待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
さて、ここは何処じゃ? 見知らぬ風景しか目に入らぬから、自分が何処をどう歩いているのかも分からん。これはあれじゃ、儂を迷わす道が悪い。ぐねぐねと折れ曲がって、あちらこちらに通じている道が悪いんじゃ。
儂は約十二時間前、雄英外部の呪霊を祓おうと外に出た。と言うのも、緑谷から呪霊の目撃情報があったからじゃ。送信されて来た位置情報を頼りに、どうにかこうにか現地に辿り着き、それから雑魚呪霊を祓ったのは良い。そこまでは良かったんじゃけど、問題はその後じゃ。帰り道が分からくなった。また
何でじゃ。
まぁ、いずれは雄英に帰れるじゃろう。そう思う事にする。警察でも居れば道案内して貰うんじゃけど、何の偶然かまるで出会わぬ。何処かに交番が有ったような気がしたんじゃけど、はて? 何処じゃったかのぅ……。
「えっ、あれ? かい……っ、ヨリミナ!?」
「おお、みどり……でく。何しとるんじゃこんなところで」
いつか帰れるじゃろうと思って気の向くままに歩いていると、何の偶然か緑谷と遭遇した。一人ではなく、見覚えの無い輩と共に歩いておる。
そやつがお主の
「僕はインターン先で先輩とパトロールの最中だけど、ヨリミナは何で?」
「何でって、お主が連絡して来たんじゃろ。済ませておいたぞ」
「あ、うん。ありがとう……。ヨリミナ、もしかして……」
もしかして? 何じゃ? 口ごもってないで、はっきり言わんか。
「ま、迷子……?」
「は? 迷子ではないが?」
誰が迷子じゃって? まったく失礼な。儂は迷子になってるんじゃなくて……、そう、道が雄英まで繋がってないだけじゃ。全ての道は繋がっている筈なのに、何でこの辺りは歩いても歩いても雄英に辿り着かないのか。どうなっとるんじゃ。いい加減にして欲しい。
「一人で外に出たの?」
「そうじゃけど」
「よ、よく許可が降りたね……」
いや、許可など貰っとらん。寮を出る時に道案内して貰うと言ったら、相澤も被身子も何故か安心した顔をして快く送り出してくれたしの。まぁその案内も、今は沈黙してるわけじゃけど。
「ところで、そやつは?」
「あ、紹介するね。雄英三年の、通形先輩。ヒーロー名はルミリオンで、雄英BIG3って呼ばれるぐらい凄い人で……!」
「よせやい! 照れちゃうだろーっ!
あ、はじめまして! 俺は通形ミリオ、今はルミリオンって呼んでくれ!」
雄英びっぐすりぃ? ……何じゃそれ。何だか分からぬが、とにかく凄いって事は分かった。緑谷が顔を輝かせておるからの。学生ながら、るみりおん? とやらは、それなりに名が広まっているみたいじゃ。少しは
まぁとにかくじゃ、丁度良いから道案内して貰おうかのぅ。
「廻道円花じゃ。こおどねえむは、頼皆」
「あぁ、君が噂のブラッディ! オールマイトの後継と噂されてて、何かと有名な問題児!」
は? いやだから、誰が後継じゃ。緑谷の前であの筋肉阿呆の後継呼ばわりしないでくれ。それと、頼皆と呼べ頼皆と。何でどいつもこいつも、ぶらっでぃと呼ぶのか。もはや諦めてしまった方が、色々と早い気がしてならん。
それと、儂は問題児ではないんじゃけど? そういうのは、舎弟の担当じゃろ。
「……取り敢えず、雄英まで案内してくれぬか? このままだと帰れぬ」
「HAHAHA! 迷子のヒーローなんて珍しいね! どういうジョーク!?」
「いやその、ヨリミナは極度の方向音痴なんです。一人で出歩かせるなってルールが出来るぐらいには」
「……マジで?」
「マジです……」
おい、何じゃその決まり事は。儂、聞いとらんのじゃけど? おいこら緑谷、その件について後で詳しく教えて貰うぞ。場合によっては許さん。
「わっ」
「あっ!」
つい緑谷を睨んでいると、脇道から飛び出てきた子供が緑谷にぶつかった。まったく、何しとるんじゃこやつは。子供ぐらい受け止めんか。貴様が突っ立っているから、転んでしまったじゃろ。
転んでしまった幼子は、見たところ小学生程度。何なら幼稚園児ぐらいかもしれん。白い髪に赤い瞳、角。……角? まぁ、この時代なら珍しくもないか。それよりも目立つのは、手足に巻かれた包帯。
……見覚えがある。いや、この子供とは初めて会うわけじゃけども、それでも見覚えがある。感覚が、子供の危機を察している。となると、儂がすべき事はひとつじゃ。
誰じゃ。子供に手を出す、糞みたいな輩は。
「この馬鹿がすまぬの。大丈夫か? 怪我はしとらんか?」
「……ぁ」
しゃがむことで目線を合わせ、それから手を差し伸べると、……怯えられた。酷く緊張している。そうか、手が怖いのか。そういう子供が何をされているか、儂は知っとる。
ひとまず、今やるべき事はひとつ。この子供を、少しでも安心させてやらねば。恐らく、何処かから逃げ出してきたんじゃろう。それも、靴を履くことも忘れるぐらいに慌ててじゃ。それ程までに逃げ出したかったと考えるのが自然じゃの。であれば、まずは保護からじゃ。
「ごめんね、痛かったよね。立てる? 大丈夫?」
緑谷も、この子に優しく接する。るみりおんとやらは何故か状況を見ているだけのようじゃけど、まぁ良い。儂と緑谷で事足りる。
取り敢えず、この幼子を立たせてやるとするか。立ち上がりつつ手を取って、出来る限り優しく引っ張ってやる。そうすると目が合ったから、微笑んでみせる。少しは安心してくれたのか、緊張が和らいだ。
「儂は円花、こっちは緑谷、もしくはでく。後ろのは、るみり……何たらじゃ。お主の名前は?」
「……ぇ、エリ……、です」
「えり? どんな字じゃ? 漢字は分かるか?」
「えっと……こういう……?」
少し目を丸くした子供が、辿々しく指で宙に文字を書く。じっと見詰めてみるが……。
「……それは片仮名じゃの。まぁ良い、分かった」
えり。それがこの子の名前じゃ。名字は分からんが、それはどうでも良い。今は名前さえ分かれば、それで構わん。
「えり。何処からか逃げて来たんじゃろ? 儂が助けるから、安心して良いぞ」
「……!」
「えっ、ちょっ……ヨリミナ?」
「見て分かれ阿呆。どう見ても誰かに何かされとる。裸足で逃げ出して来るほど切羽詰まってると見て良い。ひとまず保護じゃ」
「……!! ぅ、うんそうだね、助けなきゃ!」
まだまだ判断が遅いのぅ。この子を見た瞬間に決断せんか。るみり何とかはまだ静観しているようじゃけど、少なくとも反対はしていない。なら、多数決で保護で決まりじゃ。
なんて思っていたら、ほの暗い脇道から大人が一人姿を現した。顔に嘴みたいな飾り? を付けている。
「ダメじゃないか、ヒーローに迷惑かけちゃ。帰るぞエリ」
「っっ」
……。この子の名前を呼んだ。そしてこの男に名前を呼ばれた瞬間、えりは緑谷に抱き付いて震え始めた。抱き付いてしまったから顔は見えんが、それでも分かる。こやつか。この男から、逃げて来たのか。
「うちの娘がすみませんねヒーロー。遊び盛りで怪我が多くて、困ったものです」
嘘じゃの。愛想笑いを浮かべて自然と喋っているように見えるが、明らかに嘘じゃ。まぁ確かに子供は怪我をしやすい。遊び盛りなら怪我のひとつやふたつは付けるものじゃ。しかし遊び盛りの子供にしては、えりは肌が綺麗すぎる。白いんじゃよ、肌が。この日差しの強い真夏に、遊び盛りの子供が日焼けしない筈がなかろう?
で、緑谷。何でこの男を前にして驚いた? 情けない表情をしおって。
「まーたフードとマスク外れちゃってるぜ。サイズ調整ミスってんじゃないのか?」
ここまで黙っていた奴が、急に喋ったの。緑谷の頭に、
「よし、……でく。えりを抱えてここを離れろ。個性使って跳べ」
「え? いや、でも……」
「良いから。今は儂に従え、儂に任せろ。えりを助けよう」
「……何の相談でしょうか? うちの娘が、何か?」
「あ、いやっ、転んで頭を打ったようなので念の為病院に連れてこうかって相談ですよ! なっ、相棒!」
「でしたら、こちらで連れて行きます。ヒーローのお仕事を邪魔するわけには行きませんから」
当然、そう来るじゃろうな。逃げた子供をわざわざ追って来てるんじゃ。ならばこの男にとって、えりの存在は何か重要なのじゃろう。例えば、虐待の痕を医者に見られると困るとか。その辺りの詳しい事情は分からん。どうせ、儂には理解出来ぬ事なのじゃろう。子を虐げる親の事情は、何年経とうが理解出来んものじゃからな。
「よし、今行け。えり、でくが居れば安心じゃ。しっかり掴まってるんじゃぞ」
まぁ念の為、赤縛で緑谷の体にえりを縛り付けておくがの。それから、えりの額に儂の血を少しだけ付けておく。ついでに、頭を撫でておく。髪は少し痛んでいるようじゃ。勿体無いのぅ、綺麗な髪色をしているのに。
「……っ、先輩、ごめんなさいっ!!」
「は!? ちょっ、何してんのさ!!?」
緑谷は、えりを抱えて跳んだ。街灯や建物の壁を足場として、近くの建物の屋上へ姿を消した。その後も跳躍音が聞こえたから、ちゃんとこの場から離れているようじゃの。
ひとまずは、これで良いじゃろう。後は……。
「す、すみません! すぐ連れ戻します! 初めてのパトロールで、変にパニクっちゃったみたいで!」
「……いえ、それだけ熱心って事ですよ。どうやら娘は本当に怪我をしているようだ。ほら、そこに血が」
「本当だ……! 血を見て焦っちゃったのかな!? 近くの病院に向かったみたいですから、俺達も行きましょう!!」
「ええ。そうしましょう」
るみり……おんが、駆け出した。嘴男は歩きつつ、手袋を外した。そして、動かぬ儂に手を伸ばす。から、手首を掴んでその場で組み伏せる。
「がっ!?」
「さて。えりも居なくなったことじゃし、質問に答えて貰おうかの。
……貴様、あの子に何をした?」
あぁ、今すぐに殺してやりたい。こんなにも人を殺したくなったのは、渡我夫妻を殴り飛ばした時以来か。緑谷は居なくなった。あの子も離れた。るみりおんはまだ背を向けている。周囲に人影は無い。なら、この場で殺してしまっても構わんよな?
「……病人め……! 触るな!!」
まだ自由な右手で、男は地面を触れた。その瞬間、地面から儂に向かって石の棘が飛び出した。ので、咄嗟に転がって避ける。が、髪に掠ってしまった。まぁ怪我はないから良しとする。それより、今のはこの男の個性か? 地面を操る? いや、触れたものを操るのか?
……どうでも良いな。こやつの個性など、すこぶるどうでも良い。これから儂が行うのは戦闘じゃない。駆除じゃ。故に、儂が楽しむことは無い。
「もう一度聞くぞ。あの子に、えりに何をした?」
腸が、煮え繰り返る。あぁ、駄目じゃ。殺意が抑えられそうにない。今日までずっと、人殺しは選択肢に入れてこなかった。なのに今、人殺ししか選択肢に入らない。
まるで悪党じゃの、儂は。ここでこやつを殺せば、呪詛師になってしまう。被身子や両親に迷惑を掛けてしまう。それは分かってる。分かってるが……。
「貴様は殺す。絶対に、殺す……!」
もう、どうにも抑えられそうにない。
さて、始まりましたヤクザ編。円花がエリちゃんを一度見放す訳がないので、結果として原作から流れが変わっています。無理矢理保護?って形になりました。そしてVS治崎です。同じ廻の字同士仲良く……は出来ないですね……。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ