待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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今回の話は人によっては無理かもしれません。我ながら気持ち悪いなと思っているので。でも書きたかったし書くべきだと思ったので……。
サブタイトル通りの内容です。すみません。


消えろ生理。

 

 

 

 

 

 ううぅ……きらいじゃ。これきらいじゃあ。助けてくれ。誰か儂の下腹部にある臓物を引きずり出して捨ててくれ……。

 

 そうとしか思えん程に、生理は嫌いじゃ。初めて来た時も大変じゃったのに、何でこやつは月に一度もやってくるんじゃ。多い時は二度も来る。来るでない。どっか行け。仕方がない事とは分かっておっても、嫌なものは嫌じゃ。

 男だった頃はこんな苦しみを味わうこともなかったと言うのに……。こんな苦痛に毎月堪えねばならぬとは……不便じゃ……この体不便じゃあ……。厄介な生理は早くどこかに消えてくれ。本当に厄介なんじゃ。

 

 何が厄介って、反転術式(はんてん)で収められぬ。いや、収めるのを早くすることは出来るんじゃ。でもそれは二日目からで、初日は出来ん。生理が来た時は、酷く呪力操作も呪力出力も乱れる。この状態で高度な呪力操作を要求される反転術式を扱うことは出来んのじゃ。女の呪術師はさぞ大変じゃったろうな……。知らんかったこんなの……。

 

 ぅうう。被身子ぉ。もっとお腹擦ってぇ……。

 

 

「大丈夫ですか?」

「ぅうう……お腹痛い……」

「円花ちゃん、本当に生理重いのです」

「ぐすっ。ぎゅーってして……」

「はい。ぎゅーーっ」

「んーーっ」

 

 生理が来た時は、本当に何も出来ん。二日目になったら呪力操作が戻るから、直ぐ反転術式(はんてん)で収められる。じゃから初日は、初日だけはこうして被身子に添い寝してもらうしかない。下腹部を擦って貰ったり、抱き締めて貰うと少し痛みが紛れるんじゃ。でも涙は溢れてくるし、体は怠いし、頭痛もしてくる。

 儂、かなり生理が重いみたいなんじゃ。被身子を見てるとそう思う。こやつ、生理の時は普段以上に元気になるのじゃ。落ち着きが無くなると言うか、制御が利かなくなると言うか。ただでさえ制御不能なのに……。

 でも。生理痛とかはあんまり無いようで、真に羨ましく思う。儂も生理痛とは無縁で居たかった。

 

 被身子ぉ。頭撫でてぇ……。

 

「……あんまり辛いなら、お薬飲みましょう?」

「ぐすん。やじゃあ……。お薬やじゃあ……」

「飲んだら少しは楽になれるのです。後で飲みましょうねぇ」

「やーーじゃーーっ」

 

 こんなに腹が痛いのに、あんなに苦い物を飲むなんて無理じゃ。絶対嫌じゃ。薬なんて牛乳の次に嫌いじゃ。

 ぅうううっ。これ辛い。腹の内を針で引っ掻かれてるかのような、削られているかのような痛みが絶え間なく襲ってくる。苦しい。嫌じゃ。早く明日になってくれ。そしたら反転術式が使えるのに……っ。

 

「早く落ち着くと良いのに……」

 

 生理はこうなるから嫌いじゃ。儂が弱って動けなくなると、被身子が悲しむのじゃ。こやつには笑っていて欲しいのに、なんでこんなので悲しませることになってしまうのか。

 

「ぐすっ。被身子ぉ、被身子お。どこぉ……」

「ここに居ますよー。大丈夫。大丈夫だから」

「う、ぅうう……っ」

 

 駄目じゃ。本当に駄目じゃ。今の儂はぽんこつと言われても仕方ない。痛すぎて痛すぎて、目蓋を閉じると直ぐ隣……どころか目の前で密着している被身子すら分からなくなる。こんなやり取りを、今朝から何回しているか分からない。生理が来ても直ぐに反転術式(はんてん)出来るようもっと呪力操作の精度を上げるべきじゃろうか。じゃが、こんな状態で集中するなど不可能じゃって。どうすれば良いんじゃ。誰か助けてくれ。何とかしてくれ。ううぅ……。

 

「ぎゅーーっ」

「んぐっ」

 

 何じゃあ。そんな思いっきり抱き締めて。ちょっと苦しいじゃろ? でも、嬉しい。こうされると温かくて、幸せじゃ。もっとじゃ、もっと抱き締めろ。あと、あと出来れば……ちうちうしてくれ。して欲しいのにしてくれないんじゃ。いつぞやにして貰った時は、その痛みだけに集中出来て生理痛を感じずに済んだ。代わりに貧血で気絶したがの……。だから、してくれなくなったんじゃ。本当はしたい筈なのに、儂の為に我慢するんじゃこやつ。

 我慢なんて、少しも出来ないこやつがじゃぞ?

 うう。それも嫌じゃ。被身子から笑顔を奪う生理なんて消えてくれ。消えろ生理。ううう。

 

「ぅうう……被身子ぉ」

 

 もう嫌じゃ。女体なんて嫌いじゃ。二度となりとうない。来世があるなら男が良いぞ……。ふえぇ……。

 

 

 

 

 生理収まったぞ!!! 儂の勝ちじゃ!!!

 

 これに懲りて二度と来るな!!!

 

 来月の事を考えると今から憂鬱じゃ……。

 

 昨日はもう、痛すぎて痛すぎて何も出来んかった。食事はろくに摂れんかったし、風呂も入っておらぬ。じゃから一昨日ぶりの湯が……身に染みるのぅ。ああ、極楽極楽。儂、若い体の上に反転術式(はんてん)回しまくっとるなら体は健康じゃ。でも湯に浸かるのは……至福なんじゃぁ。

 

 とは言え、長風呂は出来ぬ。昨日生理じゃったからな。体を清めたら何が待ち受けておるか、決して忘れてはならぬのじゃ。忘れてしもうたら大変な事になる。

 

 昨日あれだけ我慢して貰ったんじゃ。なら今日は、幾らでも甘えさせてやらねばのぅ。

 なあ、脱衣所で服を脱ぎ始めた血狂い鬼嫁め。言っておくが貴様が儂にしたことは生涯許さぬからな。許して欲しくば一生儂に尽くせ。美味なおやつを貢ぐのじゃ。食後のでざあともじゃ。あと笑顔な。決して忘れるではないぞ。

 

「円花ちゃん!!!」

「喧しい!!! 風呂場で叫ぶな!!!」

 

 残念ながら湯を楽しむ時間は終わりじゃ。包丁片手に息を荒くして、赤面しきった儂の女が突撃して来おった。名残惜しいが、湯から出るとしようかの。

 湯から上がった儂は、浴槽の縁に腰掛ける。それから。

 

「ん。ほれ来い。まっことお主は、欲しがりな女じゃよ」

 

 両腕を広げて、迎え入れてやる。ほれ、早くせんか。お互い裸なんじゃから、のんびりしてたら風邪を引くじゃろ。仕方ないやつじゃのぅ。

 

「おいで」

 

 笑顔も、付けてやるとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 この後? 決まっとるじゃろ。

 風呂場が儂の血で染まり切るまで刺されるわ、切り刻まれるわで大変じゃったわ。後片付けもな。

 

 お主なぁ、もう少し加減しろ。儂じゃなかったら死んでおるぞ?

 

 

 

 

 





あ、えっちなやつ投稿済みです。お探しになってください。

トガちゃんについて

  • 普通科二年
  • ヒーロー科一年

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