待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
鯱頭からの呼び出しは、無視せざるを得なかった。じゃってほら、被身子が拗ねてたからの。儂としては、講師よりも被身子の方が優先順位が高い。なので昼休み明け、早速相澤先生に怒られた。貴重な時間を使って講義してくれるお方を無下にするなと、至極真っ当なお叱りじゃった。面目ない。儂が悪いのは分かっておるんじゃけど、それでも優先順位は変えられん。儂は基本的に、被身子第一じゃ。
そんなこんなで。午後も鯱頭による特別講習を受けるんじゃけども、舎弟や轟は救助訓練の続行。そんな二人を横目に、儂は鯱頭に手招かれた。
「貴様、確かヒーロー名は頼皆だったな?」
「そうじゃけど。ぶらっでぃとか呼ぶのは止めてくれ」
「世間に定着してしまった呼び名を払拭するのは難しい。改名したらどうだ?」
「やじゃ。何でどいつもこいつも、儂に変な呼び名を付けたがるんじゃ。解せぬ」
どうも儂は、前世から変な呼び名を付けられがちじゃ。加茂家の鬼だの、赤鬼だの、勝手に名付けられたものじゃ。徘徊呆け老人と呼ばれたこともあったの。儂は呆けとらんかったのに。そし今生では修羅鬼やらぶらっでぃやら、解せぬ呼ばれ方をする輩が多い。そろそろいい加減にして欲しい。儂は廻道円花で、頼皆なんじゃけど? この二つ以外の呼び名など要らん。要らんったら要らん。まったく、どいつもこいつも……!
「学生時代に付いた呼び名はプロになっても消えないものだ。諦めた方が早いぞ」
「……そんな事より、何の用じゃ?」
「貴様はまだまだ糞でしかないが、将来を見込んでの勧誘だ。プロになったら、変な苦労をするのが目に見えてるからな」
「は?」
勧誘? いや、何言っとるんじゃこの鯱頭は。儂を勧誘したところで、何にもならんぞ。するだけ無駄じゃ。将来は呪術師一本でやってくつもりじゃし、
だいたい、人助けに興味が無い。目の前で子供が危険に巻き込まれるようならそれは助けるが、大人や老人が危機に瀕してても助けたいとは思わん。大人なんじゃから、自分の身は自分で守って欲しい。子供以外を助ける趣味は無いんじゃよ。
それと、誰が変な苦労をするって?
「雄英体育祭や、今日の手合わせで分かった。貴様は間違いなく、
「は?」
何でそんなものに儂の名が載ると思っとるんじゃこやつ。失礼な奴じゃの。儂のどこが悪党っぽいんじゃ、たわけ。眼が腐ってるのか? さては腐ってるな? 早く目薬を差すか、眼科に
「自覚が無いのか?」
「何の?」
「戦闘中、ヒーロー候補生とは思えん笑みをしていたが? あれでは
「貴様に言われたくない」
何じゃこいつ。やっぱり失礼な奴じゃ。人の笑顔に文句を付けおって。
……まぁ、いざ戦うとなるとつい笑ってしまうんじゃけども。じゃって、嬉しいし楽しいんじゃもん。笑顔になっても仕方ない。誰だって嬉しかったり楽しかったりしたら、笑顔になってしまうものじゃろ?
「笑顔の練習でもしたらどうだ? 少しはマシになる」
「悪党面に言われても、説得力が無いのぅ。貴様こそ笑ったらどうじゃ?」
「……」
鯱頭が、笑った。……なるほど、こやつは人前で笑わん方が良いの。被身子の笑顔に勝るとも劣らぬ。儂は別に嫌いではないし、むしろ好ましいぐらいじゃけども、流石にこやつの笑顔は人を選び過ぎる。
とは言え、 そんな笑顔でも
「……まぁ、笑顔とは本来攻撃的なものだ。その点では俺も貴様も正しい笑顔をしている。ただ、変えれるのなら変えておけ。色々苦労する羽目になる」
「例えば?」
「周囲に怖がられる。特に子供にな」
「……」
ううむ……。そう言われると気を付けたくなってくるのぅ。儂、普段からこの鯱頭と遜色ない笑みをしているのか? いや、そんな筈はない。被身子は儂の笑顔をかぁいいと言うんじゃから、間違いない。なら、戦闘中の笑顔もその筈じゃ。笑顔の練習など必要無い。無いったら無い。こやつ、いい加減な事を口走ってないか? 失礼な奴めっ。
「それと、一つ聞いておくが」
「何じゃ?」
「貴様、
「やる気が無いなら仮免など取らんが?」
何で
あの時は端的に私利私欲と答えたが、今でも答えは同じじゃ。儂は呪術師として活動したいから、
これまでもこれからも、
「……貴様の原点は?」
「原点?」
「ヒーローとしての原点。これを持ってるか持っていないかで、大きな差が付く」
「そんなものは無い。そもそも、ひいろおを目指しておらんからの」
「なのにヒーロー免許を?」
「別に良いじゃろ、私利私欲で免許を取っても」
「理由なんてものは人それぞれだが……惜しいな」
鯱頭に惜しまれてもなぁ。儂に変な期待をするのは止めて欲しい。
「原点さえあれば良きヒーローになれると思うんだが……。戦闘力の高さ、判断力も備わっているし、指揮も取れる。仮免試験では、体調不良ながらにそれなりの働きをしていたしな。そう考えると貴様は本当に良きヒーローに……」
惜しんだ次は、褒め立てるのか。いや、鯱頭に褒められてもなぁ。別に悪い気はしないが、嬉しくもない。そもそもこやつ、何でかは知らんが儂に執着しておるからの。職場体験の時も今回の
「お主、そうやって褒めていた方が人気が出るのではないか?」
悪党面をしている鯱頭じゃけど、柔らかな態度で人と接すれば変な
「あっ。いや、今のは忘れろっ。貴様など、まだまだ糞だ! 原点を持たぬヒーローなど話にならん!!」
「あ、実は子供好きで無理してるんですよね。シャチョー、実はめっちゃお嬢ちゃんのこと気に掛けてるから分かってあげて」
「何を言ってるんだ貴様!! 俺が子供好きだと!!? 特別講師として気に掛けてるだけだ!!」
……こやつ、さてはぽんこつか? 実はぽんこつなのか? この図体で、この悪党面で? 第一、そんなに慌てて
そうかそうか、この鯱頭はぽんこつなのか。仕方ない奴じゃの。ふふん、このぽんこつめ。このぽんこつめっ! 仕方ないから儂が意図を汲んでやろう。ふふん。
しかしまぁ、こやつは子供好きなのか。奇遇じゃの、儂も子供は好きじゃ。その辺り、機会があれば少しぐらい語り合っても良い。
「さぁ! 救助訓練に戻るぞっ、いい加減休憩は終わりだ!! 厳しく行くから、覚悟しておけよ貴様ァ!!」
ううむ……、既視感が酷い。こんな物言いをするような奴が身近に居たような、居なかったような。誰じゃったっけ? まぁ良いか、そんな事は。
取り敢えず、救助訓練に戻るとしよう。轟は順調に学んでいるようじゃし、後で意見交換でもしようかの。舎弟は……駄目そうじゃ。やはり救助には向いていないようじゃの。この調子が続くなら、こやつは講習を受け続けても仮免が取れないのでは?
……、仕方ない。多少、救助について教えてやるとするか。まずはそうじゃなぁ、心肺蘇生法なんかどうじゃ? 手順さえしっかり覚えていれば、小さな子供だって出来る。いや待て、胸骨圧迫はうっかり胸を爆破して止めを刺す可能性があるの。となると、人工呼吸から教えるとするか。
で。この後。儂等三人は、夕方が過ぎそうになるまで鯱頭とその
ギャングオルカをポンコツ認定して得意気になる円花の図。そしてギャングオルカに既視感を感じた理由に気付かないポンコツ円花の図。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ