待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
鯱頭に厳しく揉まれた後、いつもと比べたらかなり人が少ない食堂で夕飯を食べていると、呪術総監部……つまり七山から電話が有った。ので、手早く夕飯を胃袋に詰め込んで席を立った。これから呪術師として活動することになるわけで、睡眠時間を考えたらのんびりしては居られないからの。もっと味わって食べたかったんじゃけど、こればっかりは仕方ない。今回は諦めて、明日はもう少し早い時間に夕飯を作って貰おうかの。被身子に負担を掛けてしまうのは忍びないんじゃけど、寮に居る以上は被身子の手料理しか食べたくないんじゃ。らんちらっしゅの飯は、微妙じゃからのぅ。決して不味くは無いんじゃけど、儂の舌には合わんのじゃ。
まぁ、それはさておき。食堂を出る前に被身子に
今回、儂が頼まれた仕事はふたつ。ひとつは、雄英内部の再調査。呪霊が再び産まれているようなら、それを祓う。これは個人的にやろうと思っていた事じゃから、丁度良い。もうひとつは、今後に向けて呪霊に対抗出来る戦力を用意すること。つまり……教師陣に呪霊の祓い方を教えると言うことじゃ。前者はともかく、後者が面倒じゃ。そもそも、今になって儂が教える必要など無いと思う。何故なら教師達には
そんな訳で、現在儂は相ざ、……いれいざあとぷれぜんと・まいく、みっどないとの三人を連れて雄英敷地内を歩いてる。夜とは言え、まだまだ夏じゃ。湿気と熱気が鬱陶しくて嫌になる。歩き始めて十分も経っていないんじゃけど、既に冷房が恋しい。
「て言うかよDDG! 雄英の中に呪霊なんて居ねえんじゃねえか?」
でぃ、でぃ、じぃ……? 何じゃそれ。おい、ぷれぜんと・まいく。貴様、また変な呼び名を儂に付けたのか。いい加減にしろ。名字か名前で呼べ。まったく。
「ちょっとマイク。それを確認する為に見回ってるんでしょうが」
「いや、そりゃ分かってるけどよ。けどここ数ヵ月、呪霊なんて見たことないZE?」
「軒並み祓って貰ったからな。頼皆、呪霊は短期間で再出現するのか?」
「……さぁの。直ぐに産まれる場合もあれば、長い時間掛けて産まれる時もある。要は、非術師からどの程度の呪力が漏出してるかって話じゃ」
呪霊とは、呪力の澱み。負の感情の集まりから産まれてくるものじゃ。つまり人の集まりが多い所で産まれやすい。そして雄英は、ここ最近の事件が原因で負の感情が集まってしまっても仕方がない場所じゃ。
あ、そうじゃ。帳を降ろしておかねばな。雄英の敷地は広く、その敷地の外周には高い壁が設置されているが……念の為じゃ。
「呪霊の発生を抑制する手段とか、無いのかしら? こうして対処療法するより、原因療法の方が良くない?」
「あー、それもそうだな。DDG、そこんとこどうなんだ?」
いやじゃから、でぃでぃじぃとは何じゃ。訳の分からん呼び名を付けるなまったく。
「知らん。儂とて、何でも知ってるわけじゃ無いんじゃ」
まぁこれは、嘘じゃけど。実は知っとる。知っとるけど、それは儂に出来ることではないし、話したところで実行出来る呪術師が居ないからの。範囲を限定し、持続時間を短くしたものならば儂にも出来なくはないが、効率が悪すぎる。何より儂は、そっち方面に秀でた才能があるわけじゃない。多くの素養と、少しの才能があるだけじゃ。
この辺りの鍛練もしておくべきかのぅ。いや、時間の無駄じゃの。それは不死の術式を持ってる輩がやるべき事じゃ。そんな術式を持った奴が今後産まれてくる可能性は……零とは言わんけども、限り無く零に近い気がする。
と言うか、あやつは生きてるのか? ……ふむ。今度、あやつが居そうな場所にでも行ってみようかのぅ。今で言う京都に出向けば、もしかしたら何か分かるかもしれん。別に、会いたいとは思わんが。そもそも生きてるのなら、さっさと儂に接触して来た筈じゃからの。死んでると思った方が良いか。
いや待て、そういう事か……? そういう事なのか? じゃとしたら……。
……まぁ、良いか。あれこれと考えたところで、儂に出来ることは決まっとる。目に付いた呪霊を祓い続けて、少しでも多くの子供を、そして儂が守りたい人達を守る。それだけで良い。
「ところで、でぃでぃじぃとは何じゃ?」
「
「天災・破壊・少女って意味ね。ある意味、貴女にぴったりよ」
聞くんじゃなかった。
◆
知っていた事じゃけど、雄英の敷地は広すぎる。そして広過ぎる敷地には、あちらこちらに訓練場がある。しかもそれらに通ずる道は広くて長い。なのに徒歩で見回るのは、もしかして阿呆のすることなのでは? まぁ、別に歩くこと自体は構わないんじゃけどな。その気になれば朝まで歩いていられるし、そもそも歩くこと自体が好きじゃから。ここ最近……と言うより静岡に引っ越して来た時から、散歩らしい散歩はしていない。一人で外に出ようとすると、大抵誰かに止められるしの。被身子と散歩することは何度かあったが、被身子の体力は儂と比べたら少ないからの。儂が満足するまで散歩したことはない。
……儂を抱いてる時だけは疲れ知らずなんじゃけどな、あやつ。謎じゃ。そして不思議でもある。
「居ねーな、呪霊……」
「居ないわね」
「居ないに越したことは無いがな」
眼鏡を掛け、呪具を携えた教師三人がそんな事を宣った。今回の呪霊捜索は、念の為みたいなものじゃからな。それに雄英内部の呪霊を根こそぎ祓ったのは数ヵ月前の話で、こんな短期間に呪霊が産まれる可能性は低い。あの背広男が呪霊を差し向けた場合は話が変わってくるんじゃけど、あやつは死んどる筈じゃからの。生きている、或いは甦っている可能性は無いとは言えんが。
まぁそれはそれとして、呪霊の姿は見当たらぬ。
雄英の敷地内。その全てを覆うように儂は帳を降ろした。なのに呪霊は姿を見せぬし、そもそも気配が無い。新たに呪霊は産まれていないようじゃし、今にして思えば他所から移って来るなんて事も無い筈じゃ。何せ雄英の至る所に、儂の残穢が有るからの。薄くなっている部分が大半じゃけど、それでも儂の気配を恐れて呪霊は近付いてこないじゃろう。もし雄英に入り込むとすれば、それはそれ相応の猛者の筈じゃ
例えば一つ目なんかは、入ってくる筈。あやつは、今頃どこで何をしとるんじゃろうか? どうせなら儂の目の前に現れてくれんかのぅ。そしたら、楽しい時間を過ごせると言うのに。
呪霊は、相変わらず見当たらない。それでも手を抜いていい加減な見回りをするわけにはいかん。
……寮に戻れるのは、朝になりそうじゃの。帰ったら夜に備えて寝ておきたいが、被身子をほったらかしにしたいとは思わん。昼までは寝て、夕方までは一緒に過ごそう。
「ところでよDDG、やっぱり呪具ってのは作れねーのか? 俺、刀なんて使えねんだけど。どうせならメガホンとかの方が……」
「儂にその手の才は無い。諦めろ」
「でも、この眼鏡は作れたじゃない。これの応用で、私達教師に合わせた呪具を作れないかしら?」
「根津校長の尽力で呪具は取り揃えて貰ったじゃろ。それで我慢してくれ」
「……やっぱ有りもので我慢するしかねーか。使いにくいんだよな、刀。お前は刃物の扱いになれてて良いよな」
……。まぁ、誰にでも得意不得意はある。扱う武器は慣れ親しんだものに近い方が良いのは事実じゃ。少しでもこやつ等の生存率を上げようと思ったら、必要になるかもしれん。
とは言え。儂は呪具を作れん。時間を掛ければ、程度の低いものなら作れるとは思うが強力なものとなると話は別じゃ。そんなものは、流石に作れんじゃろう。……
あ、しまった。七山の奴に
まぁまずは、見回りを終わらせるのが先じゃけど。
この後。儂は教師三人を連れたまま雄英の中を隅から隅まで見て回った。全ての訓練場は勿論、游雲を見付けた森の中までしっかりと。
途中で休憩を挟みつつ見回ったからか、呪霊の姿が何処にも無いと確認出来たのは朝日が昇り始めた頃じゃった。結局、相澤達に呪霊の祓い方を教える事は出来なかったのぅ。全て口頭による説明になってしまった。どうせ教えるのなら、実際に呪霊の相手をさせたかったんじゃが……。
まぁ、いずれそんな機会が訪れるじゃろう。その時に教えてやれば良いか。
とにかく。雄英の中に呪霊は居ない。それを知ることが出来ただけ、今回は良しとしよう。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ