてからでは遅い。それでは相討ちになってしまうからの。じゃから音を出そうとする前に、穿血で撃ち抜く。
「こうも自在に血を操るか! 糞にしては、個性の扱いは大したものだ!」
「貴様もよく避ける。まだまだ避けてくれても儂は構わんぞ?」
飛ばし続けている血は、そのどれもが鯱頭に避けられてしまっている。移動先を狙っても、直前で進行方向を変えられる。時には拳で打ち払われ、たまに音が血を弾く。……が、儂からすれば全て悪手じゃ。儂に近づきたければ、血の一滴すらも綺麗に避けねばならん。決して、儂の血液で周囲や自身も汚してはならぬ。
もうそこら中に、儂の血が撒かれている。鯱頭の服も、大分血に染まってきた。もう良いじゃろう。これ以上血を飛ばし続けても、これから行う事に大した変化は無い。
「ちょっ、待ったシャチョー! 拘束プロテクター!!」
「知ってる! 構うな!!」
「構うなって、子供に本気出しちゃ駄目でしょ!!」
拘束……何じゃ? どうでも良い。ただ、部下の言葉に気を取られるとは随分と余裕じゃの。儂を前に、儂以外に気取られるとは。許さん。貴様、儂と相対するなら儂にだけ集中せんかっ!
「穿血」
を、放つと同時。鯱頭の衣服に付いた血を固め、動きを阻害する。更に地面を引っ張り上げて、足元を不安定に。これで姿勢を崩しただけではなく、身動きもろくに取れなくなった。放った穿血は、もう鯱頭の眼前に迫り……。
「ぐっ、ぉおっ!?」
……! 避けた!! こやつ避けおった!! ろくに動けぬ状況で、どうにか頭を下げて穿血を避けおった!! やるのぅ!! 仕留めたつもりじゃったが、まさかまだ楽しませてくれるのかこやつは!!
「けひっ。ひひっ」
更に楽しくなってきた……! やはり良いのぅ、猛者とぶつかり合うことは! 良いぞ貴様っ! こうなったら、とことんやり合おう!!
今度は、貴様の間合いで相手にしてやる! 次は貴様が魅せてみろ!!
「待て廻道! もう終わりだ!!」
知らん! まだ終わっとらん!! 終わらせたくもない!! 黙ってろ相澤!!!
外野の言葉など放っておいて、次は鯱頭の懐に踏み込む。次の瞬間には音が来てもおかしくない。から、いつ体が痺れても良いように反転術式を回し始める。それと並行して、呪力強化も行う! それから、思いっきり拳を……!
「させるか!!」
うぐっ。いかん、音がして体が痺れた。が、関係無いのぅ!
「よっ、こいせえっ!!」
即座に麻痺を取り除き、再び鯱頭を殴る! 今度は腹ではなく顔面に狙いを定める。その悪党面を一発殴らせろ!!
が、こやつ……! 儂の拳に合わせて額をぶつけて来おった! お陰で拳が痛いっ! 止まるつもりは無いがの!!
「っっ、今度は……こちらに付き合って貰おうか!!」
また、体が麻痺した。と思った瞬間、鯱頭は儂を抱き抱え、跳んだ。どうやら近場に有る湖に儂ごと跳び込もうとしているようじゃな。良いじゃろう、水の中でも続行じゃ!
次の瞬間、儂と鯱頭は水中に沈んだ。と、思ったら。儂の体だけ、物凄い勢いで水から弾き出された。いや、これは……引き上げられたと言った方が正しいか。気が付けば、体に捕縛布が巻き付いておる。いかん、鯱頭だけに集中し過ぎたか。相澤に気を払うのを忘れていた。ふ、不覚……!
「そこまでだ。ギャングオルカさんも、これで良いでしょう?」
「おい、邪魔するな相澤っ。まだまだこれからなんじゃけど!?」
「駄目だ。まったくお前は、何で戦闘になるとそうなんだ」
「楽しいからに決まっとるじゃろっ。おいこら、これを解け! 引き千切るぞ貴様っ!!」
儂の楽しみを邪魔しおってっ。許さん、まっこと許さん! 今日と言う今日は、儂を怒らせたらどうなるのか思い知らせてくれる!
二度と! 儂の! 邪魔が! 出来ないように!!
「……もう十分実力は分かった。ここまでにしよう」
……は? おい、おいこら鯱頭! 何を勝手に満足してるんじゃ貴様! 水面に顔だけ出してないで、さっさと陸に上がって来んか! 続きじゃ続き! 儂はまだ満足してないんじゃけど!? 貴様っ、ここまで楽しませておいてお預けなんて無粋な真似をするな!!
まだじゃ、まだ足りん! こんな程度で儂を満足させられると思うなよっ!?
「……はぁ。こりゃ、渡我が要るな。後で校長に相談するか……」
今、被身子は関係無いじゃろっ。何でそこで被身子が出てくるんじゃっ! 言っておくが、被身子は儂の味方じゃからな!? だいたいっ、被身子を連れて来た程度で儂が引き下がると思うなよ!!
ほら! 続きじゃ続き! 貴様、まだまだやれるじゃろっ!? ほら! 続けるったら続けるんじゃ鯱頭!!
もっと! 儂と! 楽しもう!!
全身麻痺? 全身新鮮したら良いんじゃ。by円花
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