待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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公安の命令。

 

 

 

 

 

 サー・ナイトアイは、廻道円花の未来を見た。それは頼皆と言うヒーロー候補生を信じられなかったからであり、同時にこれから確実に訪れる未来の中に良い結果が有ると信じたかったからだ。

 ……しかし。現実は残酷だ。予知という個性は、ナイトアイに最悪の未来を見せてしまう。彼が見たのは、頼皆が治崎に殺される光景。如何なる手段が用いられたのかは分からぬが、彼が見た未来の映像の中では廻道円花は半身を失っても尚、果敢に治崎へと挑み……そして殺される。

 

 そんな残酷な未来を、見てしまった。変えようのない未来を知ってしまった。

 

 彼は知っている。どうあっても未来が変わらないことを、その身を以て体感している。だからこそ彼は、予知と言う個性を容易くは使わない。調査や捜査、そして(ヴィラン)捕縛の最後のダメ押しとして、未来を確定させる為に使うのだ。……なのに。

 

 なのに、見てしまった。廻道円花が死ぬ未来を。治崎に殺され、エリが奪われてしまう未来を。

 

 この現実を何とか覆したいと思っても、彼にはどうすることも出来ない。何をしようと未来は変わらない。それ故に、ナイトアイが出来ることは決まってしまっている。

 

 

「……頼皆は、彼女は死にます。これはもう、どうしようもない」

 

 

 エリを守り、救ける。その為に集結した数多くのヒーロー、そしてヒーロー候補生達の前で、独り未来を知ったナイトアイは重く口を開く。彼の言葉に、会議室に居る全員が顔を顰める。その中で特に眉を顰めたのは、イレイザーヘッドだ。

 

「……俺は、信じません。頼皆は死なない。死なれて堪るか。もしそれが事実なら、俺は今直ぐあいつを雄英に帰します」

 

 ナイトアイの発言に、イレイザーヘッドは反発する。教え子が死ぬなんて未来は、彼にとって何よりも回避しなければならないこと。それは教師としての立場が、ヒーローとしての立場が、何より相澤消太個人の信念が許せないことだからだ。

 

「予知は、……絶対です。私自身、何度変えようとしても未来は変わらなかった」

「未来を変える可能性を、模索するべきかと。まだ試してないことは?」

「……全て試した。試し続けて来た。それでも未来は変わらなかった」

「……待ってください。ナイトアイ、本当にヨリミナが……!?」

 

 イレイザーヘッドに次いで、口を開いたのはデクだ。椅子を倒してしまう程の勢いで立ち上がり、それが周囲の注目を集めてしまう。が、ヒーロー達の目など気にしていられない。ナイトアイの言葉を、とても聞き逃すことが出来ないからだ。

 

「……そうだ。彼女は、……治崎に殺される」

「そんな……!! 何とか、何とかならないんですか!?」

「……デク。サーの予知は、絶対だよ。少なくとも俺は、外れたところを見たことは無いね」

「でも、ルミリオン。だとしても、私達は信じられないわ。ヨリミナは、とっても強いのよ。殺される……だなんて……」

「俺も信じねーぜ。信じて堪るかってんだ……!!」

「私も、信じやん。もしそうやとしても、何処かできっと変える手段がある筈や」

 

 イレイザーやデクに続き、フロッピーが、烈怒頼雄斗が、ウラビティが。それぞれが、これから訪れる未来を否定する。彼等は知っている。頼皆の強さを。彼女の強さを、誰よりも近くで見てきた。

 だからこそ、彼女が死ぬなんて未来は信じられない。信じられる筈が無い。それ故に、ナイトアイの言葉を全員で否定する。が、しかし……。

 

 ナイトアイが見る未来は、残念ながらそう易々と覆るものではないのだ。

 

 未来を信じない若者を前に、ナイトアイは目を伏せる。その時。

 

「……っと、話は進んでるようですね。遅れて申し訳ない。今はどこまで?」

 

 重苦しい空気に包まれ始めた会議室に、スーツ姿の大人が姿を見せた。脇にノートパソコンを挟み込んで、片手にペーパーカップを彼は呪術総監部の七山だ。彼の登場に、まず目を丸くしたのは緑谷だ。続いてイレイザーが反応し、遅れてヒーロー達が七山に向かって一斉に目線を向ける。

 突然注目を浴びてしまった彼は悠々とペーパーカップに口を付け、それから頼皆が居なくなったことで空いた席に腰掛ける。

 

「七山さん……?」

「どうも緑谷くん。……今はデクって呼んだ方が良さそうですね。それで、サー・ナイトアイ。話はどこまで進みました?」

「……今行っているのは、今後動くであろう死穢八斎會への対策会議。それと、私が見た頼皆の未来を共有したところです」

「そうですか。ではこの件については、多少我々公安が口を挟ませて貰います。

 まず第一に……今回の件、頼皆は必ず参加させてください」

 

 椅子に腰掛けてノートパソコンを開いた七山が、キーボードを軽快に叩きつつとんでもない事を口走った。

 

「……は? いや、おいおい。急に出て来て何だってんだ公安さんよ」

 

 公安からの指示に真っ先に反発したのは、ロックロックだ。彼は頼皆の事を快く思ってはいないものの、それでも七山の……公安からのお触れに噛み付いた。

 

「昨日起きた死穢八斎會とのいざこざは、こちらも把握しているところです。そこで今回は、この機に乗じて彼女がヒーローに向いているかどうかを見定めたい。

 ですから、好きにさせましょうか。それが私達(・・)の方針になります」

「……その為に、生徒を死の危険に晒せと? まだ子供ですよ」

「それは今更でしょう? 我々は彼女無しでは秩序を維持出来ない。そういう場面に出会してしまった。これまで通りとは行かないんですよ、色々と」

「ちょい待て。そりゃどういう事だ?」

 

 七山とイレイザーの話に、ロックロックが割って入る。この場にいる面子の中で、呪術界について知っている者は少ない。そこから更に詳しい事情を知る者となると、もはや三人しか居ないのだ。それ故、七山とイレイザーが何を話しているのか理解出来る者は少ない。何となくであるならば、ウラビティやフロッピー、そして烈怒頼雄斗は知っている。だが今の七山の言葉の全てを理解出来る者となると、この場には二人しか居ない。

 

「これは国家機密ですので話せません。が、ひとまず彼女が……そうですね。オールマイト並に重要な存在とでも思ってください」

「……はぁ?」

 

 ロックロック、どころか他のヒーロー達も一斉に七山の言葉を疑った。無理もない。あの少女のどこがオールマイト並に重要なのか、真相を知らねばとても信じられない。そもそも、真相を知ったところで納得出来るかどうかは分からないところではあるのだが。

 

「現状、あなた方の納得は必要ありません。そういうものだと飲み込んでくだされば、それで結構」

「……訳わかんねぇな」

 

 疑念と不信の目が、七山に集う。急に姿を見せたと思ったら、勝手に口を挟むのだから仕方ない。この場に居る彼以外の誰もが、七山の……公安の意向を理解することが出来ないからだ。

 しかし。だからと言って七山が、公安が引き下がることは無いのだろう。廻道円花という存在は、既にこの国とって必要不可欠の存在だ。例えヒーローに不信感を植え付けてしまったとしても、彼女が如何なる存在であるのかを黙秘しなければならない。全てを話すことは、出来ないのだ。

 

「残念ながら、我々は理解も求めてません。それで、サー・ナイトアイ。頼皆の未来は如何なものでしたか?」

「彼女は、殺されます。治崎、……オーバーホールの手によって」

「……それは非常に困りますね。であれば……そうですね。彼女は後方待機させとくのが無難でしょう」

 

 七山、と言うより公安。呪術総監部は、廻道円花を失うわけには行かない。秘匿されていた呪術界の事をどういう訳か知っている彼女は、貴重な情報源であり人材だ。その彼女を失うことは、今後この国の秩序を守って行く上で大きな痛手となってしまう。

 故に、彼女を死なせてはならない。死の未来が近付いているのならば、何が何でも回避せねばならないのだ。

 

「そのつもりです。出来る限り現場から遠ざけます。……彼女を納得させる理由は、これから用意しますが」

 

 果たして。プロヒーローですら肝を冷やす程に殺気立つ彼女に従って貰う術が有るのか。少なくとも今回の一件、壊理と治崎に強い執着を見せている円花を大人しくさせておくことは決して簡単な事ではないだろう。彼女はどうしたって、動いてしまう筈だ。

 

 治崎がしていた事は、廻道円花にとって何より許せない事なのだから。

 

 ……なのに。

 

「あぁ、それでしたら簡単ですよ」

 

 七山は、微塵も頭を悩ませなかった。そして次に彼が言い放った一言に、雄英教師やヒーロー候補生達が凍り付く。

 

 

 

「渡我被身子さんに協力してもらいましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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